何にでも乗れる騎操士くん(予定)   作:黒髪赤目の男の娘これが大好き

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魔獣の襲撃

上級生たちを見送ってから数時間。僕ら一年生は戦場の只中にいた。

 

数匹の風蜥蜴(スタッカートリザード)を皮切りに、次々と魔獣が現れて襲ってきた。今や一年生は大混乱。教官たちも手一杯といった様子で、明らかに演習で想定された状況じゃない。

 

エル君以下、キッド君とアディちゃんに僕の四人は比較的冷静さを保っていたと言えるだろう。四人で頷き合うと、まずエル君が上空に飛び上がって風衝弾(エアロダムド)を拡散発射して範囲攻撃をする。続いてキッド君とアディちゃんが突撃。キッド君は大剣とそこについた銃杖(ガンライクロッド)であるガーンデーヴァで、斬撃からの真空衝撃(ソニックブーム)という連続攻撃を繰り出した。一方でアディちゃんはまず雷撃投槍(ライオットスパロー)を魔獣の中の一塊に放ってから、双剣と銃杖(ガンライクロッド)をドッキング。魔法で強化して魔獣たちを辻斬りしていく。

 

僕は援護だ。肩付けの射撃姿勢で銃杖(ガンライクロッド)から遠距離魔法を撃ちまくり、他の三人の隙を埋めていく。

 

そうして魔獣の群れに大打撃を与えれば、他の生徒たちの混乱も収まる。驚きの方が大きいかもしれないけど、混乱したままよりはずっといい。

 

「総員、抜杖!」

 

エル君が幼くてもよく通る声で指示を出した。皆その指示に従ってくれている。

 

「集まって、密集陣形を!先生!」

 

突撃したキッド君とアディちゃんが戻ってくる。僕は牽制と援護のために射撃を続けた。

 

「指揮をお願いします。隙を見せないようにしながら後退しましょう。僕たちは、周囲の援護に回ります」

 

エル君の言葉に従って教官たちも指示を出す。

 

密集陣形が成立したその前で、エル君達三人が並び立った。僕は森の奥から走ってくる魔獣の方へ銃杖を向けたまま、一度射撃をやめる。

 

「おうおう、すげぇ数の魔獣だな。まだまだじゃんじゃん来らぁ。こいつぁ思う存分暴れられそうじゃねぇか」

 

「ふふーん、遠慮なんてしないんだから!」

 

今にも再突撃していきそうな二人をエル君が窘める。

 

「二人とも、戦うのは構いませんが他の生徒を守るのもお忘れなく」

 

急な実戦でテンションがおかしいのか、アディちゃんが口答えする。

 

「えー、あっちはあっちで何とかするんじゃない………の………」

 

その言葉は尻すぼみに途切れた。アディちゃんを見るエル君がいつになく厳しくて凄みのある顔をしていたから。

 

「暴れたいだけなら、ここにいる必要はありませんよ?」

 

分かってるよな、お前?とでも続きそうだ。おお、怖い。

 

「わ、わかってるわよ!皆もちゃんと助けるわよ!」

 

アディちゃん、テンションを戻しつつ慌てて同意する。

 

「幸いここはまだ森の入り口。後退すればすぐにキャンプに戻れます。向こうで幻晶騎士と合流すればかなり楽になるでしょう。それまでは」

 

エル君が魔獣の来る方向を見る。

 

魔獣がまた来ていたけれど、既に僕が風衝弾(エアロダムド)で吹き飛ばしておいた。

 

「僕らが彼らを守らねばなりません」

 

「援護は任せてね」

 

「はい」

 

エル君は銃杖(ガンライクロッド)を振り抜いて、魔法を撃ち放つ。

 

しばらくの間防衛戦をしつつ後退していると、異常を察知したのか、幻晶騎士(シルエットナイト)に乗った先輩達が来てくれた。僕らの前へ盾になるように動いたのは、エドガー先輩の白騎士型。他の幻晶騎士(シルエットナイト)と共に魔獣を蹴散らし始めている。

 

これで一安心。僕らでも倒せる魔獣に、幻晶騎士(シルエットナイト)が苦戦することはないだろう。

 

前線を幻晶騎士(シルエットナイト)が担ってくれているので、後退のペースを早められた。出発してきたキャンプの防衛柵の内側で、僕らと同じ一年生の皆は緊張の糸が切れた様子だ。教官たちは今後の対応を話し合っている。キッド君とアディちゃんも一休み中。いくら鍛えていても、2人もまだ12才の子供だ。精神的にも揺らぎはあるかもしれない。

 

「僕らが襲われたってことは………」

 

「ええ、先輩の皆さんも襲われているでしょうね」

 

僕の言葉に、エル君が答えた。エル君は落ち着いている。幻晶騎士(シルエットナイト)という兵器に乗るために全力投球しているが故だろうか。それに、エル君の祖父は学園長で、父は教官という話だ。心構えが出来ているのだろう。

 

「2、3年生たちの進路はわかりますか?」

 

「難しいな。実習の目的を考えると森の中全域に広がっているはずだ。そのうえ、予定通りの場所にいる保証もない」

 

教官らの話し合う声が聞こえてくる。限りある戦力でどこへ救援に向かうか決めあぐねているのだろう。

 

エル君は、教官らの方へおもむろに近づいて話し合いに混ざった。

 

「森の中で、人が集まりやすい場所はどこでしょう?」

 

なるほど、とエル君の考えを理解する。僕らより実戦経験がある先輩たちなら、同じように集団戦で対応しているのではないか、というわけだ。

 

「これほどの規模の魔獣の群れです。先輩たちも集団での抵抗を考えるのではないでしょうか?ならば、大人数で動きやすい場所へ行くかと」

 

エル君は更に続ける。

 

「それに、あまり木々の多い場所では幻晶騎士(シルエットナイト)は動きづらくなってしまいます。こちら側の戦力事情としても開けた場所から探索するのが良いのではないでしょうか」

 

僕もそれとなく教官たちの方へ近づき、広げられた地図を見てみる。僕たちのいるキャンプから、教官が示した人が集まりやすい場所へ行くには、森の中央の方をまっすぐ抜ける経路を取るようだ。

 

「それに、この進路ならばこちらへ来る魔獣を迎え撃つ形にもなります。巻き込まれて戦闘をしている人がいれば音で分かるでしょう」

 

説得力のある提案だ。教官たちはもうエル君の提案を受け入れる雰囲気になっている。急を要する状況だ、妥当性の高い行動から試していかねばならないのだろう。

 

「エルネスティの提案で行こう」

 

教官の一人がそう言うと、教官たちは散らばって準備を始めた。

 

「エル君はどうする?」

 

「………僕も付いていこうと思っています」

 

「セラーティ先輩のことが心配だよね。僕も行っていいかな」

 

「レイも?」

 

エル君が意外そうな声で聞き返してくる。僕としては、エル君のことも心配だった。確かにエル君は強いし、頭がいい。それも、僕よりも。それでもエル君とてまだ12才の子供だ。やはり、一人で行かせたくはない。

 

「僕は遠距離戦が得意だし、高速移動もとっくに習得してる。エル君の足を引っ張らないし、いざという時はエル君も連れて逃げる。陽動だってできる」

 

「………ありがとう。でも、僕たちの目的は先輩たちの捜索と救出ですよ。忘れずに」

 

「わかってる」

 

話しているうちにも、準備は進む。十機いる幻晶騎士(シルエットナイト)のうち、五機を救援部隊として進ませることになったようだ。その中には、エドガー先輩と白騎士型もいる。

 

「そうだ、エル君」

 

「何ですか」

 

「エドガー先輩の機体、何ていうの」

 

「ああ、知らなかったんですね。アールカンバーですよ」

 

「わかった。行こう」

 

「はい」

 

エル君と僕は救援部隊の幻晶騎士(シルエットナイト)の方へ走り出す。

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