何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
少しの間、エル君共々セラーティ先輩にされるがままにされていると、後ろの方から戸惑うような声が聞こえてきた。
「あ、あの、生徒会長………」
どうやらセラーティ先輩を呼びに来たらしい。
セラーティ先輩、防衛戦で犠牲者をゼロに抑えるような指揮官ぶりを発揮していたらしい。それが今や僕らを愛で倒している。
「何かしら?」
きっとだらしない笑みだろう。呼びに来た生徒は気まずそうに続ける。
「今後の方針を決めるので、来てほしいと先生がお呼びで………」
「わかったわ。ごめんね四人とも、また後で話しましょうね、行ってくるわ」
セラーティ先輩の声色が引き締まったものになった。癒しタイムは終わりらしい。
僕らは手を振って先輩を見送る。
それから、小声でエル君に話しかけた。
「これで安心、と思う?」
するとエル君は僕と目を合わせてから目を閉じて、小さく首を振った。やはりエル君は警戒している。
「僕も」
日が隠れ、影が落ちたクロケの森。今ではもう、その向こうを見通せそうにない。
「それで?結局移動は明日になったのかよ」
夕食を食べながら、キッド君が言った。夕食は携帯食料と山菜のスープ。戦闘後の身には染みる。
「負傷者は多いけど、死ぬような傷を負った人はいないみたい」
「それより、魔力を使い果たして疲弊している人が多いです。実用上の戦力は少ないですよ」
「強行軍は危険だね」
「そう判断したようです」
僕とエル君が話していると、アディちゃんが疑問を投げかけてくる。
「ねぇ、こんなところで休んでるのも危険じゃないの?」
「一利あるけど、夜だと視界が利かないよ」
馬はこの世界でも昼行動物だ。夜でも人よりは目がきくかもしれないけど、制御するのは視界が利かない人間だ。
「ですね。疲弊を押して危険な馬車での移動中に襲撃されるよりは、明かりもあり、まだ拠点としての能力があるこのキャンプの方が安全だと判断したようです。それに、さすがに同規模の魔獣の群れがまた襲ってくるとは思えませんし」
「ふーん、なんか楽観的だね!」
「楽観つーよりゃ、何やっても賭けになるから危険が少ない方を選んだってだけだろ。仮に夜になんか来るっても、動かねーほうが幻晶騎士による防衛もカンタンなんだしよ」
キッド君もアディちゃんも、今の状況は十分理解していそうだ。エル君は飛び抜けているけれど、この二人もやはり頭がいい。今すべきことは休むこと。移動のための休みだ。
見えている情報から考えた状況判断はこれが最適だと思う。
セラーティ先輩の来る前に僕の頭を過った想像。それが正しかった場合も、魔獣の群れがまた来る可能性は低いだろう。けれど、その場合。
群れの原因が来たら、どうなってしまうのか。
嫌な想像をしながらも、僕は三人と同じテントでどうにか眠りについた。
そして翌朝、その想像は現実になった。
警報となる鐘の音に飛び起きて外に出れば、そこには
咄嗟に
次の瞬間、その巨大魔獣が吠えた。とんでもない大音響。衝撃波すら伴う咆哮が僕らを襲う。そして、大混乱。
生徒達がバラバラに逃げ出したからだ。無理もない。しかし徒歩ではダメだろう。奴の歩幅は人間とは比ぶべくもない。
僕は一瞬考え、それから逃げ出す生徒に当たらないように、
「離れて逃げてはダメです!全員馬車のほうへ!」
エル君は飛び出すと、魔法に驚いて止まった生徒たちへ声をかける。
ならば、と僕は馬車の方へ大ジャンプし、上に着地してから
「馬車はどれも無事だ!慌てず乗り込んで!」
生徒の流れが馬車へ向かうのを確認した僕は
高等部の
生徒たちは次々と馬車に乗り込んでいる。けれど、
師団級、という分類がある。魔獣の分類の一つで、
「っ!」
魔獣が口を開けた。口、という器官は魔獣にとって武器だ。それはただ噛みつくだけでなく。
空気が揺れた。それは魔獣の口から竜巻が発生していたから。
一機がまともに巻き込まれて、達磨の残骸にされて倒れる。それに動揺したか動きが止まった別の機体が、巨大魔獣の尾に殴りつけられて腰から折れる。
二人、死んだ。
「っ、ぐ、う」
何も出来ない。いくら修練しても、人一人で放てる魔法には限りがある。たとえ僕の魔力を全て注ぎ込んだって、奴にダメージを与えられるかすらわからない。
「レイ!」
エル君の声。見ると馬車の外に生徒は残っていない。
「捕まって!」
伏せて、馬車の縁をつかむ。間髪入れずに馬車が走り出した。
それからまた魔獣の方を睨む。
奴が向かってきたら、僕の魔力を使い切ろう。たとえ魔力切れで死んでも、足止めになるかもしれない。
急に、その魔獣の近くから赤い何かが飛び出してきた。いや、赤い
そして、エル君が飛び出した。馬車に乗る生徒の叫び声。
追いかけるように