何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
エル君の後を追う。
連れ戻さなければならない。あの、名も知らぬ二人の犠牲を無駄にしてはならない。
エル君は魔獣の方に向かっていない。おそらく敵前逃亡した、赤い
あの赤い機体も、そうなったのだろう。脇目も振らずに逃げたのだろうから。
エル君は膝をついた駐機姿勢の赤い機体、その胸部装甲を開けている。
「単刀直入にお聞きします。先輩はあの場から逃げ出したのですよね?」
あまりにも酷な問いだ。
赤い機体の中の先輩にそれはてきめんに効いてしまったのか、恐慌状態で叫ぶ声が聞こえる。
「………!くっ、あぁ、そ………クソ………そうだ!逃げて何が、何が悪い!あの場所で一人増えようが減ろうが、結果はまったく変わらない!だったらなぜ私が無駄死にしないといけないんだ、騎士の心得とて、命を捨てろとは言っていない!」
あれは言い訳だ。自分に対する。そうでないと心が壊れてしまうのだろう。いや、既に壊れているのかもしれない。あの二機が、あの二人が死んだ時に。
僕も赤い機体の足元についた。そして僕が聞き取ったエル君の言葉はとんでもないものだった。
「よかった」
「………なに?」
まさか。
「先輩からならば、僕も安心してグゥエールを借りられそうですから」
言い切るが否や、エル君は
エル君、グゥエールで魔獣と戦うつもりだ。
僕は跳び上がって、エル君に声をかける。
「エル君」
「ああ、レイ。危険のない所まで、ディートリヒ先輩を運べますか」
考える。今の状況で安全な場所といっても、それは僕らが飛び出してきた馬車くらいしか思い当たらない。人一人抱えて馬車に追いつくのは………。
「………ごめん、無理だ。それより、エル君も逃げるべきだよ」
「どうやって」
「グゥエールで。操縦、出来るんでしょ」
「まだわかりませんよ」
言いながらエル君はシートの後ろにある荷物を渡してくる。捨てろということだろう。そこにディートリヒ先輩を入れるつもりか。
果たしてその通りで、エル君はディートリヒ先輩をシートの後ろの空きスペースに詰め込んだ。そして、シートに座る。
「体格が違いすぎる。どうする」
「………ぶっつけ本番ですけれど、成功させるしかないですね」
そう言うとエル君は、シートの左右のコンソールを破壊してから、内側の
「直接術式を制御するつもり?」
「そうです」
両手に持った
「上にいるね」
いくらエル君が小さくても、二人は入れない。逃げるべきとは伝えたけど、逃げ出さないだろう。エル君はそういう目をしている。
「解析開始………一番根っこにあるのは………」
グゥエールの頭の上にいる僕に、エル君の呟く声が聞こえてくる。程なくして、グゥエールの指が動いた。魔力転換炉が唸りを上げ、グゥエールが立ち上がる。滑らかな動きではない。そのままぎこちない動作で歩き出し、その動きは一歩ごとに最適化されていく。
五分、また五分。グゥエールの動作確認がじっくりとされていく。外から見ている僕にさえ、グゥエールの腕が、胴体が、エル君の思うがままに動くようになっていくのがわかる。そして三十分ほどは経ったか。完全にエル君に掌握されたグゥエールは、恐ろしく滑らかな動きで走り出している。
「行きますよ、レイ」
グゥエールの頭に掴まる僕に、エル君の声が伝声管越しに聞こえる。
「魔獣を倒しに、って?」
「わかってるじゃないですか」
有無を言わさぬ、という雰囲気だ。もう、これは止められない。
なら、頭の上に僕が乗っていては邪魔だろう。グゥエールの動きは見違えた。しがみついていては僕も保たない。
「偵察するよ」
そう伝えると、僕はグゥエールを蹴ってから
グゥエールが滑らかに走り出す。僕も追いかけるが、すぐには追いつけないはず。それに、追いついた所で何ができるだろうか。
ただそれでも、エル君を置いて逃げるという選択肢は僕にはなかった。
エル君の操るグゥエールは、想定以上に速い。
ディートリヒ先輩が乗っていた時は
グゥエールが巨大魔獣に突撃する直前、巨大魔獣はあの竜巻………竜巻ブレスを放った。狙いはヘルヴィ先輩のトランドオーケス。
………どうにか直撃は避けたようだけど、倒れ込んでいる。魔獣は追撃として突撃するつもりらしい。アールカンバーが雷の
そこにグゥエールが飛びかかる。走り出した巨大魔獣はまだトランドオーケスを見ていたけど、接触する直前になって気がついたのか、顔をグゥエールに向けた。そしてその目に、グゥエールが手に持った剣が突き刺さった。