何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
ヤントゥネンには喝采が響いている。
中央通りでは、
僕らは、その通りから離れた喫茶店にいる。この場には、エドガー先輩とエル君………それにキッド君とアディちゃん、セラーティ先輩もいる。
「まったく、でたらめにも程がある………」
そう言ったエドガー先輩が溜息をついた。
それは僕も同感だった。
「グゥエールの操縦術式を一から構築し直して自分にリンクさせるなんて、無茶しすぎだよ」
鉄火場だからと僕も暴走していた気がするけれど、エル君のやった事をあらためて考えると目茶苦茶すぎる。
「ほらやっぱり
キッド君たちが言う。
「やっぱりとは何ですか。そのとおりですけど」
「僕はエル君の
エル君が僕を見る。何か言おうとしたのかもしれないけれど、その前にエドガー先輩がエル君に訊いた。
「………エルネスティ、もしあの時ディーが逃げなかったらどうするつもりだったんだ?」
「どうもしませんよ、あれは半ば勢い任せの行動でしたし。そのまま皆と一緒に馬車で逃げていたでしょうね」
エドガー先輩は苦々しい顔になった。
「我々………高等部の生存者は、このあと王都にて行われる叙勲式へ出ることになっている」
先輩の声は、晴れやかな調子ではない。
「ヤントゥネン守護騎士団からも代表が、おそらくハルハーゲン卿と何名かが出るだろう。師団級魔獣の討伐ともなれば国中、いや諸外国へ喧伝してもいいくらいの話だ。かなり大々的に式を執り行うらしい」
「そうですね、おめでとうございます………という割には表情が晴れないようですが?」
「この事件における赤い
その言葉を聞いても、エル君は落ち着いた様子だった。なぜそうなるのかも、理解できていそうだ。
「やはり、ですか。これが騎士団の一員か、正式に高等部の騎操士なら問題はなかったのでしょうけどね」
「おいおい、エルがいなけりゃヤバかったんだろ!?どうしてそこで評価されねーなんてことになるんだよ!」
キッド君が言いながら立ち上がるけど、セラーティが見ているのに気づいたキッド君はすぐに座り直した。
「落ち着きなさい。正騎士が活躍したのなら昇進や褒賞の話が出るわ。高等部の生徒なら騎士に取り立てることになるでしょうね………でも、今のエル君を同じように騎士にするわけにはいかないの」
「どうして?エル君、その辺の騎士よりよっぽど強いのに!?」
アディちゃんが疑問を投げかけるけど、僕は内心で無理もないと考えていた。
「騎士になる、ということは騎士団に入るということなのよ。飛び抜けて強いだけならなんとかなるのでしょうけど、十二歳の子供と一緒に働ける騎士は、多分いないでしょうね。組織に所属するということは、片方がいいと思っていてもままならないことなの」
「せめて成人していればやりようもあっただろうが………。それに仮にも正騎士たる騎士団を差し置いて十二歳の子供が殊勲賞などと言ってみろ、彼らの面子がズタボロになる。騎士の面子は国の面子だ。誰もそんな事は望まないよ」
セラーティ先輩とエドガー先輩の言葉に僕は頷く。それが一つ。それとは別に、僕はエル君がこのまま騎士になれても大きな問題が起きると考えている。
エル君の操縦に、
エル君は操縦席のサイズが合わないからあの
「なるほど。それで、先輩たちはその説得を頼まれたのですか?」
首を傾げて、微笑みを浮かべたまま訊くエル君。エドガー先輩とセラーティ先輩の顔が引きつったけど、エル君はそのまま言葉を続ける。
「さておき、僕としては
セラーティ先輩が頷く。
「そんなことはさせない。セラーティの名においてそれは保証するわ」
「ああ。それについてはハルハーゲン卿にも一言言い添えておこう」
エル君はそれでいいとばかりに頷いているけれど、キッド君とアディちゃんはまだ納得できてなさそうだ。
「いいのかよ、エル?」
「そうよ、そもそもエル君は騎士になって
「今回はいわば例外です。僕としても無理に報酬をたかるつもりはありませんよ。あ、でも一つだけ」
「何かしら?」
そこでエル君はまた僕を見た。
「レイのことはどうするんです?」
「え、僕?」
エドガー先輩とセラーティ先輩が頷いている。一方でエル君にちょっと呆れていた僕は、急に呼ばれたので思わず訊き返した。
「それについても、だな。レイ」
「あ、はい。エドガー先輩」
どうやら、この集まりはエル君のためだけのものではなかったらしい。
「私としては思う所もあるのだが、レイの功績も評価されることはないだろう」
「それはそうですよね。あまり貢献できませんでしたし」
「いや、それは………」
僕としては当然のことだと思う。僕が出来たのは、アールカンバーの右腕と
「………レイ君のことについては詳しく聞いていないのだけれど、彼は何をしたの」
「ああ………。私がレイを連れ出したのだ。力不足を補うために、な」
エドガー先輩は後悔しているような顔をして言った。
「連れ出したって、なんでだ?」
キッド君が言った。
「ええと、僕が説明します。僕、前に
「
「そうです、セラーティ先輩。その場では撤退したんですけれど、エドガー先輩がアールカンバーの右腕を使わせると言ってくれて」
エドガー先輩は右手を額に当てて黙り込んでいる。
「なるほど………だから、アールカンバーが撃っていた
「それだ、エルネスティ。レイ、あの時撃った魔法は、
「それは、そうかもしれませんけど」
確かに、
「あれのおかげで、
「そういうことなのね。そう、でも公にはできない………」
「しなくてもいいことでしょう。僕としては、エル君が無事に帰ってきてくれたのだから、それ以上は望みません」
「レイ………」
エドガー先輩が僕を見て呟く。
「気にしないでください、エドガー先輩。本来なら僕は、騎士団の前線拠点で待つべき立場でした。それを連れ出してくれたのはエドガー先輩なんですから」
僕はそう言いながら、エドガー先輩に笑いかけた。
それから、頭を下げる。
「エドガー先輩。エル君とディートリヒ先輩を助ける手伝いをさせてくれて、ありがとうございました」
「………ああ」
僕にとっては、その方が余程大事なことだった。