何にでも乗れる騎操士くん(予定)   作:黒髪赤目の男の娘これが大好き

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先生

幻晶騎士(シルエットナイト)って、みんな人型だよね」

 

僕はエル君に素朴な疑問をぶつけてみた。根本から改良するなら、ここから話すべきだと思ったからだ。

 

「確かに!ロボット好きの血は騒ぎますけど、少しくらい違う形があってもよさそうですよね」

 

「たぶん幻晶騎士(シルエットナイト)って、魔獣が大きくて強いなら人も大きくなればいい、って発想で作られたんじゃないかな」

 

「大きいのが相手なら大きい人型を、と。マクロスですか?」

 

「部分的にそう。でも十メートルもあるのに腕二本だけで全部の武器を使ってるのって、もったいない気がするよね」

 

僕の言葉にエル君が深く頷く。

 

「実際もったいないですよ!背中にマウントして隙あらば撃ちたいです」

 

「乗った側としてもそうなんだね。でも前例がないなら、制御系から作らないといけなかったりするかな」

 

「それは確実かと。でもそれだけする価値はありそうです」

 

「魔獣との戦いって、混戦も普通に起きるだろうしね」

 

こうして話すのはとても楽しい。同時に、僕は自分で思うよりもロボが好きなんだなとも考えたりする。

 

ところが、突然部屋の扉がノックされた。

 

ラウリさんが帰ってきたのかな、と扉を開けてみると。

 

「先生!」

 

そこにいたのはラウリさんと、先生だった。

 

「久々だな、レイ」

 

先生が僕に笑いかけた。

 

 

 

 

「表でかつての教え子に会ったかと思えば、レイ君の先生であったからのう。わしとしても話を聞きたくてな」

 

僕ら二人と、ラウリさんと先生で机を囲んでいる。

 

「あなたが、レイが言っていた先生ですか。元騎操士だそうですね」

 

「うん、そうだ。君はエチェバルリア校長のお孫さんの、エルネスティ君だね。私はエーヴァルト・シュミット。元騎操士で、今は孤児院の先生だ」

 

シュミット先生。僕に魔法と剣術を教えてくれた先生だ。同年代と比べてかなり勉強熱心だっただろう僕に合わせて教えてくれたのみならず、戦闘訓練までさせてくれた人だ。エル君のお父さんよりは年上で、茶色の髪には白が交じってきている。

 

「エーヴァルト君は怪我で引退したのだったか………」

 

ラウリさんが遠い目をして言った。

 

「そうですよ、校長。………私は魔獣との戦いで左腕を怪我してね。幻晶騎士(シルエットナイト)の操縦に差し支えるから、引退したんだ」

 

「シュミット孤児院は、先生の奥さんが経営しているんですよね」

 

「そうだ。もともとは私たちが個人的に始めたものだったのだがね。ありがたいことに、今は王国からの支援も得られているよ」

 

そう。これは僕も聞いていたのだ。緊張していたせいでフレメヴィーラ陛下に褒賞として提案してしまったのだけど。

 

「孤児を減らす、というのは治安の改善にも関わってくるものであろう。正しいことだとわしは思うよ」

 

「そう言っていただけると嬉しいですね。実際、私としてはレイをライヒアラに通わせることが出来たことも一つの誇りに思っていますよ」

 

その言葉を聞いて、僕は目を閉じる。ちょっと泣きそうだ。

 

「ふふ、僕もそのおかげでレイと出会えました」

 

「手紙で知ってはいましたが、こうして見ると安心できます。いい友達が出来たようでよかった」

 

「同感だよ」

 

ラウリさんと先生が僕らを見て微笑む。

 

僕もエル君も、十二歳として見てすら幼い容姿をしていることだ。きっと可愛く見えているに違いない。歳をとるとそうなりがちだ。

 

「ところで、エチェバルリア校長は何故二人を連れてカンカネンへいらしているのですか?」

 

先生はふと話を変えて、ラウリさんに訊いた。確かに、僕としても想定していなかったので先生に連絡したりもしていなかった。

 

「ふぅむ………君はレイ君の保護者だから話しておくか………。他言無用で頼みたいのだが、良いか?」

 

「ええ、わかりました」

 

「よし。君も陸皇事変のことは知っておろう」

 

「はい。野外演習の学生が遭遇して、高等部には死者も出たそうですね」

 

先生は顔をしかめている。きっと、僕のことも心配してくれていたのだろう。

 

「その陸皇亀(ベヘモス)に、エルが幻晶騎士(シルエットナイト)で立ち向かって多大な貢献をし、最終的に討伐したのだよ」

 

幻晶騎士(シルエットナイト)を!?まさか、それは現場の放棄された機体で………ということですか。だとして、エルネスティ君の体格でですか………」

 

先生はさすがに元騎操士で、理解が早い。

 

銀線神経(シルバーナーヴ)を通して直接制御をしたのだったな、エル?」

 

「ええ、そうですよ」

 

「それは………エルネスティ君はとんでもないですな。将来有望と言えます。では、レイの方は?」

 

「レイ君は、一度撤退して前線に再び参加した、高等部の幻晶騎士(シルエットナイト)に同乗したのだったか」

 

ラウリさんが僕に聞いたので、答える。

 

「はい。その幻晶騎士(シルエットナイト)の右腕を使わせてもらって、魔法を撃ちました」

 

「魔法を撃った?魔導兵装ではなく?」

 

「レイ君は、その幻晶騎士(シルエットナイト)が装備していなかった炎の戦術級魔法(オーバード・スペル)を撃ったのだよ。それと、既存の魔導兵装(シルエットアームズ)に類似しない強力な魔法も撃っておったそうだ。特に後者が、陸皇亀(ベヘモス)に大きな傷を与えたというのでな」

 

「レイまで!?しかも右腕だけ、となりますと………レイも銀線神経(シルバーナーヴ)ごしに制御したとでも?それに、戦術級魔法(オーバード・スペル)を自身で構築したと?」

 

「そうだね、レイ君?」

 

「ええ。頑張りました」

 

先生は額に指を当てて息を吐いた。

 

「これは………情報量が多いですね。ただ、表立って賞するには二人とも幼すぎる」

 

「そうだ。そこで、表沙汰にせず賞することとなったのだよ」

 

「ということは、エチェバルリア校長とエルネスティ君、レイの三人で陛下に謁見をしたということですか」

 

「その通り」

 

「なるほど、他言無用なわけがわかりました。レイ、謁見はどうだった」

 

先生にこうしてどうだったのかと聞かれると、謁見のときの尋常でない緊張が僕の中に戻ってくる気がする。

 

「………とっても、緊張しました………」

 

「ああ、もういいよ。頑張ったな、レイ。急な謁見も、陸皇事変でも」

 

先生はすぐに僕の頭を撫でてくれた。………久しぶりだ。僕が文字を覚えたとき、計算をこなしたとき、魔法を撃てたとき。褒めてくれたときのあの感覚。懐かしい。

 

気づくと、ラウリさんもエル君の頭に手が伸びている。エル君も黙って撫でられている。

 

そんな、束の間の時間の後。

 

皆でお茶を飲んで一息つくと、今度はエル君が話し出した。

 

「ところでエーヴァルトさん。元騎操士から見て、幻晶騎士(シルエットナイト)に改良してほしい所ってあったりしますか?」

幻晶騎士(シルエットナイト)の改良?エルネスティ君、鍛冶師を目指しているのかい」

 

「自分のための幻晶騎士(シルエットナイト)を作るのが夢なんです。作るなら最強の騎士を作りたい、というわけでして」

 

エル君は理由の一つを伏せて話している。さすがに、魔力転換炉(エーテルリアクター)の製法を知るために理想の幻晶騎士(シルエットナイト)を作るなんてことは言えないよね。とはいえ、この言葉も本音ではあるだろうけど。

 

「自分のための幻晶騎士(シルエットナイト)か………。君が直接制御で改良された騎士を動かしたら、凄いことになりそうだね」

 

「先生もそう思いますか?エル君、きっとすごいのを作りますよ。先生の案も欲しいです」

 

「おや、レイも関わるのか。そうだな………私としては、隙を潰せるものが欲しかったかな」

 

「隙、ですか?」

 

「そうだ。幻晶騎士(シルエットナイト)魔導兵装(シルエットアームズ)で遠くの敵を、剣で近くの敵を攻撃するだろう。その二つを持ち変えるタイミングは隙が多くてね」

 

僕とエル君は顔を見合わせる。これ、さっき話していたことだ。

 

「恥ずかしながら、私が怪我をしたときも魔導兵装(シルエットアームズ)を持っている時に魔獣に奇襲を受けたときだった」

 

「やっぱり、そうなんですね。そういう隙を潰せたら………」

 

「素早い持ち変えをできるようにするか、もしくはそれ以外でも………。奇襲に対応しやすくなれば、魔獣との戦いは今以上にやりやすくなるはずだ」

 

「なるほど………ありがとうございます。参考になりました」

 

エル君としてもわが意を得たり、といった感じだろう。実戦経験のある騎操士の意見は貴重だ。

 

まだまだ聞けることはありそうだと思ったのだけれど、先生はふと窓の外を見て言う。

 

「………おや、だいぶ日が傾いているな。皆さん、そろそろ私はお暇させていただきます」

 

「おお、そうか。機会があれば、また会おうぞ」

 

「ええ。エルネスティ君も、また」

 

「はい!」

 

立ち上がった先生は、つられて立ち上がった僕に近づいて、目線を合わせた。

 

「レイ。勉強熱心なのは昔からだが、休むことも忘れるなよ」

 

ぎくり。………確かに、寝食をおざなりにしたりもした事もあった気がする。

 

「あはは………。気を付けます」

 

「それならいい。………それでは、失礼します」

 

エル君も立ち上がった。ラウリさんは座ったまま先生の方を向いて、三人で先生を部屋から見送る。

 

………謁見はすごく緊張したけど、先生と久しぶりに会えてそれが和らいだ気もする。エル君が同郷であることが分かったけど、それもいいことだったかもしれない。

 

明日からも頑張れそうだ。

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