何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
ライヒアラ騎操士学園は休校になっている。
それらへの対応には当然時間が必要だったのだろう。既に一週間、休校は続いている。
僕はこの一週間、図書館にこもって自習したり、
今日もキッド君たちと三人で出かけていて、エル君にも会おうという話になった。
「エルくん、どこにいるかな?」
「レイはエルと会ってるんだよな」
「うん。エル君、家で缶詰状態だったけど………
「なら学園に行ってみるか!」
「さんせー!」
というわけで学園に向かった。昼下がりに学園の門前に到着すると、果たしてそこにはエル君の小さな後ろ姿があった。横にはバトソン君もいる。
「そら、見つけたぜ」
「エルくん確保ー!」
キッド君たちが駆け寄ってエル君を左右から挟み込む。なんなら両腕を掴まれて持ち上げられた結果、エル君の足は浮いている。
「いいなぁ、背が高いの………」
そこに近寄りながら、僕はぼやいた。
「三人とも、一体どうしたのですか?いきなり」
「ここならエルいるかなって」
「予想的中したからには捕まえないとね!」
キッド君たちの答えにエル君は溜息を吐きながら、足をぶらつかせた。そして、自分が何をしにきたか答える。
「………今、騎操士学科の工房で壊れた
「あ、レイくんの言った通りだ!じゃ、このまま工房まで行っちゃおう!」
「いやいや二人とも。さすがに離してあげて」
僕の助け舟でエル君が下ろされてから、僕ら五人は高等部の敷地へと歩いていった。
工房では
だんだん周りの人けは減ってゆき、僕らは
この残骸は見覚えがある。切り裂かれた胸部装甲。そして、各部に僅かに残った塗装の色は、赤。
「………グゥエール、だね」
「じゃあ、これがエルの乗った?」
「ええ。本当に派手に壊れたことで………さすがに修理は後回しにされたようですね」
「すっごいなぁ、どうやったらここまで壊せんの」
バトソン君が、呆れたように漏らした。
あらかた理由を把握している僕としても、こうして見ると言葉を無くす。
エル君とディートリヒ先輩、よく生きてたね。
そう思いながら周りを見ると、キッド君は目を見開き、強く手を握りしめている。それに、アディちゃんは不安げな顔で、涙さえ浮かべながらエル君の腕を掴んでいる。
きっと間近に見るこの惨状で実感したのだろう。エル君が死んでいてもおかしくなかった、ということを。
では当のエル君といえば。
「壊れた機体もまた、美しい………」
恍惚とした表情でグゥエールの残骸を見つめていた。
「そう、形あるものが崩れ、あとには残骸だけが残る、これが侘び寂びというもの。この漂う寂寥感、廃れた物が思い………ふつくしい………」
そのまま口から思考を漏らすエル君に、キッド君とアディちゃんが目を見合わせる。そしてすぐ攻撃に移った。
「!?いひゃいいひゃい、いひはりらにするんれふは!」
両側から頬をつねられたエル君が抗議している。
「いや、これは仕方ないだろエルぅ………」
「バトソン君に同意」
僕はバトソン君と二人でそれを見守った。
それから少しして。
つねられ続けた頬を両手で抑えながらキッド君たちに抗議しているエル君にキュートアグレッション的な何かを感じていると、怒鳴り声が聞こえてきた。
「オイ、どこのどいつだ!こんなとこではしゃいでやがるガキは!」
作業の音で騒がしいのに、よく通る声だ。そう思って見てみると、声の主はひときわ威圧感のあるドワーフの先輩だった。全体的に筋肉がついた太い体が風格を持たせている。ひょっとしてさっきから時々呼ばれていた“親方”さんかな。
「なんだぁ?銀色坊主じゃねぇか。まった入り込んでやがるのか、おめえもホント好きだなおい。あんま作業の邪魔すんじゃねぇぞ」
エル君の知り合いらしい。まあ、あれだけ入り浸っていたら顔見知りには当然なるだろうね。
そう思っていると、後ろにもう一人誰かいることに気づく。顔色といい目の下の隈といい、どう見ても元気がない。でも、顔に見覚えがある。
「え、えーと………ディートリヒ………先輩?ですよね?いったい何があったのですか?」
エル君の声も自信なさげだ。ディートリヒ先輩、いわゆるPTSDってやつなんじゃ………。
「………ああ、エルネスティか。ふ、ふふ………少し………そう、少し、ちょっとだ。最近よく悪夢を見るんだよ………医務室の悪魔が追いかけてくる………。おかげで最近、寝不足でね。気を抜くと、奴が、く、やつが、おぞましい声で、し、しなをつくってぐぶべっ」
何か違うものに取りつかれていた。え、何医務室の悪魔って。どう対処するか考える間もなく、親方さんがディートリヒ先輩にチョップを叩き込んだ。
ディートリヒ先輩は少し悶絶していたけど、また口を開くと正気に戻っていた。
「ハッ、私は今どこへ………。うぉっほん!まあそれはいい。で、エルネスティがいるということは君も説明に呼ばれたのか。それなら手間が省けそうだね」
でも、何か勘違いはしている。エル君、多分ただ
「ああ?坊主が何を説明するんだ?」
「何って、グゥエールが壊れた原因を知りたいのだろう?だからその“原因”を呼んだんじゃないのかい?」
親方さんはその言葉でエル君とディートリヒ先輩を交互に見たけど、やがて意味を理解したらしい。
「待て、ディー。それだと坊主が原因でグゥエールが壊れたように聞こえるぞ」
「えっ?その通りじゃないか………。もしかして知らずに呼んだのかい?」
「いや、そもそも呼び出してすらいねぇ。ここに勝手に居やがっただけだ」
エル君、親方さん、ディートリヒ先輩。三人が首をひねっている一方で僕は状況を理解した。
趣味の一環でたまたまいたエル君と、グゥエールが今のように壊れた原因を知りたくてディートリヒ先輩を呼んだ親方さん。そういう状況だね。
ひとり頷いていると、ディートリヒ先輩も状況を理解して言った。
「あぁ、これはひょっとして非常に余計なことを口走ったのかね?」
「見事にその通りだと思いますよ」
エル君が同意する。実際その通りなのだろう、親方さんの視線が鋭いものにかわっている。
「まあ、何でもいいんだがよ。この際、洗いざらい説明してもらおうか」
有無を言わせぬ言葉、とはまさにこのことだった。