何にでも乗れる騎操士くん(予定)   作:黒髪赤目の男の娘これが大好き

28 / 44
革新的プレゼンテーション

僕らは、工房の一角にある黒板と椅子が並んだ部屋に移動した。たぶん打ち合わせに使われる場所なんだろう。

 

「ところでよ、黒いの」

 

エル君が黒板に図を描いている間に、親方さんが僕に話しかけてきた。

 

「あ、はい。何でしょうか、先輩」

 

「お前、訳知り顔で銀色坊主の話を聞いてたじゃねぇか。あいつの同類か?ってか、お前は誰なんだ?」

 

「あ、自己紹介してなかったですよね。僕はレイ・カルザス。エル君の友達ですよ。先輩は何ていうんですか」

 

「俺か?俺はダーヴィド・ヘプケンだ。鍛冶師科の取りまとめをやってる」

 

「やっぱり親方さんだったんですね。にしても、エル君の同類ですか………僕はエル君ほど実践面の技術はないんですよね」

 

「発想は共有できてる、ってか?」

 

「まあ………そうかもしれないです」

 

「なら同類扱いでいいな」

 

ちょっとひどい気もするけれど、間違ってはいないかもしれない。

 

そう思っていると、エル君が黒板に一通り描き終えたのか、手を叩いた。

 

「では皆さん。先程は腕と言いましたが、実際に僕が求めているのはもっと単純な構造の………可動機構を持つ固定器具のようなものです」

 

説明しながらエル君が指し示した図は、背中についた簡易的な腕が魔導兵装(シルエットアームズ)を持っているものだ。肩越しに魔導兵装(シルエットアームズ)を構えている図と、たたまれている図が描かれている。エル君、割と絵は上手いのかな。

 

「この腕………補助腕(サブアーム)に僕が求めるのは、魔導兵装(シルエットアームズ)を使用しない場合に収納すること、それから発射状態に移行する機能です。火器管制システムにはこの補助腕(サブアーム)の収納と展開を制御する魔法術式を格納させます。このように機能を絞り複雑な動作をさせないことにすれば、騎操士(ナイトランナー)に負担もかけず自動で処理できるはずです」

 

プレゼンテーションも上手い。このあたりは(前世で)取った杵柄というやつだろう。

 

「さて、照準はどうするか?実はこれこそが火器管制システムのメインの機能なんです。幻像投影機(ホロモニター)照準線(レティクル)を表示させて、この照準と魔導兵装(シルエットアームズ)を連動させることで自動的に発射方向の制御を行うんです」

 

これが火器管制システム(FCS)補助腕(サブアーム)を合わせた、背面武装(バックウェポン)の概念だ。周りで説明を聞いていた鍛冶師の人たちは明らかに関心を強めている。

 

エル君はそれを見て一度頷き、説明を続ける。

 

「火器管制システムの本体は魔導演算機(マギウスエンジン)の余り領域に追加します。あ、もちろんここを作るのは僕がやります」

 

と言いながら僕にちらりと目配せするエル君。僕も手伝えってことなのかもしれない。

 

「そしてこの機能を使用するときに騎操士に求められるのは、照準をうまくつけること。これだけになります。負担の増加は少ないので、訓練しだいで皆使える機能になるはずです。………と、以上が提案の概要です。具体的な構造については後々詰めることになると思いますが………いかがでしょうか?」

 

小首をかしげて問うエル君。エル君、仕草が体の見た目に合いすぎじゃないだろうか。僕も人のことは言えない気もするけど。

 

鍛冶師の人たちはみんな考え込んでいる。前例のない提案を具体的にポンと出されたからかな。彼らもライヒアラの高等部の生徒、つまり学生だ。幻晶騎士(シルエットナイト)について日々実践で学んでいるときにこんな斬新な概念を持ち込まれたら、困惑するのも当然か。

 

エル君は一度、二度と部屋を見渡してから、もう一度口を開いた。

 

幻晶騎士(シルエットナイト)は人の姿を模してはいれど、つまるところ道具であり、機械です。ただやみくもに人の姿に拘泥する必要はありません………求める機能があるなら、それを実現するにふさわしい姿をとってもよいとは思いませんか?」

 

これは誘惑だ。鍛冶師、いやメカニックに対する、とんでもなく魅力的な………。さぞかし効いたのだろう、あきらかに部屋の空気が変わっている。

 

ダーヴィド先輩はひとつ大きなため息をつくと、エル君に問う。

 

「まったくおめぇ、何もんだ?綱型(ストランド・タイプ)といい背面武装(バックウェポン)といい、どうしてまぁこんな見たことも聞いたこともねぇもんを次から次へ作ろうとしやがるんだか」

 

この問いにエル君はちょっとすねたような顔になって答えた。

 

「何をおっしゃいますか。“無いから創る”のです。あったら創りません」

 

うんうん、と僕は頷いてしまう。情熱って、そういうものかもしれない。

 

「クク、ははははっ!こいつぁ一本取られたな。そうだ、その通りじゃねえか!常識なんざクソ喰らえってか。そういうのは嫌いじゃねぇ。悔しいが坊主の話は理に適ってる。こちとら幻晶騎士(シルエットナイト)を改良するのが本職の鍛冶師さまだ。おめぇの提案、乗った!」

 

ダーヴィド先輩の言葉は、ほかの鍛冶師の人も同感なようだ。中には思いついたことがあるのか、周りの仲間と話し合いだした人もいる。

 

プレゼン大成功、って感じだね。

 

 

 

 

僕らが工房から出たころには、もう日が暮れていた。

 

今は僕とエル君、キッド君にアディちゃん、バトソン君の五人で、ライヒアラ学園街を歩いている。

 

「なあエル。正直なところ今日の話を全部分かったわけじゃないんだけどよ。あれをやったら幻晶騎士(シルエットナイト)は強くなるんだろ?」

 

「はい、もちろん!」

 

キッド君の問いかけにエル君は力強く答えている。キッド君とアディちゃんからすると、やはり今日のエル君のプレゼンは急すぎたのだろう。

 

キッド君は一瞬言いよどんで、言葉を続ける。

 

「………その、だったらよ。エルって、それで………幻晶騎士(シルエットナイト)を強化してまた魔獣と戦いに行く、んだよな?」

 

これは当然の問いかけだな、と思う。キッド君もアディちゃんも、あのグゥエールの残骸を見てエル君がどれだけ危険な目にあったか実感したはず。

 

ところがエル君は笑顔のまま固まっている。さては作ることだけ考えて忘れてたな。

 

「………そ、そうですね。せっかく強力な幻晶騎士(シルエットナイト)を作れるんですしね。それにほら、騎士や騎操士になれば魔獣との戦闘は避けえないわけですし」

 

「そうだよな、エルはやっぱ戦うよな。………もう、戦えるんだよな」

 

キッド君は悩んでいる。エル君が陸皇事変のとき、一人で飛び出していったこと。それが原因だろう。

 

たぶんこれは、いつものように後ろからエル君に抱きついたアディちゃんにも当てはまる。

 

「エールーくん!あの約束、忘れてないでしょうね!」

 

「え?えー、ええ、あ、二人にも幻晶騎士(シルエットナイト)の戦い方を教えるのでしたよね」

 

「そうよ!私たちだってやればできるの!だーめ、エル君一人で戦うのなんてもう絶対許さないからね」

 

エル君は、エドガー先輩たちが撤退してからヤントゥネン騎士団が来るまでを一人で戦っていた。僕もそのことを思うと心苦しくなる。エル君がただの子供じゃないとわかっても、なおのこと。

 

「アディ?どうしたのですか。心配いりませんよ。ちゃんとそのための準備も整えてあ………そうだ!それも一緒にお願いしてみればいいのですよね」

 

何やら思いついたらしい。僕はさっきから思っていたことをエル君に言った。

 

「………エル君。僕にも幻晶騎士(シルエットナイト)の戦い方、教えてよ」

 

「レイもですか?………一人での操縦は、したことないですもんね」

 

「うん。僕もエル君の力になりたいし」

 

エル君はきょとんとしながら僕に答える。

 

「あの時も力にはなってくれたと思うのですけどね」

 

「あの時?エドガー先輩の機体に同乗して戻った時かな」

 

僕が言うと、アディちゃんがぐいと僕の方に顔を向けた。

 

「それよ!レイくんもずいぶん無茶したわよね!?」

 

「そうかも………」

 

言い訳のしようもない。そう思っていると、キッド君にも肩をつかまれる。

 

「そうだぜ。レイって一度は幻晶騎士(シルエットナイト)なしで陸皇亀(ベヘモス)と戦おうとしたとか言ってなかったか?俺たちからすると、レイだって心配だったんだからな」

 

「う、うん。ごめん」

 

こればかりは仕方ない。僕が小さくなっている一方で、エル君は困ったように笑っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。