何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
僕らは、工房の一角にある黒板と椅子が並んだ部屋に移動した。たぶん打ち合わせに使われる場所なんだろう。
「ところでよ、黒いの」
エル君が黒板に図を描いている間に、親方さんが僕に話しかけてきた。
「あ、はい。何でしょうか、先輩」
「お前、訳知り顔で銀色坊主の話を聞いてたじゃねぇか。あいつの同類か?ってか、お前は誰なんだ?」
「あ、自己紹介してなかったですよね。僕はレイ・カルザス。エル君の友達ですよ。先輩は何ていうんですか」
「俺か?俺はダーヴィド・ヘプケンだ。鍛冶師科の取りまとめをやってる」
「やっぱり親方さんだったんですね。にしても、エル君の同類ですか………僕はエル君ほど実践面の技術はないんですよね」
「発想は共有できてる、ってか?」
「まあ………そうかもしれないです」
「なら同類扱いでいいな」
ちょっとひどい気もするけれど、間違ってはいないかもしれない。
そう思っていると、エル君が黒板に一通り描き終えたのか、手を叩いた。
「では皆さん。先程は腕と言いましたが、実際に僕が求めているのはもっと単純な構造の………可動機構を持つ固定器具のようなものです」
説明しながらエル君が指し示した図は、背中についた簡易的な腕が
「この腕………
プレゼンテーションも上手い。このあたりは
「さて、照準はどうするか?実はこれこそが火器管制システムのメインの機能なんです。
これが
エル君はそれを見て一度頷き、説明を続ける。
「火器管制システムの本体は
と言いながら僕にちらりと目配せするエル君。僕も手伝えってことなのかもしれない。
「そしてこの機能を使用するときに騎操士に求められるのは、照準をうまくつけること。これだけになります。負担の増加は少ないので、訓練しだいで皆使える機能になるはずです。………と、以上が提案の概要です。具体的な構造については後々詰めることになると思いますが………いかがでしょうか?」
小首をかしげて問うエル君。エル君、仕草が体の見た目に合いすぎじゃないだろうか。僕も人のことは言えない気もするけど。
鍛冶師の人たちはみんな考え込んでいる。前例のない提案を具体的にポンと出されたからかな。彼らもライヒアラの高等部の生徒、つまり学生だ。
エル君は一度、二度と部屋を見渡してから、もう一度口を開いた。
「
これは誘惑だ。鍛冶師、いやメカニックに対する、とんでもなく魅力的な………。さぞかし効いたのだろう、あきらかに部屋の空気が変わっている。
ダーヴィド先輩はひとつ大きなため息をつくと、エル君に問う。
「まったくおめぇ、何もんだ?
この問いにエル君はちょっとすねたような顔になって答えた。
「何をおっしゃいますか。“無いから創る”のです。あったら創りません」
うんうん、と僕は頷いてしまう。情熱って、そういうものかもしれない。
「クク、ははははっ!こいつぁ一本取られたな。そうだ、その通りじゃねえか!常識なんざクソ喰らえってか。そういうのは嫌いじゃねぇ。悔しいが坊主の話は理に適ってる。こちとら
ダーヴィド先輩の言葉は、ほかの鍛冶師の人も同感なようだ。中には思いついたことがあるのか、周りの仲間と話し合いだした人もいる。
プレゼン大成功、って感じだね。
僕らが工房から出たころには、もう日が暮れていた。
今は僕とエル君、キッド君にアディちゃん、バトソン君の五人で、ライヒアラ学園街を歩いている。
「なあエル。正直なところ今日の話を全部分かったわけじゃないんだけどよ。あれをやったら
「はい、もちろん!」
キッド君の問いかけにエル君は力強く答えている。キッド君とアディちゃんからすると、やはり今日のエル君のプレゼンは急すぎたのだろう。
キッド君は一瞬言いよどんで、言葉を続ける。
「………その、だったらよ。エルって、それで………
これは当然の問いかけだな、と思う。キッド君もアディちゃんも、あのグゥエールの残骸を見てエル君がどれだけ危険な目にあったか実感したはず。
ところがエル君は笑顔のまま固まっている。さては作ることだけ考えて忘れてたな。
「………そ、そうですね。せっかく強力な
「そうだよな、エルはやっぱ戦うよな。………もう、戦えるんだよな」
キッド君は悩んでいる。エル君が陸皇事変のとき、一人で飛び出していったこと。それが原因だろう。
たぶんこれは、いつものように後ろからエル君に抱きついたアディちゃんにも当てはまる。
「エールーくん!あの約束、忘れてないでしょうね!」
「え?えー、ええ、あ、二人にも
「そうよ!私たちだってやればできるの!だーめ、エル君一人で戦うのなんてもう絶対許さないからね」
エル君は、エドガー先輩たちが撤退してからヤントゥネン騎士団が来るまでを一人で戦っていた。僕もそのことを思うと心苦しくなる。エル君がただの子供じゃないとわかっても、なおのこと。
「アディ?どうしたのですか。心配いりませんよ。ちゃんとそのための準備も整えてあ………そうだ!それも一緒にお願いしてみればいいのですよね」
何やら思いついたらしい。僕はさっきから思っていたことをエル君に言った。
「………エル君。僕にも
「レイもですか?………一人での操縦は、したことないですもんね」
「うん。僕もエル君の力になりたいし」
エル君はきょとんとしながら僕に答える。
「あの時も力にはなってくれたと思うのですけどね」
「あの時?エドガー先輩の機体に同乗して戻った時かな」
僕が言うと、アディちゃんがぐいと僕の方に顔を向けた。
「それよ!レイくんもずいぶん無茶したわよね!?」
「そうかも………」
言い訳のしようもない。そう思っていると、キッド君にも肩をつかまれる。
「そうだぜ。レイって一度は
「う、うん。ごめん」
こればかりは仕方ない。僕が小さくなっている一方で、エル君は困ったように笑っていた。