何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
ノックの音がした。
「ん?」
僕がいるのは、学生寮の部屋だ。今日は休日で、日は傾いてきている時間。
ドアを開けてみると、エル君がいた。
「エル君、どうしたの」
「少し話したいことがありまして。今いいですか?」
「いいよ」
僕はエル君を部屋に招き入れて、椅子を勧めた。僕はベッドに座る。
「で、話したい事って?」
「はい、
その言葉に工房でのプレゼンを思い出す。手伝う時がきた、ということかな。
「ああ、エル君が術式関連をやってるんだよね。仕様っていうと?」
「今は手動照準の術式を組んでいるのですけど、どんなものかは把握してますよね?」
「うん、してるよ。ちなみにその照準の合わせ方って、どんな感じ?」
プレゼンで大まかなコンセプトは知っているけど、今エル君が構築しているのはどんな感じだろうか。
「
「なるほど、
だから頭部に連動させれば、照準を合わせる動きを他の動きと同時にやりやすくなる、ということになる。
頭ごと回して、視界の中心を合わせる感じか。そういえば、と前世での体験を思いだす。
「バトリング野郎とか、そんな感じだったなぁ………」
「なんと、レイも体験していたのですか!確かに、ああいうVRはイメージが近いですね」
「というかATの視界がだいたい今回のFCSみたいな感じだもんね」
「そうですそうです!
「それは僕も同意するよ。照準の形は考えてあるんだよね?」
「ありますよ!これ見てください!」
エル君が椅子から立ってずいっと寄ってくる。ベッドに腰かけた僕の横に座ると、携えていたノートを開いて見せてくれた。
「ふむふむ………基本はやっぱり、十字線だよね」
表示する照準の案はいろいろとあるけど、十字線タイプが多い。
「ですね。ただ、T字型もいいかと思ってます」
中には精密照準のことを考えてか、細かい目盛りになっているようなものもある。
「うーん………目盛りを刻むにしても、あまり図形が複雑だと邪魔になったりするかもしれないよ」
「ああ、確かに。視界の邪魔になるのも良くないですね」
「それに、単なる視線連動の照準システムだと、頭部から離れたり角度が急になると照準がずれそうだよね」
目盛りを精密にしても、向きを変えただけでずれるのでは仕方がない。
「そう、それです。僕としては頭の角度を検知して、照準に補正を入れられたらと思うのですが………」
「それって、目標との距離も考慮に入れないと補正しきれない気がするね」
「そうなのですよね………測距儀まで作るとなると、システムだけではダメですし………」
照準システムを考えてみると、これはなかなか複雑な話になる。エル君、好きなものを作ってるだけあって凝り性になってしまっているのかもしれない。
「いや、これはあまり複雑にしても仕方ないかな。魔獣相手にいちいち補正する余裕があるかわからないし、シンプルに構築する方がいいかも?」
「………うーん、確かにそうかもしれませんね。いざ考えてみると、取捨選択がなかなか難しいです」
「術式構築の方はどう?手伝いとか要る?」
「ああ、基本的に構築は問題ないのですよ。ただ、こういうのは自分だけで作ってしまうのも問題かと思いまして」
術式構築は問題ない、ね。エル君ほど術式に精通していると、むしろ複数人で構築する方が効率が悪いのかもしれない。やり方にも個人差があるだろうし。
「だからか。うん、視線連動型っていう方向性は間違ってないと思うよ。で、照準は複雑じゃない図形のほうがいいと思う。たとえばこの、戦闘機の光像照準みたいなやつ」
僕が指さしたのは、十字線と大まかな目盛り、円形で構築されたもの。視界の邪魔になりにくいもの、と考えるとまさに戦闘機の照準の形はうってつけだと思う。
「確かに。
「まずはシンプルめに実装する方がいいと思うよ。補正は………射撃試験をしてからまた考えてみたらいいかと」
「そうですね、そうしましょう。まずは作ってみる!試作機ってそういうものですし!」
「そうだね。そういえば、試作機は名前とかつくのかな?」
僕がそう言うと、エル君はハッとした表情になる。
「………名前!そうですね名前は必要ですよねぇ!どうしましょうか………!」
「まあ、ゆっくり考えていけばいいんじゃないかな」
大興奮だ。でも、エル君が名前を付けていいことになるのかは確かじゃないな。………これ、今言わない方がよかったかもしれない。
「それにしても、まさかこんなに早く新型機造りが始まっちゃうとはね………」
「親方たちのやる気に火が付きましたからね。わくわくします………どんな
「火をつけたのはエル君でしょ。
新型機造りやFCS、背面武装のことはカンカネンに行った日から何度か話してはいたけど、もっと先になると思っていた。
「ここしかないかと思いまして」
「まあ、いい機会ではあったかもね………。そういえば、プレゼンした日の帰りにもう一つ思いついたことがあったみたいだけど」
「ああ、
エル君はノートのページをめくって、別の図を見せてくれる。
「この図………小型化した
「そうです!
「ここまで小さくなると………パワードスーツっぽいね」
「まさに!バイクもつけられたらいいと思いませんか!?」
「青いナイフに~って、バイクの概念すらないんだけど、この世界」
「おやおや………レイも好きですねぇ」
「何その口調。で、このパワードスーツってどんな感じ?」
「フフフ………これは
「ということは、
「ええ。その代わり、製造や整備は簡単になっているはずです。これで
確かに、これなら訓練になるかもしれない。
「直接制御の訓練にもなりそうだね」
「なるかと思います」
「だよね。うん、僕もこれは動かしてみたいな」
「そうでしょう!このパワードスーツ、
「仕事が早いね、エル君………。疲れたりしてない?」
不眠不休で動いているんじゃないかと思うほどの仕事ぶりだ。
「大丈夫です、ちゃんと寝てますよ。寝ないと力は発揮できませんし」
「そうなの?そういえば、野外演習の夜も寝つきよかったね」
「寝られるときに寝ておくのは必須スキルですし」
「それも前世の経験かな?」
「そうですねぇ、寝る間も惜しまないといけない時は割とありましたよ」
「やっぱり大変な仕事なんだね、プログラマーって………今回はそこまで急ぐ必要もないと思うよ」
「いやぁ、そうなんですけれど。楽しくなってくると忘れそうになりますね」
「まあ、無理もないね」
ロボ好きがロボットを自分の手で作り上げる。それはまあ楽しくもなるよね。
「今日も、もう休んだら?」
「ええ!今日も助かりました。二人で考えた方が考えもまとまりますね」
「うん、また相談してね」
相談することでエル君の助けになるなら、僕も嬉しい。
「では!」
「またね、エル君」
エル君は鼻歌を歌いながら部屋を出て行った。その後姿を見てみるとスキップまでしている。
………たぶん、まだ休まないんだろうなぁ。そう思いながら、僕もなんとなくテンションが上がっている。気づけば思いだした歌を口ずさんでいた。
「………青いナイフにー、集めたムーンラーイト、行き場無くしたお前を~」