何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
全速で、目前の
そのまま左手に持った木剣を振り抜くけど、急激な右への加速で避けられてしまう。僕は減速せずに走り抜けた。
自分の
僕は右手に持った
想定通りにエル君は小気味良く連続でステップを踏んで避けた。その間に僕は接近している。木剣を振り上げかけて、やめる。エル君が木剣で突いてきたからだ。
右へステップを踏みながら左回転、エル君に正面を向けたまま横を取る。もう一度
僕は左へ右へとジグザグに回避しつつまた距離を詰め、勢いのまま突きを繰り出す。しかしエル君はまるで後ろに目がついているかの如く、左に側転して避けてしまった。
それどころかそのまま右手に持った木剣を振り回してきた。僕は斜めにした木剣で受け流す。
僕は後ろにステップした。さらに左右にステップ。その動きでエル君の
さらにエル君の追撃がくる。木剣の振り下ろしを再び右へ回り込みで避ける。そのまま左から横薙ぎにしても、右側転で飛び越えられてしまう。
勢いをつけて振り抜いた隙を消すために、エル君に対して半身に構えたまま
ところがエル君はジャンプして、勢いを乗せた縦斬りにつなげてきた。
僕は
そして左足を地面に突き立てるようにして、全身を回しながら剣で左へ薙ぎ払った。
素早く着地していたエル君の木剣と、僕の振った木剣がぶつかる。
そのまま、互いの木剣が折れた。
「「あっ」」
とりあえず距離を取る。折れた木剣の刃先を見ると、地面に斜めに刺さっていた。
僕はエル君に話しかける。
「………とりあえず、このあたりにしとこうか」
「そうですね」
僕らは木剣の刃先を拾ってから、
「エル、レイ、大丈夫か?」
模擬戦を見ていたキッド君が声をかけてきた。
「うん、大丈夫。木剣が折れただけだしね」
「ならいいんだけどよ。にしても、よくあんなビュンビュンと動けるよなー」
キッド君が言うけど、僕からするとあまり差はないように思う。僕は前提として、常日頃から術式について試行錯誤していたこと、そして
「キッド君とアディちゃんだって、普通に動けてるよね?エル君もさすがに、二対一だとつらいでしょ」
「それはそうですよ。キッドもアディもだいぶ上達していますしね」
エル君の誉め言葉に、アディちゃんは少しむくれながら応える。
「ありがと。でもエル君たち、さっきはとても楽しそうだったよね………」
そういうことか。楽しそうだったね、と言われると実際その通りだ。
「まあ、うん。自分のしたい動きがああも実現できるとね」
「それはもう!いくつか追加したいものも浮かびましたとも!」
エル君は何か思いついたらしい。続きを促してみる。
「ほほう、それは?」
「例えばワイヤーアンカーとか、あったらいいと思いませんか!?」
「確かに。
キッド君が興味を持ったのか、質問してきた。
「それってどういうのになるんだ?」
「壁とかに向けて何かしらの方法で打ちだして、ひっかけた後に巻き取る感じかな。
「ええ、まさにそんな感じです」
「へぇ、面白そうじゃねぇか」
キッド君は関心を持ったようだ。アディちゃんも多少は関心をひかれたようだけど。
「むむむ、最近露骨にレイくんがエルくん側に………」
口から出たのは不満というか嫉妬というか。まあ、確かに最近はエル君とメカトークになりがちではある。
「あはは………」
僕は苦笑いする。エル君とアディちゃん、いまだに恋愛関係になりそうな感じではない。と言っても僕らはまだ十二歳なのだから、エル君はともかくアディちゃんが感情を自覚していないのはおかしい話でもない。それはそれとしてアディちゃん、エル君に対する好意というか、そういうものは確かに持っていそうなんだよね。
結果として、僕とエル君が
「とりあえず、
僕はみんなに提案した。キッド君たちの
三人とも頷いて、
工房で
「………ふー、やっぱり降りると深呼吸したくなるね」
「これも醍醐味ですよ」
「エルは相変わらずだなぁ。そう思わねーか、バトソン?」
同じように降りたキッド君が、近くにいたバトソン君に話しかける。
「まあ………って、木剣折れてるじゃん。何したんだよ?」
「ああ、ちょっと模擬戦で打ち合ったときにね」
「どんな勢いで打ち合ったんだよ………」
バトソン君のぼやきにはアディちゃんが答えた。
「それはもうすんごい勢いだったわよ!ぐいん!って回りながらずがん!って!」
「………あー、まあ跳ね回りながら戦ったらそうなんのか?」
「ごめんね。木剣もただじゃないのに」
「
エル君、こういうところはきっちりしている。まあ、整備する人に嫌われるのも良くないしね。
「まぁ、そんな壊れてもいないしな。任された」
「いつもありがと」
「ありがとな」
アディちゃんとキッド君も続けて礼を言った。アディちゃんはしれっとエル君の片腕に抱き着いている。
僕らはそのままバトソン君と別れて、四人で工房を歩いた。
今、ダーヴィド先輩たちが造り上げている試作機の前も通る。その骨格についた
「だいぶ形になってきてるね」
自然と立ち止まり、僕は言った。
「ですね!ふふっ♪」
その試作機、エル君のアイデアが盛り込まれたそれを見て、エル君は満面の笑みを浮かべている。
つられて、僕も自分が笑顔になるのを感じる。すると、頭を撫でられた。
これは案の定、アディちゃんだ。左手でエル君、右手で僕の頭に手を伸ばして撫でてきている。
「まったくもう、本当に
言いながらも、その声はさっきより上機嫌だ。
そんな光景を立ち止まって見ていたキッド君は僕らに向かって少し大きめの声で言った。
「なあ、腹減ってねぇか?何か食べに行こうぜー」
「あ、うん。そうだね」
「行きましょうか」
「さんせーい!」
そうして、僕らは食堂へと足を向けた。
歩いていると僕のお腹からくるる、と音がしてきた。どうやら僕も、空腹に自覚がなかったようだ。
工房の外の空気は、以前よりも涼しく感じるようになってきている。