何にでも乗れる騎操士くん(予定)   作:黒髪赤目の男の娘これが大好き

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動作試験

「うん、おいしー。やっぱりマンダリーナのジャムがいいわよね!」

 

「俺はプミラのジャムが好きだけどな」

 

「僕は甘ければ何でも好きですよ!」

 

「右に同じ」

 

僕ら四人は幻晶甲冑(シルエットギア)を着たまま学園内を歩いている。片手には紙に包まれたパンケーキ。さっき食堂で買ってきたものだ。

 

幻晶甲冑(シルエットギア)で訓練を続けて、やがて三か月になる。僕らは幻晶甲冑(シルエットギア)を、ある程度の日常生活にも使うようになった。

 

幻晶甲冑(シルエットギア)を動かすには自分の魔力を使うので、魔力の訓練にもなるのだ。イメージ的には筋肉のトレーニングと一緒で、負荷をかけて回復させる繰り返し。まあ、かつてのエル君式魔力増強ランニングのようなものだ。

 

雑談しながら歩いていると、そこにあまり顔を知らない先輩が後ろから声をかけてきた。

 

彼曰く、これから試作機の動作試験をするらしい。

 

「それはぜひ、見学しなければ!」

 

そういうことになった。実際僕としても、見ないという選択肢はない。

 

エル君は一刻も早く行きたかったらしく、知らせてくれた先輩を幻晶甲冑(シルエットギア)で担ぎ上げる。幻晶甲冑(シルエットギア)で走る方が速いのは確かだけど。

 

「それは危なくないかな!?」

 

もう走り出しているエル君に追いすがりながら叫ぶ。とはいえエル君の操縦は安定していて、担ぎ上げられている先輩が悲鳴を上げている以外の心配はなさそうだ。

 

キッド君とアディちゃんもついてきている。

 

結局、そう時間もたたずに訓練場にたどり着いた。僕らの周りでは多くの生徒が機材や補修道具を運んでいる。

 

そして訓練場の真ん中に佇むのが、外装のついていない幻晶騎士(シルエットナイト)。しっかりと二本の足で立っている。もう歩行の試験は終えているのかもしれない。

 

「ちゃんと動いたのですね。歩いただけで爆発、なんてことにならなくてよかったです」

 

エル君の言葉に、キッド君がつっこむ。

 

「心配するところ根本的すぎるだろそれ………本当に大丈夫なんだろうな?やばくなったら逃げられるようにこいつに乗ったままにしておくか」

 

その心配もまあ無理はないね。あの右腕の試験のときは本当に肝が冷えたし。

 

とはいえ、さすがに心配はないだろうと思う。歩行試験の段階で、たぶん固定が外れたり骨格が軋んだりしないかというところは確かめていると思う。観客席には大きな盾が並んでいる。あれで安全を確保したのだろう。

 

僕は幻晶甲冑(シルエットギア)を降りた。エル君について行って、ダーヴィド先輩の方へ向かう。

 

「おう、きたか坊主ども。んじゃあ、おっぱじめるとするか」

 

「よろしくお願いします」

 

歩行試験が終わっているということは、次の試験は補助腕(サブアーム)火器管制システム(FCS)で成り立つ、背面武装(バックウェポン)の試験だろう。僕もエル君と仕様について話したり、実際に組み上げ前の単体での試験を見たりした身だ。実際に機能するのかとても気になる。

 

「見た感じに問題なさそうだが………こいつの完成度はどんなもんだ」

 

「組み上げ前の時点では連動、照準機能ともに思い通り動作しましたよ。残る問題は照準精度と配置による最適化でしょうか」

 

「照準………精度ってなぁ、なんだ?」

 

「ああ、えっと………照準機能を用いて、どれくらい正確に的を狙えるか………かな?」

 

「ほほう、そいつぁ大事だな。とにもかくにもまずは動かしてからの話だがよ」

 

ダーヴィド先輩の横に並びながらエル君が答える。

 

キッド君とアディちゃんは結局、幻晶甲冑(シルエットギア)を着たままで見ることにしたようだ。僕らの後ろにいるけど、更に後ろの人の邪魔になったりしないだろうか。

 

「………おうし!それじゃあ魔導兵装(シルエットアームズ)の取り付けから始めんぞ!」

 

ダーヴィド先輩が合図を出すと、魔導兵装(シルエットアームズ)を持った普通の訓練機、サロドレアが試作機の背中に近づいた。

 

その魔導兵装(シルエットアームズ)が、試作機の背中に取り付けられた簡易的な二本の腕、補助腕(サブアーム)に渡される。この補助腕は普通の腕と同じように、さまざまな魔導兵装(シルエットアームズ)を持てる。

 

魔導兵装(シルエットアームズ)はしっかりと受け渡された。大きな杖の形をした魔導兵装の先が上を向くように保持されて、落としたりしそうな様子はない。

 

「うん、補助腕(サブアーム)の動作は問題なさそうですね」

 

試作機の中から伝声管ごしに、ヘルヴィ先輩の声が聞こえてきた。

 

「ん、魔導兵装(シルエットアームズ)の設置完了。続いて展開機能の試験、行くわよ」

 

試験項目の口頭確認だ。

 

魔導兵装(シルエットアームズ)を展開、照準器表示」

 

試作機の補助腕(サブアーム)が動く。上に持ち上がり、肩越しに魔導兵装(シルエットアームズ)の先を前に向ける形になった。

 

「照準合わせ………発射するわよ」

 

試作機の頭が的のほうを向いて、それに連動して魔導兵装(シルエットアームズ)も的の方に向く。

 

しっかりと照準を合わせた後に、試作機の魔導兵装(シルエットアームズ)から炎の弾丸が発射される。訓練用の低威力なものだ。

 

その炎弾はしっかりと的に当たり、焦げ跡を残した。

 

「もっと調整が必要かなと思いましたけど、当たるものですね」

 

「いいことなんじゃないの?あ、また当たってる」

 

「さすがに外れもあるね」

 

試作機はそのまま炎弾を撃ち続ける。最終的に、六割くらいが的に当たったと思う。

 

発射試験を終えた試作機は、補助腕(サブアーム)をもとの格納状態に戻した。

 

幻晶騎士(シルエットナイト)として組み上げたうえでの試験は、これが初めてなはず。それで動作に問題はなく、照準精度でも六割は当たった、という結果は上出来なものだろうと思う。

 

「ほぉう………こいつが背面武装(バックウェポン)か………。こりゃあ想像以上にすげぇ代物かもな」

 

実際にダーヴィド先輩も、うなりながら感心したように呟いている。見回してみると、周りで見ていた人たちも思い思いに喜びあっている。

 

「………どうして皆こんなに感動してるのよ?」

 

アディちゃんが呟く。振り向いてみるとキッド君もあまり喜びを共有できてはいなさそうだ。まあ、今のところ二人とも、試作機造りに関わっているわけじゃないものね。

 

幻晶騎士(シルエットナイト)が新たな姿となる、その第一歩を踏み出したからですよ。自らの手で新しい道を切り開いたからこそ、大きな喜びが得られるのです」

 

大した貢献をしていないであろう僕からしても、嬉しいものだ。エル君の言葉を聞いたアディちゃんは幻晶甲冑(シルエットギア)の腕を組んで少し考えていたけど、やがて納得したように言った。

 

「うーん、よくわかんないけど成功したからおめでとうってことね!」

 

「間違いではありませんけど、アディ………」

 

エル君は言葉に詰まる様子だ。どう説明したものか、といった感じだろう。

 

幻晶騎士(シルエットナイト)の腕も、足も力が強くなって、おまけに魔導兵装(シルエットアームズ)を四本同時に使ったり、剣と盾を持ったまま魔法を撃ったりできる。あの試作機はそういう考えでできてるんだよ。すごいよね。しかも作ったのも考えたのも、まだ学生だし」

 

とりあえず補足しておく。

 

「あー、そういうことか。そりゃ喜ぶよなぁ」

 

「今の幻晶騎士(シルエットナイト)よりももっと強いものができた、ってこと?そういうことなのね」

 

キッド君とアディちゃんもそれで理解してくれた。

 

僕は試作機に視線を戻す。

 

あの幻晶騎士(シルエットナイト)は、間違いなく時代を変えるものだろう。きっと幻晶騎士(シルエットナイト)の歴史に、エル君の名前とともにあの試作機の名前も刻まれるに違いない。

 

さて、どんな名前になるのかな。




本編とは関係ありませんが、これまで誤字報告をしていただいた方、ここに感謝申し上げます。
私も投稿前に確認はしておりますが、やはり見落としなどもあるようですね。この先も誤字がありましたら、報告していただけると助かります。
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