何にでも乗れる騎操士くん(予定)   作:黒髪赤目の男の娘これが大好き

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テレスターレ対アールカンバー

試作機の動作試験が大成功を収めてからというもの、完成に向けての作業は順調に進んだ。

 

外装を装着してもう一度試験したり、背面武装を動きながら射撃する試験をしたりと、みるみる完成度が高まっていった。そしてひと月経った今、試作機はテレスターレという名前を得ている。

 

そのテレスターレが、訓練場に姿を現す。外装のデザインは、元となっているサロドレアを元に、内装の変化に合わせて変更を加えたものになっている。

 

変化した内装と、背部に付け足されている補助腕(サブアーム)こそがテレスターレの真骨頂だ。

 

テレスターレの動きは、やや滑らかさに欠けているように見える。綱型結晶筋肉(ストランドタイプ)になったことで制御系の調整が必要になったけど、まだ調整は完璧じゃない………、と言ったところなのだろう。

 

テレスターレは今回、この訓練場でアールカンバーを相手に模擬戦闘をする。テレスターレの騎操士はヘルヴィ先輩。実はあのテレスターレは、ヘルヴィ先輩のトランドオーケスをベースに造られた機体だ。だから、操縦席の寸法などはヘルヴィ先輩に合わせて調整されている。故に、あのテレスターレに一番乗り慣れているのもヘルヴィ先輩なのだ。

 

対するアールカンバーは、陸皇亀の時と同じ仕様の、通常の幻晶騎士だ。通常の結晶筋肉(クリスタルティシュー)で動く、補助腕(サブアーム)なしの機体。

 

エドガー先輩という、高等部でもトップの実力者が乗る、従来型の幻晶騎士(シルエットナイト)。それを相手にどれだけやれるかというのもこの模擬戦の目的だろう。

 

テレスターレは剣と盾を手に携えて、補助腕(サブアーム)に訓練用の魔導兵装(シルエットアームズ)を装備している。対してアールカンバーは、剣と盾だけ。

 

「ようし、ヘルヴィも準備できたようだな。ではこれより、新型の動作試験の仕上げとして、テレスターレとアールカンバーによる模擬戦を行う!」

 

審判役をする生徒が口上を述べれば、観客席で観戦しに来ていた人々が歓声を上げる。僕は整備班用のスペースにお邪魔している。ここにはエル君やダーヴィド先輩に、キッド君とアディちゃんもいる。

 

テレスターレとアールカンバーが、訓練場の中心で距離をとって相対する。

 

「ようし、準備はいいな?それではこれより戦闘を開始する!模擬戦闘の規定に則り、双方、礼!構え!………始めぇっ!」

 

審判の合図に従って二機が礼をする。このあたり、まさに騎士といった感じだ。そして開始の号令とともに、テレスターレとアールカンバーは走り出した。

 

テレスターレもアールカンバーも、距離を詰めている。アールカンバーは近接武装だけなので当然だが、テレスターレも詰める理由は………。

 

それに思い至るよりも先に、テレスターレは背面武装(バックウェポン)を展開した。そして、炎弾が放たれる。

 

フェイントだ。エドガー先輩は背面武装(バックウェポン)の存在を把握していても、対面するのはこれが初めて。そんなエドガー先輩が近接戦闘の構えになったところへ法撃を加えるのが、ヘルヴィ先輩の狙いだったんだ。

 

エドガー先輩の反応は素早かった。それでも、同時に二発放たれた炎弾は防げない。左手の盾に一発、そして右肩に一発。

 

弾着の衝撃でアールカンバーの勢いはそがれ、体勢が崩れる。そこにテレスターレは、剣を振り下ろしての追撃を加えた。

 

単純だけど、速度が乗った一撃だ。それに、テレスターレは普通の幻晶騎士(シルエットナイト)よりもパワーがある。

 

アールカンバーは、機体の右側を後ろに下げつつ、左の盾を突き出して受けた。右肩への被弾で体勢が崩れる、その勢いも利用した動きか。

 

テレスターレの斬撃がアールカンバーの盾に当たる。アールカンバーは、なかば吹き飛ばされるように後ろへ下がった。

 

受け流そうとした、のだろう。そして想定以上のパワーに吹き飛ばされた。

 

「テレスターレのパワー、凄いね」

 

「ええ」

 

見つめながら発した声に、硬質な声で返事が返ってくる。きっとエル君も、食い入るように見つめている。

 

テレスターレはさらに追撃をする構えだ。魔導兵装(シルエットアームズ)を射撃体勢にしたまま、再び距離を詰めている。

 

アールカンバーは体勢を立て直すと、盾を構えながらも魔導兵装(シルエットアームズ)をかわすため、動き始めた。

 

二機の戦いは、近づいては離れ、離れては近づき………というようになっている。

 

アールカンバーは隙を見て攻めているけど、鍔迫り合いになったりすればパワーの差で後退せざるを得ない。そんなアールカンバーを、テレスターレは力押しの斬撃と魔導兵装(シルエットアームズ)の連携で押している。

 

「さすがはエドガーだな。並の乗り手だと一発目で勝負がついてるぜ」

 

「ヘルヴィ先輩もなかなかうまく機体を乗りこなしてますね」

 

「そりゃあ伊達に試験騎操士(テストランナー)やっちゃいねぇだろ」

 

「テレスターレの操縦系は、まだまだ調整が要るのかな。力押し気味だけど」

 

「ええ。有利を活かすためでしょうね。細かな技術で戦うと負けますよ」

 

「エドガー先輩相手だものね」

 

上がっている脚力も利用して、瞬発力と力押しに法撃と怒涛の攻めを行うテレスターレと、熟練の技術でしのぎつつ隙を狙うアールカンバー。そんな戦いは思いのほか長引いているけど、どう見てもアールカンバーは劣勢だ。

 

固唾を呑んで見ていると、アールカンバーは急に動きを止めた。それを見たテレスターレも、一度動きを止める。

 

「これは………勝負に出るのかな」

 

「………」

 

返事はない。それも当然か。

 

テレスターレとアールカンバーは剣先を向けあっている。そして、アールカンバーから甲高い音が鳴りだした。これは、魔力転換炉(エーテルリアクター)の吸気音だ。周囲のエーテルを急速に吸い込んで、魔力に変える音。自然と観客席も静まり返り、緊張感が高まっていく。

 

その緊張を破って、アールカンバーが走り出した。突撃の勢いを乗せて、パワーの差を補うつもりか。

 

対するテレスターレも走り出し、さらにアールカンバーへと法撃する。その炎弾を、アールカンバーは盾で一発受けて………。

 

「切り払った………!」

 

並列に放たれたもう一発を切り払った。外側へと振り抜かれた剣は戻さない。

 

盾だ。アールカンバーは、盾でテレスターレへ突撃した。

 

テレスターレは、追撃しようとしていた剣を引き、盾でそれを受け止めた。それでも、勢いは先に走り出したアールカンバーの方が強い。

 

大きな、大きな衝突音がした。両機体とも、手に持った盾は歪み、それを持っていた左腕の結晶筋肉(クリスタルティシュー)が砕けて散り、陽光を反射する。

 

勢いの差でひるんだテレスターレ、その肩より上を狙って、アールカンバーは剣を突き出した。狙いは、補助腕(サブアーム)だったんだ。

 

その突きは確かにテレスターレの魔導兵装(シルエットアームズ)を砕いた。しかし、テレスターレの左腕はまだ動作できたようで、アールカンバーを押し返した。

 

アールカンバーがよろめく。その隙を見逃さず、テレスターレは剣を頭上に振りかぶった。

 

この斬撃が決まれば、決着がつく。僕は息を呑んだ。

 

が、しかし。

 

テレスターレは剣を振り下ろす前に、力が抜けるように膝をついて、倒れてしまった。

 

「え………」

 

観客席がまた静まり返った。僕は困惑して声を漏らすけど、こうなる原因は一つしか浮かばない。

 

「………ああ!魔力(マナ)切れ!」

 

魔力(マナ)、切れた………?」

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