何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
模擬戦が決着した後。ダーヴィド先輩たちはアールカンバーとテレスターレと共に工房へ戻ってきていた。
エル君や僕らもそれについてきている。
「さて、これより第一回整備班大々反省会を開催したいと思います」
エル君は神妙な顔になって、厳かに告げた。
工房にいるのはダーヴィド先輩やほかの整備班の人たち、キッド君とアディちゃん。みんな気まずそうな顔をしている。もちろん模擬戦の当事者たるエドガー先輩とヘルヴィ先輩もいて、特にヘルヴィ先輩は端の方で膝を抱えて、三角座りでふさぎ込んでいる。
あのタイミングで
「え、エドガー先輩。ヘルヴィ先輩を元気づけてあげてください………」
近寄りがたい空気を発しているヘルヴィ先輩への対処を、エル君はエドガー先輩に丸投げした。
「おい、よりによって俺か!?………う、ぬぅぅ、善処しよう………」
エドガー先輩は少し戸惑ったが、覚悟を決めたのかすぐにヘルヴィ先輩のほうに歩いて行った。
正直に言って、エドガー先輩以外に元気づけられそうな人も思い当たらない。僕よりは親しいであろうエル君も、そうだったのだろう。
「ふぅ、これでよし。こちらでは新たな問題への対処を考えましょうか」
「生きろ、エドガー………。さてまぁ起こってみると簡単なことなんだけどよ。出力が上がった分、燃費が悪くなった。実に当然だな」
「隙あらば
今回の結晶筋肉の強化は、結晶筋肉が受け入れられる負荷の増大だったということだろう。魔力を多く注ぎ込んで、大きな出力を出す。その注ぎ込める限界が増えたのなら、自然と魔力の消費は増える。特に今回は、特性を最大限に活かそうと結晶筋肉のパワーに頼ったのだろうし。
そんな風に魔力を駆動に多く割いて、さらに魔導兵装も積極的に使っていった。
「いろいろな要因を鑑みてざっと稼働時間は半分程度でしょうか………。まずい、ですよね?」
「まずすぎる。致命的じゃねぇかとすら思うんだが………」
これまでずっと、
「何よりも消費に対し、魔力の供給が足りませんが………供給元である
当然だろう。何なら、
「なら消費を抑えるか?しかしなぁ、抑えようにも仕組み自体が大喰らいじゃ意味がねぇ。動きを抑えたんじゃ本末転倒もいいところだ」
「あとは魔力貯蔵量の増量ですか………魔力貯蔵量は、どうやって増やしているのですか?」
「そりゃあおめぇ、ずばり結晶筋肉の量を増やすしかねぇな」
「それで容量を増やすのは駄目でしょうか」
幻晶騎士の魔力は、結晶筋肉に貯蔵されている。全体の結晶筋肉の貯蔵魔力を合わせたのが、幻晶騎士の
「結晶筋肉を増やしたんじゃ、結局消費もでかくなっちまうじゃねぇか」
「綱型にも落とし穴がありましたね。筋肉の量自体はほとんど増えていないから、出力と容量のつり合いが悪くなってしまいます」
ダーヴィド先輩とエル君の議論を聞きながら、僕は考えていた。結晶筋肉は、駆動系と
議論していた二人も、僕とそのほかの聞いていた人々も、問題の解決策に悩み静まり返る。
「そこでほら、お得意のアレじゃないの?」
そこで言葉を発したのは、アディちゃんだった。
「………お得意のアレ?」
「そう、人の形してなくていーってやつよ!筋肉は増やすけど、人間みたいにする必要はないんでしょ?」
まさにそれだ、と僕は頷いた。アディちゃんは幻晶騎士に、まだそこまで詳しくない。だからこそこういう、前提を外すような考えに思い至るのが早かったのかな。
「人の形を………しなくとも、いい。………なるほど、そう、そうですね」
思い返してみると、補助腕の時にエル君は同じようなことを言っていた。エル君自身、それを思いだしたのかもしれない。
「うう、そのとおりですけど。なんだかアディに教えられると………すごく悔しいです」
「ひどいっ!?どうしてよー!?」
アディちゃんが怒り、エル君をポカポカと殴りだす。たまらず逃げるエル君を横目に見ながら、僕はダーヴィド先輩に声をかけた。
「ダーヴィド先輩」
「ああ、おめぇもそう思うか!結晶筋肉を増やしても別にそれを動かすこたぁねぇ。つまりは銀線神経でつないでどっか空いた空間にでも積んで、結晶筋肉の“量だけ”増やしゃいいってわけか!」
やはりと言うべきか、僕の言葉は要らなかったらしい。ダーヴィド先輩もすぐに、同じ考えに思い至ったようだ。そこにエル君が、アディちゃんに謝りながら戻ってくる。
「ほっ、ですから悪かったですってっとっはっ………ごめんなさい、謝りますから………ね?それなら親方、あとはひたすらに空間の密度を高めるべきでしょう。だから繊維でなく塊、できれば板状かな?で用意した方がよいかと」
ダーヴィド先輩は頷いて、力強く答える。
「ようし、そうと決まりゃあ、あとは錬金術学科に掛け合って作らせるだけだな。それは俺から話を通しておく、任せとけい!」
ダーヴィド先輩の言葉で、解決策と方針が示される。それによって、整備班の人たちに流れていた緊張も和らいでいく。
一方でエル君は、まだむくれているアディちゃんをどうにかなだめようとしていた。
端の方では、エドガー先輩がヘルヴィ先輩と話しているのも見える。
エドガー先輩、多少は元気づけられたのかな。そう思いながらも、僕はテレスターレの行く末がどうなるか想像を始めていた。