何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
アディちゃんが、抱えた弾倉の中に入れられた矢と丸太を貫通した矢を交互に眺めている。
幻晶甲冑は人よりは大きいとはいえ、幻晶騎士と比べたら小さい。そんなものから、あそこまでの物理的な破壊力が出せるとなれば立派な兵器と言ってもいいだろう。訓練用の簡易機体、では済まない。
しかも弩砲には弾倉がついている。
「ああ、それに結晶筋肉を使って素早く巻き上げができますので、ある程度は連射が効きますよ。慣れにもよりますが、最速で五秒に一発といったところですか。弾倉には一つにつき十発の矢が入っていますので、だいたい一分ほどで打ち切る計算ですね」
「ぶっ、本気かよ………ちょっとやってみるぞ」
そうしてキッド君は弩砲を構えなおすと、弾倉に残った九発を丸太に向けて連射した。狙いは最初に撃ったところからずらしたようだけど、それでも五発で丸太は木くず同然になり、あとの四本は土壁に直接刺さっている。
「連射できる手持ち攻城兵器かぁ、凶悪だね!」
アディちゃんの正直な感想。僕も同感だ。
「ですがあくまで持ち運べるというだけで重量もありますし、取り回しも悪いですしね。かなり無理やりな代物なので精度も低い。むしろ数で精度を補っている部分もあります」
「破壊力が必要な状況でもない限り、
訓練で僕が使っている、幻晶甲冑用の銃杖。幻晶騎士は魔導兵装を使って魔法を放つので、幻晶甲冑でもその感覚に近づけられないかとお願いしてみたものだ。人間用の杖とかは、幻晶甲冑の手には少し小さいというのもある。
「つうか、エルはこれを何のために使うつもりなんだよ」
「………創作とは、挑戦とは常に素晴らしいものであると思いませんか?」
「また用途を考えてなかったんだな………」
「用途………用途と言えばレイ、アレも試しますよね?」
「うん」
よし。ワイヤーアンカーや弩砲の方も気になっていたので、それを見てからと思っていたというのもあるけど、ついに僕の番がきた。
「そういやレイのモートルビート、足の形が違うよな」
「え?あ、本当だ!靴が細いね」
そう、これから試す機能の肝は足先の接地部、靴だ。
この靴はただ細いだけじゃない。
「これ見て。車輪を付けてもらったんだ」
「車輪?こんな小さな車輪で何するの」
「ふふん、見ててよ」
僕はアディちゃんたちにそう言うと、靴に内蔵されている結晶筋肉に指示を出す。
車輪が少し下がって、接地する。足を前後に動かして、車輪がちゃんと回るのを確認する。
それから、周りの安全確認。というか、僕が一度離れる。
「ちょっと危ないから、近づかないでね。………よし、行くよ!」
僕は後ろの方で、
今までは接地すると勢いが消えてしまう動きだったけど、今回は違う。車輪が回ることで抵抗が減っていて、結果として
「うお、速いな」
「滑ってる?いえ、車輪で転がってるのね」
「フッフフ、ローラーダッシュが実現しましたね!」
そう、これはローラーダッシュのテストだ。
「このために靴の接地面積も減らしたからね。だからこんなふうに」
勢いが殺されて止まる前に、もう一度
「高速で動き回れるってわけ!」
そのまま僕は断続的に大気圧縮推進をすることで、工房の庭を走りまわる。といっても
まっすぐ走り続けられるほど広くはないので、
「ターンピックも冴えてますねぇ!」
「それは無いけど、方向転換はけっこうできるものだね」
とにかく
「………さて、こんなところかな」
推進をやめて減速しつつ、皆のほうに近づいて止まる。
「これいいなぁ。ワイヤーアンカーってやつと組み合わせたらすげぇ動きが出来るんじゃねぇか?」
「うん、僕もそう思う。ただ足の接地面が減るのは問題かなぁ」
「転ぶ可能性はありますね。それにしても、ワイヤーアンカーにローラーダッシュですかぁ。これはもうナイトメアですね!」
「
アディちゃんが首を傾げた。まあこれは通じない方が自然だね。
「それはいいけど、足の消耗が怖いなぁ」
バトソン君が心配そうに僕のモートルビートの下半身を眺めている。
「ああ、うん。確かに負担はかかるかもしれない」
無理な動きをすると折れたりして。………そう考えるとぞっとする。
「だいぶ危なかったかもしれない………」
「ああ、折れたりすることもあり得るのですね。制御は気を付けた方がよさげでしょう」
「うん………それに、ちょっと疲れるね………」
「えっ大丈夫?目を回したの?」
「いや、調子に乗って
「やっぱり、誰でも使えるってことにはならねーか」
「そうなるね………」
「エドガーさんですら扱いにくいって言ってたもんなぁ」
可能性は感じたけど、魔力貯蔵の多い幻晶騎士のほうがもっと向いていそうだ。
「やはり、大気圧縮推進を操縦しながら使うのは難しいですね。他の方法も考えてみますか」
エル君は微笑みながらまとめた。
「………それにしても、なんだか凶悪になってきたね、モートルビート」
「アレが特になー」
キッド君が弩砲の的になった丸太の残骸に目をやって言う。
「ふふふ、せっかくのパワードスーツです。ただの訓練用で終わらせる気はないですよ」
「あとは誰でも使えるようにできればだね」
「魔導演算機の小型化と術式構築ができれば、ですね!結晶筋肉を
「魔力転換炉を設置して魔力供給………なんて?」
「そういうのもアリですね!」
お互いに通じるものがあるので、つい僕とエル君で盛り上がってしまう。
「もう、二人の世界に入らないのっ!」
アディちゃんが言いながら、エル君に抱き着く。
これは嫉妬かな。その光景が微笑ましくて、僕は自然と口角が上がるのを感じていた。
お読みいただき、ありがとうございます。
少々筆が遅くなっていることを感じてきているので、この先更新が不安定になるかもしれません。この先のアイデアはいろいろあるので、それでも続けていきたいと考えています。
それでは、また次回。