何にでも乗れる騎操士くん(予定)   作:黒髪赤目の男の娘これが大好き

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テレスターレ・改良型

錬金術学科から連絡が来た。

 

そう、魔力貯蔵に特化させた結晶筋肉が完成したのだ。

 

エル君の提案通り板状に成型されているので、“板状結晶筋肉(クリスタルプレート)”と呼ばれている。

 

結晶筋肉を駆動系としてでなく、魔力貯蔵用の部品として考えるという発想の転換は錬金術師の人たちにもやる気をもたらしたらしい。とりあえずということで今の板状結晶筋肉(クリスタルプレート)を完成させたけど、この先さらに改良されていくだろう。

 

取り付けられる方であるテレスターレは動作試験を一通り終えていて、しかも稼働時間以外に大きな欠点は見つからなかったらしい。つまり、板状結晶筋肉(クリスタルプレート)をうまく機体に取り付けられれば、テレスターレは晴れて新機軸の機体として胸を張れるものになるはず。

 

ダーヴィド先輩たちやエル君も意気込んで改造を始めていて、僕もときどきお邪魔している。

 

「とまぁ、意気込んだもんだけどよ、こいつはよろしくねぇな」

 

最初は板状結晶筋肉(クリスタルプレート)を装甲の裏側の空洞に設置しようとしていた。とはいえ、これは検討を始めた段階ですぐに廃案になった。この空洞、結晶筋肉が駆動したときに外装などに干渉しないように設けられているものなのだ。当然、おいそれと埋めるわけにはいかない。

 

そこで次に試されたのは、外装を外してから板状結晶筋肉(クリスタルプレート)を層状して内装に取り付けてから、その外側に合うように外装を取り付けるという案だ。元のままでは内部スペースに余裕がないのなら、板状結晶筋肉(クリスタルプレート)の内装を前提に、層状に組み上げてみればいいというわけだね。

 

これはしっかりと完成し、魔力貯蔵量の増加もできた。けれど、問題も起きた。ダーヴィド先輩もよろしくないと評価するその問題とは。

 

「着ぶくれて、格好悪いッ………!」

 

「太ったね、テレスターレ………」

 

そう、テレスターレが太くなって、重くなってしまったのだ。

 

いくら綱型結晶筋肉(ストランドタイプ)のおかげで出力が増えていても、板状結晶筋肉(クリスタルプレート)の重さで動きが鈍ってしまう。重さだけでなく、可動域のほうにも影響が出ている。

 

利点と言えば当初の目的である魔力貯蔵量の増加と、板状結晶筋肉(クリスタルプレート)も含めての装甲厚の増大だ。けれど、この問題点は見過ごせない。

 

エル君の言うように、なんだか格好悪いのも確かだし。

 

「黒いのに同意だぜ、こいつは重過ぎる!何とかこいつを“痩せさせ”ねぇといけねぇな」

 

「全体的に内装するのはよくないと思う」

 

「部位を絞る、それが妥当ですかね………」

 

というわけで、板状結晶筋肉(クリスタルプレート)の内装部位を限定してみることになった。

 

搭載部位、搭載量をいろいろと検討してみたけど、結局動きを阻害されないようにすると内装量、魔力貯蔵量増加効果ともにあまり大きいものにはならなかった。

 

「内側に結晶筋肉を増やすのはこれが限界だな………」

 

「これ以上は重くなるうえに、鎧が干渉してしまいますからね」

 

「となると、外につけてみるしかないのかな」

 

「外装タンク、やってみましょうか」

 

内装に限界があるなら外装だ。

 

とはいえ、外装したうえで装甲で守るとまた重くなってしまう。とりあえずは、ワイヤーでまとめたうえで布で覆うというやり方になった。

 

取り付ける部位は、人間が重い荷物を持つ部位ということで背中か腰。腰は動くので、最終的には背中へ取り付けることになった。

 

ところが、これでも問題が残った。

 

「ったく次から次へとなんてワガママな機体だ!ちったぁ遠慮しやがれ!」

 

補助腕をいちど撤去して取り付けてみたのだけど、それでも重いものを背中に着けた結果、重心が高く、偏った状態になってしまった。

 

テストに参加した騎操士の人たちも扱いづらいと口々に言っていたし、補助腕がなくなるというのも良くない。

 

「あとは併用してみる、とか?」

 

「そうですね」

 

つまり、部位を限定させた内装式の層状装甲───蓄魔力式装甲(キャパシティフレーム)と、外装式の併用だ。

 

外装される板状結晶筋肉(クリスタルプレート)は、まず背中に。補助腕と干渉しないように、また重さの方も負担にならないように調整されて取り付けられている。他にも腰回りに、ポーチを下げるように小さくまとめてから取り付けられた。こっちは剣を装備したりするために位置を調整できる。

 

これで稼働時間の問題はある程度解決できた。それでも、既存の幻晶騎士と比べると稼働時間は少ないものになってしまっている。

 

「これ以上の改善は無理だな。今の板状結晶筋肉(クリスタルプレート)じゃあ、重くなりすぎる。もっと改良されるのを待つしかねぇ」

 

「そうですね。でも、だいぶ良くはなりましたよ。魔力貯蔵用結晶筋肉はまだまだ試作段階ですし」

 

「最初と比べたら、だいぶ格好も良くなったね」

 

テレスターレは、こうして暫定的に完成ということになった。

 

方針が定まったので、五機のテレスターレはすべて改装されていき、今は僕らの前に五機が駐機姿勢で並べられている。

 

板状結晶筋肉(クリスタルプレート)が布に入って取り付けられているので、なんだか荷物を持った兵士のようになっている。あの着ぶくれ感と比べたらかなりマシだ。

 

「てなぁわけで、不満はあるが、もうどうしようもねぇ!これで完成だ!」

 

ダーヴィド先輩が鍛冶師の皆にむけて宣言する。

 

稼働時間、という欠点をとりあえず改善できた結果、テレスターレは今までの幻晶騎士と比べてかなりの進歩を遂げた機体になったといっていいだろう。

 

いつしか入り浸るようになっていた僕としても、感慨深い。

 

「野郎ども、よく頑張った!むしろ鍛冶師は頑張りすぎたってもんよ!まだまだ問題は残っちゃいるが、まずはこいつの完成を祝してやろうじゃあねぇか!さぁて、こんだけでかい仕事が終わったんだ、あとはやるこたぁ決まってんだろ、なぁ!?」

 

鍛冶師の人たちが腕を振り上げて応じる。僕とエル君も声を上げて同調した。

 

まあ、この後は宴会だろう。フレメヴィーラでは成人となる十五歳を超えると飲酒解禁、ということになっている。騎操士学科は高等部からなので、飲酒もありの宴会になるかもしれない。

 

実際そういうことになったので、僕とエル君、完成ということで来ていたキッド君たちも不参加で先に帰ることになった。

 

「さーて、テレスターレは布石ですよ!もっとイイ幻晶騎士を考えましょう!」

 

「新技術はまだまだ出るってわけだね。僕も楽しみだ」

 

エル君と二人で肩を組んで歩く。実際、テレスターレに関わって僕も考えさせられることは色々あった。きっとエル君の頭の中では、さまざまなアイデアが飛び回っているのだろう。

 

そんな僕らの頭を、いつかのようにアディちゃんが後ろから腕を回して撫でてくれている。ああ、気分がいいなぁ。

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