何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
準備が整った馬車は、車列を組んでライヒアラを出発した。
雨はだいぶ弱まっていたけど、相変わらず空は暗い。
先頭を行くのは朱兎騎士団が乗ってきた馬車で、その後に僕ら学生の乗った馬車が続く。車列を左右から挟むようにテレスターレが歩いていて、更に前方と最後尾に朱兎騎士団のカルダトアも歩いている。今回の“荷物”はテレスターレと、その開発陣。そして発案者のエル君と、共同発案者ということになっている僕。カルダトアはその護衛だ。
雨の中の行軍は相応に厄介なはずだけど、馬車で運ばれる僕らとしてはおとなしくしているほかない。野外演習のときのような空き時間が続く。
僕はエル君とテレスターレのプレゼンすべき内容を話しあったりしていたので、あまり退屈な思いはせずに済んだ。
この車列が向かうのは、ディクスゴード公爵の領地にあるカザドシュ砦。その砦は街道からそれた場所にあるので、最終的には森を切り開いて作られた道を行くことになる。
西フレメヴィーラ街道を行き、それから北上する。そうしてカザドシュ砦への近辺までたどり着く。石畳で舗装されている道だから、雨音以外は平穏無事な行軍だった。
ところが、砦への道に向かう道に入ってしばらくした時だ。明らかに、行軍の音とは違う音が聞こえてきた。
「総員周囲を警戒!防御陣形を組むぞ!」
号令が聞こえてくる。
「………出番、来ちゃったかな」
モートルビートの積み込まれた馬車に同乗していた僕は、隣に座っていたエル君に言う。
「来てしまいましたね。乗り込んでおいた方がいいと思います」
「そうする」
二人ともモートルビートのすぐ近くに陣取っていたので、僕はすぐにモートルビートの装甲を開けて入り込んだ。
異音は、地鳴りのような重低音だ。幻晶騎士のような、魔力転換炉の吸排気音が混じった音ではない。
馬の嘶きも聞こえる。怯えてパニックを起こしかけているのだろう。
幻晶騎士の防御陣形があるとはいえ、万が一がある。
「ごめんなさい、通してください」
馬車に同乗していた先輩たちにどいてもらい、ゆっくりと馬車の最後尾に移動する。
行軍の速度は下がっていて、異音はどんどん大きくなっている。
「………足音が聞こえない?まさか」
まずい、と思うのと魔獣が現れるのはほぼ同時だった。
幻晶騎士の防御陣形、その内側で地面から細長いものが飛び出す。放物線を描いて飛び、石畳で舗装されているというのに、何もないかのように地面へ消えていく。
「ワームの魔獣!?」
あえて僕が叫ぶと同時に、エル君の叫ぶ声も聞こえた。
「固まったらまずいです!馬車から降りて!」
一足早く馬車から飛び出した僕は周囲を伺う。
既にワームの魔獣、
さらに、防御陣形から僕らの方へと援護に向かおうとしたカルダトアの一機、その足元からひときわ太く、大きな
そのカルダトアは足を削り取られるように奪われて、上半身が吹き飛んで落ちる。
「馬車は放棄する!動けぇ!立ち止まっていると足元から食われるぞ!」
騎士の指揮官が号令し、それぞれの馬車の中から騎士や先輩たちが続々と降りてきている。
「畜生!このクソ魔獣め、やってくれやがったな!」
激怒して怒鳴っているダーヴィド先輩も、他の鍛冶師の人に引きずられるように降りてきた。エル君もいる。
駆け寄ってみるけど、怪我はなさそうだ。
意識を切り替えて、僕は足元に注意する。周囲の騎士や学生たちも同じだ。飛び出した瞬間だけが攻撃チャンス、ということ。
「
およそ自然の生命とは信じがたいが、フレメヴィーラではこんなのが生息することも常識だ。
「しかし、
「いつからカザドシュ砦はヌシの縄張りになったんだろうね」
「知るか!つうか、なぜおめぇらはそんなに落ち着いてんだよ!」
「まあまあ、そう怒鳴らないでください親方。やつらは地中にいることが厄介な魔獣。しかしその移動にはかなりの騒音を伴うので、音を調べればある程度の位置がわかります」
つまり、騒ぐと位置が分かりにくくなるということだ。ダーヴィド先輩もそれを察して、歯を食いしばりながらも黙り込む。
「そう、ですから親方、レイ、少し下がってください。ここへ、来ます」
飛び出す前触れは音だけじゃない。むしろ地面を掘っているのだから、振動こそが音の発生源だ。その振動が僕らの足元へ近づいている。
ダーヴィド先輩はすでに走り出している。僕もモートルビートの足に力を込めてステップさせ、エル君から距離を取った。
まず仕損じることはないだろうけど、援護の用意はしておく。右手に剣を持って、強化魔法をかける。
エル君は
「いらっしゃいませ、これでもどうぞ!」
魔法が
心配はないな、と考えながら僕は足元の振動を感じ取っている。
「こっちもか!」
僕はタイミングを見計らって前へ跳ぶ。低く跳んですぐ左足をつけ、軸にして左回転。ちょうど出てきていた
その
そして僕は、他の人たちの援護へと走り出した。
エル君もあちこち飛び回って、学生たちと協力して
あとは剣などで止めを刺せばいい。
「よくもうちのモンにかましてくれやがったなぁ!」
と、ダーヴィド先輩もハンマーを叩き込んで両断したりしている。
状況は僕らが有利。飛び出してきた
でもそれは、幻晶騎士があの“ヌシ”のような大型ワームの相手をしてくれているからだ。
幻晶騎士たちは巨大ワームを誘導するように森へ踏み込んでいった。
順調に
掃討をあらかた終えた頃、森の方が光った。同時に聞こえてくる、連続した法撃の音。巨大ワームに集中砲火を加えているのか。もしかすると、テレスターレが背面武装と手持ちを合わせた最大火力を発揮しているのかもしれない。
それが少しの間続き、そのあとには金属音が連続で響き渡った。
その音も止んで、森の中から幻晶騎士たちが姿を現した。
おそらく巨大ワームを討伐した後に援護に戻ってくれたのだろうけど、僕らはすでに掃討を終えていた。