何にでも乗れる騎操士くん(予定)   作:黒髪赤目の男の娘これが大好き

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バルトサール、一線を越える

決闘となれば相応の場所が要る。ライヒアラにはそのような場所がある。そのまんま、決闘広場と呼ばれている場所だ。

 

ライヒアラの騎士学科で決闘はそこまで珍しいものではない。それ故か、決闘のルールもある。一対一で、練習用の木剣で戦う。放出系の魔法は禁止。このルールはとにかくフィジカルが物を言うルールだ。身体強化(フィジカルブースト)するにしても、強化する身体そのものが強いほうがいい。

 

その点で言うとキッド君は不利だ。年齢の差からくる体格差がある。キッド君の身体強化(フィジカルブースト)はかなり練度が高いから、渡り合える可能性はあるけれど。

 

決闘の審判を買って出た生徒がルールを読み上げて、キッド君とバルトサールが向かい合ったとき。おもむろにバルトサールは胸ポケットから何かを取り出した。

 

それを見たキッド君の顔が歪む。僕からは髪飾りっぽい何かとしか見えなかったのだけど、キッド君の表情でわかった。

 

あれは、アディちゃんのものだ。それが示すのはただ一つ。バルトサールは、アディちゃんを人質にしている。

 

正直言って、僕は今すぐバルトサールに徹甲炎槍(ピアシングランス)を撃ち込みたくなった。けれど、殺してはダメだ。

 

「てめぇ………アディに何をしやがった………」

 

それに、今バルトサールと相対しているのはキッドくんだ。目をつけられていない僕がやるべきことは、他にある。

 

「さぁ?何のことかわからないが」

 

バルトサールの歪みきった笑みを見ながら、僕は周りを見渡す。当然だけど、近くにアディちゃん本人はいない。

 

「そう言えば噂に聞いたんだがねぇ、君は初等部にありながら既に上級魔法(ハイ・スペル)も使いこなす使い手というじゃないか!ひとつ、ここで見せてもらえないかい?」

 

キッド君が唸っている。もしキッド君が馬鹿正直に上級魔法(ハイ・スペル)を使えば、バルトサールはアディちゃんを殺すかもしれない。だから、キッド君は。

 

「………そんなの、使えねぇよ………」

 

従うことを選んだ。もう見ていられない。僕は野次馬に紛れるようにして決闘広場から離れた。

 

キッド君、死なないでくれよ。

 

 

 

 

何かを隠そうとするなら、人が来ないか少ない場所だ。ライヒアラの校舎には、普段人気がないものもある。これは余暇にライヒアラを歩き回って知ったことだ。まさかこんな時に役に立つなんて。

 

身体強化(フィジカルブースト)も使ってその校舎に走っていると、見覚えのある人影を見つけた。

 

「セラーティ先輩!エチェバルリア君!」

 

声をかけながら走り寄る。

 

「え、あなたは?」

 

「レイ君!」

 

エチェバルリア君とは初対面だ。セラーティ先輩が僕の名を呼んだのを聞いて、理解したらしい。

 

「あなたがレイ君ですか。もしかして、アディを?」

 

「そう。今はキッド君がバルトサールと決闘しているけど、バルトサールはアディちゃんを人質に取ってる」

 

「やはりそうですか。行きましょう」

 

「セラーティ先輩、場所は」

 

僕はセラーティ先輩に訊く。おそらくセラーティ先輩はエチェバルリア君を頼ったのだろう。ならば、場所も知っているはず。

 

「案内するわ。………殺さないでね」

 

セラーティ先輩が真剣な顔で言った。

 

「殺人鬼にはなりませんよ。向こうがそうだとしても」

 

「怖いこと言いますね………」

 

エチェバルリア君が呟くけど、君の目つきも大概だからね。

 

 

 

アディちゃんが捕まっている空き教室はすぐに見つかった。

 

「こんにちはー、誰かいます………ね」

 

エル君が即座に飛び出す。同時に僕も銃杖(ガンライクロッド)を抜いて、風衝弾(エアロダムド)を二連射。何故なら、まさに一人の男がアディちゃんを殴りそうなタイミングだったからだ。

 

その男目掛けて跳んでいくエチェバルリア君を目で追っている、奥の二人が僕のターゲット。胴体に風衝弾(エアロダムド)が直撃した二人が吹っ飛ぶ。

 

エチェバルリア君はアディちゃんの近くの男を無力化すると、そのまま固まっている最後の一人に飛びかかった。

 

エチェバルリア君は四人が気絶したのを確認してから、縛られているアディちゃんを解放する。

 

僕はといえば、アディちゃんが縛られていた縄をエチェバルリア君から受け取って男たちを縛ることにした。

 

僕から見ればかなり重い男たちを一纏めにして縛り上げる。さて次はキッド君だ、と思ったその時には、エチェバルリア君はアディちゃんを横抱きにして決闘広場の方へ走り出していた。

 

「あっ、ちょ、エチェバルリア君!」

 

慌てて身体強化(フィジカルブースト)をかけて追いかける。女の子とは言え人一人抱えているのに、僕よりも速い。

 

「めちゃくちゃだなぁ………」

 

それでも僕は追い続けた。キッド君の無事を確かめない限りは安心できなかったから。

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