何にでも乗れる騎操士くん(予定) 作:黒髪赤目の男の娘これが大好き
傷だらけでへたりこんでいるキッド君と、ボロ雑巾の状態で泡を吹いているバルトサール。流石に死んでないよね?
「っひー………はー………エチェバルリア君、速すぎ………」
「レイ君!」
「ぶ、無事でよかった、アディちゃんもキッドくんも………。それに、やったんだね」
「………ああ。ありがとな、レイ」
「いやぁ、エチェバルリア君が凄かったよ。アディちゃんが縛られてるのを観た瞬間、銀の流星になってたね」
エチェバルリア君が何か言いたげに僕を見る。僕はエチェバルリア君と目を合わせて、笑いかけた。
「では、ひとまずあとのことはこちらで片付けておきますので。アディはキッドを連れて保健室へ行ってもらえますか」
「わかったわ。キッド、立てる?」
「大丈夫だ。傷はほとんど打ち身だしな、ゆっくり歩くにゃ問題ねぇよ」
キッドくんがふらつきながらも立ち上がって、アディちゃんに保健室へ連れられていくのを見て、ようやく僕は肩の荷が下りた気がした。
「よかったのですか?弟御の負った傷は、色んな意味で軽くはないですよ?」
エチェバルリア君が僕の後ろの方に話しかける。振り向いてみると、そこにはセラーティ先輩が立っていた。
「………そうね、でもバルトはそれだけのことをしてしまったもの」
セラーティ先輩は、そこまで気に病んでいる風でもなかった。
「あの子は………本当、こういうところばかりお母様に似るんだから………。そろそろ罰が下ってもいい頃合だったの」
「苦労されてるのですね………」
エチェバルリア君の言葉に、僕は内心で同調する。キッド君たちオルター家と、セラーティ家の関係。僕はそれを積極的に訊いてはいないのだけれど。
「この後始末はお願いしても?」
「ええ。家のほうとも、話さないといけないから」
「ありがとうございます。レイ君」
「あ、何………?」
「ちょっと来てください」
「あ、うん。セラーティ先輩、僕の方からも後始末、よろしくお願いします」
「ええ」
二人でセラーティ先輩に一礼する。その後、僕はエチェバルリア君の後について歩き始めた。
「助太刀ありがとうございます、レイ君」
決闘広場から離れたエチェバルリア君は、僕にお礼を言ってきた。
「うん、どういたしまして。でも、エチェバルリア君だけでもどうにかなってた気もするな………」
「ならないとは言いませんけど、やっぱり援護があると心強いですよ。でも、なんで一緒に助けたこと言わなかったんです?」
「言ったよ?エチェバルリア君が凄かったことも伝えただけ」
するとエチェバルリア君は何とも微妙な顔をする。
「………確かに、助けに行ってないとは言ってませんね。でも、わざとですよね?」
「まぁね」
「何故です?」
エチェバルリアが聞いてくるけど、僕は答えないことにする。
僕は、アディちゃんがエチェバルリア君のことを好きなのではないかと思っている。でも、これは本人たちが形作るべき関係だ。
「目立つのは好きじゃないんだ」
だから、本当のことは言わない。僕の心が気ぶりじじいと化している、なんて前世ネタは。
「そうなんですね、覚えておきます。そうだ、エチェバルリアだと長いですし、エルって呼んでくださいよ」
「ありがと、エル君。これからよろしくー」
何だかんだ言って僕も限界だった。エル君と別れると、僕はとぼとぼ寮に帰ることにした。
それから数日。僕は校舎の中から、中庭の木にもたれかかって本を読んでいるエチェバルリア君を見かけた。その傍らには、何やら挙動不審なアディちゃん。
やっぱりね、と僕は心の中で呟く。
応援するね、アディちゃん。