鐘声と軟風 作:ダンまちファン
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貴方達の助けを借りてこの小説は成り立っていると言っても過言ではありません
ベルは駆け出した後、最低限の身嗜みを整えて友人に悩みを聞いてもらおうと思った。オラリオでも屈指の有名人である
外ではいつも認識阻害の仮面を被っているからだ。ロキが好きそうなイかれた笑うピエロのお面。子供の頃から活動していると悪目立ちするため、顔を隠している。フェルズを通してウラノスにも許可をもらっているので合法だ。
「あぁ……」
「……そう溜め息ばかり吐かれても何も言えないぞ盟友。というかベル?そんなに会って早々に辛気臭そうな顔しないで?俺は泣くぞ?みっともなく泣くぞ?」
「あぁごめんねヘグニ……」
機密性の高い個室に招待したのはヘグニ・ラグニール。白い髪の
「はぁ……」
「そうやって溜め息ばっかりっ!?なぁベル、悩みがあるなら聞いてやるから言ってくれ。これでも無駄に長生きしているから話は聞いてやれるかもしれない」
ヘグニは溜め息が嫌いだった。なんかこっちがやらかしてしまったような気分になるし……友達が落ち込んでいるのは見過ごせない。フレイヤ・ファミリアにおいて珍しい善性を持っている。ベルはその言葉に嬉しそうに笑った。
「そうだ、頼りになるよヘグニ。君はいつでも頼りになるやつだ。」
「そう褒められると嬉しくなるだろ!」
ベルはヘグニに率直に思いを告げた。ヘグニもその言葉を素直に受け取る。彼らは友達付き合いが長いからこの程度は当然だ。なんせ
「それで悩みというやつは?」
「実はね……恋をした気がするんだぁ」
「はぁ!?」
ヘグニは友のために一肌脱いでやろうと思い、すぐに後悔した。一肌脱いでやったのにお返して刃物で肌を削いできたような衝撃に受け止めきれず、案山子になる。ヘグニの気持ちも知らずベルはつらつらと思いを連ねる。
「あの子を見た瞬間に景色が全て鮮やかに染まったような気がして」
「……」
「あの子の動きについ目が釣られて動いてしまう」
「……」
「明らかに心が可笑しいのにそれも悪くないと思うんだ」
「……」
顔を赤くして柔らかく微笑えむベルはそれはもう恋をした顔つきをしている。あのテセウスが……
「会いたいなぁ」
「それ
嬉しそうに笑うベルに流石に叫ぶ。店の中で叫んだとしても防音室だから問題なかった。ヘグニは在らん限りの思いを込めてベルに喚いた。ヘグニの心は限界だった。
「お前…お前があの方を振ったんだぞ!?公衆の面前であの方に恥を掻かせて『でも
──
もちろんベルはロキの眷族なのだがそんなのはお構いなしに魅了して奪い取った。ベルのスキルに
フレイヤは徹底して楽園を築いた。数ヶ月ベルと暮らさせて眷族にも仲間意識を抱かせて魅了を解き齟齬を消した。ベルの側にあえて一緒に引き入れたレフィーヤを置くことで見える位置にいる人質として心を削った。
楽園は完璧だった。世界全てを覆い尽くして……処女神に見つかり現状を打開されるまで完璧に世界の運営をやり切った。
一人の男のためだけに、世界を作ったフレイヤは壊された後その熱情をロキにぶつけた。
それが頂上決戦。フレイヤvs世界という前代未聞の
その最後。
公衆の面前でベルはフレイヤを
今では
「わかってるよ……だからヘグニにしか話してないでしょ?
ベルは恨めしそうにヘグニを見ている。流石にフレイヤに対して申し訳ない心は持っているようだ。恋に振り回されて盲目でもそこはまだ見えるらしい。
(そこでヘルンとかに目を向けないのが本当にクソボケだよ)
ヘグニからすればもっと警戒すべきところがあると思っている。特にあの兎っ…兎っ…!とぶつぶつ呟く侍女をどうにかしろと思っている。アイツ泣きながら兎肉捌いて笑うの怖いんだよ。
「……ぁあ。あ゛!?お前、【
ヘグニは勢いよく立ってベルに指を指した。ベルといえばレフィーヤ・ウィリディスである。いつも側にいて完璧な連携を熟す後衛。数々の困難を共にしたあの子についてどう対応しているのかと叫んだ。
彼女、何気にヘディンが気に入っているのだ。ベルに限ってないと思うが酷い扱いしていたらタダじゃ済まない。
「レフィーヤ?パートナーだけど、それが何?」
「ッツツツ!?!?クソボケェ……」
ヘグニは己の不幸を嘆いた。己の盟友は英雄にしてはあまりに無垢であまりに純粋。心が綺麗過ぎてもう怖いレベルだった。これから彼に起こるだろう女難について考えるのはやめて、友人として助言をする。
「ベル……俺は誰にも言わない。恋したのが誰かも聞かない。秘密にするからお前も誰にも言うな。墓までその恋を持っていけ」
伝わってくれと思いを込めて自分の考え得る最上の助言を話したベルの反応は、
「えっ!?応援してくれないの?ヘグニは盟友なんでしょ?」
あまりにあんまりなクソボケ発言であった。
「盟友だからこの程度で済ませてやってるんだろうがっ!」
もう嫌だ。怖すぎる。オラリオが誇る王子様系冒険者が
「俺は逃げるぞ……お茶楽しかった!味しなかったけど」
「ボクも楽しかった。バイバイヘグニ。またやろうね」
「ああ!」
ヘグニは別れの挨拶をしてこの場から離れる。もうここには居たくなかった。ベルはその気持ちを知らず返事を返す。その言葉があまりにもヘグニの望むものだったから不満を忘れて笑顔を返す。
こういうところだぞテセウス。オラリオが誇る人たらしは健在であった。
ヘグニは闇に紛れてホームに帰る。あそこはフレイヤ信仰の巣窟であり……さっきの話がバレれば恐ろしいことになる。火薬庫に火種を投げるなんてヘグニはしたくない。
(何食わぬ顔でホームに帰れば誰にもバレない。誰にもバレない)
ヘグニは平静を保つ。普段から挙動不審なヘグニが何をしていようが眷族共は気にならない。興味がないからだ。しかし、唯一その男の様子を気にする者がそこには居た。
「ほう、何がバレないというのだヘグニ?」
「ひゃう!?」
ヘディン・セルランド。
長い金の長髪をした
「ヘ…ヘディン?」
「どうした阿呆?何か奇妙な出来事でもあったか」
「何もないよ何もないんだ!!」
「なら何故お前がそんなに動揺している……どうせ愚兎がらみだろう」
ヘグニは諦めない。例え怪しまれても誤魔化してみせると決意していたからだ。仮初とはいえ王を務めたこともあるこの身。どのような苦難であろうが乗り越えてみせると誓う。
けれどそんな誓いに意味はないとヘディンはガンガン悩みを当てていく。最終的には主神やオッタルを呼ばれたいのか?と脅された。
「話せ」
「ぁ゛」
(ごめんよ、ベル……でもなるべく耐えるから。俺が犠牲になるからどうか君が幸せであるように)
ヘグニは人格改変魔法まで使って乗り切った。友のために苦難を超える男である。
「お〜ベル坊!どこ言ってたーん?聞いたでベートに。可愛い子に詰められて逃げたんやってなぁ……面白っ!」
ベルはその後、色々と街中を彷徨いてからホームに帰った。暗くなり家の明かりが目立つようになったころ、ベルを主神の部屋で待っていたのは軽薄そうな印象の女神ロキである。
「今日の最後は取っといた。今回の遠征の立役者……ベルを差し置いて恩恵の更新やるヤツはおらんゆうことや」
ロキにとってもベルはお気に入りの一人である。気持ちのいいくらいスクスクと育ち、世界をいい方向に変え続けるジョーカー。つい自然と可愛がりすぎてフィンよりもロキのやり方を教えてしまっているのは内緒である。フィンが団長ならベルは次代の団長候補。団長になるその日までベル坊と言おうと思っているのは彼女だけの秘密である。
「ベル坊のステータス見るのは楽しいけどな!下界屈指の
ベル・クラネルの面白いところの一つはこれだ。成長を促進させるスキル【英雄一途】と書かれたもの。彼の義母への理想が具現化したそれは、まさに才禍を再現するような代物だった。
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ベル level6
《基本アビリティ》
力 H105→H155
耐久 F360→F374
器用 G245→G251
敏捷 E475→D500
魔力 G235→G285
《発展アビリティ》
幸運 C
対異常 E
逃走 E
速攻 H
閃斬 I
《魔法》
【ファイアボルト】
速攻魔法
《スキル》
・
能動的行動に対するチャージ実行権。
チャージ時の成長加速
思考汚染抵抗
・
猛牛系との戦闘時における、全能力の超高補正。
・
道化神の加護
思考能力の向上
魅了効果侵犯時に発動。
状態異常時に超抵抗、異常無視
・
迷宮探索時、全ステータスに高補正。
階層が低くなればなるほど効果上昇。
同眷属に希望伝播。
・
早熟する。
懸想が続く限り効果持続。
懸想の丈により効果向上。
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(あれ?)
ロキは己の眼を疑った。部屋が暗かったり、さっきまで他の眷族の更新をしていて疲れたのかと眼を擦って見るが……変わらない。
(更新しとるっ!?アビリティではなくスキルが!?)
目の前で未知が起きとる。スキルそのものが新しくなるという未知が。ロキはすかさずその聡明な頭で分析をした。
(待てや、ベルのスキルは【
元々は少しの早熟だった。思いの丈なんて縛りもなくただ成長を促す程度のもの。それでも破格だし英雄の存在に固執するなんてデメリットも付いていたのだが……綺麗に消えている。
(ベル……お前)
「成長したんやなぁ……」
「えっ!?ロキ様、何で泣いてるんですか!怖い、理由のわからない涙が怖いっ!?」
「あの無理して背伸びしとったベル坊が、年相応に生きるようになって嬉しい……っ!」
ロキからすれば無理して頑張っていた子供がようやく他のものに眼を向けるほどに成長したということ。そんなことはベルには伝わらないが。親の心子知らずである。ベルはそのままちょっと一人にさせてくれやと追い出されてしまった。
「ベル」
「あぁ、レフィーヤ…」
更新されたベルを待っていたのはレフィーヤだ。恋する乙女的に言うのならもう後は寝るだけだと言うのにお風呂に入って体を綺麗にして彼に見せるために身嗜みを整えて万全にしているのに何故気付かないといった具合である。
それなのに容姿には目ざとく誉めてくる。ベルは完璧なクソボケだった。
「ステータスの更新はどうでしたか?」
「何だろう、ロキ様泣いちゃって…」
「ロキが泣いた……?」
酔っ払ったとかならまだしも恩恵を更新して泣くようなことがある……?レフィーヤにとって想像も付かないことだった。不思議過ぎて思考がドツボにハマってしまいそうだったが、強引に振り払って本題を伝える。
見せたのは彼のよく使う愛剣だった。
「それよりもベル!これです!」
「それは、ブルドガングッ!無くしたと思ってたんだ…レフィーヤ、見つけてくれてありがとう!」
「っ!?どういたしまして…って違う!この剣、貴方が放って行ったんですよ!」
ベルは愛剣が戻ってきたことを喜んだ。さっきまで本気で失くしたかなと衝撃を受けていたからだ。結構前にガレスから貰った昇格祝い、取り戻せてラッキーである。
自分が貸していたことを忘れているベルにレフィーヤはあり得ないと詰め寄っていく。ベルは本気で忘れているようなのであの時の様子を話してあげた。
「放って?」
「はい、ミノタウロスを倒すために女の子に渡して…ってベル!?」
「あ、あぁ……なるほど。そっかありがとう」
折角話してあげていると言うのに、心ここに在らずな様子のベル。その姿を見ていると胸が騒ついた。余計なことだと思いながらも一歩踏み出して理由を尋ねた。
「後でその惚けている理由を教えてくださいね?私は貴方の
「うん」
私は貴方の
「いつもレフィーヤには助けてもらってばかりだ」
「全くです」
少し言葉を返されるだけで、彼を助けられて嬉しいなんて気持ちを抱いてしまうのだから。私はもう筋金入りに彼の事を好ましく思っているのだろう。彼と話しているだけで笑顔になれた。
「ねぇレフィーヤ?」
「はい?」
「とても綺麗だね…夜に見る君は誰よりも妖精らしく見えるよ」
不意打ちでそんなことを言われてしまって、月光に照らされた彼の顔を見る。穏やかで幸せそうでずっと見ていたい優しい顔だった。
「ねぇベルさん」
「シルさん?」
「
「……はい?」