歌姫に捧ぐユリの華   作:タニコウ

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告知です。次話投稿時に以下のタイトルに変えます。

歌姫に捧ぐユリの華

今回から原作キャラを少しずつ増やしていきます。(過去に関しては書く予定がないので、あとがきに現段階での原作キャラとの接点について書いてます)



#4 お出かけ

 

「天音、準備できた?」

「うん、大丈夫だよ。それじゃあ行こっか、寧々ちゃん」

 

 翌朝、いつも通りの朝を迎えた私たちは約束したお出かけの為に準備をして共に家を出た。こういう時、恋愛マンガとかだとわざわざ待ち合わせとかするみたいなんだよね。せっかく一緒にいられる時間を潰してまでする価値があるのかな?と、いつも私は考えているんだけど、どうなんだろう。

 一分一秒でも長く寧々ちゃんと一緒にいたいって思うのは変じゃないと思うんだけどな……。幼馴染みと恋人とでは考え方の違いとかあるのかも?でも、寧々ちゃんよりも仲良くなった、仲良くなりたいって思う人と出会ったことがないし……うん、私には分からないや。

 

「最近はあったかくなってきたね。春日和ってこんな感じのことを言うのかな?」

「……どうせ今年もすぐ暑くなるんでしょ」

 

 外に出た私たちは何となく手を繋ぎながら目的もなく、シブヤの街をぶらぶら歩く。3週間ぶりくらいに外に出た私たちの話題は必然的に、段々と暖かくなってきた季節の話題に焦点が当てられた。それにしても、夏か……。

 

「うわー、今から憂鬱だね。暑すぎると、私の喉の調子も悪くなっちゃうし……」

 

 喘息って、本当に寒暖差とか環境の変化に弱くてさ……例えば、冷房を効かせた部屋からアッツい外に出るだけで咳が止まらなくなるし、逆もまた同じ。乾燥にはめっぽう弱いし、激しい運動もできない。プールになんて入った日には、喉が弱くて免疫がないから体温の低下で風邪を引いて高熱も出てと、それはもう散々だったんだよね。

 とまぁ、こんな感じで身体の弱い私は、パパとママと寧々ちゃん。それに、寧々ちゃんのご両親。他にも沢山の人の助けを得て、私はこうして大好きな幼馴染みと好きなことをして、幸せに生きていけている。

 

「……今年も、お父さんに送り迎えして貰おうか?」

 

 私の顔を覗き込むようにして前屈みになった寧々ちゃんがそう言った。それに対して、私は首を振ってから口を開く。

 

「いやいや、寧々ちゃんのお父さんに悪いよ。それに、ここ半年は発作も起きてないんだよ?寒暖差で発作なんてそれこそ年単位で起こってないし大丈夫だよ。……そうだなー、もし、体調が崩れそうだなって感じたら、その時は相談するね」

「絶対だからね」

「もちろんだよ」

 

 私の目をジッと見ながら問い掛けてくる寧々ちゃんに、私は頷いて答える。私が変な意地を張って大切な人たちを悲しませる訳にはいかないしね。

 

 そんなことを話したり、他にもそれぞれが気になってる音楽の話をしていれば、気付けばショッピングモールに入っていて目の前には。

 

「あ、服屋さん。入ってみる?」

「別に、いいけど。天音は服が欲しかったの?」

「ん?別に?」

 

 ウィンドウショッピングって良い響きだよね。まぁ、良さそうなお洋服とか見つけたら買うんだけど。配信の収益とかのお陰でお金ならあるし。

 因みに、生活費は海外にいるパパとママが私と寧々ちゃんの二人分送ってくれてたりする。更に因みに、寧々ちゃんのご両親(一駅離れたところに住んでる)も、寧々ちゃんに私たち二人分の生活費を渡してくれてたりする。その事はちゃんとパパ達に説明したんだけど……なぜか、今も二重支払は続いてる。まぁ、余剰分は将来のために貯金しとけとのことだから、有り難く受け取って貯金してるけど。

 

 それはそうと、私たちは目に着いたセレクトショップに入る。ただ、ここで一つ問題が発生したのです。

 

「……なにこの、バカみたいに華やかな魔境。……天音……やっぱり、帰ろう……っ」

「……あー、うん、そうしよっか」

 

 そう、キラキラと圧倒的陽の雰囲気をしたセレクトショップの雰囲気は、寧々ちゃんの精神に大きなダメージを与えてしまったのだ。寧々ちゃんは、完全に怯えた表情で私の小さな背中へ隠れてしまった。まぁ、私の方が寧々ちゃんよりも小さいから、いくら縮こまっているとは言え、寧々ちゃんの身体は大きくはみ出ている。

 私の右腕を抱えるようにして掴んだ二本の腕はふるふると震え、声もまた震えている。顔は若干青ざめているのは想像した通りで、その上鋭い目つきでキョロキョロと周囲を警戒心剥き出しで見渡す姿はまさに迷子の仔猫。そんな寧々ちゃんの様子を見たことで、私は即座に撤退の姿勢を取ったのだった。

 

 と言うか、華やかな魔境って何?

 

「はい、お水。ゆっくり飲んでね?」

「……ありがとう。ごめんね、天音」

「ううん、気にしないで」

 

 華やかな魔境から抜け出した私たちは、一休みするべく近くのベンチに向かった。私は、近くにあった店舗でペットボトルのお水を買って寧々ちゃんに渡す。

 寧々ちゃんは受け取ったペットボトルを小さく傾けて飲む。私は寧々ちゃんの隣に座って周りを見る。今は春休み期間だからか、このショッピングモールにも学生が大勢いてそれなり以上の賑わいを見せていた。

 

「ごめんね、寧々ちゃん。正直、春休みを嘗めてたよ。平日なのにこんなに人がいるなんて思わなかった」

「……大丈夫、もう落ち着いたから。ありがとう、天音」

 

 一つタメ息を吐いて落ち着いた様子を見せた寧々ちゃんに私もまた安堵のタメ息を漏らす。そして、二人で今から落ち着いた雰囲気の喫茶店にでも行こうかと話していた時にそれは来た。

 

「あれ?キミ達二人だけ?てか、今からお茶するの?俺達も丁度休もうと思ってたから一緒に行かない?」

「いやー、キミ達かわいいね!名前なんて言うの?てか、LINEやってる?」

 

 金髪、耳にじゃらじゃらとピアスを着けたいかにもなナンパさんが二人、へらへらと軽薄そうな笑みを浮かべてやって来た。私は横目で寧々ちゃんを見る。

 

「……あ、あの……えっ、その、わ、わたし……」

 

 私どころか寧々ちゃんよりも頭一つ大きいナンパさん達に怯えた様子を見せてしどろもどろになる寧々ちゃん。只でさえ人見知りな寧々ちゃんがナンパなんてされたら、まぁこうなるよねって。

 私は、寧々ちゃんの前に立ってナンパさんに向かって口を開く。

 

「あの、すみません。私たち二人で遊びに来てて、今日は二人っきりで過ごそうかって話してたので、せっかく誘って頂いて申し訳ないんですけど、今回はお断りさせて貰えたらって思います……」

「えー?そんな連れないこと言わないでさー、一緒に行こうよー」

「人数は多い方が良いって言うじゃん?」

 

 いや、コレ人見知りとか関係なくなかなか怖いね。なんかね、笑顔でお誘いをしているように見えて、目が笑ってなくてさ……欲望?性欲?っていうの?それが透けて見えると言うか、とにかく怖い。

 今も、寧々ちゃんが私の服の裾を掴んでくれてるから何とか我慢できてるけど、今にも泣いてしまいそうになるくらいには本当に怖い。さっきよりも距離を詰めてくるナンパさんに自然と、私の視界が狭窄状態になって、呼吸も緊張で浅くなって――。

 

「こほっこほっ……!あの、本当に、ひゅっ、止めて……こほっ、ください……!」

 

 あ、これヤバい。発作来る感じだ。早く落ち着かないとと思って、呼吸を整えようとするも――。

 

「あれ、大丈夫?体調悪い感じ?ならいっそのこと俺たちと一緒にいた方がいいんじゃね?」

 

 ナンパさんに肩を掴まれて強引に引き寄せられそうになる。私はその力の強さに軽く恐怖を覚えて余計に混乱状態になることで、更にゼーゼーヒューヒューと喘鳴が喉から鳴る。酸素が上手く回らなくなってきたのか、既に狭まっていた視界が歪み、チカチカと明滅を始める。耳鳴りも鳴り、バクンバクンとした聞こえる筈のない私の心音がやけに大きく聞こえる。これはマズイな、なんて考えていた。

 

「……あ、あの!」

 

 そんな時、パシッと音がして私に置かれたナンパさんの手が強く叩かれて離れる。それと同時にグイッと後ろに強く引かれてぽすんと寧々ちゃんの胸に抱かれる。

 

「……け、警察。呼びますよ……!」

 

 そのまま、私の手を強く握って私を後ろに庇うようにして前に出た寧々ちゃんが、ナンパさんを睨み付けながら言う。繋がれた手から伝わる震えから、寧々ちゃんが私の為に勇気を出してくれたことが窺えて、こんな状況で、しかも発作も起きてるにも関わらず、ズキズキと鈍痛を訴えていた胸がぽかぽかと暖かくなったような錯覚を覚える。

 ただ、ナンパさんは寧々ちゃんに物理的拒絶を受けたからか絶賛青筋を浮かべて苛立ちが見えていた。

 

「チッ、こっちが下手に出れば調子にのりやがって」

 

 そう言って、此方へ距離を更に詰めてくるナンパさん達。私と寧々ちゃんの腕を掴もうと迫られ、私たちは互いに繋いだ手を強く握り合うことしかできない。もう、終わりかと目を瞑った時のことだった。

 

「はい、ストップストップ!ちょっと、そこのお二人さん?その子達のこと怖がらせちゃってるよ。ほら離れた離れた」

 

 そんな声と共に、私と寧々ちゃん、ナンパさんたちの間に人が割って入ってきた。恐怖で狭まった上に明滅する視界を動かしてその人を見る。その人は、カールが掛かったピンクの髪をサイドテールにしてて、膝上のミニスカートとフリルの多い服を着たかわいらしい格好をした子だった。

 顔は後ろ姿だから見えないけど、雰囲気からして顔面偏差値の高さをこれでもかと醸し出しているくらいのキラキラ陽パワーで溢れてた。

 

「ん?キミもかわいいじゃん!どう?キミも一緒に5人で遊びに行かない?」

「あはは、お誘いは嬉しいなー!でもさ――」

 

 ピンクの髪をした人は、ナンパさんに答えながら近寄り、手を掴むと軽く背伸びをして口をナンパさんの耳元まで持っていくと口を開くと囁くように小さな声を出す。

 

「――ボク、男だけど……それでも大丈夫かな?」

 

 ピンクの髪をした人が口を閉ざして離れると同時に、顔を青くさせるナンパさん二人。

 

「な、何だよ!気持ち悪いヤツだな!」

「わ、悪い!俺たち用事思い出したから!そ、それじゃ!」

 

 そんな捨て台詞を吐き捨てて去っていったナンパさん。私と寧々ちゃんは無言で互いを見つめ合ってから少し俯いて見えるピンクの髪の人を見る。それから、私の口から漏れる喘鳴を耳にし、未だに私の発作が落ち着いていないことに気付く。

 

「!天音、薬……!飲んで」

 

 寧々ちゃんは、急いで自分のバッグから私が発作を起こした時用のリリーバーを取り出すと私の口元へ当てる。私は未だに喘息特有の呼吸音を漏らしながら、寧々ちゃんの言葉に従って吸入薬を吸い込む。

 

「はい、水。ゆっくり飲んで」

「…………」

 

 薬を飲んだ私に寧々ちゃんは、飲み掛けの水が入ったペットボトルを差し出してくる。私はペットボトルに口をつけて、少し口に含んで飲み込む。それから、寧々ちゃんは私の手をゆっくり引いてベンチに座り直す。

 

「ちょっとお行儀わるいけど……靴脱いでくれる?」

「……こほっ、うん」

 

 少しずつ落ち着き始めた私は、寧々ちゃんの指示に従って靴を脱いで、ベンチに横たわる。頭は寧々ちゃんの膝上に誘導され、柔らかな感触に後頭部が包まれる。

 そして、ゆっくりと深く長い呼吸を意識して、呼吸をする。バクンバクンと煩く響き続けた心音と耳鳴りはゆっくりと静まり、視界もまた徐々に元の光景を取り戻していく。

 

「……ふぅ、だいぶ落ち着いたかな。ありがとう、寧々ちゃん」

「ううん、天音が良くなったならそれで十分だよ」

「そっか……」

 

 私は、寧々ちゃんにお礼を言ってから、顔を傾けて此方へ歩いてくるピンクの髪の人を見る。……にしても、やっぱり予想した通りの美人さんだね。目鼻がくっきりとしてて中性的って感じの子かな?

 なんてことを考えながら、私はピンクの髪の人にお礼を伝えるべく、口を開く。

 

「こんな体勢でごめんなさい。先ほどは助けて頂き、ありがとうございます」

「ううん、気にしないで良いよ!困った時はお互い様って言うでしょ?それより、体調は大丈夫そうかな?」

「はい、お陰さまで」

 

 私がピンクの髪の人に返事を返すと、笑顔を見せて揚々と頷いた。

 

「そっか!それは良かったよ!あ、ボクは暁山瑞希。キミたちの名前は?」

 

 ピンクの髪の人……暁山さんが名乗ったことで、私たちもそれに続くべく口を開く。……こう言うのって、本当だったら私から言うべきだったよね。ちょっと反省。

 

「私は白百合天音です。よろしくお願いします、暁山さん」

「く、草薙寧々、です。……よ、よろしくお願いします、暁山さん」

「白百合さんと草薙さんね、よろしく!」

 

 それから軽く雑談をしたところ、どうやら暁山さんは私たちと同じ神山高校に入学予定の新入生らしい。たまたま出掛けて出会った人が同じ学校に入学する同級生ってかなりレアなのでは?

 

「だったら、折角の縁ですし、暁山さんも一緒に行きませんか?さっきのお礼をさせてください」

 

 私がそんな提案をしてみれば、寧々ちゃんもこくこくと頷いて同意してくれる。暁山さんはそんな私たちを見て、何か考え込む様な様子を見せた。

 

「……………………うーん、じゃあ折角だしお邪魔させて貰おうかな!」

 

 こうして、私たちは同行者を一人確保した。私の中で密かに計画している寧々ちゃんお友達大量大作戦(類くん、司くん、咲希ちゃんを除く)の記念すべき一人目にしようと思います。

 





この度は百合に挟まる男を書いてしまい、大変申し訳ありませんでした。ナンパたちが腹を割いてお詫びします


おまけ 天音が現段階で関係を持ってる原作キャラ(メインのみ)

1.草薙寧々……我らが本作メインヒロイン。今更書くものでもないが、関係は幼馴染み。両者クソデカ好意を持っている。とある人から時折指導を受けているため、歌唱力も役者としての技量も度胸も原作より遥かに上がっている。ただ、人見知りは継続している模様
 
2.神代類……寧々経由で知り合った幼馴染み2号。中学生から多少疎遠になったが、それでも普通に幼馴染み三人で遊ぶ程度には仲良し
 
3.青柳冬弥……パパ同士の繋がりでの知り合い。婚約の話も出ていたことから、寧々がいなかったら冬弥の許嫁になっていた可能性大。たまにデュエットする程度には仲良しである。そのせいか、クラシックに対する気持ちが多少マシになっているため、メインストーリーの難易度が上がる……かも?まぁ、東雲弟くんが何とかするでしょう。
 
4.天馬兄弟……入院時に同室だったことで知り合った。咲希が病院を変えてからは疎遠になってる。ただ、滅茶苦茶仲良し。寧々ともお友達である(入院した天音のお見舞いに来た時に遭遇……結構なワンダショストーリー改変で、これからどうしようか悩んでる)
 
5.星乃一歌……入院時に知り合った。街角であったら話す程度の仲。寧々とも顔見知り。原作からは特に変化なし
 
6.宵崎奏……天音が作曲の勉強をする時にパパが近場で作曲家を探した結果知り合った。親友と呼べるレベルには仲良し。滅茶苦茶原作改変されてる被害者でもある。天音パパがパパのメンタルケアを頑張ったお陰でパパは倒れてないし、出席率は低いが学校(神高)にも通ってる。夜な夜なパパ同士で娘自慢をしているのだとか。パパと一緒に作曲できてハッピーライフを送ってる。消えたいとは思ってない。……奏の部屋で天音が重めな発作を起こして吐血したことがあり、日頃から換気と掃除機だけはするようにしている
 
7.望月穂波……宵崎家の家政婦さん。お友達。咲希から話を聞いていたことで天音と寧々のことを知っている(寧々とは面識ないが、配信で一方的に知っている)。奏と奏パパのお部屋が汚くて仕事にやりごたえがある模様

8.暁山瑞希……今話参照。今のところ原作通り

モモジャン以外のユニットに原作開始時で何らかの伝手がある化け物ができてて草生える。
なお、寧々(本人)と瑞希以外の知り合い達は天音のチャンネルを登録しているし、可能な限り(類、咲希、奏はほぼ確実に)配信は生で見ているため、前々回の寧々の醜態を見られている可能性あり。
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