歌姫に捧ぐユリの華   作:タニコウ

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日曜日は草薙寧々ちゃんの誕生日でございましてよ

potatoになっていくラストの寧々のキメ顔が最高にかわいいと思います。前回ラストの寧々のドヤ顔はこれをイメージして貰えばと思います



#6 動画撮影その1

 

 瑞希さんと別れて、私たちは何事もなく帰宅した。私は配信部屋からアコギを、冷蔵庫からペットボトルのお茶を二本取り出して二階へ昇る。そして、突き当たりの部屋に入る。この部屋は簡単なトレーニングルームになっていて、ランニングマシーンが二台とベンチプレスなんかのトレーニング機器が乱雑に置かれている。

 因みに、この部屋も配信部屋ほどではないけど防音機能が備わっている。何なら我が家全体に防音加工がされている。私とパパが所構わずギターやバイオリンをギュインギュインさせた結果だね。あの時のママは鬼だった……。

 

 私が部屋に入ると、中ではランニングマシーンに乗って走っている寧々ちゃんが目に入る。寧々ちゃんは緑色のトレーニングウェアに黒のショートパンツとトレーニング用のラフな格好に着替えている。ランニングマシーンは、最初だからかジョギング程度の速さを出しているみたい。

 

「寧々ちゃん、ここにお茶置いとくね」

「……あ、ありがとう天音」

 

 私は、休憩用のベンチにペットボトルを置いてから腰を掛ける。寧々ちゃんに声を掛けて返事が返ってきたのを確認してから、持ってきたアコギのメンテを始める。

 まずは、ネックが曲がったり反っていないか、フレットに傷が付いていないか、ナットの損耗具合などを良く注意しながら全体的に目視で確認する。…………うん、大丈夫そう。

 

 ――♪

 

 次に、一本ずつ弦を軽く弾いて弦の状態を確認してから、弦クリーナーを挟んで汚れを落としていく。一回使うごとにちゃんとクロスで拭いてはいるんだけどね、どうしても拭き残りとか出来ちゃうからたまにやる必要があるんだよね。しっかりやらないとすぐ切れちゃうからさ。

 弦をキレイにしたらボディをクロスで乾拭きをする。一度、乾拭きをしたらクロスを新しいのに変えてポリッシュを吹き掛けてからもう一度ボディを拭いていく。汚れが落ちて、ボディに艶が出たのを確認したら完成。

 

 ボディ内部に埃は……うん、溜まってない。因みに、埃が少なかったらクイックルワイパーみたいなので簡単に取れるよ。ただ、結構溜まってたら変に掃除機だったり拭き取ろうとしないで、リペアショップに持っていこう。

 もしくは、エアコンプレッサーを借りてギターに吹き掛けるのでも良いよ。まぁ、無理せず専門家に任せるのが一番だから、エアコンプレッサーはあまりオススメしないね。

 

 指板とフレットもメンテを掛けて終了。軽くチューニングしてから、弦を爪弾いて音が変になっていないかも確認する。完璧……!よし、じゃあ。

 

「寧々ちゃん、一曲いっちゃおう!」

「……え、今メンテしたのに?」

「メンテ中はギターに触りたい欲が溜まるんだよ、これも愛なんじゃよ寧々ちゃん」

 

 私は、ランニングマシーンに乗ってる寧々ちゃんにお誘いを掛ける。返ってきた言葉はご覧の通り。でもね、ギター持ちには分かると思うんだけど、メンテナンスを掛けたことでピカピカに光る愛ギターちゃんを見ると無性に演奏したくなっちゃうんだよね。メンテ中も愛を籠めてるからなのかな?もしや、私の恋人はギターだった?と言うわけで――。

 

「スキマ○イッチの雫でいい?」

「……わたし、走ってるんだけど……曲の雰囲気とアンマッチ過ぎない?」

「じゃあ、XJA○ANの紅?」

「……アコギ一本で紅?」

「うん、弾いてみたとかあったし、ちゃんと耳コピしてきたよ?」

「……紅はピアノじゃない?やるとしても。……そもそも、わたしの声質と合わないし……走りながらシャウトとか出来ないし……そもそも、わたし、シャウト苦手」

 

 むぅ……注文が多い。じゃあ、あの曲ならいけるかも?

 

「髭○のイエスタデイは?」

「……まぁ、それなら」

 

 よしきた、じゃあカメラを私と寧々ちゃんが良い具合に映る位置に置いて……うん、問題なく映ってるね。容量もバッテリーも大丈夫、と。後は、寧々ちゃんのシャツの襟にピンマイクをセットして、私の前にコンデンサーマイクもセットして、と。これだけで私のパソコンに録音データが送られる……らしい。類くんが言ってた。

 

「じゃあ、いくよー」

「……うん」

 

 私は寧々ちゃんと目を合わせてタイミングを図ると、アコギにピックを当てて前奏を弾いていく。テンポとかは取り敢えず勘でリズムを崩さないことだけを意識する。寧々ちゃんなら必ず合わせてくれるから。

 

 ――♪

 

 前奏を終えてのAメロは寧々ちゃんの声よりも小さく溜める感じで弾く。アルペジオを弱めに入れることで、切なさを演出してみる。……良い感じ。

 Bメロは若干弦の弾く速さを強くして、ノリを上げていく。寧々ちゃんの歌もギアを一つ上げて高音の伸びがとても良い。サビ前には、ミュートを掛けて何も音を残さず溜めを作る。こうすることで、寧々ちゃんのビブラートの余韻がサビの直前まで残る。寧々ちゃんと目があって、互いに微笑む。

 そして、その余韻を消し飛ばすように強めのストロークを弦に叩き付けてサビへと入る。一気にぶち上がったテンションで私の指が暴れ散らかりそうになるのを、これはアコギの落ち着いたアレンジだからと理性で必死に抑える。テンションを落ち着かせる意味も兼ねて、寧々ちゃんの歌に合わせるように私もハモリを入れる。

 

 走ったまま歌っているにも関わらず一切ブレることのない歌声。透き通るような高音に、気持ちの良い脳ミソまで突き抜けるようなビブラート。ズレることのない音程に、私の演奏に完璧に着いてくるリズム感。何よりも、声に籠められた『楽しい』と言う感情がダイレクトに伝わってくる歌い方。

 

 ――♪

 

 あぁ、本当に。寧々ちゃんは凄いな……。いつもはあんなに臆病で、引っ込み思案で私の後ろをずっと着いてくるような子なのに。……ここぞと言う場面での度胸は誰にも負けない、そんな子で。周りに輝き(太陽)が足りないのならば、自分がその輝きを奪って光り輝いてやるとばかりに一歩を踏み出して舞台へ立てる。そして、その絶対的な歌唱力と演技で本当に輝く姿はまるで夜を照らす月みたいで。その姿が私にとってはとても……とても眩しくて。羨ましくて。でも、この世のどんなものよりも美しかった。

 だから、私は病弱だから仕方ない、なんて理由を付けて見ていることしか出来なかった。自分の手でその光を壊してしまうのが怖かった。

 

『………………』

『ね、寧々ちゃん……?』

 

 ……でも、あの舞台でその光は失われた。舞台の真ん中で呆然とした表情で立つ寧々ちゃんを、私はただ見ていることしか出来なかった。セリフを忘れるっていう、誰にでも――それこそ、プロでも起こるような仕方のないミスだった。ただ、それが起こったのが本番で……しかも、寧々ちゃんが初めての主役を務める大舞台でのことだった。ただそれだけのこと。

 でも、気弱な寧々ちゃんの自信とプライドを粉々に打ち砕くのには十分過ぎる出来事で。それから、寧々ちゃんは舞台から下りてしまった。もしこれが、二度目の舞台だったり僅かな成功体験でもあれば、そうではなかったかもしれない。もし……もし、私が寧々ちゃんと同じ舞台に立つことを選んでいたのなら、こうはならなかったのかもしれない……。

 

 だから、私は――――

 

 

「……一発録りにしては結構な出来じゃない?」

「そうだね、このまま編集とかしないでそのまま投稿しちゃおっか」

 

 演奏を終えた私たちは、寧々ちゃんの体力トレーニングが終わるまで待ってから一緒にお風呂に入ってから録音した音源と動画を確認した。音声データと録画データは別々だったけど、類くんお手製のソフトで何とかしました。寧々ちゃんの音声データにランニングマシーンの音とか雑音が入っちゃってたけど、そこも類くんお手製のソフトで何とかしました。

 ギターも何だけど歌の録音って、時間を置いて確認したらスッゴい下手に感じるものなんだ。特に一発目は。だけど、今回はそんなことなくて、私の伴奏と寧々ちゃんの歌がピッタリ合っていてとても良い出来だって自信を持って言えるものだった。

 

【一発録り】髭○のイエスタデイを走りながら歌ってみた

 

 こんな感じのタイトルで動画を投稿しました。反響は、ランニングマシーンで走ってる寧々ちゃんとその横でアコギを弾いている私とか言うクッソシュールな絵面と、そのシュールな絵面からお出しされたとは到底思えない寧々ちゃんの完璧な歌声によって、かなり良い評価が貰えました。チャンネル登録者も順当に300人くらい増えたので、とても良かったです(小並感)

 





さすがに曲名出しただけだし、歌詞コードはいらないですよね?歌詞出してないし。
……言いたいことは分かります。プロセカ二次なのに、何で普通にバンドの曲選んどんねんって。しかも、初の音楽描写で。……でもね、僕ってプロセカ収録曲以外のボカロ知識が乏しいんだもん……。
あと、拙者ギター初心者ゆえ表現力がカスで大変申し訳なく。

実は、天音のモノローグで寧々のことを語るパート(「あぁ、本当に。」から、「だから、私は――」までのところ)が倍くらいあったんですけど、天音の自我が出まくりのラブレターになってたのでカットしました。作者なのに、読み返した時に想いが重すぎて砂糖を吐きそうになりました……。こんな序盤でお出しするものではないので、コピペして保管しておきます。しかるべき時にお出しするので、皆さんにも砂糖を吐いて貰います。
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