アドT指揮官さん、nkoさん、13FAさんお気に入り登録ありがとうございます。
コメント、お気に入り登録お願いします。
ノグリキ空港強襲作戦の9日前 間宮海峡
ロシア太平洋艦隊 総旗艦ヴァリャーグ*1艦橋
重航空巡洋艦ヴァリャーグはスラヴァ級やソヴレメンヌイ級を引き連れて、青く澄んだ海を切り裂いていた。
「現在の状況は?」
副長のブリオルト・チェルノブレスが訪ねる。
「レーダーに敵影なし。エンジン良好。」
「第800独立艦上対潜ヘリコプター飛行隊、敵艦隊発見できず。」
「引き続き哨戒任務に当たらせろ。」
「はっ!」
その時、艦橋の扉が開かれる。そこに立っていたのは艦長のオゴニョーク・フレノビナだった。先程まで休息を取っていたとは思えないほどしっかりとした身だしなみだ。
「お疲れ様であります。艦長。」
「あぁ。ご苦労だった。」
「艦長。状況を……。」
チェルノブレスの話を遮るようにオゴニョークは右手を上げる。
「大丈夫だ。状況については把握している。」
「そうでしたか。失礼しました。」
オゴニョークは眼を細めた。
「チェルノブレス。お前は日本とのことになると先走りすぎる。落ち着け。」
「……承知しました。」
彼は不満げに答える。実はチェルノブレス、典型的な反日主義者であり、日本に対しては徹底抗戦による樺太の完全奪還を訴えてきた。彼にとって、この樺太をめぐる争いは彼の考えを具現化したようなものなのだ。
「艦長。第800独立艦上対潜ヘリコプター飛行隊が目標の敵を発見。」
オゴニョークは安堵の顔を見せる。見つけてしまえば後は攻撃するのみであるからだ。
「よろしい。航空隊を発艦させろ。」
「はっ!」
ヴァリャーグは航空機の発艦作業に移行。飛行甲板上の飛行甲板作業員が慌ただしく動き始める。
数分後、飛行甲板にはKh−19*2を搭載したSu-33が発艦を待っていた。次の瞬間、2基のAL-31F-M1が火を吹き、重量20000kgの機体を空へ舞い上げる。それに続くように残りの2機のSu-33が発艦してゆく。
さらに9機のSu-33が後ろで発艦準備を進める。
「………。」
オゴニョークは飛行甲板に眼を落とす。艦載機が1機もいない光景についに戦争を実感した。
ロシア太平洋艦隊より280km
第12空母打撃群 旗艦雲龍
雲龍乗組員のほとんどの姿は食堂にあった。皆が一列に規則正しく並ぶ先には雲龍名物の焼き豆腐ドーナツ*3が販売されていた。
多くの乗組員が購入を待つ中…
「焼き豆腐ドーナツ完売でーす!」
並んでいた乗組員達に絶望の顔が現れる。同時に鋭い狩人の眼に変わる。
そして毎回恒例、焼き豆腐ドーナツ争奪戦が開幕した。
ある者は購入者に襲いかかり、ある者はじゃんけんで勝敗を決める。
そんな平和な争いの中、本物の争いのゴングがなる。
ファーン! ファーン! ファーン!
『総員戦闘配置!繰り返す。総員戦闘配置!』
食堂で平和な争いをしていた者たちは争う手を止め、自分の部署に走り出す。
同じ様にCICでも乗員が慌ただしく駆け込んでくる。
「状況は?!」
「対空レーダー上に敵機複数。」
「対水上レーダーにも敵影多数。」
「なんだと……。」
艦橋上面にあるモニターには12機の敵影と、6隻の軍艦の姿が映し出される。
「敵機、マッハ1.08で接近中。距離250。」
さらにレーダーに影が現れる。
「敵と思われる艦影をレーダー上で視認。」
「了解。対艦、対空戦闘よーい!」
「対艦、対空戦闘よーい!」
対艦、対空戦闘が空母打撃群全体に下命され、各艦が準備に取り掛かる。
「各艦、対艦、対空戦闘よーい良し!」
「敵機、散開。左右に展開していきます。」
点滅する光が艦隊を挟み込む。
「左舷敵機をα群、右舷敵機をβ群とし、左舷艦はα群にSM−2JS、12発発射。右舷艦は攻撃をまて。」
「了解。」
攻撃の指示を受けた右舷を担当する駆逐艦野風と波風がSM−2JSを発射する。
「野風、波風ともにSM−2JS発射完了。」
「α群よりミサイルと思われる飛翔体分離。弾数12発。」
「対空戦闘。本艦、ESSM発射弾数16発。発射。」
「サルボー!」
艦長の命令に従い、雲龍側面のESSMが敵ミサイルに火を噴く。
「ミサイルに対して飛翔中。命中まで3分。」
「β群より飛翔体分離。」
『こちら高雄、霞とともに対空戦闘に加わる。』
右舷艦の高雄と霞は独自の判断で敵ミサイルに対して対空戦闘を行う。
「SM−2JSが敵編隊に着弾。着弾まで3…2…1…マーク、インターセプト!スプラッシュ4。リーク2!」
「RAM近SAM発射用意。」
『野風、波風。主砲による対空戦闘を行う!』
野風、波風はMK.45 62口径5インチ単装砲Mod4で対空戦闘を行う。
「ESSM、敵ミサイルに着弾。3…2…1…マーク、インターセプト。スプラッシュ8、リーク4!」
点滅するモニターの光はまだ消えない。
「敵編隊のキル確認。已然として飛翔体、4発接近中。」
残りの敵機はすでに撃墜されたが、彼らが残していったミサイルは未だに接近していた。
ついにKh−19はRAM近SAMの射程に侵入。2発を撃墜するが、残りの2発はさらに接近する。
「2発そのまま本艦に向けて飛翔中。」
艦隊でCIWSや5インチ砲で対空戦闘を行うが、2発が対空砲火の中をくぐり抜け接近する。
「総員衝撃に備え!」
次の瞬間、ドーン!!という音が2音。2発のKh−19は艦の前方に着弾。強い衝撃が雲龍艦内に響き渡る。
「被害状況知らせ!」
「第5居住区間及び第6居住区間に火災発生!」
「第2カタパルト電力供給管破損!」
「第2SIWS!使用不可!」
艦内では火災の消火作業やカタパルトの復旧作業が急がれた。
「左舷より2発の飛翔体。本艦に近づく!」
高雄と霞が撃ち漏らしたミサイルが負傷した雲龍へ向かって来る。
『こちら高雄!前に出て盾になる!』
「…っ!?やめろ!」
雲龍艦長が制止するものの高雄は増速。雲龍の左舷前方へ躍り出る。
「高雄命中コース!」
「引けぇ!高雄!」
その直後…
ドーン!!
「高雄に命中…。被害甚大。」
高雄は艦中央部に2発を被弾した。1発は機関部を破壊。もう一発はCICを直撃。高雄艦長以下CIC担当員が全員死亡した。さらに火災が次々と発生。艦内は火の海となった。
「………っ!ダメージコントロールを取りながら後退する!回頭!面舵いっぱい!!高雄は消火活動を優先。平行して曳航用意をせよ!」
「面舵いっぱい!」
「霞が高雄へ曳航やもい発射!現在作業中!」
10分後、高雄の曳航作業が終了した第12空母打撃群は回頭し敵艦隊に背を向けながら後退を始めた。高雄はこのころ消火に成功しており、幸い傾斜角は2度ほどに収まった。しかし回頭を終えた雲龍のレーダーは新たな影を発見した。
「野風がレーダーコンタクト!その数6!」
雲龍CICには野風と共有された画面が写し出されていた。
「なんだ!敵艦か?!」
「いいえ!長門です!戦艦長門です!」
レーダーに映っていた影は原子力戦艦長門率いる第4戦艦打撃群のものであった。
「何だと!?」
「長門より通信!」
「回線開け!」
『こちら第4戦艦打撃群、長門。これより貴艦の援護を行う。貴艦に当たっては補給線まで撤退の後、帰投せよ。』
「っ!……感謝する!」
1時間後、第12空母打撃群と第4戦艦打撃群はすれ違う。
雲龍達は微速の6ノット、長門達は最大戦速の30ノット。しかしそれでも雲龍乗員には止まって見えた。
ある種の英雄を見るように。その