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第4艦隊旗艦 長門CIC
救援に駆けつけた長門以下第4戦隊打撃群は敵艦隊に対して前進続け、敵太平洋艦隊より60キロの位置まで接近した。この時、艦隊は第一戦速、18ノットまで減速していた。
「敵艦隊レーダーにて捕捉。」
CICの画面には敵の太平洋艦隊が映し出された。
「やっとか。」
「艦長。いかが致しますか?」
海神艦長は少し悩む仕草を見せるが、すぐに決断を下す。
「……本艦は高松とともに敵艦隊に対しての対艦戦闘を行う。」
「了解。対艦戦闘よーい!」
長門は敵艦隊に向けて主砲を回し始める。
対艦戦闘の準備が整った長門は高松とともに攻撃の機会を伺う。
「主砲発射よーい!弾種08式徹甲弾*1!」
「了解!08式徹甲弾装填よろし!」
海神艦長は主砲の準備ができたことを確認すると長門と高松を第2戦速、約20ノットまで増速した。
「諸元はレーダー観測座標を使用。距離60kmで測距せよ。」
「座標入力よし!」
長門の91式45口径51cm連装砲は敵艦のアドミラル・フロタ・ロボフに向けられている。
「打ち方始め!目標敵艦アドミラル・フロタ・ロボフ!」
「了解!目標アドミラル・フロタ・ロボフ!」
主砲の発射が近づくと甲板には警報が鳴り響く。
「主砲!てぇ!!」
艦長の号令とともに主砲の発射トリガーが引かれる。
次の瞬間、ドゴォォォォォォォン!!!!という激しい音とともに船体が揺れ、軋む音が艦内に鳴り響く。
その瞬間は世界最大の主砲が火を噴いた瞬間だった。
第12空母打撃群と第4戦艦打撃群のすれ違いより1時間半
ロシア太平洋艦隊 総旗艦ヴァリャーグ
日本空母打撃群の攻撃成功を受け、艦隊は1時間経った頃まではお祭り騒ぎであった。
しかし30分前、太平洋艦隊は新たな脅威に直面した。
そう、第4戦艦打撃群だ。
「お疲れ様であります。艦長。」
オゴニョークは焦ったようすで入ってくる。頭にはまだ寝癖がついている。
「今、どうなっている。」
「10分前に発艦したKa-31が敵と見られる艦影を同機のレーダーで多数視認。距離60kmです。」
オゴニョークは眉間にシワを作る。
この寸前まで太平洋艦隊は重大なミスを抱えてしまっていた。それはKa-31早期警戒ヘリコプターが上空にいなかったのだ。先ほどの空母攻撃で全機を一斉発艦させていたことが裏目にでた。目先の利益に取り憑かれていたのである。
「くそっ!増援を準備していたか!」
強く机を叩く。
「艦長!攻撃されますか?」
「あぁ。もちろんだ。アドミラル・フロタ・ロボフに攻撃の命令を飛ばせ!今すぐだ!」
その場の空気が揺れるほどの剣幕を張る。
隣を航行するアドミラル・フロタ・ロボフは順調に攻撃準備を進め、P-1000の右舷発射管を開く。
その時だった。
ドーン!!と言う衝撃と熱波がヴァリャーグのガラス越しに伝わってくる。
「何事だ!?」
「攻撃です!敵の攻撃です!」
オゴニョークはアドミラル・フロタ・ロボフに目を向ける。
発射準備を進めていた右舷発射管付近で火災が発生。引火寸前の状態に陥っていた。さらに貫通した弾により、重要区画が破壊されており、艦首の浮力は0に近しいものとなった。
「……っ。この距離を当てて来るのか……。」
「艦長。現在、アドミラル・フロタ・ロボフは火災が全体に広がっており、復旧不可と現場より報告が……。」
「アドミラル・フロタ・ロボフに退艦命令を。」
ただ窓の外で虚しく燃え盛りアドミラル・フロタ・ロボフ。もうその艦が海を切り裂くことはなかった。
「敵の第二射を警戒!艦隊にて回避運動!」
艦橋の操舵員は目一杯、舵輪を回す。
しかしヴァリャーグの舵の効きは劣悪な物となっており、変化はすぐには現れない。
効き始めた頃には大傾斜しながら旋回する。
その時だった。左舷側で巨大な水柱が上がり、艦に水飛沫を浴びせた。。
「……っ!被害報告!」
「左舷側に敵弾!命中なし!被害は報告されていません!」
オゴニョークは少しホッとした表情を見せる。
「この好機を逃すな!反撃用意!」
「現在、ベスストラーシュヌイが反撃準備を進めています。」
「準備が終わり次第、攻撃せよ!」
「はっ!」
長門CIC
「1射目、敵巡洋艦に1発の命中弾。撃沈したものと思われます。2射目は夾叉。敵艦隊は回避運動を開始しました。」
「砲術長。良くやった。」
レーダー測距があったとはいえ、初弾で命中弾を得られたことは長門乗員の練度によるものに他ならない。日本戦艦最古参の名は伊達ではなかった。
「敵ベスストラーシュヌイより飛翔体分離!数8!距離50km!マッハ3で突っ込んで来ます!」
「対空戦闘始め!」
艦内にアラームが響く。耳に直接届く甲高い音だ。
「ECM起動!」
「諸元入力良し!」
「前甲板、VLS!5〜10番!発射弾数10発!SM−2JS発射始め!てぇ!!」
長門はミサイルに対処するためにSM−2JSを発射。回避運動も開始する。
「ミサイル発射完了!着弾まで60秒!」
「主砲発射用意!主砲弾そのまま!目標ベスストラーシュヌイ!てぇ!」
またドゴォォォォォォォン!!!!という音とともに砲弾が放たれる。
「12式SSM発射準備始め!」
「高松も12式SSM発射準備を始めました!」
艦内にモーター音が響く。
「SM−2JS!着弾まで3…2…1…マークインターセプト!敵ミサイル7発撃墜!1発速度そのまま突っ込んで来ます!距離5km!」
「対空防御!」
舷側のRAM近SAMや25mm機関砲が敵ミサイルに対して弾幕を張る。
艦橋の乗員は空を見上げる。その時1つの爆発。
「敵ミサイル全弾撃墜!」
「よしっ!」
艦橋要員は胸を撫で下ろした。
「12式SSM発射準備完了!」
『こちら高松。12式SSM発射準備完了。発射指示を待つ。』
「目標!敵旗艦ヴァリャーグ!発射弾数8発!てぇ!」
「発射ぁ!!」
艦長の指示を合図に12式SSM、8発がヴァリャーグに向かって発射された。
その振動は戦艦であっても艦内に響き渡る。発射煙を纏った戦艦はさらに禍々しい雰囲気を漂わせていた。
ロシア太平洋艦隊 総旗艦ヴァリャーグ艦橋
「ミサイル命中には至らず!」
「くそっ!」
オゴニョークはミサイルが命中しなかったことを嘆く。隣のアドミラル・フロタ・ロボフはもう艦首を海に沈めながらその場にとどまっていた。さらに護衛中のベスストラーシュヌイからの爆発音。
「何事だ!」
「ベスストラーシュヌイに敵砲弾命中!」
オゴニョークは急いでベスストラーシュヌイに目をやる。
同艦は砲弾を艦後部の右側面に至近弾。
爆発の水圧でスクリューシャフトを損傷した影響でスクリューが船底を切り刻み、浸水を引き起こした。これにより機関の停止を余儀なくされてしまったのだ。
「敵艦隊より飛翔体分離!速度マッハ5です!」
「対空戦闘!あるだけミサイルを撃て!!」
ボエヴォイが9M38M2 シュチーリ1を発射し、3発を迎撃するが残りの5発はボエヴォイの対空ミサイル網を突破。艦隊へ近づく。
「ミサイル!レーダーロスト!」
「なに!?」
レーダーには先ほどまでのミサイルを表す、光の点が消えていた。
「Ka-31がミサイルを再探知!シースキミングモードです!」
12式SSMは対象艦との距離を自ら計算し、距離に応じてシースキニングモードに移行するように設計されており、レーダー上より姿を消すようになっている。
「ミサイル!速度そのまま!5発突っ込んで来ます!」
ロシア太平洋艦隊はコールチクやAK−630で近接対空戦闘を行うが12式SSMは一向に墜ちる気配はない。
そしてそのまま…
ドーン!!と言う音を立てながら、ヴァリャーグの左舷前方と左舷後方にミサイルが命中。
「クソッ……。被害状況は!」
「艦前方で火災が発生!」
「艦後部でも火災発生!コールチク対空砲が機能停止!」
「スクリューシャフトに歪みが発生!」
「第1機関室にて配管が損傷!速力13ノットに低下!」
「艦、傾斜角9度!」
ヴァリャーグの戦闘能力は失われたに等しかった。
「艦隊、反転用意。」
艦長が呟く。
「か、艦長…。なんと?」
「艦隊、反転!母港へ向かう!日本艦隊に戦闘停止の話を伝えろ。」
「艦長!私はそんなこと認められません!」
副艦長のチェルノブレスが反論する。
「だがなチェルノブレス。皆の命を守るためにはこれしかないんだ。」
「しかし艦長!我が艦隊にはまだボエヴォイが残っています!なぜ!今になって反転するのですか!?」
「わかってくれ。チェルノブレス。」
チェルノブレスを諭す様にオゴニョークは話す。
しかし怒り心頭のチェルノブレスは腰に携えたMP−443を抜き、銃口を艦長のオゴニョークに向けた。
「あなたには祖国に尽くそうという心はないのですね。わかりました。」
そう言うとチェルノブレスは自分のこめかみにMP−443の銃口を当てる。
「やめろ!チェルノブレス!」
オゴニョークや艦橋乗組員が止めようとするが、間に合わず虚空にパン!と言う音が響く。
チェルノブレスは力なく倒れ込み、艦橋に血溜まりができる。その瞬間、時が止まった様に艦橋が静寂に包まれる。
「チェルノブレス!しっかりしろ!早く!早く救護兵を呼べ!」
止まった時が動き出す様に、艦橋内は騒然とする。
しかしすぐにチェルノブレスの死亡が確認された。
その後、艦隊は反転。ロシア本国へ帰還した。
第二次間宮海峡海戦はこうして幕を下ろした。
ロシア側は海軍に打撃を受け、軍中央情報庁の情報では、約4ヶ月間は太平洋艦隊は作戦行動ができなくたった。
しかし日本国海軍も貴重な空母は小破、巡洋艦に至っては大破となってしまい、樺太方面に展開していた空母打撃群に空きができてしまった。日本国軍統合総省は間宮海峡ではなく、来るノグリキ空港強襲作戦に向け、オホーツク海に第8空母打撃群の派遣を決定。
第8空母打撃群は8日後にオホーツク海へ到着。これをもってノグリキ空港強襲作戦が開始された。