前話に引き続き、大遅延をしてしまい誠に申し訳ありません!!!
言い訳にはなりますが執筆する意欲が全くと言っていい程沸かず、そのままズルズルと時間が過ぎていった次第であります。代わりと言ってはなんですが今回の話はいつもよりも長い話になっています。
月一投稿は出来るだけ。出来るだけ守るように尽力致します。これからの新世界日本国も読んでいただけると幸いです。
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また長くなってしまいましたがこれからもX2をよろしくお願いします。
日が落ち始めたオチャコフ。市内で鳴り響くミコライウでの戦闘音。ミサイルや砲弾の着弾音。建物が崩れる音。しかしオチャコフの人々にとってその音は日常だった。果物を手に取り、吟味する人。道端で世間話を交わす人達。誰も気にする様子はない。戦争の音は生活音に組み込まれていた。
2020年4月20日15:20 オチャコフ市内
市役所の近隣に立っている一軒の民家。一見すれば何の変哲もないただの建物だ。しかし中は民家とは思えない様子だった。明らかに場違いな戦闘服を着たウクライナ兵達。机上には無造作に並べられた戦況図。室内は落ち始めた日によって照らされ、茜色に染まっていた。
「大隊長。第2防空中隊と第4防空中隊が補給に入りました。」
「了解した。できるだけ急ぐように伝えてくれ。防空に穴を空けたくない。」
「はっ!」
補給の報告を受けて戦況図にマーカーで状況を書き足すのは第7独立防空ミサイル大隊の大隊長。コヴァレンコ・ダニーロ少佐。彼は開戦当時からこのオチャコフの地を守り抜いてきた歴戦の指揮官だ。そんな彼ですら経験したことのない報告を受けることになる。
「大隊長!緊急です!レーダー・指揮中隊より報告!黒海のロシア艦隊より発射されたとみられるミサイルを10発、最大探知距離にて発見!さらに航空機が12機接近中!」
「いつものドローンではないのか?」
「はい。レーダー・指揮中隊によれば全てドローンとは異なるレーダー反射であったと。」
状況は絶望的だった。いくらUNW-2D射撃統制レーダーの最大探知距離である100kmで探知できたとはいえ、第2防空中隊と第4防空中隊が補給に入り、防空任務を再開するには最短でも5分はかかってしまう。さらに着弾までに残された時間は
「至急、市内に空襲警報。速やかに防空壕に避難誘導だ。」
脳内に響く甲高い音が市内を包む。
空襲警報の発令から3分が経った頃には市内を満たしていた日常は姿を消した。
「市内、避難を完了。」
「第1防空中隊と第3防空中隊は何をしている?」
「発射準備は全て完了。あとは目標指示と射撃命令を待つのみと!」
この時、3M14TEは約40kmの地点まで飛翔を続けていた。残された時間は
「目標、接近する敵巡航ミサイル。射撃を許可する。」
号令が下った瞬間、S-125-2D1の弾頭が勢いよく飛び出す。市街地からは空に伸びる無数の白い線がはっきりと見える。
「第1防空中隊と第3防空中隊、射撃完了。着弾まであと37秒!」
「よろしい。全防空中隊員に安全最優先での行動を通達。無理にとどまる必要はない。」
「大隊長!着弾まで残り5秒!」
壁に掛けられた時計の秒針が正しく時を刻む。
「着弾、今!」
市内に響く爆発音。
「6発撃墜。4発そのまま着弾コース!」
「衝撃に備えろ!」
ダニーロ少佐が声を張る。
すぐに一発目が着弾。轟音とともに土砂が噴き上がる。
続いて二発目、三発目。
間隔を置かずに爆発が連続し、黒煙と土煙が空を覆った。飛散した土砂が周囲に降り注ぎ、爆風によって草木が激しく揺さぶられる。
そして四発目。
最後の爆発音が市内に響き渡り、地面から立ち上った巨大な土煙が立ち込めた。
「被害は!」
「司令部への被害は確認できません!」
「第1防空中隊及び第4防空中隊の両陣地にミサイル着弾!各中隊員との連絡途絶!」
通信士の握る無線機からは規則的なホワイトノイズが虚しく聞こえる。
「司令部を放棄する。総員、撤退準備。」
司令部に重苦しい空気が流れる。合理的に考えれば司令部を放棄し、再建することが最善である。それはこの場にいる者の全てが理解している。しかし人間である以上、常に合理的な判断が出来るわけではない。敗北感や無力感、怒りが入り交じった複雑な感情。それがこの場の空気を作り出していた。
「第2、第3中隊へ通達。ミサイル発射機を放棄し、地下壕へ避難せよ。」
「……了解。」
5分後には司令部を放棄し、地下壕への避難を完了した。
2020年4月20日14:50
アドミラル・クズネツォフの艦橋ではミサイルの命中の報告が伝わっていた。
「イワン少将。先程の攻撃で4発が着弾。その内、2発が目標の対空ミサイル陣地へ着弾しました。」
イワンは目を細める。
「その他の目標は?」
「はい。残りの対空ミサイル陣地は撤退した模様です。現地のドローンからの情報です。」
イワンは満足そうに目を戻す。
「いいだろう。航空隊は?」
「目標空域に侵入。作戦は順調です。」
イワンは海図に目を落とす。
「上陸部隊に異常はないな?」
「はい。現状で報告はありません。」
「よろしい。ご苦労だった。」
士官は敬礼し、艦橋を後にする。
イワンは艦橋の窓から黒海を見渡した。
夕日が海面を赤く染めている。
その先にあるのは、ウクライナ軍が防衛を続けるオチャコフ。その目は何を感じていたのか。それを知る者は本人以外にいなかった。たとえ神でさえも。
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