ブロントさんがホロウで活躍するのは確定的に明らか   作:渡邊ユンカース

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ゼンゼロでは初投稿です。よろしければ他作品も読んでいただければ幸いです。
それと本作は見切り発車なので十話程度で終わりますのでよろしくお願いします。

それとブロント語に即したセリフを書きますが、至らぬ点があります故お許しください。


ブロントさんが有能調査員なのは確定的に明らか

 旧都陥落が起きて約十年が経過した。

 旧都はホロウに呑まれて、多くのエーテリアスが人々の暮らしを破壊していき、人々は新エリー都での生活を余儀なくされた。

 しかしホロウで回収できるエーテルは人々の生活に役立つため一種の資源として活用されるようになった。

 

「はぁはぁ!」

「急いで!」

 

 当然、ホロウとエーテリアスの謎を研究するために数多の調査員がホロウに派遣されて調査を行う。しかし正体が未だに解明できていないエーテリアスが無数に存在するホロウ、危険度は極めて高く人死は珍しくない。

 現在、とあるホロウの場所では調査員二人がアルペカと呼称されるエーテリアス数体に追いかけられていた。このエーテリアスは人型であり、大きさは人間と大差ないが強い攻撃性を秘めているのだ。

 

「うあっ!?」

「ッ!?大丈夫!?」

「くそっ、足を捻った……!」

「そんなっ!?」

 

 一人の調査員が段差に足を取られて転倒する。相方の調査員が駆け寄って足首の様子を確認すると赤く腫れていた。もはや走れない状態、近くからはエーテリアスが迫ってくる。

 

「す、すまない。先に行っていてくれ」

「何を言っているの!あと少しで脱出できるのに!」

「俺に構っていたら共倒れだ!お前だけでも逃げろ!」

「い、いやだ!置いていけない!」

「行けって!!」

 

 ケガをした調査員は力強く告げるも、相方は頑なに受け入れようとしない。二人のやり取りを傍目にエーテリアスは近づき、アルペカの攻撃範囲に収まってしまう。

 

「ここまでか……ッ!」

「うっ!?」

 

 二人は生を諦めて、無念にも死を受け入れようとした。エーテリアスの凶刃が二人に迫り、そのまま頭を飛ばす。

 ――――はずだった。

 

「ぬゥん!!」

 

 勇ましい掛け声と共に大柄の男が現れて、凶刃を自身の盾で弾いた。

 

「ほぅ、どうやら間に合ったみたいだな」

 

 男の外見は一言で言うと騎士だった。洋風の白い鎧を身に纏っており、右手には黒い剣と左手には盾が握られている。そして褐色の肌に相反するような白髪が風でなびいていた。

 

「おいィ、二人とも立てるか?」

「私は、けど彼が足を」

「おいおい、一端の調査員なら運動して鍛えるのが常識的に絶対だろ」

「す、すみません。私たちまだ新人で……」

「やれやれ、まあ不勉強な新米調査を守るのが有能騎士の仕事なわけだが」

「は、はぁ……」

 

 男からは傲慢さが滲み出ていたが、それは自身の実力から裏付ける自信から来るものだと二人は理解した。事実、男は会話をしつつも視線をエーテリアスから外していない。

 

「ここは俺がタンクしてやる。さっさと退避しろ」

「ありがとうございます!」

「お、お名前は!」

「俺の名はブロント。謙虚なナイトで人気者だ」

 

 謙虚さなど感じ取れないだろ、とツッコミを飛ばしたくなる二人であったが状況的に言えるはずもなく急いでその場から退避した。

 残されたブロントとエーテリアスは双方に睨み合いを続ける。

 

「さあ俺とお前らしかいないが、黄金の鉄の塊で出来ているナイトが皮装備のジョブに遅れをとるはずは無い」

 

 ブロントは剣の切っ先を向けて煽る。はたしてそれがエーテリアスに通じているのかわからないが、唸り声を鳴らしながら威嚇をする。

 

「っ!来たか!」

 

 先制攻撃をしたのはエーテリアスの方だった。鋭く尖った爪がブロントに迫るも、ブロントは難なく後ろに下がって躱す。そして剣を横薙ぎに振るう。

 

「ギィヤアア!!」

「ふん、バックステッポで余裕だ」

 

 腹部を大きく斬られたエーテリアスは光り輝きながら体を崩壊させて消滅した。エーテリアス生命力が尽きたり、死んでしまうと体を輝かせながら崩壊する性質を持つ。その原理は未だに解明されていないが、戦闘に特化したブロントには関係のない話だ。

 仲間がやられて刺激されたのか、他のエーテリアスも次々に攻撃を仕掛ける。

 

「ガアアアア!!

「ガガガ!!」

「まあ連携して攻撃するのは悪くはない」

 

 ブロントは慣れたように盾で二体のエーテリアスの攻撃を捌ききる。攻撃を防いでいる最中も依然としてブロントは怖気づくことはなく、態勢が揺らぐことはない。

 ブロントはバギンと盾でエーテリアスの攻撃を弾くと、その衝撃でエーテリアスは他の個体とぶつかって態勢を崩した。その隙を見逃すブロントでもなく、剣で下から上へと斬り上げる。

 

「どうだ俺のハイスラでボコられた感触は。」

「ギ、ギギギギ……」

 

 斬り上げられたエーテリアスはパシュンと体を崩壊させて消滅していく。残りのエーテリアスもがむしゃらに攻撃を続けるも、ブロントは華麗に盾で防いでカウンターを狙う。

 

「ノロマの亀みたいな動きだと俺には勝てぬ!」

 

 ブロントは攻撃を防ぎながら盾でエーテリアスに体当たりを行う。余程の衝突力だったのかエーテリアスは吹き飛んで地面に倒れて、何とか立ち上がろうとするも胸部をブロントの剣で貫かれる。

 

「アグ、グググ……」

「何を言っているのかわからんが終わりだ」

 

 言葉も通じぬ残虐者には慈悲はない、ブロントは見下しながら剣を引き抜いた。致命的なダメージを負ったエーテリアスは崩壊を始め、数秒後には何も残らなかった。

 

「この依頼は早くも終了だ。定時に帰るのができる騎士」

 

 ブロントは剣を鞘に納めて、片腕に盾を装着する。意外にも剣は移動時に邪魔になるので納剣するようにしているのだ。

 ブロントはキャロットで脱出口を確認してから向かう。数分間、周りを警戒しながら歩くと脱出口であるホロウの裂け目を見つけた。長居する用事と時間もないためブロントはホロウの裂け目に跳び込んだ。

 

「……出迎えもないとは最近の調査員の民度が知れるな」

 

 裂け目の先には新エリー都のどこかの街の路地裏だった。路地裏ということもあって道幅は狭く、大柄かつ重装備なブロントにとって身動きのしづらい環境だ。ガンガンと装備を壁に打ち付けながら進んでいくと、大通りの光が見えてきた。

 ようやく狭くて暗い路地裏から抜け出せたブロントは、ホコリと壁のススで汚れてしまった鎧を手で叩く。

 

「ふぅ、エーテリアスの戦闘で汚れなかったのに此処で汚れてしまった。丁寧に洗わなければ」

「あら、ブロントじゃないですか」

「むっ」

 

 突如として自身の名前を呼ばれたためブロントは振り返る。そこには黒髪にいくつかの赤いメッシュが入った女性が居た。女性は平均的な女性とは違い高身長で、出るとこは出てしまるところはしまっているモデル体型だった。そして特徴的な外見として治安局の制服を着用していた。

 普段は人覚えの悪いブロントだったが、この女性のことはよく知っていた。

 

「なんだ朱鳶か」

「なんだとは何よ」

「別にいいだろう。見慣れ過ぎた顔だぞ」

「人に対して酷くないかしら?」

「いいや別に」

 

 平然と人を貶すブロントに朱鳶は怒りの拳骨を振るう。先程の戦闘で活躍したブロントだったが、朱鳶の俊敏な動きに反応することができずに頭に被弾して大きなたんこぶを作った。

 うずくまって痛みに悶えるブロントをよそに朱鳶は説教じみたことをつらつら言う。

 

「昔から高圧的に物を言う癖をやめなさい!」

「別に悪意がないのだからいいだろう」

「そういう問題ではなく!人からの印象を考えて話しなさい!」

「俺はそういう態度を取っても人気者なんだが」

「確かにあなたは調査員としての評価は高いけど、人としての不十分なの!」

「この謙虚で優秀な俺に欠点などお前の浅はかさは愚かしい」

「いい大人なんですから屁理屈をこねずに自己認識を改めなさい!」

 

 二人の会話から察するにブロントと朱鳶は旧知の仲であった。どの程度のものかというと、朱鳶が中学校へ移る前に新エリー都に移るまで一緒に遊んでいた仲であった。

 そのため二人の仲は良好、ブロントが変な言動をすれば朱鳶が指摘するのが恒例だった。

 

「やれやれ、頭が固くて意固地な女の対応で頭痛が痛い」

「悪かったわね。意固地な女で!」

「……こんな時間か。俺は調査員としてレポートを出さないといけんので帰る」

「腕時計していないのに腕を確認する仕草やめなさいって。けど人助けお疲れ様」

「余裕すぎた。あと数億万人助けられる」

「相変わらず大口叩くのね。私もパトロールに戻らないと」

「つまりお別れだ。また会おう朱鳶」

「えぇ。今度また飲みに行きましょう」

 

 こうして馴染みの朱鳶と別れを告げて、ブロントは帰路につく。

 優秀で謙虚な騎士は街の雑言に紛れて姿を消していくのであった。

 




ブロントさんは身長190センチを予定しております。
褐色肌と白髪を有したエルフ耳の人属を想像していただければ大丈夫です。
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