ブロントさんがホロウで活躍するのは確定的に明らか 作:渡邊ユンカース
皆様の閲覧と評価と感想がこの作品の励みとなっておりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。(露骨なコメ稼ぎ)
新エリー都にあるとあるビアホール、ここでは多くの客が足を運んでビールや食事を楽しんでいる。ほとんどの客はサラリーマンやつなぎを着た労働者なのだが、そこに異彩を放つ者の姿があった。
「おいィ、まだ頼んだつまみはこないのか」
「申し訳ございません。もう少々お待ちください」
「俺は注文して五分も経ったんだぞ。それなのにビールは来るが枝豆がなぜ来ないのだ」
「まだ枝豆の解凍に時間がかかっておりまして……」
「むぅ、まあこの賑わいに免じて許してやろう。俺とて矮小な忍者、ではないからな」
「は、はぁ……」
未だにこない注文についてケチをつける大柄の男性、それこそがブロントだった。常に白い甲冑を着こんでいて体格も相まってか威圧感がある。そのせいで誰もブロントの隣には着席せずにいた。
寛容な自分に感謝しろと言わんばかりのブロントの態度に店員は内心呆れながらも厨房に引っこんでいった。
「おいおい、そんな様子だと嫌われるぞ」
「……遅いぞ。待ち合わせ時間に間に合うようにするのが大人のマナーだろ」
「すまないね」
そう言って一人のスーツを着た男性がブロントの隣に座る。どうやらブロントと待ち合わせをしていたようだ。ブロントはビールに一口飲んでからその男に向けて言う。
「それで収穫は?」
「もちろんだ。だからアンタを呼んだのさ」
「ほう、収穫を見せてみろ」
「はいはい」
促されるままに男はカバンからひとつの封筒を取り出した。ブロントは封筒をひったくるように奪って中身をあける。そこには数枚の書類が同封されていて、一枚ずつ書類に目を通していく。
「ちょうど一週間前、郊外のホロウから大型で巨大なエーテリアスの痕跡があったか」
「その通り。もっともこれはホロウ調査会のデータだがね」
「他にはないのか」
「ある。最後の書類、それはホロウレイダーからの提供さ」
「ほう」
ホロウレイダー、それはホロウ内で活躍する非合法な人物を表す言葉である。正式な試験を受けてホロウ内部調査の許可を受けたブロントとは違い、ホロウレイダーは無断で侵入してホロウ内部に残された貴重品やエーテル結晶を回収及び採集をしているのだ。もちろんホロウレイダーは犯罪者として扱われるため、治安局が逮捕と規制をして取り締まっている。
そんなアングラな面子に通じているこのスーツの男も只者ではないのだが、ブロントは気にも止めていない様子だ。自分の目的のためには手段を問わない、ブロントは並大抵ではない覚悟で
「……目撃情報か」
「そうさ。しかも写真付きだ」
「この書類には一ミクロンも載っていないが、まさか別売りとは言わんよな」
「えっ、その通りだけど」
「……」
「やめろバカ!無言で殴りかかろうとするな!」
「おれパンチングマシンで100とか普通に出すし」
「冗談だ!冗談!」
「なら最初から出せ」
「ったく、五年の付き合いなんだからわかれよ」
「マジでかなぐり捨てンぞ?」
男の正体は情報屋、それもホロウ調査会とホロウレイダーに情報網を持つ一流だった。ダル絡みを受けたブロントはイラつきながらも写真と報告書を読んでいく。
写真には機敏な動きをしたため被写体の姿がブレているが、人の背丈を優に超すほどの大きさだった。そして何よりも二本の前方に突き出た牙のようなものがあった。
「……こいつだな」
「やっと手がかりが掴めたか。それでアンタとの関係性は?」
「お前が知る必要はあるのか」
「ッ!」
ブロントが一瞥すると情報屋はビクリと体を震わす。その視線には一言では言い表せぬほどの怒気と憎悪が込められており、普段から治安の悪い者たちと関わる情報屋だが思わず威圧されてしまった。
思わぬ地雷を踏んでしまった情報屋は居心地が悪くなり、そそくさと身支度を始めて帰ろうとする。
「もう帰るのか」
「そうだよ。最近は忙しくてね」
「依頼料は口座に振り込んでおく」
「ありがとうよ。それとサービスで教えてやんよ」
「何をだ?」
「それ、
「……」
そう情報屋は告げると黙って店から立ち去っていく。
ホロウ内部に落ちていたカメラ、要するに
それほど被写体の大型エーテリアスは危険性の高い個体であり、注意が必要だった。
「一歩、お前に近づけた」
ブロントは怒りと憎しみで瞳中の炎を燃やす。隣に注文した枝豆が届いても、暫く手を出さなかった。
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「……迷った」
ホロウ内部にある工事現場にて、ブロントは武器を携えながら辺りをさまよっていた。
この場にいる理由としては調査員の救助要請があったため向かいに行ったのだが、既に別のグループによって救助されたとのこと。用件が済んで帰路につこうとしたブロント、しかし物質が変化するホロウにおいて使用していたキャロットが正常に作動しなくなってしまったのだ。
「まだ時間には余裕があるがとっとと出なければ」
ブロントが恐れていたのはエーテリアス化だった。この現象はホロウ内部に滞在し続けると、周囲に溢れるエーテルによって体が変質してしまい終いにはエーテリアスと化してしまうのだ。
個人のエーテル適正によって変化するまでの時間が変わるが、どちらにせよ長居して良いものではない。
「そこッ!何奴だ!」
何者かの気配を感じ取ったブロントは剣の切っ先を土嚢袋の山に向ける。仮に応じなかった場合やエーテリアスだった場合は問答無用で切り捨てるつもりだった。
「ン、ナナ!(やめてー!)」
「なんだ。ボンプか」
ブロントは見覚えのある姿を見て切っ先を下ろす。
ボンプとはウサギのぬいぐるみのような形をした自立型の小型ロボットだ。可愛い見た目だけではなく、工事現場で働いていたり接客をしていたりスポーツをしていたりと用途に合わせて行動することができる万能ロボットなのだ。目の前にいるボンプは全面的に茶色のボディで、頭には灰色のベレー帽を被っている。
しかしこのボンプの周りに持ち主はおらず、そのことからブロントは諸事情で持ち主から離れた野良ボンプだと察した。
「ソロだなお前。てか野良だろ」
「ンナナナ!(そうだよ!)」
「どうせ新しいのを買うから古いのは捨てる流れになって逃げだしたな」
「ンナナ……(その通りすぎる……)」
「残念だがパーティーを募集していないのでな。じゃあな」
「ンナナ!ンナ!(待ってよ!その先には!)」
「うおっ!?」
ボンプの声かけに静止したブロント、そのおかげで目の前に一本の黒い矢が通過した。このまま足を進めていればブロントの頭に命中していただろう。
即座に武器を構えて矢が飛んできた方向に体を向けると、そこにはタナトスと呼称されるエーテリアスの姿があった。そして周りからぞろぞろとテイルウィングが集まってきた。
「奇襲するとは卑劣だな。恥を知れ!」
「ンナナンナ!(エーテリアスに恥なんて感じないよ!)」
「おいボンプ!いきなりだがサポートを頼むぞ!」
「ナナナ!(任せて!)」
二対多数の戦闘が始まった。
まずはブロントがタナトスに向かって突進、最初に遠距離から攻撃を仕掛けてくる脅威を排除しようとした。しかし行く手を傘下であるテイルウィングが塞ぐ。
「こざかしい!」
「グガガ!」
「ギャイ!?」
剣を横薙ぎして行く手を遮る二体を排除、そのまま前進していく。斬りふせながら集団を突っ切るブロント、その横腹に目がけてテイルウィングの尾が迫る。
「ンナ!(させない!)」
「グゥ!!」
ボンプは手にしていたハンマーを投げて尾を防いだ。ブロントも一応攻撃には対応できるよう身構えていたが、ボンプの投擲能力の高さに思わず感嘆した。
「ほう、普通に中々やるではないか」
「ンナナンナ!(投げるのは得意!)」
「このまま行くぞ!」
ボンプは背負っているリュックサックから投擲物を素早く取り出して投げつけていく。投げつけた物はほとんど周りにいるテイルウィングに命中して怯ませていた。
そして怯んだ隙を狙って、ブロントが斬りふせて前進し続ける。両者の能力が高いからこそ即席でも見事なコンビネーションが行えていた。
「ンンナ!(矢が来る!)」
「ふん!」
同じ手は喰わぬとブロントは盾で頭部に飛来したタナトスの矢を防ぐ。
しかしタナトスには他のエーテリアスより優れている点があった。
「ッ!?」
それはテレポートによる斬撃だった。
ブロントが盾で頭部を守った際、タナトスを一瞬だけ目視できなかった。その隙を突いてタナトスはテレポートを行ってブロントの視界から消えたのだ。
すぐに頭を振って索敵に入ったブロントだったが、次に現れたのはブロントの背後だった。
「ぬおおおお!!」
殺気に気づいたブロントは慌てて振り返って盾を身構える。ガキンと強い衝撃が盾に伝わり、不安定な態勢だったブロントはそのまま吹き飛ばされてしまう。
「くそ!」
「ンナ!(危ない!)」
地面を転がりながらも態勢を立て直すブロントだったが、目と鼻の先にタナトスの刃が迫っていた。立ち上がる際の硬直を狙った一撃だった。
刃が顔を斬りつけるギリギリのところで、ボンプの投擲がタナトスに当たって刃の軌道が僅かに逸れた。そのおかげで文字通り間一髪のところで攻撃を躱すことができた。再度連撃をされてはたまらぬとブロントは剣を振り回してタナトスを離れさせた。
「……サポート感謝する。危うく死ぬところだった」
「ンナ!ンナナンナ!(気にしないで!二人で協力すれば勝てるよ!)」
「協力か。普段はパーティを組まない俺だがお前の実力を過大評価しよう」
「ンナナ?(誤用してない?)」
「おい、そこのテレポートするお前!」
ブロントたちが怒涛の進撃を行ったため残りのエーテリアスは三体しかいない。それでも気は抜けない状況だ。
深呼吸をして息を整えた後、ブロントは剣先をタナトスに向けて宣言する。
「俺が焦ることは稀によくあることだが、今回はばつ牛ンだった」
「ガガガ……!」
「そして!おれの怒りが有頂天になった!この怒りはしばらくおさまる事を知らない!」
「ンナナ!(か、かっこいいタル~!)」
闘志を燃やすブロント、日頃から傲慢で威圧的な態度を取る姿はなくそこには一人の
宣言されたタナトスはそれを挑発と受け取ったのか、叫びながら矢を射る。
「ぬるいわ!」
今度の遠距離攻撃は剣で弾くことで一時も視線を逸らさない。二体のテイルウィングが同時に襲いかかろうとするが、後方に控えるボンプが拳ほどの瓦礫を投げて怯ませる。
「ナイスだ!」
「ギャイ!?」
「グルッ!?」
二体同時に袈裟斬りをして倒すブロント、案の定タナトスの姿は消えていた。
「ンナンナ(また消えた!)」
「動揺するな。こういう奴ほど―――――」
ブロントは即座に左右を警戒すると、読み通りタナトスが左側に現れる。
「左右のどちらかに現れる!!」
事前に警戒できたことで、攻撃に反応することができたブロントは盾を構えて踏ん張りを効かせる。
そのおかげで先程のように体が吹き飛ばされることなく攻撃を防ぐことができた。
「逃がすかァ!!」
「ギギッ!?」
「追撃のグランドヴァイパー!」
攻撃を受けきったブロントは盾で押すことでタナトスの態勢を崩し、追撃として下方から上方に斬り上げる一撃を喰らわせた。
腹部から胸部にかけて致命傷を負ったタナトスは悲鳴をあげることなく消滅した。
「……ふん、厄介な敵だった」
「ンナ!ンナナンナ?(すごいよ!けどどうして攻撃がわかったの?)」
「単純だ。後方にはお前が控えていたり、俺は前方に盾を構えていたからだ」
「ンナナナ!(それなら予測はつくね!)」
「しかしまあ一人だともっと苦戦していた。いてくれて助かった」
「ンナナ!(こちらこそありがとう!)」
ブロントは体格差があるボンプのためにしゃがんで握手をすると、ボンプは笑顔になった。
「しかしどうしてこの場に居たんだ?異常は見られんぞ」
「ンナナナナ……(所属していた野球球団が潰れて……)」
「つまりお前はピッチング用のボンプか。コントロール力に納得した」
「ンナナ(変化球もいけるよ)」
「ほう、よし今日からお前は俺のボンプになれ」
「ンナ!?(いいの!?)」
「あぁ、基本はソロだが最近は仲間を集めている。だから一緒に来い」
「ンナ!(よろこんで!)」
こうしてブロントは投擲力の高いボンプを仲間にすることができた。ボンプとしても戦いを通してブロントの技術と人格を信頼したのだ。
故障したキャロットをボンプに直してもらい、ブロントたちは出口を目指す。道中でブロントはとあることに気がついた。
「ボンプ、そういえばお前の名前を聞いていなかったな」
「ンナ!ナナナナ!(そうだね!僕はタルタル!)」
「俺はブロント・サンドリア。人々からはブロントさんと呼ばれている」
「ンナ!(よろしくね!)」
「あぁ、よろしく頼む」
こうして優秀なボンプをパーティにスカウトすることができたブロントは無事に新エリー都に出ることができた。
後日、ブロントは仲間になった祝いとして重りを仕込んだ野球ボールを大量にプレゼントした。喜んだタルタルは役に立とうと投擲の練習を始めたが、過剰に練習してしまったために二日ほど筋肉痛になってしまった。
ブロントの苗字は、FF11に登場するブロントの種族(エルヴァーン)が住んでいる王国から取りました。
ボンプの由来も同じ経緯です。