ブロントさんがホロウで活躍するのは確定的に明らか   作:渡邊ユンカース

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お久しぶりです。
我が家に新しい犬を迎えてニコニコです。犬を一度買った家庭はずっと犬を飼いますね。


ブロントさんがホロウレイダーと会うのは確定的に明らか

 

「……嫌な予想が当たったな」

 

 ホロウ内部にて、ブロントはお供のボンプであるタルタルを連れて仕事をしていた。仕事内容は行方不明になった調査員の捜索及び保護である。

 現在、ブロントの目の前には無残にも地面に散らばっている調査員の道具と洋服だ。近くには手帳が落ちており、手にして中身を確認すると一枚の写真が挟まれている。

 

「……」

「ンナ?」

 

 写真は家族写真であり、中肉中背の眼鏡をかけた男性と長髪の女性と幼児が映っている。ブロントはこの男性に見覚えがあり、今回の捜索の行方不明者だった。おそらく調査中にエーテリアスに襲われて死亡してエーテリアスになったのだろう。

 

「やれやれ、遺品を収めるとなると気が滅入って萎える」

「ンナナ……(もしかして……)」

「そうだ。今回の行方不明者の遺品だ」

「ンナンナナ……(もう少し早く見つけてあげれば……)」

「俺たちに仕事が回ってきた段階で間に合わん。行方不明から一週間が経過している」

「ンナ、ンナナ(これ、家族に届けないとね)」

「……そうだな」

 

 ブロントは家族に何か思うところがあるのか暗い表情を浮かべる。ブロントは可能な限り遺品を拾うと、タルタルのリュックサックに入れる。

 

「さて、いつエーテリアスが襲ってくるかわからん。すぐに去るぞ」

「ンナ(そうだね)」

「ちゃっちゃと帰ってゲーセンでも……。ッ!?」

 

 ブロントがその場から立ち去ろうとした瞬間、人気を感じた。すぐさまブロントはボンプを小脇に抱えて廃車の陰に身を潜める。突然、持ち抱えられて驚いたタルタルはジタバタする。

 

「ンナァ……!?(いきなり何……!?)」

「喋るな」

 

 いつになく真剣な様子のブロントに気圧されてタルタルは指示に従う。ブロントとタルタルは廃車から頭を覗かせて辺りを確認すると、前方から三人組の男女が歩いている。

 ピンク髪でトランクケースを持った女性、銀髪で緑色の洋服を着て剣を背負う女性、長身でツンツン頭の知能機械人で構成されていた。そして先導するかのように一体のオレンジ色のスカーフを巻いたボンプがいる。

 

「ンナナ……(あれって……)」

「あぁ、ホロウレイダーだ」

 

 ホロウレイダーはホロウ内部に取り残された貴重品やエーテル結晶を拾って違法に金銭を稼いでいる。本来なら治安局が取り締まるのだが、ホロウ調査員にも逮捕権はある。

 しかし調査員が積極的にホロウレイダーを捕まえないのかというと、ホロウレイダーはエーテリアスに抵抗するために武器を所持しているからだ。暴力的なホロウレイダーを相手に、インテリかつ非好戦的な集団のホロウ調査員は手を出さずに穏便に済ませたいのだ。

 

「おいィ、そこで何をしている?」

「ンナ!?(えっ!?)」

 

 ――――もっとも、どの集団において例外は存在する。

 廃車の陰からぬるりとブロントは姿をホロウレイダーに晒した。友好的かつ社交的な態度を取らず、いつもの不遜なる態度で対話をするつもりだった。

 三人組は突如としてブロントが現れたことで警戒心を剥き出しにしていた。

 

「なーんか、変な奴が来たぜ」

「何よ。あんた」

「俺はブロント、皆から敬意を込めてブロントさんと呼ばれている」

「はあ?自己認識高すぎ、もしやナルシストね」

「はて、ありのままの事実をそのまま伝えているだけにすぎないんだが」

「……こういうタイプは話していてイラつくわね」

「ブロント……もしかして上級ホロウ調査員の!?」

「ほう、お前喋れるのか」

 

 意外にもブロントの素性を当てたのはスカーフを巻いたボンプだった。ある程度、調査員としてボンプに接してきたブロントであっても人語を話すボンプは初めてだった。

 

「げげっ!?ホロウ調査員って公的機関じゃねぇか!」

「……上級調査員だとしても、流石に敵に回したくないわ」

「へぇ、あたしらを捕まえる気かしら」

「それ以外にないだろう、常識的に考えろ。逮捕して治安局の友人に渡してやる」

「あっそう。ねぇ、取引しましょうよ」

「取引だと?」

 

 ピンク髪のホロウレイダーから取引を持ちかけられた。ブロントは疑念を抱きながらもとりあえず内容を聞くことにした。

 

「あたしたちを見逃してくれたら、この高品質なエーテル結晶をあげるわ」

「ほう」

「どうかしら、闇市に売りさばけば数十万はくだらないけど」

「そうか」

「じゃあ投げて渡すから受け取って――――」

 

 ポケットからエーテル結晶を取り出して、ブロントに投げてきた。ブロントは注意深くホロウレイダーたちを観察していたが、ピンク髪のホロウレイダーの頬が微かに緩んでいるのに気づいた。

 

「拒否だ」

「へっ?」

 

 ブロントは盾を構えて、投げられたエーテル結晶を弾き飛ばす。弾かれたエーテル結晶は遥か上空まで飛ばされると爆音と眩い光とともに爆ぜた。

 もしもそのまま受け取っていれば爆発を喰らって逃走の隙を与えてしまうところだった。

 

「ホロウレイダーとは交渉しないィ!完 全 論 破!!」

「うわああああ!?」

「ニコ!」

「親分!!」

 

 重装備で180センチ越えの巨体を持つブロントの突進は容易くニコを吹き飛ばした。吹き飛ばされたニコを知能機械人が受け止めている間に、銀髪の女性が電磁ナタを抜刀して襲い掛かってきた。

 

「ふっ!」

「ぬゥん!!」

 

 数秒の内に何度も繰り出される攻撃を防ぐのにブロントは必死だった。剣を出そうにも連撃が執拗に足や腕を狙ってくるのでブロントは対応に追われていた。

 

「鬱陶しい!」

「くっ……!」

「アンビー!」

 

 対格差を活かそうとブロントは前蹴りをすることで、アンビーを吹き飛ばして距離を置く。ようやく剣と盾を構えられるようになったブロントだが、知能機械人が二丁拳銃で撃ってきたので盾で防ぐ。

 

「アンビー、今だ!」

「助かったわビリー」

「うおっ!?」

 

 銃撃を防いでいるとアンビーが再度ブロントに接近、側面に回ってから電磁ナタで斬り上げる。ブロントは甲冑の腕部の装甲で電磁ナタを防いだ。ブロントの腕には衝撃と電撃で激痛が走るも、顔色を変えることなく耐えきった。

 

「ッ!?なんて硬さなの!」

「代々伝わる自慢の家宝だからなァ!!」

「しまっ―――!」

「吹き飛べェ!」

 

 盾でアンビーを殴って怯ませた後、ブロントは渾身の横薙ぎを繰り出す。刀身は電磁ナタで受けきったものの、衝撃を殺しきることはできず吹き飛ばされる。

 ブロントの戦闘スタイルは基本的にタンク、しかしタンクであるが故にカウンターに長けている。盾で攻撃を受けてから盾で小突いて怯ませ、そこから致命的な一撃を与えるのが戦闘の定石だった。

 

「シーフにしては優れた連携と技量だ。投降すれば命は助けてやる」

「よくも二人を!」

「……仕方がにィ!!」

「げぇ!?マジか!?」

 

 ビリーが敵討ちと言わんばかりに銃撃を浴びせてくるが、ブロントは盾と甲冑で銃弾を受けながらビリーに突撃する。いくら重装甲な盾と甲冑といえど衝撃は受けるため鈍痛を感じるのだが、それを気にもせずにブロントは突っ込むのだ。その様子はさながら人型サイズの戦車だ。

 猛突進をひらりと躱したビリーはブロントの背中に銃弾を撃ち込んだ。

 

「隙だらけだぜ!」

「豆鉄砲なんぞ効かん!」

「ははーん、いつまで言えるかな。……やべー、弾切れだ」

「ビリー、変わるわ。装填を」

「ナイスタイミングだぜ!」

「このままでは俺の寿命がストレスでマッハなんだがッ!」

 

 ブロントはアンビーの怒涛の攻撃を盾と剣を用いて防御に回る。流石のブロントでも多対一、しかも腕利きとの戦闘には苦戦していた。

 バキンとブロントの剣が弾き返されて隙ができてしまう。アンビーはその隙を使って胸部に刺突を繰り出した。

 

「タルタル!」

「うぐっ!?」

 

 すぐさまブロントは後方で控えていたタルタルを呼んだことで、タルタルに投擲をさせる。隠し玉として温存したかったのだがやむを得ずに使ってしまったのだ。タルタルが投げた一球はアンビーの腹部に命中して、嗚咽を漏らす。

 今までの仕返しと言わんばかりにブロントは組み付いて、二人はマウンティングの態勢になった。大柄で重装備を携えたブロントを退かすことができないアンビーはジタバタ抵抗するも無意味だった。右手に持っていた剣を近くの地面に刺すと、そのままアンビーの首を絞める。

 

「かはっ!?」

「アンビー!!」

「すごい剣筋だが、はたしてそれでも俺に叶うのかは別問題」

「助けに行こうにもボンプが邪魔しやがる!」

「ンナンナ!(悪者!悪者!)」

「来世は善い人生を送れ」

「う、うぐぐ……!!」

 

 ブロントは手早く仕留めようと左手の盾を持ち換えて、アンビーを殴ろうとする。いくら戦闘に長けているアンビーでも絶体絶命だった。

 

「――――さらばだ」

 

 ブロントの左腕が振り下ろされる。

 しかし盾がアンビーに当たる寸前、ブロントは強烈な何か(・・)に引っ張られる力を感じて態勢を崩す。そのおかげで盾による攻撃は逸れて、アンビーは間一髪で助かった。

 ブロントは強烈に引き寄せてくる何かに目をやると、そこには黒い球体が存在していた。

 

「な、何が……!?」

「あたしの大事な仲間に何してくれてんのよ!」

ブラックホール(・・・・・・・)、だと!?」

 

 黒くて強力な物を引き寄せる力を持つ存在、すなわちブラックホールだった。厳密には宇宙にあるようなブラックホールとは異なるが、類似性を持つこの存在は短時間で小規模ながらも強力な引力があった。

 吸い込まれまいとブロントは盾を地面に突き刺して耐えるも、自身の得物を構えたビリーとニコが近づく。どうやら必死の足止めを行っていたタルタルはゴム弾に当たって気絶してしまった。

 

「どうよ!あたしら邪兎屋の力は!」

「流石だぜニコの親分!」

「ニコ、助かったわ。ありがとう」

「なーに、当たり前のことをしたまでよ」

「くっ……!!」

 

 ブラックホールが消滅して再び動けるようになったブロントだったが、三方をニコたちに囲まれてしまい打つ手はない。無法者揃いのホロウレイダーを相手に、啖呵を切って派手な大立ち回りをした人間の末路は決まっている。ブロントは苦渋を表情を浮かべて、盾を手放す。

 

「……ふん、あと一歩及ばなかったか」

「そうね。あんたは強いけど、あたしたちの方が連携も取れて強かったわね」

「剣と盾を駆使した戦闘スタイルならパーティを組んでやるべきだったわ」

「パーティか。残念だが俺にパーティは不必要なんでな」

「けどよ、明らかにタンクの立ち回りだったぜ?」

「俺の技量に追従できる者なんていないからな。強者故の悩みだ」

「腹立つ言い草ね」

「さあ、俺を殺せ。宿願を果たせぬことが残念だが」

 

 ブロントは両膝を地面について項垂れる。その姿は断頭台で首を断たれる被処刑人だ。

 項垂れている間にちらりとタルタルの方へ視線を移すと、復活したタルタルが怯えながらこちらを見つめていた。ブロントは逃げろと目配せをして、ニコたちから逃がそうとした。

 

「ンナンナ!(やめて!)」

「バカが!何をしている!」

「わわっ、何だ!?」

「このボンプって色々投げてきた子じゃない」

「えぇ、とても正確で強烈な一球だったわ」

 

 しかしブロントの意に反してタルタルは三人の前に躍り出る。自己を顧みない言動に意表を突かれるニコたち、ブロントは必死に逃げろと指示を出し続けるもタルタルは無視していた。

 

「たかが一か月の付き合いしかないぞ!早く逃げろ間抜け!」

「ンナ!ンンナナン!(嫌だ!僕は恩人を助ける!)」

「……おい、ニコと言ったな」

「何よ」

「俺を殺す代わりにこいつだけは逃してやってはくれないか?」

「はあ?さっきまでは交渉しないって言っていたじゃない」

「時流を読むのも有能ホロウ調査員だ。俺の身包みを剥いでもいいからボンプだけは許してくれ」

「……」

「さあ刺すなり、撃つなりすればいい」

 

 ブロントは目を閉じて首を垂れる。覚悟を決めて死を受け入れる準備をしていた。

 

「ちょっと待ってよニコたち!」

「何よプロキシ」

「殺すことはないだろう。ほら、戦意喪失しているみたいだし」

 

 処刑を待つブロントを前に、いきなり人語を話すボンプが割り込んできた。ボンプは流暢に弁解を始めていく。

 

「だってこの人は職務をこなそうとしただけなんだ!何も殺さなくても!」

「……ねぇ、プロキシ」

「ニコの言い分もわかるさ。だけど上級ホロウ調査員を殺害したら全国区で指名手配だ!」

「だーかーら」

「僕は重罪人になったニコたちを見たくもないし、今のままでいてほしいんだ!」

「ちょっと勝手に決めないで!別に殺さないわよ!」

「へっ……?」

「むぅ……?」

 

 ニコは地団駄を踏みながらプロキシとブロントは目を丸くした。

 

「何はどうあれあたしら全員が生きているじゃない!」

「そ、それもそうだけど」

「そもそも公共の敵になったらお金稼ぎがしづらくなるだけよ!」

「……確かに公安局と軍からマークされるよね」

「ったく、頭が良いんだから直情的にならないでよね。ということであんたも頭を上げなさい」

「……安堵して頭を上げたら撃ち抜くのは無しだぞ」

「しないわよ!あたしたちを何だと思っているの!」

「戦闘に長けた無法者」

「その通りね」

「これ正しいぜ」

「確かにそうだけど!そうだけど残忍なことはしないわよ!」

 

 ギャーギャー騒ぐニコを揶揄うビリーとアンビー、首を上げたブロントはこんなお調子者集団に負けたのかとため息を吐いた。

 

「……お互いに何もなかった。それでいいかい?」

「あぁ、俺もケガはしたがエーテリアスに襲われたと報告する」

「そうした方がいいわね。それとキャロットの情報も助かったわ」

「地理情報は多い分に越したことはないから助かるよ」

「そうか。にしてもボンプを操るプロキシか」

「あ、操るなんて人聞きが悪い」

「……お前、絶対パエトーンだろ」

「っ!?」

 

 パエトーン、それは伝説のプロキシを指す言葉である。そもそもプロキシとはホロウ内部を案内する違法のナビゲーターのことである。その中でプロキシ集団の中でずば抜けて優秀なのが、このパエトーン兄妹なのだ。

 正体を当てられたパエトーンは下手な口笛を吹いて誤魔化そうとするも、ブロントは気にも止めていない様子だ。

 

「今日の俺は何も見ていないぞ。まあコネができたのはよかった」

「都合の良いことは懐に入れているわね」

「……いつか私的に依頼を頼むかもしれない。その時は頼む」

「あぁ、いつでも依頼してくれ」

「というわけで俺は帰る。まっ、頑張って生き残れよ」

 

 そう言ってブロントはタルタルを連れて帰路についた。

 本部にて行方不明者の遺品を提出して本来なら書くはずであった書類を書かずに帰宅した。そして後日、事情が事情とはいえ上司から手厳しい指導を受けたのであった。

 戦闘だけ行いたい者にとって、デスクワークや書類仕事は不向きなのだ。

 




実はブロントさんは強いが基本的に対人戦ではなく、対エーテリアスに特化しています。
しかし仕事の都合上、ホロウ内部でホロウレイダーとプロキシと戦闘をするため否が応でも慣れてしまいました。ちなみに殺人の経験はあります(ホロウ内部における正当防衛)
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