フィールドの女神   作:Rin1411

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帝国がきた!

 帝国学園との練習試合当日。私は普段の通学路をーーー

 

 「もう!楽しみすぎて眠れなかったなんて子供なの⁉︎」

 「仕方ないだろ⁉︎久しぶりすぎてもうワクワクしてさ‼︎」

 

 爆走しています。

 理由は隣で走ってるサッカーバカです。昨晩楽しみすぎて眠れず、ずっと起きてたのだとか…

 

 「こんなことなら昨日のうちにミーティングしとけばよかった!」

 

 「ミーティングってなんだ?新しい必殺技か⁉︎」

 

 「こんのぉ!サッカーバカがぁーーーーーーーー‼︎」

 

 住宅街に私の声が木霊した。

 

 

 

 

 「ゼェ…ゼェ…それでは…ミーティングを…始めます…」

 

 「美兎さん、大丈夫?」

 

 いろんな意味で疲弊しています。

 秋ちゃんがくれたタオルで汗を拭いて一息つく。

 

 「とにかく、今日が帝国学園との練習試合当日、本当は数日かけて作戦とか考えたかったけど、練習に少しでも時間割きたかったから今回は私がやっておいたわ」

 

 そして私は用意していた資料をボードに貼っていく。

 

 「帝国学園は攻撃・守備をはじめとしてあらゆる面で高水準で隙のないチームよ、それは40年間で証明してるけど、今の帝国イレブンは歴代最強と言っても過言ではない、その中でも要注意人物は…」

 

 佐久間次郎

 二年生 FW 11番

 帝国イレブンの中でも全能が高水準でバランスの取れた選手。

 連携技への参加も多くマーク必須。

 

 寺門大貴

 二年生 FW 9番

 帝国のエースストライカー。

 得点率が高く警戒が必要。

 

 源田幸次郎

 二年生 GK 1番

 全国ナンバーワンと名高いゴールキーパー。

 高い実力と無尽蔵のスタミナがあるため実力による突破が必要。

 

 

 「この3人と今から出すもう1人を攻略できれば勝てる可能性はグッと上がるわ」

 

 「もう1人っていうのは誰なんすか?」

 

 壁山君の疑問に私はゴーグルとマントが特徴的な人物の写真を貼り出す。

 

 「帝国イレブンのキャプテンにして司令塔、去年は一年生ながらスタメン入りしてその天才的ゲームメイクで対戦相手を圧倒した、鬼道有斗よ。司令塔としての能力だけじゃなくプレイヤーとしても一流、彼を攻略できるチームは日本にほぼいないでしょうね」

 

 あれ?音無さんの表情が暗く…

 

 「それで、対策は考えているのか?」

 

 風丸君の問いに私はポジションを書き出していく。

 

 FW 染岡 神風

 MF 少林寺 半田 宍戸 松野

 DF 影野 風丸 壁山 栗松

 GP 円堂

 

 「みんなの練習を見た上で能力を活かせそうなポジションに置いたわ、陣形はバランスがいい2ー4ー4を基本にして私と染岡君で敵陣に切り込むわ、頼りにしてるわよ、染岡君」

 

 「おう、任せとけ!」

 

 気合いは充分ね。

 

 「全体指揮は私が取って、手薄になったところにフォローはするけど、状況によってはMFは半田君、DFは風丸君に指揮を任せるわ。私が動けなくなった時はお願い」

 

 「それはいいけど、これじゃあ神風への負担が大きすぎないか?」

 

 「うん、これは私がどこまで持つかが勝負にもなる。というか終盤で交代することになるから、目金君はいつでも出れるようにしておいて」

 

 「フッいいでしょう」

 

 不安だなぁ…

 

 「ちょっと待てよ!それじゃあ美兎が辛いだけじゃないか‼︎」

 

 やっぱり守君が食いつくか…

 

 「帝国に勝つなら、これが最善策よ」

 「けど「それに」」

 「守君がゴールを守るから私は安心して出し切ることができるわ。まさか、寝不足で本調子じゃないってことじゃないでしょうね?」

 

 「そんなわけないだろ!何回だって止めてやる‼︎」

 

 まぁ、こんな感じに火をつけて有耶無耶にすればなんとかなるか。

 

 「作戦は至ってシンプル、私と染岡君で先制して逃げ切る。勝ち越したあとは攻撃を染岡君と少林寺君に任せて他は全員で守備について守君の負担を軽くするわ。相手選手に3人がかりでマークすれば多少は動きを鈍らせられるはずよ」

 

 現状じゃこれが最善策、あとはどこまで私たち有利に進められるか…

 

 「それじゃあキャプテン、みんなに気の利いた一言で言ってあげて」

 

 「おう‼︎」

 

 守君はみんなの前に出たが考え込んでしまった。

 

 「う〜ん…気の利いたことって言っても、なに言えばいいかわかんないんだよな」

 

 そうだった…

 

 「だけど、今日の試合楽しみでさ!スッゲー練習してきたんだ!絶対勝とうぜ‼︎」

 

 「「「「「「「「「「おう(はい)‼︎」」」」」」」」」」

 

 やっぱり守君がやると気合いの入りが違うね。

 

 

 

 そして時間になり、グラウンドで待っていると校門前に帝国学園の校旗を掲げた装甲車がやってきた。ドアが開くと帝国学園サッカー部のメンバーが降りてきた。

 

 私と守君が帝国イレブンの前に出る。

 

 「雷門中サッカー部のキャプテン円堂守です」

 「私は副キャプテンの神風美兎です。この度は練習試合の申し込み、ありがとうございます」

 

 「初めてのグラウンドなんでね、ウォーミングアップしてもいいか?」

 

 「あ、どうぞ」

 

 なんか感じ悪い。

 

 帝国の面々はグラウンドで各自のウォーミングアップを始める。やり方はそれぞれだが全員が卓越した技術を持っていることは一目でわかる。

 

 「おいおい、なんだよあの動き」

 「あんなのと試合すんのかよ」

 

 なんなら去年よりもさらにレベルアップして…ん?鬼道君が守君を見て…

 

 すると鬼道君は指を鳴らしたかと思えばチームメイトが蹴り上げたボールを守君めがけて蹴り込んだ。

 

 「守君‼︎」

 

 守君はボールを受け止め踏みとどまったが、落としてしまう。

 

 「守君!大丈夫⁉︎」

 

 手を見るとグローブがところどころ焦げている。これだけでも今のシュートがどれほど強力なものかがわかった。

 

 「へへっ面白くなってきたぜ‼︎みんな!一週間の練習の成果!こいつらに見せてやろうぜ‼︎」

 

 そうこなくちゃ!

 

 

 帝国イレブンのウォーミングアップが終わり、両チームともに配置につく。

 

 「さぁ、始まりました!雷門中対帝国学園の練習試合!実況解説はこの私、将棋部の角馬が務めさせていただきます‼︎」

 

 角馬君…いつの間に…

 

 「さぁみんな!頑張っていこうぜ‼︎」

 

 そして試合のホイッスルが鳴り響いた。

 

 私はボールを染岡君に、染岡君はすぐにボールを私に戻すと、そのまま攻め上がった。染岡君も同じく攻め上がり、後から少林寺君も上がる。

 攻め上がる私の前に2人の選手が立ちはだかる。

 

 「ライトニングアクセル!」

 

 私は目にも止まらぬ速さで2人を駆け抜けた。

 

 「何っ⁉︎」

 「バカな⁉︎」

 

 「おぉっとぉ!神風、いとも簡単に帝国のディフェンスを突破したぁ‼︎」

 

 「少林寺君!」

 

 私は上がってきていた少林寺君にパスを出す。

 

 「ボールは少林寺に回ったぁ‼︎」

 

 「染岡さん!」

 

 さらにゴール前に上がっていた染岡にパスを出した。

 

 「いくぜ!」

 

 染岡君は足を振り上げる。

 

 「おぉっと染岡シュート体制!このまま決まるのか⁉︎」

 

 染岡君のシュートは真っ直ぐクロスバーに飛んでいき、跳ね返った先に私が追いつきボールを取る。

 

 「ナイス()()だよ!染岡君‼︎」

 

 「おぉっと!シュートと思いきや神風へのパスだったぁ‼︎」

 

 「決める!」

 

 私は数回バク転し、ボールと共に飛び上がる。

 

 「バウンサーラビット‼︎」

 

 オーバーヘッドキックを決めた。

 ボールは地面を跳ねながらゴールに迫る。

 源田君は私のシュートに動揺して動きが鈍り、ボールはそのままゴールネットに入っていった。

 そしてホイッスルが鳴り響き、得点が入ったことが証明される。

 

 「よしっ!」

 

 「ゴォール‼︎副キャプテン神風!雷門に先制点をもたらしたぁーーー‼︎」

 

 先制点にみんなが歓声をあげる。

 

 「やるじゃねぇか神風!あんなシュートが打てたんだな」

 

 「勝てます!勝てますよ俺たち!」

 

 染岡君と少林寺君も勝てると思ってるみたいだけど…

 

 そんななか、鬼道君と目が合う。

 

 あと1点、取らないと厳しいかも…

 

 私たちが配置に戻ったところで再びホイッスルが鳴り響く、それと同時にボールが寺門君にわたり、シュートを打った。

 

 「なんだこのシュートは⁉︎凄まじきスピード!凄まじきパワー!このままゴールとなってしまうのか⁉︎」

 

 「守君!」

 

 「止める!」

 

 守君は右手を掲げると金色の巨大な手が出現する…

 

 「ゴッドハンド‼︎」

 

 右手を突き出し、シュートを止めた。

 

 「なに⁉︎」

 

 シュートを止められたことに寺門君は驚愕する。

 

 「円堂止めたぁ‼︎キャプテンの意地を見せつけたぁ‼︎」

 

 「よし!風丸‼︎」

 

 円堂君はボールを風丸君に出す。

 

 「マックス!」 

 

 風邪君は松野君にパスを出した。

 

 「松野君上がって!少林寺君はフォローを!」

 

 「おう!」

 「はい!」

 

 そのまま2人は攻め上がるが、佐久間君にボールを奪われる。

 

 「そう何度もやらせない!」

 

 私は一気にトップスピードに上がり佐久間君の背後につく。

 

 「速い!」

 

 私は小さく飛んで地面に踏み込み、周囲に竜巻を発生させた。

 

 「スパイラルドロー‼︎」

 

 そのまま突撃し、佐久間君を吹き飛ばしてボールを奪った。

 

 「神風!ボールを奪ったぁ‼︎」

 

 少し遠いけど、ここで決める!

 

 「バウンサーラビット‼︎」

 

 バク転を決め、上空でオーバーヘッドキックを決める。

 

 「バウンサーラビット再びぃ‼︎追加点なるか⁉︎」

 

 「させるか!」

 

 源田君は飛び上がり地面を殴りつける。

 

 「パワーシールド!」

 

 衝撃波が発生し、シュートを弾かれた。

 

 「源田止めたぁ‼︎これがナンバーワンゴールキーパーの実力かぁ⁉︎」

 

 やっぱりそう簡単にはいかないか…

 

 そこから両チームともにシュート合戦となった。帝国の攻撃は私が止め、止めきれなかったものは守君が抑える。私も染岡君とシュートを試みたが悉く源田君に止められた。

 その応酬が繰り広げられて少しして、前半終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

 「ここで前半終了!1ー0で雷門のリードだぁ‼︎」

 

 私たちはベンチに戻る。ほとんどの人たちに守備をしてもらっていたからそこまで息は上がってないけど、攻撃に参加していた人たち、特に染岡君がひどい。

 

 「染岡君、大丈夫?」

 「あぁ、まだまだいけるぜ」

 

 完全に強がってるな…

 

 「後半からはポジションを変えるわよ、染岡君と半田くん、風丸君と少林寺君で入れ替えるわ。松野君も攻撃に参加して」

 

 「ちょっと待てよ!俺はまだ…うぉっ!」

 

 染岡君は立ちあがろうとするが足に力が入らず立てなかった。

 

 「本当ならベンチに下がってもらうレベルでの疲労が溜まってるわ、けど、染岡君を下げればチームの総合力が大きく下がる、前半はうまくいったけど、後半からは向こうも本気で来るはずよ」

 

 私の見通しが甘かった。

 鬼道君は私と染岡君のツートップにMFを何人か添えて速攻で決めて逃げ切ることを見抜いていたんだ。その上で最小人数で私たちの移動距離を増やして攻撃要員のスタミナを削った…

 

 「守君、まだいける?」

 

 「あぁ、まだまだいけるぜ!」

 

 そうはいうけど、明らかに動きにキレがない、ゴッドハンドを使いすぎたんだ…

 

 「1点差ははっきり言って危険、せめて2点まで持ち込んでそこからは全員で守備に回るわ、ここからが正念場よ!」

 

 「「「「「「「「「「おう(はい)‼︎」」」」」」」」」」

 

 そして後半が始まり、帝国のキックオフから始まる。

 

 ボールが鬼道君に回り、私が立ちはだかる。

 

 「正直驚いたよ」

 

 ?

 

 「()()以外は眼中になかったが、1番の誤算はお前だ、ここ最近の試合でもリードされたことは記憶にないからな、中々できるじゃないか」

 

 「それはどうも」

 

 「だが…」

 

 鬼道君はボールを私にめがけて蹴った。

 

 「ガハッ!」

 

 私はまともにくらい吹き飛ばされる。

 

 「テメェ!なにしやがる‼︎」

 

 染岡君の怒号が聞こえるが、痛みでそれどころではない。

 鬼道君が私を見下ろしている。

 

 「それもここまでだ!」

 

 ボールを蹴り上げると佐久間君、寺門君、洞面君がボールを中心になるように三角形を描くように飛ぶと回り始めた。

 徐々に不気味なオーラが放たれ、3人はボールを蹴り込む。

 

 「「「デスゾーン‼︎」」」

 

 そのままボールはゴールを襲う。

 

 「なんだこれは⁉︎凄まじいシュートだぁーー!」

 

 「ゴッドハンド‼︎」

 

 守君は再び金色の巨大な手を出現させた。しかし、ゴッドハンドは砕けてボールは円堂と共にゴールネットに突き刺さった。

 得点を知らせるホイッスルが響く。

 

 「ゴォール!後半開始早々、帝国学園が追いついたぁーーーー‼︎」

 

 まずい、もう限界だったんだ!

 

 配置に戻り、私たちのキックオフで再開する。

 

 私は半田君と松野君と共に攻め上がる。

 

 「キラースライド‼︎」

 

 強烈なスライディングが私を襲い、ボールを奪われた。

 

 「しまっ…ウッ」

 

 ボールを追うために振り返るがそこに誰かがボールを私めがけて蹴り飛ばした。

 

 「神風!」

 「逃げろ!」

 

 松野君の言葉に疑問を感じ顔をあげると、帝国の選手たちが私を囲んでいた。

 まさか!

 

 「潰せ」

 

 鬼道君の号令をきっかけとして、次々とボールが私に蹴り込まれた。

 

 「神風を助けるぞ‼︎」

 

 風丸君の一言をきっかけにみんなが私を助けようと駆けつけてくる。それを見た鬼道君がニヤリとした顔が目に入った。

 

 「きちゃダメ‼︎」

 

 しかし、静止虚しく、帝国の選手たちにボールを蹴り込まれて倒されていき、みんな地面に倒れ伏してしまった。

 

 「みんな…」

 

 そして鬼道君にボールがわたり、佐久間君と寺門君を引き連れてゴール前に進んだ。

 

 「守君!」

 

 3人はボールを守君めがけて蹴っていく、私はなんとか駆けつけようとしたが他の選手たちに阻まれ留まることしかできなかった。

 

 見通し以前の問題だ、帝国は試合するつもりなんてなかったんだ…

 どうすれば…私ももう限界…

 

 「嫌だ…」

 

 目金君?

 

 「もうこんなの嫌だ!」

 

 「おぉっと!ベンチ目金が試合放棄!雷門イレブンの控え選手がいなくなってしまったぁ!」

 

 鬼道君が蹴ったボールが守君を襲う、しかし、風丸君がボールを弾いた。

 

 「風丸!」

 

 私を囲んでいる選手たちの意識がゴールに向いてる、今なら!

 

 「守君!」

 

 包囲を突破して叫んだ。

 守君はその意図を理解したようだ。

 

 「わかった!美兎‼︎」

 

 守君はボールを私がいる方向へ蹴り飛ばす。

 

 もう、これしかない。

 

 私はフィールドのそばの木陰にいる豪炎寺君を見る、彼もこちらを見ていたようで目があった。

 

 ごめん…

 

 炎を纏い飛び上がる。

 

 「あれは!」

 

 「ファイアァァァァアア…トルネェェェェェェエエエドォォォォ‼︎」

 

 ボールを蹴り、ゴールへと一直線に飛ぶ。

 

 「止めろぉ!」

 

 鬼道君の焦る声が聞こえた。

 源田君もパワーシールドの体勢に入るが、ボールは大きく軌道を逸らし、近くの木にぶつかった。木が大きく揺れ、今のシュートの威力を物語っている。

 

 もう…意識が…

 

 私は体力が尽き、意識が朦朧とするなかで落下していく。

 

 「美兎!」

 「神風さん!」

 

 地面に落ちようとしているなかで、誰かに受け止められた。

 

 ぼやける視界のなか、豪炎寺君の顔があった。

 

 「頑張りすぎなんだよ。お前も、円堂も、あとは任せろ」

 

 その言葉に安心し、私は意識を手放した。

 あとで聞いたことだが、試合はこのあと守君が最後の力を振り絞ったゴッドハンドでボールを繋ぎ、豪炎寺君がゴールを決めたところで帝国が試合放棄し私たちの勝利で幕を閉じたらしい。

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