フィールドの女神   作:Rin1411

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フットボールフロンティアへの道

 「えっと…夏未ちゃん、今なんて?」

 

 「それではもう一度言います、神風さん、あなたは尾刈斗中との練習試合翌日までの間部活動を停止、一切の接触を許しません」

 

 なんという急展開…

 ことの始まりはというと…

 

 

 

 「帝国学園との試合を通して、いくつかの課題がわかったわ、まず優先すべきは体力、あの試合では少数精鋭の一点突破に注いだからある程度余力を残せたけど、あれじゃあいずれ誰かが故障するわ」

 

 「それに、円堂と、特に神風に頼りすぎ、それが原因で後半じゃ集中狙いされたわけだし」

 

 松野君の言葉に全員俯いてしまった。

 別に責任感じる必要はないんだけどね…

 

 「あの、キャプテン」

 

 「どうした、宍戸?」

 

 「こないだの豪炎寺さん、呼べないんですかね?」

 

 その言葉に染岡君の表情が険しくなる。

 

 「そうだよね、結局のところこっちで得点できたのは神風さんと豪炎寺君がいたからだしね」

 

 「今の俺たちじゃ、あんなふうにはなれないっす」

 

 私も最終的に頼っちゃった手前、なんていえば…

 

 「豪炎寺はやらねぇんだろうが‼」

 

 染岡君の怒りが爆発した。

 

 「違うのか⁉円堂‼神風‼」

 

 「それは…分からないけど…」

 

 「…」

 

 少なくとも、今の豪炎寺君じゃ…

 

 「二人まで、あいつを頼りすぎだ!」

 「そんなことは!」

 

 「俺たちだって、やればできるさ!実際、豪炎寺がいなくても一点取れただろうが!もっと俺達を信じろよ!」

 

 「神風さんがいなきゃ前半でボコボコにされてたでやんすよ…」

 

 「んだとぉ‼」

 

 栗松君の言葉に染岡君がさらにヒートアップした。しかしそこで部室のドアが開いた。

 

 「みんな、お客さんよ」

 

 秋ちゃんが入ってきた、しかし部室の空気がいつもと違うことに気づいたようで…

 

 「何かあったの?」

 

 「あ、あぁ…ちょっとな」

 

 「それより秋ちゃん、お客さんって言ってなかった?」

 

 誰が来たんだろ?

 

 「えぇ、どうぞ」

 

 秋ちゃんに促されてはいってきた人に、私と守君は驚いた。

 

 「夏未ちゃん⁉」

 

 夏未ちゃんは部室を一瞥すると顔をしかめて鼻に手をあてた。

 

 「臭いわ、神風さんがいながらこの有様?」

 

 「定期的に掃除はしてるんだけどね」

 

 運動部の部室だし…

 

 「こんなやつ、何で連れて来たんだよ!」

 「話があるって言うから」

 

 話?

 

 「帝国学園との練習試合、廃部だけは逃れたわね」

 

 「お、おう!これからガンガン試合していくからな!」

 

 「そう、ちょうどよかったわ、次の対戦校を決めてあげたから」

 

 夏未ちゃんの言葉に私たちは驚いた。

 

 「次の試合⁉」

 

 「すごいでやんすね!もう次の試合が決まるなんて!」

 「やったな、円堂、神風」

 「あぁ、夢みたいだよ!また試合ができるなんて!」

 「今度こそ、僕の出番のようだね」

 「次こそ目立てるかな?」

 

 また試合ができるということにみんな喜びを露わにしている。

 

 「話を聞くの?聞かないの?」

 

 「あぁ、聞く聞く」

 

 「対戦校は、尾刈斗中よ」

 

 尾刈斗中って、確か不気味な噂が絶えないとこだっけ?

 

 「それと、負けたら即廃部よ」

 

 「ウグッ」

 

 尾刈斗中よりも夏未ちゃんのほうが怖い…

 

 「だけど、勝つことができれば、フットボールフロンティアへの参加を認めてあげる」

 

 前言撤回、あなたは女神様です。

 

 「フットボールフロンティア!よし、みんな特訓だ‼︎」

 

 守君の言葉にみんな気合を入れる。

 

 「それともう一つ」

 

 「なんだ?」

 

 「神風さん、あなたは尾刈斗中との練習試合翌日までの間部活動を停止、一切の接触を許しません」

 

 「え?」

 

 「「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」」」」」

 

 そんなわけで冒頭に戻ります。

 

 「なんで美兎が部活動停止なんだよ!それに近づくのもだめなんて‼︎」

 

 「そうしないと神風さんが休まないからよ」

 

 「神風さん、出られないでやんすか?」

 「これまずくないか?」

 「神風さんがいないと勝てないっす」

 

 これはまずい…

 

 「問題ねぇだろ!神風がいなくたって勝てるさ‼︎」

 「染岡!」

 

 染岡君の一言を風丸君が嗜める。

 

 「夏未ちゃん、なんで私が部活動停止のうえ接触禁止なのかな?休まないからってだけじゃみんなは納得しないよ」

 

 「あなたがそれをいうのかしら?」

 

 夏未ちゃんの表情が険しくなる。

 

 「いいわ、なら右足を見せなさい」

 

 「右足?」

 

 守君がなんのことかわからず首を傾げる。

 

 バレてたか…だけどみんなにはバレてないしここは…

 

 「その、夏未ちゃん、私今日はタイツ穿いてるから足を出すには…」

 

 「そういえば神風さんがタイツ穿いてるとこなんて見たことないかも」

 

 秋ちゃん…

 

 「そうね、こんなところで脱げなんて不躾だったわ、ごめんなさい」

 

 よし!

 

 「だから右足の部分だけ破いて見せない!」

 

 強行突破⁉︎

 

 夏未ちゃんが私に飛びついてきた。

 

 「ちょっと夏未ちゃん⁉︎」

 「心配しなくても、もっといいの買ってあげるわよ!」

 「そういう問題じゃなくて!」

 「相変わらず力強いわね!無駄な抵抗はよしなさい‼︎」

 

 力比べならこっちが上!

 このまま逃げ切れば…

 

 「円堂君!神風さんを抑えなさい‼︎」

 「お、俺⁉︎」

 

 それはズルい!

 

 「守君!絶対加勢なんかしちゃダメよ!」

 「いいからやりなさい!これは理事長の言葉と思ってもらって結構です‼︎」

 

 こんな時に権力振りかざさないで!

 

 「え、えっと…」

 

 「こないで‼︎」

 「きなさい‼︎」

 

 このまま引き延ばす…

 

 「部費を削減されたいの⁉︎」

 

 「すまん!美兎‼︎」

 

 守君が夏未ちゃんサイドで加勢した。

 おのれ権力‼︎

 

 「ちょっ、2人がかりは卑怯…ひゃん///守君どこ触って…」

 「いいわよ円堂君!このまま抑えてなさい!」

 「すまん美兎!部費のために犠牲になってくれ!」

 

 この裏切者のど変態キーパーめぇぇぇぇぇ‼︎

 

 

 「…俺たちは一体なにを見せられているんだ?」

 「あはは…」

 

 風丸君の疑問に苦笑するしかない秋ちゃんであった…

 

 

 

 「握られて…揉みしだかれて…破かれて…もうお嫁に行けない…」

 

 「よしよし、怖かったわね神風さん。大丈夫、もう大丈夫よ」

 

 あれからユニフォームは着崩れしてタイツを右足のみならずほぼ全域を破かれボロボロになった私を秋ちゃんが慰める光景は、側から見たらぶっちゃけ事案を疑うレベルだったと後に半田くんから聞かされた。

 

 「それで、なんで美兎のタイツ破こうなんてなったんだ?」

 

 「円堂、お前はもっとデリカシーを持て」

 

 風丸君の言葉に全員が頷いた。

 

 「そうね、木野さん、神風さんの右足首を見てみなさい」

 

 「右足首?…これって‼︎」

 

 秋ちゃんは私の右足を見て驚愕した。足首は赤く腫れていたのだ。

 

 「美兎!お前怪我してたのか⁉︎」

 

 「…」

 

 守君が詰め寄ってくるけどなんで言えばいいんだろ…

 

 「うまく隠してたみたいだけど、僅かに右足を庇っていたでしょ、いつもは走って部室に行くのに、ここ最近は歩いていたからおかしいと思ったのよ」

 

 「神風さん、もしかして練習試合の時から⁉︎」

 

 観念するしかないか。

 

 「うん、後半始まってすぐにスライディング受けたでしょ?その時にね…」

 

 「これでわかったでしょ?サッカー部の進退関係なく、今の神風さんに必要なのは療養よ」

 

 言い切ると夏未ちゃんは私の手を引く。

 

 「病院も予約しておいたわ、どうせあなたのことだから心配かけさせまいと自分で手当しただけでしょ?」

 

 全部見抜かれてる…

 

 「大丈夫だよ、美兎」

 

 「守君…」

 

 「絶対尾刈斗中に勝ってフットボールフロンティア出場を認めさせるからさ、さっさと怪我治して戻ってこいよ!」

 「神風の分も、俺が点取りまくってやる!」

 「今度は俺達が戦う番でやんす!」

 「一戦くらい、何とかして見せるさ」

 

 みんな…

 

 「神風さん、みんななら大丈夫だよ」

 

 「…わかった、みんなお願い」

 

 「「「「「「おう(はい)‼」」」」」」

 

 本当にいい仲間に恵まれたな。

 

 

 

 

 

 「軽い捻挫だね、処置も適切だったからそこまで悪化もしていないし全治一週間、それまでは絶対安静ね」

 

 一週間、部活動停止期間と重なってるし、大人しく療養かな。

 

 「療養()()じゃなくて療養()()のよ」

 

 療養一択か…

 

 「それじゃあ私も帰るけど、送っていく?」

 

 「いいよ、ちょっと小腹もすいちゃったから、何か食べて帰るつもりだし」

 

 「ほどほどにしなさいよ」

 

 夏未ちゃんは呆れたようにため息をつくと車に乗ろうとする。

 

 「夏未ちゃん、今日はありがと」

 

 「勘違いしないでちょうだい、優秀な副会長に万一のことがあったら困るの、つまり私のためよ」

 

 素直じゃないんだから。

 

 

 

 あれから私は行きつけのラーメン屋「雷雷軒」に訪れた。

 

 「すみません、味噌ラーメン一つ」

 「あいよ」

 

 ここの店主さんってなかなか厳つい風貌なんだよなぁ、ラーメン美味しいからついつい来ちゃうけど。

 

 「今日は一人か?」

 

 「はい、試合で怪我しちゃって、治るまでは禁止されちゃったんです」

 

 「一流の選手は休養にも余念がないものだ、休めるうちに休んどけ」

 

 なんか重みがある。

 

 ラーメンができるまで暇になった私は一冊のノートを取り出した。

 

 「勉強か?」

 

 「いえ、これは全国の強豪校や要注意の選手を調べてまとめてるんです」

 

 「ほぅ、どんなのがいるんだ?」

 

 やけに聞いてくるな、まぁいいけど…

 

 「有望どころでは木戸川清修や千羽山でしょうねこの二校はいわば対極、超攻撃サッカーと超防御サッカーを展開します、いかに主導権を握るかがカギですね。ほかにも凄まじいストライカーがいるというウワサのある白恋、独特なリズムを軸にした連携を見せる大海原、ただ、やっぱり筆頭は帝国ですね」

 

 「帝国か」

 

 店主さん?

 

 「すまんな、続けてくれ」

 

 なんだったんだろ…

 

 「先日の練習試合で改めて実感しましたがあらゆる面で一線を画していました。何よりも鬼道君、彼は指揮官としても選手としても凄まじかったです」

 

 「そんなに強かったのか」

 

 「強かったですね…あ、そういえば帝国って、変な噂があるんですよ」

 

 「変な噂?」

 

 「帝国との対戦校が向かう途中に事故に遭ったり、有望な選手がこつ然と試合に姿を見せなくなったり、ほかにもいざ試合が始まったらまるで普段のプレーが出来なくなったりとかです」

 

 「…そりゃあ変な話だな」

 

 店主さん怒ってる?

 

 「いずれ駒を進めていくと帝国とあたりますし、噂の内容も内容ですから、今のうちに調べてみるのも「味噌ラーメンお待ち」…店主さん?」

 

 私の前に少し乱暴にラーメンの入ったどんぶりが置かれた。

 

 「それと嬢ちゃん、帝国の噂とやらに首突っ込むのは止めておけ」

 

 「え?」

 

 「すぎた好奇心は身を滅ぼす。それに嬢ちゃんはサッカー選手だろ?だったら今は休んで回復に努めろ」

 

 「は、はい…」

 

 店主さんの重圧の前に私はただ頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 「ご馳走様でした~」

 「あいよ」

 

 私はラーメンを食べ終わるとそのまま帰路に就いた。

 

 でも、店主さんどうしたんだろ、何か気に障ることしたかな?

 

 考え込んでいると河川敷を通りかかったところである人物がシュート練習をしているところが見えた。

 

 「染岡君?」

 

 染岡君はゴールに向かってシュートを打つがクロスバーに当たり下に落ちるその付近には無数のサッカーボールがあり、ずっと練習していたことがわかる。

 

 

 

 「くそっ!もう一度…うぉあ‼」

 

 私は染岡君の頬にキンキンに冷えたスポーツドリンクをあてた。

 

 「一回休憩、焦っても何にもならないよ」

 

 

 

 

 「ン…ン…プハァ!わりぃ、神風」

 

 近くのベンチに座った染岡君はドリンクを一気に飲み干した。

 

 「どういたしまして、休憩はしっかりとってね、次の試合は染岡君にかかってるんだから」

 

 「俺にかかってる、か…」

 

 染岡君は私の右足を見る。

 

 「足、どうだったんだ?」

 

 「軽い捻挫だって、一週間は安静にしてなきゃだけど」

 

 「そうか」

 

 その言葉に心なしか表情が和らいでいる。

 

 「心配してくれてる?」

 

 「仲間なんだ、当り前だろ」

 

 何かを思いつめたように俯いた。

 

 「帝国との試合、お前と円堂に頼りきりだった。少しでも行けると思った俺が、お前に無理させちまってた俺が情けねぇ。あいつらが言ってることもわかるんだ、お前や豪炎寺が打ってたシュートを俺も打てたら、何か変わってたのかって、そう思っちまうんだ」

 

 「フフッ」

 

 「何がおかしいんだよ!」

 

 ある日のこと思い出して笑ってしまった私に染岡君がくいつく。

 

 「ごめん、ごめん。ちょっと思い出しちゃってね」

 

 「思い出す?」

 

 「守君がゴッドハンドを完成させたときのこと」

 

 「円堂が…」

 

 「守君だって最初からゴッドハンドが使えたわけじゃないんだよ?私や豪炎寺君だってそう、必死に練習して、努力して、バウンサーラビットやファイアトルネードを完成させた」

 

 私の言葉に染岡君が何かを考えるように俯く。

 

 「雷門に入る前、入学を控えてた頃に、私は守君の家で暮らし始めて、最初はサッカーばっかりやってた」

 

 

 

 「守君!まだやるの⁉」

 「あったりまえだ‼美兎のシュート止められるまで何回でもやってやる‼」

 

 

 

 「何回も繰り返して、そのたびにおばさんに怒られたんだ。そのうち、私も守君があんなに諦めないことが疑問に思ってね」

 

 

 

 「守君!もう無理だよ!帰ろう!またおばさんに怒られるよ‼」

 「まだだ‼絶対止めてやる‼」

 

 

 

 「そんなこと繰り返してたから、おばさんに入学式終わるまでサッカー禁止されちゃってね、守君があと一回だけってごねて正真正銘の一発勝負になったんだ」

 

 

 

 

 「バウンサーラビット!」

 

 「絶対‼とめるんだぁぁぁぁぁぁぁ‼」

 

 

 

 「それでゴッドハンドを完成させたのか」

 

 「うん、正直私は無理だと思ってた、どこかで諦めるって、だけど守君は最後まであきらめなかった、ゴッドハンドを完成させてみせた」

 

 「そうだったのか」

 

 ふと時間を確認した私は帰る時間を回っていることにきずいた。

 

 「ヤバ、もうこんな時間!」

 

 私はベンチから腰をあげた。

 

 「時間だし、帰るね」

 

 「おう、俺はもう少し練習してから帰る」

 

 熱心だね。

 

 「染岡君」

 

 「なんだ?」

 

 「確かに豪炎寺君とやるサッカーはすごく楽しいと思う、けど、染岡君とのサッカーも凄く楽しいんだ。もっと染岡君のサッカーを信じようよ」

 

 「俺の…サッカー…」

 

 「試合頑張ってね!」

 

 

 

 

 一週間後、必殺技を完成させた染岡君に、決意を新たに入部した豪炎寺君の活躍で雷門は勝利、フットボールフロンティアへの参加を認められた。

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