02
「隼人、ナイスキー!!!」
ブロックアウトで相手のサーブを切り、1度スコアボードを確認。
15対19でこちらが負けているが、中々の大健闘だと思いたい。それにしても幸治の足レシーブには恐れ入った。流石はサッカー部。日向を始め、他の4人もめちゃくちゃ頑張ってくれている。
サーブ権はこちらに移り、俺にサーブが回ってきた。「やったれ!!必殺サーブ!!!」と日向が声を上げるが、ネタバレは止めて欲しいものだ。
実は俺サーブには割と自信がある。原作で日向が未来のチームメイトに「10点獲れっ!!!」と背を押すシーンがあるのだが、その10点を現実にしようと思う。
ボールを受け取り、深呼吸し、狙いを影山のいる方に定める。
影山も何かしら感じたのか、集中力が増した気がする。しかし自分のサーブは、多少気合いを入れ直した程度で上げられる物ではないと自負している。
手始めに「まずは」スパイクサーブから。
高くボールを上げ、しっかりと助走し、100%の力を右腕に込め思いっきり打つ。
ボールは狙い通りの位置に叩き込まれ、ノータッチエース。影山も、隣にいた後の青葉城西のレギュラー、金田一も反応できず目を見開き、騒がしかった会場も静かになっている。
しかし次の瞬間には客席から歓声とざわめきが上がり、さらに騒がしくなった。特に隣のバケモン烏が。
体当たりして来そうな勢いの日向を手で静し。「あと9点獲るまで待ってろ」と言ったら、めちゃくちゃ嬉しそうに笑って「やったれ!!!隼人!!!」とハイタッチ。
さて、次は「どれ」にしようかな?
・・・・・・・・・・・・・・・・
「…………すっげぇな…………」
会場の客席で立ちながら試合を観戦している、「烏野高校排球部」のジャージを着た4人の内、爽やかそうな男がそう呟いた。
「………だな。まだプレーをじっくり見た訳じゃないけど、攻撃も幅広いし、レシーブとトスも上手い。あのチームは多分初心者が殆どでミスも多いけど、あの2番が最適なフォローをしてるからあの北川第一と張り合えてる。そんで一番驚かされたのが、初っ端に見せたジャンプと………「あの」サーブなんだよな………」
「9点目はドライブサーブかよッ!!!あの2番どんだけ武器搭載してんスかねッ!!??…………え?もうサーブで9点獲ってんの?あの2番???」
続いてまとめ役という言葉がよく似合う黒髪の男と、坊主刈りの端から見ればヤンキーのような男が、驚きと共に口を開く。
「………しかも半分近くがノータッチエース………。凄い………」
そして最後に、部のマネージャーであろう黒髪眼鏡美人が雪ヶ丘の2番、坂柳隼人を見つめながら呟く。
そう、既に隼人はスパイクサーブで3点。ジャンプフローターサーブで2点。ランニングジャンプフローターサーブで3点。先ほどのドライブサーブで1点。合計9点をサーブのみで奪った。
雪ヶ丘は大盛り上がり。逆に北川第一は1部の選手を除いて、意気消沈と言った状況。
無理もない。相手は全く無名の中学。対して自分たちは優勝候補とも呼ばれる中学。正直に言えば、この試合はただの消化試合だと影山以外は思っていた。
だが結果はどうだ?たった1人の選手に圧倒され、サーブのみで9点を奪われた。ここまで来たら屈辱を通り越して、1人のバレー選手として尊敬すらする。
ここまでバレーの腕を極めるのに、どれだけの努力をしたのだろう?才能もあるのだろうが、どれだけ反復練習を重ねたのだろう?
影山を含め、北川第一の面々の気持ちは今この瞬間だけ一つになった。
(((((((認める。お前は凄い!!でも、だからこそ、負けたくない!!!)))))))
全員が「ぶつかってでもサーブを上げてやる!!!」と言わんばかりの表情と集中を見せる中、雪ヶ丘の2番は「笑った」。
その笑みは決して相手を馬鹿にした笑いでは無い。全力で受けて立つ!!!といった笑みだろうと皆が理解した。
その笑みを受け、影山は自身にバレーを教えてくれた祖父が生きていた頃のような輝きを取り戻し、叫んだ。
「サッ 、来ォォオい!!!」
北川第一の全員がかなりの驚きを見せるが、すぐに気を取り直し、2番のサーブに集中する。
サーブトスを上げ、スパイクサーブ特有の助走を見せる2番。強いサーブが「真っ直ぐ」来ると警戒し、構える。
しかしそれが仇となった。
ボールが……………「曲がった」。
「「「!!!???」」」
強烈なスパイクサーブだと思っていたサーブは、横回転の「スピンサーブ」だったのだ。
真っ直ぐ来ると思っていた選手は反応が遅れ、間に合わず。またもやノータッチエース。
第1セットの終了を告げる笛が鳴り、驚愕と共にスコアボードを見る。
25対19。
第1セットは雪ヶ丘中学。