東方穢天落 月の失敗作は地球に落ちて摩多羅隠岐奈に拾われる   作:四国の探索人

21 / 38
第21話 草の根たちの鬼退治

童子が声を張り上げた。

「お前ら! そこの小人と妖怪共をやれ! ――私は、あそこの半妖をやる。」

 

その言葉を合図に、ぞろぞろと鬼たちが赤蛮奇らの方へと迫ってくる。

 

「足はやられたが……」一寸が針を構え、赤蛮奇の方を見上げた。

「この浮遊する頭さえあれば、雑魚共など一捻りじゃ!」

 

「お前……まさか私の頭を使う気だろ!」

赤蛮奇は引きつった声を上げるが、すでに一寸は彼女の頭の上に飛び乗っていた。

 

「行くぞ、赤蛮奇!」

 

「おい! 落とすなよ! 私の頭を大事にしろ!」

 

一寸は赤蛮奇の頭を操るように浮かせ、突撃。

頭に針を突き立てられるという、鬼たちにとっては前代未聞の光景が繰り広げられる。

それならばと、数体の鬼は赤蛮奇の“本体”を狙って走り出した。

 

「うそ……こっち来る!?」

赤蛮奇が身を引くと、影狼が彼女の肩を掴んだ。

 

「私の戦闘力じゃ鬼には敵わない……でも!」

影狼は赤蛮奇の他の頭を掴み、構える。

 

赤蛮奇「お、おい影狼……お前まさか!」

 

影狼「えーい!!」

 

――ブン!

 

野球選手顔負けの豪腕で、赤蛮奇の頭が鬼の額に直撃した。

鬼がのけぞる。続けざまにもう一投。

 

「まだまだ!」

 

頭が次々と飛び、鬼の群れに次々命中する。

赤蛮奇は本体の方でふらふらとよろけながら悲鳴を上げた。

「あ、ああ……目が、目が回る……!」

 

しかし、影狼の投擲は止まらない。

鬼たちが翻弄され、混乱に陥る。

その隙に一寸が鬼の足元へ飛び込み、針を突き立てた。

 

 

茨木童子の口元に笑みが浮かぶ。

「ふむ……面白え奴らだ。ちっこいのも、投げられる頭も、狼も――よくやる。」

 

その目が、ゆっくりと隠岐人へと向けられる。

「だが――お前だな。最初から気になってたのは。」

 

隠岐人は一歩前に出る。

周囲の空気がわずかに軋む。霊力が満ち、草木がざわめいた。

 

「私に、ですか。」

 

童子は鼻を鳴らす。

「おうよ。妙な力を感じた。扉を操る……違うな。空間そのものを繋いでる。

あれは――八雲のババアの能力。お前、親戚か何かか?」

 

隠岐人の瞳が一瞬、揺れた。

「八雲……知らない名です。そして違いますよ。師匠の能力を、参考にしました。」

 

「参考に、ねぇ。」

童子は口角を上げ、ゆっくりと腕を組む。

「それで真似できるもんなら、誰も苦労はしねぇ。

――血の繋がりでもなきゃ、そんな似た力、使えねぇ筈だ。」

 

隠岐人は目を細める。

童子の“勘”が鋭い。彼の中の“何か”が反応していた。

 

童子は拳を鳴らし、豪快に笑った。

「まあいい。真相なんざどうでもいい!

力で語れ、半妖――お前が何者か、この拳で確かめてやる!」

 

 

 茨木童子が地面を強く踏みしめた。

瞬間、地が割れ、衝撃が波のように広がる。

隠岐人は倒れぬよう片手で地を押さえたが、その隙を逃さず童子が迫った。

 

拳が空を裂く。

 

隠岐人は咄嗟に空間を開き、童子の拳を別の場所へ転送しようとする。

だが、童子はその扉を足で蹴り上げ――叩き壊した。

 

「なっ……!」

 

拳が直撃。

隠岐人の身体が地を滑り、土煙が上がる。

 

童子が吠える。

「テメェの種は割れてんだよ! 扉ごとぶっ壊しゃ怖くねぇ!」

 

隠岐人は防御の妖力を張りながら地に叩きつけられる。

二撃目が来る――その瞬間、地面に開いた扉が彼の身体を呑み込み、姿が消えた。

 

「ちっ、逃げたか……いや、違ぇな。どこだ!」

 

童子が警戒を強めた次の瞬間。

横合いの空間が裂け、そこから隠岐人の拳が飛び出す。

 

「――霊魂よ、力を貸し給え!」

 

霊力を帯びた拳が童子の頬を撃ち抜く。

わずかに後退した童子は、口元から垂れた血を指で拭い取り、にやりと笑った。

 

「ハハハ……同族とやり合う時以外で、自分の血を見るのは久しぶりだぜ。やるじゃねぇか!」

 

隠岐人は息を整え、構え直す。

「頭を吹き飛ばすつもりで殴ったのに……あの程度とは。」

 

「上等だ! 今度はこっちからいくぜ!」

 

童子が距離を詰め、互いに拳が交錯する。

肉と骨の軋む音、霊力と妖気が爆ぜる閃光。

だが鬼と半妖、その力の差は歴然だった。

 

数発の応酬の後、隠岐人は吹き飛ばされ、地に伏す。

 

童子が肩を鳴らしながら歩み寄る。

「……なんだ、大したことねぇな。だが――右手、だけはおかしい。鬼より重ぇ力してやがる。」

 

興味を引かれた童子が、倒れた隠岐人の右手に触れる。

次の瞬間――。

 

「ぐあっ!?」

 

生き返った隠岐人が、反射的にその手を掴み、力を込めた。

「この鬼には勝てる気がしない……ならせめて、片腕だけでも!」

 

童子「離せッ! この半妖がァ!」

 

童子が左手で何度も殴りつけるが、隠岐人は放さない。

妖力と霊力、全てを右腕に集中させ、握り潰す。

 

骨が軋み、肉が潰れる音。

ゴキッ――。

 

童子の右腕が、だらりと下がる。

 

「……やったか。」

 

隠岐人が息を吐いた刹那、轟音。

童子の拳が隠岐人の顔を吹き飛ばした。

 

「やりやがったな……テメェ……!」

 

童子は息を荒くしながら自分の右腕を見る。

感覚がない。

無理に動かそうとしても、力が入らない。

 

数秒後――隠岐人の首が再生し、再び立ち上がる。

 

童子は一瞬黙り、そして呆れたように笑った。

「お前……何度か殺した気がするが、生きてやがる。復活できんのか?」

 

隠岐人は静かに頷く。

「ええ。」

 

童子はその笑みを消し、背を向けた。

「……止めだ。復活できる相手じゃ、勝負にならねぇ。戦いは終わりだ。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。