デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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この物語はフィクションですが、社会風刺をよーしゃなく入れていきます。
くれぐれも、苦手な方は読まないようにしてください。


第11話 窃盗犯を逮捕せよ

「あぁぁぁぁもう! 何もかも値上げ、値上げ、値上げ……もう値上げは止まらないの!?」

 

 とある女性がテレビのニュースを見ていきり立っていた。

 止まらない物価高騰に怒りを露わにしていたのだ。

 しかし、ただの女性である彼女に、物価高騰を止める力などあるはずが……なかった。

 

「お困りのようですね」

「あ、あなたは……!」

 その時、女性の前に、スーツを着た男が現れた。

 男の隣には、中性的な容姿の少年が立っている。

「そんなに物価高が嫌なのですか?」

「当たり前よ! この前なんか、野菜の値段がまた上がったのよ!

 私達の事を全然考えてないのかしら!?」

「そうですよね……。ですが、その物価高に対抗するための方法が、たった一つだけありますよ」

「本当?」

 男は女性にダークヴァイスを手渡した。

 その輝きは邪悪だったが、女性にとっては魅力的だった。

「これです。私達が開発したこの素晴らしい装置を使えば、物価高をする人達に抗議できますよ」

「本当!? ありがとう!」

「では、さようなら……」

 そう言って男は、女性の前から去っていった。

 その男が含み笑いをし、少年の顔が青くなっている事に、女性は気付かなかった。

 

 翌朝、遠山家のリビングでは、いつものようにテレビのニュースが流れていた。

 多樹は朝食のパンを噛みながら、画面に映る光景に目を向ける。

「スーパーマーケットやコンビニで、大規模な窃盗事件が多発しています。

 犯行現場には荒らされた跡はなく、商品だけが巧妙に盗まれており……」

 ニュースキャスターの言葉に、多樹は首を傾げた。

 どうやら、町中のあちこちで万引き事件が多発しているらしい。

 しかし、不思議な事に、防犯カメラには犯人の姿が全く映っていなかった。

「一体どうやって盗んでいるんだろう。全然犯人が捕まらないなんて、おかしいよ」

 多樹は眉を潜めた。

 しかし、朝食を終えれば、すぐに学校へ行く時間だ。

 深く考える暇もなく、多樹は家を出る。

 

「多樹ーっ! こっちだぜー!」

 家の前で待っていた北斗が、元気いっぱいに手を振っている。

 多樹は、北斗の屈託のない笑顔を見ると、少しだけ心が軽くなるのを感じた。

「おはよう、北斗。今日も元気だね」

「おう! あ、ニュース見たか? 最近、変な万引き事件が多いんだってな」

「うん、見たよ。なんだか、私達もまた、事件に巻き込まれそうな予感がするね」

「まさか~!」

 多樹の言葉を北斗は笑い飛ばしたが、

 その笑顔の奥には、どこか不安がよぎっているようだった。

 

 二人は星海小学校へと向かい、いつも通りの授業を受けた。

 授業中も多樹の頭の中は、ニュースで見た窃盗事件の事でいっぱいだった。

(どうして、誰も犯人を見つけられないんだろう……。

 やっぱり、デジモンが関わっているのかな……)

「どうしたの、多樹? また、ぼーっとしちゃって。優等生なのに」

「あ、ごめん!」

「二人とも、今は授業中だぞ」

「「ごめんなさい」」

 担任教師は多樹と明日香に注意し、多樹と明日香は勉強を再開した。

 

 授業が終わって放課後。

 多樹と北斗が帰り道について話していると、多樹のスマートフォンに母親からの着信があった。

「もしもし、お母さん?」

「多樹?

 ごめんなさい、お母さん、帰りが遅くなりそうだから、夕飯の材料を玄関に置いておいたの。

 カレーライスの材料だから、冷蔵庫に入れておいてくれるかしら」

「うん、分かったよ」

 電話を切ると、多樹は北斗にその事を伝えた。

「じゃあ、オレも手伝ってやるよ! 今日は多樹の家で晩飯食うかー!」

「えっ、北斗……」

 多樹は戸惑ったが、北斗の押しの強さに負けて、二人は多樹の家へ向かった。

 

 多樹の家の玄関には、確かにエコバッグが置いてあった。

 しかし、中身は空だった。

「あれ……? おかしいな」

 多樹が首を傾げていると、

 エコバッグの底に、小さなひっかき傷のような跡がある事に気が付いた。

「まさか……盗まれた?」

 多樹の言葉に、北斗は顔色を変えた。

 恐らく、空き巣かデジモンが持って行ってしまったのかもしれないと。

「マジかよ! オレ達がニュースで見てた、あの万引きの犯人か!?」

「そうかもしれない……。でも、どうやって……」

 その時、多樹は玄関の隅に、怪しい足跡が残っているのを見つけた。

「北斗、これ!」

「よし、追いかけるぞ! 多樹!」

 二人は足跡を頼りに、犯人を追跡し始めた。

 足跡は、家の裏にある公園の方へと続いていた。

 

 公園の片隅にある木陰で、二人が見たのは女性だった。

 女性は、多樹の母親が買ったであろう食材を、満足げに抱えている。

「やっぱり、この人が……」

 多樹が呟くと、女性は二人の存在に気づき、ギョッとした表情で言った。

「あ、あなた達は……! な、何よ、私だって生活があるのよ!」

「生活のためとはいえ、泥棒は犯罪だよ! 私のお母さんが買ってきた夕食の材料を返して!」

 多樹が強い口調で言うと、女性は顔を歪ませ、手に持っていたダークヴァイスを構えた。

「物価高を決めた奴らが悪いのよ! 私はただ、社会に一矢報いようとしただけなのに!

 邪魔をするなら、子供でも容赦しないわよ! いきなさい!」

 女性が叫ぶとダークヴァイスから獰猛な狼のような姿をしたデジモン、ファングモンが現れた。

 何があっても、この万引きを続けたいつもりのようだ。

「邪魔する奴は、オレが食い殺してやる!」

「こいつが、今回の犯人か!」

「物価高は確かに困るよ。それでも、私はあなたを止める!」

 多樹はデジヴァイスを構え、スプライモンを呼び出した。

「行くざんす!」

 北斗も負けじと、デジヴァイスからフルーモンを呼び出す。

 

 ファングモンは、俊敏な動きでスプライモンとフルーモンを翻弄する。

「スナイプスティール!」

「えっ!?」

 ファングモンが素早く動くと、

 いつの間にかスプライモンの電撃を溜め込んだ玉が、ファングモンの手に握られていた。

 スプライモンが驚いている隙に、ファングモンはその玉をスプライモンに投げつけ、

 スプライモンは感電して吹き飛ばされる。

「いただいたぞ」

「スプライモン!」

 多樹が叫ぶ。

 フルーモンが反撃しようとするが、

 ファングモンはさらに俊敏な動きでフルーモンの後ろに回り込み、その翼に噛み付いた。

「ミーの翼が……!」

 ファングモンの圧倒的な強さの前に、スプライモンとフルーモンは苦戦を強いられる。

 

「このままじゃダメだ! 多樹、デジモンブーストだ!」

「うん!」

 多樹と北斗はデジヴァイスを構え、ブーストを発動させた。

「「デジモンブースト!」」

 スプライモンとフルーモンの体が光に包まれ、一気にパワーアップする。

 パワーもスピードも、ファングモンとは比べ物にならないほど高くなった。

「ライトニングボルト!」

「トルビヨン・エペ!」

 二体の必殺技が、ついにファングモンにダメージを与えた。

「ぐぅ……! オレにこんな真似を……!」

 ファングモンは苦しげに唸るが、二人の攻撃に押され、次第に追い詰められていく。

 そして、スプライモンの強烈な電撃とフルーモンの風の刃の連続攻撃を受け、

 ファングモンは光のデータに変わった。

「やった!」

 スプライモンとフルーモンが喜びの声を上げる。

 女性の手にあったダークヴァイスも砕け散った。

「あ、ああ……」

 女性は呆然と立ち尽くす。

 その隙に、多樹は母親が買った夕食の材料を取り戻した。

 

「もう、やめて。こんな事をしても、何も解決しないよ」

 多樹の言葉に、女性は項垂れる。

 事件を解決したのでそれについては全てリセットされて、デジモンについては忘れてしまう。

 しかし、事件が起こる前の事やデジモン以外の事はちゃんと覚えているはずだと多樹は思った。

 女性が落ち着きを取り戻した後、多樹と北斗は彼女から話を聞いた。

 

「物価高に腹を立てていたら、スーツを着た男の人が、私に変な機械を渡したの」

「スーツを着た男の人……やっぱり、タイガの仕業か!」

 北斗が悔しそうに拳を握る。

「タイガは、社会に不満を持つ人達にダークヴァイスを渡して、犯罪者にしているんだ……」

 多樹は、タイガの「社会の不満を解消する」という言葉を思い出し、背筋が寒くなった。

 しかし、ここで怯えては、ウィザードの野望を阻止できない。

 

「タイガを、ウィザードを止めなきゃ! じゃないと、また誰かが罪を犯しちゃう!」

「でも、どうやって……」

 二人は顔を見合わせる。

 タイガの行方を突き止めるには、情報が必要だ。

「そうだ! デジモン研究所に行こう! 父さんなら、何か知ってるかもしれない!」

「うん! 行こう、北斗!」

 多樹と北斗は、タイガを追い詰めるため、デジモン研究所へと向かうのだった。




ウィザードは社会の闇を突いていきますが、まごうことなき悪の組織です。
なので、多樹達はしっかりと立ち向かって、犯罪を止めていきます。
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