少なくとも、今のアニメでは出せないようなものも、ね。
木曜日、いつものように多樹と北斗は星海小学校に通った。
零はというと、多樹と北斗に気づかないまま、星海小学校に進む道を歩いた。
「何だか私達って、デジモンが来てからよく事件に巻き込まれてると思う」
「そうだよね。でも、敵の数はそんなに多くないから大丈夫じゃない?」
カラムモンの言葉に多樹は首を横に振った。
確かに幹部はそんなに多くないと思うが、事件の規模が小さくもあれば大きくもある。
そこで油断してしまえば、ウィザードに負ける可能性は高いのだ。
「多樹ちゃんって、ちょっと考えすぎじゃない?」
「考えすぎな方がいい場合もあるんだよ」
多樹は、人数だけで敵の強さを侮らない慎重な性格だ。
それが、多樹と北斗の勝利を導いているのかもしれない。
カラムモンは「しょうがないよね」と言いながら、デジヴァイスの奥に潜った。
木曜日、星海小学校の教室に、担任教師の声が響いていた。
今日の授業は、社会科の「環境と私達の生活」についてだ。
「……皆さんの周りには、ゴミ一つない綺麗な場所がたくさんありますね。
それは、私達が公共の場所を綺麗に保とうと努力しているからです。
もし、誰かが少しずつでもゴミを捨てていったら、どうなると思いますか?」
教師がそう問いかけると、北斗は退屈そうに机に頬杖をつき、窓の外を眺めていた。
彼のノートには、ヴォレモンが空を飛んでいる落書きがびっしりと描かれている。
(考えただけでもゾッとするざんす……)
北斗のデジヴァイスから、ヴォレモンの小さな声が聞こえてきた。
ヴォレモンは、清潔な場所が大好きなので、この手の話はとても嫌だった。
一方、多樹は真剣な表情でノートにペンを走らせていた。
多樹の頭の中では、ゴミが溢れかえった街の光景が広がっていく。
ウィザードの事件を経験してから、多樹はどんな小さな社会問題も、
大きな混乱に繋がる可能性があると考えるようになった。
教師は、生徒達の様子を見ながら、優しく微笑んで言った。
「では、遠山さん。あなたは、どう思いますか?」
突然指名された多樹は、少し緊張しながらも、立ち上がって答えた。
「はい。
最初は小さなゴミでも、それがどんどん増えていったら、
最終的には街全体がゴミだらけになってみんなが住みにくくなると思います。
心も荒んでいくかもしれません」
「素晴らしいですね。その通りです。
遠山さんの言う通り、小さなゴミが、いつか大きな問題に繋がる事もあるのです」
教師は多樹の答えに満足そうに頷いた。
北斗は、多樹の答えに驚いたように目を丸くし、こっそり多樹のノートを覗き込んだ。
そこには、ただ教師の言葉が書いてあるだけでなく、
ウィザードの事件と結びつけたようなメモが書かれていた。
「すげぇな、多樹……」
北斗が感心したように呟く。
多樹は、北斗の言葉に少し照れながらも、静かに席に座った。
しばらくして時、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
教科書やノートをカバンにしまいながら、北斗は多樹に言った。
「なぁ多樹、今日の授業、なんか難しかったよな」
「そうかな? 私は、ウィザードの事だなって思ったよ」
「え?」
「ウィザードは、小さな不満をゴミみたいに集めて、大きな問題にしているんだって」
多樹の言葉に、北斗は改めて考え込むように首を傾げた。
多樹はそんな北斗を見て、少し微笑んだ。
「さあ、帰ろうか」
多樹はそう言って、北斗を促して教室を出た。
多樹と北斗は、いつものように校門を出て、まっすぐ家へと向かう。
北斗の家が近づいてきた時、北斗は自分の家をちらっと見た。
「ん……?」
玄関の前には、ゴミの山が散らかっていた。
何かの荷物が散乱し、異臭を放っている。
「どうしたの、北斗?」
多樹が北斗の視線の先を追うと、北斗の家の酷い惨状が目に入った。
「なんでオレの家がこんな事になってるんだ!」
北斗が慌てて家に駆け寄ろうとした時、隣の家から、岡田金四郎と岡田引子の夫婦が出てきた。
二人の顔には、困惑の色が浮かんでいた。
「多樹ちゃん、北斗君……ごめんなさい。うちも……」
引子が申し訳なさそうに、自らの家を指差す。
そこには、北斗の家と同じように、ゴミが散乱していた。
「嘘……」
多樹は驚きを隠せない。
岡田夫妻は、いつも家を綺麗にしているはずだった。
それが、まるでゴミ屋敷のようになっていた。
多樹は、ふと、ある事を思い出した。
「もしかして……片付けられない症候群?」
多樹の言葉に、金四郎と引子は顔を見合わせる。
引子は目に涙を浮かべながら、多樹に語り始めた。
「そうなのです……。
夫が、拾得物を警察署に置いておきたくないからと言って、自宅に持ち帰る事が多くて……。
それが、私にとっては大きなプレッシャーになっていて……」
引子は、金四郎の善意が、自分にとっては心の重荷になっていたのだと告白した。
その時、運の悪い事に、多樹と北斗の後ろから、零が歩いてきた。
零は、ウィザードの命令で、ある拾得物を取りに来たのだった。
「……」
零は、多樹達の家の惨状を見て、渋々ながらウィザードに連絡を入れた。
『ウィザードです。我々の計画は順調に進んでいます。
星海町の住民に「片付けられない症候群」の汚名を着せ、評判を地に落としましょう』
こうして、ウィザードの命令で、
テレビ局に「散らかっているお宅拝見」という番組が作られた。
岡田夫妻の家を誰かが取材し、その惨状が全国に放送される事になった。
しかし、多樹と北斗は諦めなかった。
「テレビの取材って、本当にやっちゃうの……!?」
「そんな事させないよ! 私達が何とかするから!」
多樹と北斗は、取材班の前に立ち塞がり、岡田夫妻の状況を説明した。
二人の必死な説得に、取材班は心を動かされ、報道を中止した。
岡田夫妻の評判は、どうにか保たれた。
「デ、デジモンがこんなに!?」
「く、くせぇ……!」
しかし、事態は思わぬ方向に進展した。
街中に散らばったゴミの異臭に誘われて、大量のスカモンが現れたのだ。
「大丈夫ですか!?」
どこからともなく、鶏とメイドを掛け合わせたような姿をしたデジモン、キキーモンが現れた。
キキーモンは、清潔好きなデジモンで、汚いものが大嫌いだ。
「皆様、ご安心ください! この私が、街を綺麗に掃除いたします!」
キキーモンは、手に持った箒を振り回し、スカモン達に襲い掛かった。
「クリーンブルーム!」
キキーモンの必殺技で、スカモン達を次々と掃除していく。
しかし、スカモンの数はあまりにも多すぎた。
「このままじゃ、キキーモンがやられちゃう! カラムモン!」
「ヴォレモン、出番だぜ!」
多樹と北斗はデジヴァイスを掲げ、カラムモンとヴォレモンを呼び出した。
「わたし、キキーモンと協力して頑張るよ!」
「ミーの力、見せてやるざんす!」
「全てをお掃除します!」
カラムモン、ヴォレモン、キキーモンは、協力して大量のスカモンを掃除し始めた。
「サンダービーム!」
「スフレ・バットル!」
「クリーンブルーム!」
三つの必殺技が、スカモンを次々とデリートしていく。
いくら成熟期とはいえ、戦闘能力が低く数だけのデジモンに、
カラムモン達が負けるはずがないのだ。
何とか大量のスカモンを掃除し終えた三体のデジモンは、
そのまま町中に吐き散らしたゴミも一掃した。
「私、ワクチン種なので、これくらいのウィルスなど簡単に掃除できます」
キキーモンは、誇らしげに胸を張った。
最後に、岡田夫妻の自宅に溜まっていたゴミも取り除き、
引子の「片付けられない症候群」の原因だった心の傷も癒えた。
その時、多樹と北斗は、遠くでこちらを伺っている零に気づいた。
「零! 待って!」
多樹が叫ぶと、零は慌ててその場を逃げ出した。
「待てよ、零!」
北斗も零の後を追うが、零はそのまま姿を消してしまった。
「もしかして、ウィザードの命令で、零がこの事件を……?」
多樹は零がウィザードの指示で、
町中に「片付けられない症候群」の汚名を着せようとしていたのではないかと、
疑いを深めるのだった。
オリジナルデジモンを出す時、元ネタ被りが起こらないように真剣に調べました。
せっかくこいつがいるんだからこいつと対になるデジモンも作りたかったのです。
~オリジナルデジモン図鑑~
キキーモン
レベル:成熟期
タイプ:妖精型
属性:ワクチン
必殺技:クリーンブルーム、ダストショット
鶏とメイドを掛け合わせた容姿をした、綺麗好きなデジモン。
デジタルワールドの環境が綺麗なのはキキーモンのおかげだと言われている。
必殺技は箒を振り回して敵を掃除する「クリーンブルーム」と、
箒でゴミを飛ばして攻撃する「ダストショット」。