デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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ユーザーの信頼を裏切った某リワードサイトは本当に制裁を受けてほしいです。
少なくとも、ユーザーが乗っ取るくらいに、回復不可能なくらいにね。

とまあ、そういうのはさておいて、今回は日常回です。
主人公が女の子なんだから、こういうのもいれないとね。


第17話 お菓子作りに挑戦

 土曜日、星海小学校が休みなので多樹は自宅でのんびりしていた。

 いじめられっ子を止めた事やウィザードからだんだんと零が離れつつある事を知っているが、

 多樹としてはこう何度も戦いが続くと身体がもたない。

 そのため、今日はゆっくり休んで体力を回復する事にした。

 

「今日はゆっくり休もうか、カラムモン」

「そうだね。多樹ちゃん、戦うのはあまり好きじゃないっぽいし」

「確かに私は戦うのは好きじゃないよ。

 けれど、ウィザードや、悪い事をしようとする人を止めないわけじゃないよ」

 

 多樹は無闇な戦いを好まないが、ウィザードに唆されて悪事を働いた人を

 パートナーデジモンや北斗と共に止めたように、正義感は強い。

 か弱く内気なようでいて、実際は芯が強く、心優しい少女、それが多樹だ。

 

「……まあ、ぼーっとして何もしないのも退屈になるだけだし、お菓子でも作ろうかな」

「えっ、多樹ちゃん、お菓子作った事があるの?」

「ない。でも、家庭科の調理実習でサラダを作った事はあるよ」

「じゃ、じゃあ……」

 

 カラムモンは多樹の料理に不安を抱いた。

 家庭科の授業で料理は学んだ多樹だが、お菓子は一度も作った事がない。

 もし失敗したら北斗はがっかりするだろう、とカラムモンは思っていた。

 

「やめた方がいいよ、多樹ちゃん」

「大丈夫だって。逃げてばかりだと、どうせカラムモンはまた弱虫って言うでしょ」

「うっ……」

 

 ウィザードとの戦いで弱気になった多樹を励ましたのは彼女のパートナーデジモンだ。

 今度は多樹がカラムモンに指摘し、カラムモンは何も言えなくなった。

 

「多樹ちゃん、ちゃんと言いたい事を言えるんだね。じゃあ、わたしは止めないよ」

「北斗があんなに積極的だもの。私は負けたくない。それに……北斗が喜んでる顔を見たいから」

 

 多樹は北斗と比べて、積極的な性格ではない。

 しかし、いつまでも逃げていては、ウィザードの凶行を止める事はできない。

 そこで、北斗やパートナーデジモンと共に、ウィザードが起こした事件を解決するのだ。

 それは、お菓子作りであっても例外ではないだろう。

 

「それじゃあ、作ろうか」

 多樹は立ち上がり、ゆっくりとキッチンへ向かった。

 ピンクのエプロンを身に着け、袖をまくる。

 まだ少し震える手で、冷蔵庫からリンゴを、戸棚から蜂蜜を取り出した。

 多樹にとっては、人生で初めてのお菓子作りだ。

 

(これがお菓子作りか……なんか、緊張する)

 レシピ本を広げ、まずはリンゴを剥く作業から始めた。

 

 慣れない手つきで子供用包丁を握り、リンゴの皮を剥いていく。

 つるりとしたリンゴの表面を剥くのは意外と難しく、

 指先が滑って、何度も包丁が危ないところを通る。

 幸い、指は切らなかったものの、包丁を使うのは難しかった。

(危なかった……。あんまり綺麗に切れてないな。でも、調理すれば関係なさそう)

 剥き終わったリンゴは、歪な形になっていた。

 さらに、冷たいリンゴに触れ続けた多樹の手は、少し赤くなっていた。

「大丈夫かな……」

 多樹が思わず小さな声で呟くと、デジヴァイスの中からカラムモンの声が聞こえてきた。

 

「頑張れー、多樹ちゃん! 北斗にプレゼントしたいんでしょ!?」

「あ……うん。カラムモン、ありがとう」

 カラムモンが多樹を励ますと、多樹は再び手を動かし始めた。

 リンゴを小さく切り、鍋で煮詰めていく。

 甘酸っぱい香りがキッチンに広がり、多樹の不安な気持ちを少しずつ和らげていった。

 蜂蜜を加え、とろみがついたところで火を止める。

 リンゴの甘い香りと、蜂蜜の優しい香りが混ざり合い、部屋中に漂った。

 

(これでケーキの飾りつけはできた。後はケーキ作りだ)

 次は生地作りだ。

 レシピ通りに小麦粉と砂糖を混ぜ、溶かしたバターと牛乳を加えていく。

 混ぜれば混ぜるほど、生地はもったりとして、腕が疲れてきた。

 それでも、多樹は手を休めなかった。

 頭の中には、はっきりと北斗の笑顔が浮かんでいたからだ。

 

(北斗が、このケーキを食べて、喜んでくれたらいいな……)

 その一心で、多樹は生地を混ぜ続けた。

 

 オーブンを温め、生地を型に流し込み、リンゴを綺麗に並べる。

 初めてにしては、なかなか上手くできたかもしれない。

 多樹は胸を膨らませてオーブンのスイッチを入れた。

 

 オーブンの中では、ケーキがじっくりと焼けていく。

 多樹は、オーブンのガラス扉に張り付いて、

 ケーキが少しずつ膨らんでいく様子をじっと見つめていた。

 その時間は、ウィザードとの戦いよりも長く、緊張するものだった。

 

(美味しく焼けるといいね……)

 

 しばらくして、オーブンから甘く香ばしい匂いが漂ってきた。

 焼き上がったケーキを取り出すと、表面はこんがりと焼き色がついて見るからに美味しそうだ。

 

「やった……! できた!」

 多樹は、思わず声を上げた。

 その時、インターホンが鳴った。

「はーい!」

 多樹が玄関を開けると、そこに立っていたのは、北斗だった。

 

「多樹、遊びに来たぜ!」

「北斗! ちょうどよかった!」

 偶然遊びに来たらしいが、それにしては妙にタイミングが良かった。

 もしかして、北斗も多樹を思い出したのだろうか。

 

 北斗は、家の中から漂ってくる甘い香りに気づき、目を輝かせた。

「なんか、すげぇいい匂いがするな! 多樹、何か作ったのか?」

「うん……。ケーキ、作ったんだ」

 多樹は、少し照れながら、北斗を部屋に招き入れた。

 テーブルの上には、焼き上がったばかりのリンゴと蜂蜜のケーキが置いてある。

 北斗は目を丸くして、ケーキを見つめた。

「すげー! 多樹が作ったのか!?」

「初めてだから、ちょっと自信ないけど、私が作ったんだ」

 多樹は、不安そうに北斗の顔を見た。

 北斗は、そんな多樹の気持ちを察したのか、満面の笑みを浮かべて言った。

「いいんだ! 多樹が作ってくれたケーキなら、絶対美味いに決まってる!」

 北斗は、多樹が渡したフォークを受け取ると、ケーキを一口食べた。

 口の中に、リンゴの甘酸っぱさと、蜂蜜の優しい甘さが広がっていく。

 生地はしっとりとしていて、とても美味しかった。

「うっま! すっげぇ美味いぜ、多樹!」

 北斗は、心からそう言った。

 その言葉に、多樹の胸は熱くなった。

「本当?」

 多樹がそう尋ねると、北斗は何度も頷いた。

「ああ、マジで! 多樹、すげーな!」

 多樹は、北斗の満面の笑顔を見て、心から嬉しくなった。

 ウィザードとの戦いに勝利した時とは違う、温かくて、優しい喜びが、多樹の心を包み込んだ。

「よかった……」

 多樹は、そう言って微笑んだ。

 北斗は、多樹の作ったケーキを美味しそうに食べ続けた。

 土曜日の午後、多樹と北斗は、甘いケーキを囲んで、幸せな時間を過ごした。




こういった休日が、多樹達にとってはアクセントというわけです。
多樹は大人しくはありますが、主人公らしく正義感は強いのです。
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