デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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とある児童書のある話を参考にして書きました。
デジモンだって「悩む」事はあるんだよ、というのをここで書きたかったのです。


第18話 不幸を呼ぶデジモン

 日曜日、多樹は家で大人しくしていた。

 ウィザードとの戦いから解放された週末は、多樹にとって貴重な休息の時間だ。

 

「今日はゆっくり休もうか、カラムモン」

「そうだね」

 多樹が部屋でゆっくりしていると、玄関のドアが開く音が聞こえた。

 買い物に出かけていた母親が帰ってきたのだ。

「お帰りなさい、お母さん」

「ただいま、多樹……」

 母親の声は、いつもより少し弱々しかった。

 多樹が顔を上げると、母親はふらつきながら玄関に入ってきた。

 その足元を見ると、母親の膝には擦り傷があり、血が滲んでいる。

「お母さん! 足、どうしたの!?」

「ああ、これ……ちょっと転んだだけよ。心配しないで」

「でも……」

 母親はそう言うと、無理矢理微笑んでみせた。

 しかし多樹には、それがただの転倒ではない事が分かった。

 母親は、多樹に事の経緯を話し始めた。

「それがね、変なデジモンに……。

 いや、デジモンじゃないわね、変な牛の置物みたいなのを見て……」

「牛の置物……?」

 多樹は、ウィザードかウィザードに唆された者が犯人なのかと思っていた。

 しかし、母親の言葉には、ウィザードの影は感じられなかった。

「その牛の置物を慌てて避けたのよ。そしたら、足がもつれて転んじゃって……」

 母親はそう言って、多樹を安心させようとした。

 しかし、多樹は、母親の言葉から、町に新たなデジモンが現れた事を確信した。

 多樹は自分の部屋に戻って、デジモンに関する本を読んだ。

 すると、母親が話していたデジモンによく似たデジモンが見つかった。

 

「これか」

 それは、牛のような姿をしたカウダンモンだった。

 カウダンモンはデータの流れから未来を予知する力を持ったデジモンで、

 特に不幸を察知する力に秀でていた。

 不幸を止めるために現れるが、逆に不幸を呼ぶデジモンだと嫌われているという。

 多樹は、カウダンモンが母親に怪我をさせたわけではない事を理解した。

 しかし、町の人々は、カウダンモンの姿を見て、

 不幸をカウダンモンのせいにしているようだった。

 

「お母さんも、カウダンモンのせいで転んだって思ってるみたいだ……」

 多樹は、カウダンモンの誤解を解くため、

 そして、これから起こる不幸を止めるために、カウダンモンと協力する事を決意した。

 カラムモンも、多樹のデジヴァイスの中で頷いた。

 

 多樹とカラムモンはカウダンモンを探しに外へ出た。

 ほどなくして、電柱の影に隠れているカウダンモンを見つけた。

「カウダンモン! あなた、これから起こる不幸を知らせるために来たんだよね?」

「……どうして、君がそれを知っているんだ?」

 カウダンモンは驚いたように多樹を見た。

 多樹は、カウダンモンに自分のデジヴァイスを見せ、

 自分がデジモンと心を通わせる人間だと告げた。

 カウダンモンは、多樹の言葉に安堵したように、これまでの経緯を話してくれた。

 

「私は不幸を止めるために来た。だが、人々は私を不幸の元凶だと罵るんだ……」

 多樹は、カウダンモンの悲しい事情を知り、心を痛めた。

「大丈夫だよ! 私が、カウダンモンの誤解を解くから!」

「本当に……? 君も私を信じてくれるのか?」

「うん! だから、一緒に不幸を止めよう!」

 多樹は、カウダンモンを助けるため、カウダンモンに協力する事にした。

 

「そういえば、君はなんて名前なんだ?」

「私は遠山多樹だよ」

 

 多樹とカウダンモンは、これから起こる不幸を止めるために行動を開始した。

 カウダンモンの予知に従い、多樹は行動を開始する。

「この先で、車のタイヤがパンクする。このままでは、多くの人が怪我をするだろう」

 カウダンモンの予知を受け、多樹は急いで現場に向かった。

 タイヤがパンクした車は、運悪く交差点で立ち往生し、渋滞を引き起こしていた。

 多樹は、通行人に事情を説明し、車を押すのを手伝ってもらった。

「よかった、誰も怪我してない……」

 多樹は安堵の息をついた。

 

「あいつがいるから、こんな事になったんだ!」

 しかし、人々はカウダンモンを指差し、罵声を浴びせた。

 多樹の行動も虚しく、人々の誤解は解けなかった。

 幸いにも、これまでの不幸で誰も大怪我をしていない。

 しかし、多樹の不安は的中した。

「多樹! 大変だ!」

 カウダンモンが慌てた様子で、多樹に叫んだ。

「最大の不幸が、あの娘に迫っている!」

 多樹は明日香が家族でレストランに向かって歩いている事を思い出し、急いで現場に向かった。

 交差点に差し掛かった時、一台のトラックが明日香に迫っていた。

 多樹は、全力で明日香に向かって走り出した。

「明日香!」

 多樹の声に、明日香は振り返った。

 しかし、トラックはもう目の前まで迫っていた。

 多樹はトラックの前に飛び出し、明日香と両親を突き飛ばした。

「危ない!」

―キィィィィィ!

 トラックの急ブレーキの音が響き渡り、

 多樹と両親は間一髪のところでトラックに轢かれるのを免れた。

 多樹は明日香とその両親を無事に助ける事ができた。

 

「……どうしたの!?」

「明日香、もう少しで轢かれるところだったんだよ!」

「……あ、ああ……」

 明日香は震えながらも、自分を助けてくれた多樹に安心する。

 ようやく不幸を止める事ができた。

 多樹とカラムモンは安心して、家に帰ろうとした。

 

「あいつがあの子を轢き殺そうとしたんだ!」

 しかし、人々はカウダンモンを指差して、そう叫んだ。

 カウダンモンは、自分を信じてくれた多樹まで、

 自分のせいで危ない目に遭わせてしまった事に、深い絶望を感じた。

 

「みんな……誰も、私を信じてくれないんだ……!」

 カウダンモンは、その絶望から身体を震わせ、黒いオーラを発した。

 絶望したカウダンモンが、暴走しようとしている。

 

「私は不幸を呼ぶデジモンなんかじゃない! だが、お前達がそう言うのなら、そうしてやる!」

 暴走したカウダンモンはそう言って、多樹に襲い掛かった。

「カウダンモン、待って!」

 多樹は、カウダンモンを止めるため、デジヴァイスからカラムモンを出した。

「カラムモン! カウダンモンを止めるよ!」

「うん!」

 カラムモンは、暴走しているカウダンモンを止めるために戦った。

 しかし、カウダンモンは未来を予知する力を持っており、

 カラムモンの攻撃を全て読んでかわしていく。

「そんな……! 攻撃が当たらない!」

 カラムモンは、未来を予知するカウダンモンに翻弄され、苦戦を強いられた。

 しかし、多樹は諦めなかった。

(攻撃を読まれるなら、読まれる事を前提に戦えばいいんだ……!)

 多樹は、カラムモンに指示を出した。

「カラムモン! サンダービームの構え!」

 多樹の指示通り、カラムモンはサンダービームを放つ構えを取った。

 カウダンモンはカラムモンの攻撃を予知し、かわそうと身構える。

「今だよ!」

「いっけーっ、パラライズウェイヴ!」

 多樹は、寸前で攻撃を切り替えた。

 カラムモンは、サンダービームではなく、雷の嵐を放った。

 カウダンモンは、自分の予知を破られた事に驚き、雷の嵐をまともに受けてしまった。

 

「な、何故だ……!」

 自分の予知を破られたカウダンモンは、混乱した。

 多樹は、そんなカウダンモンに優しく語りかけた。

「カウダンモン、あなたは不幸を呼ぶんじゃなくて、不幸を止めようとしたんだよね?

 みんな、あなたの事を誤解しているだけだよ」

 多樹の言葉に、カウダンモンの目が潤んだ。

「私は……私は……」

 カウダンモンは、自分の過ちに気づき、多樹に降伏した。

 

「……すまなかった……人間よ……」

 カウダンモンは、多樹に感謝の言葉を述べ、

 データの光となってデジタルワールドに帰還した。

 

「……やっと終わったね」

 カウダンモンがデジタルワールドに帰還すると、町の騒動は嘘のように静かになった。

 人々は、カウダンモンの事や、デジモンが現れた事、

 そして、多樹が明日香と両親を救った事を全て忘れてしまっていた。

 

「……やっぱりこうなるのかぁ」

 事件を解決した事で、周りの人々からデジモンの記憶は消えた。

 しかし、多樹の胸には、確かに人々を不幸から救ったという確かな実感が残っていた。

 そして、この日以来、多樹の心は少しだけ強くなっていた。




カウダンモンのモチーフは「くだん」という妖怪です。
ポケモンのアブソルっぽい感じにしました。

~オリジナルデジモン図鑑~

カウダンモン
データの流れから未来を予知する力を持った、牛の姿をしたデジモン。
特に不幸を察知する力に秀でており、不幸を止めるために現れるが、
逆に不幸を呼ぶデジモンだと嫌われている。
必殺技は未来を予知して相手より先に攻撃する「先々舞」と、
勢いよく体当たりしながら周囲の味方を幸福にする「吉兆撃」。
・デジモンとしての情報
レベル:成熟期
タイプ:哺乳類型
属性:データ
必殺技:先々舞、吉兆撃
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