デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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アストリアのストックは初の究極体戦まで進みました。
今回はライバルキャラ、零を掘り下げたいと思います。


第19話 零の心を開きたい!

 月曜日、また学校が始まる。

 

「……何か、零が心配だな」

「北斗……」

 

 多樹は、ウィザードを裏切ったという零を心配する北斗が気がかりだった。

 確かに、同じデジヴァイスを持っている人と多樹は戦いたくなかったが、

 ウィザードは零を許さないかもしれない。

 もしも、零がウィザードに処分されたら……と思うと、多樹と北斗は身震いした。

 

「多樹はどう思うんだ?」

「私も心配だよ。違うクラスだからよく分からないけど……」

 

 零のクラスは多樹と北斗の隣、1組だ。

 人付き合いが苦手な多樹は、学校では零とほとんど話をしていないので、

 彼の事が分からないのは当然だ。

 しかし、ウィザードに協力しているらしいので、

 デジモンが関わる事件を解決するうちに、彼との距離が縮まった気がした。

 多樹はできれば零と協力したかったが、まだ彼の事がよく分からないので保留した。

 

「……零って、本当に悪い人なのかな」

 

 小学生がウィザードに協力するのは、とてもではないが多樹は想像できない。

 だったら、何かしらの理由があるはずだと多樹は思った。

 しかし、多樹はとてもではないが、零と話す勇気はまだ持っていなかった。

 

 多樹が零を心配する中、星海小学校でいつものように授業が始まる。

 

 1時間目の授業が始まった。

 今日の算数は、小学6年生が解くには難しい、複雑な文章題だ。

 担任教師は黒板に問題文を書きながら、生徒達に考えるように促す。

 

「ふう……。なんで算数ってこんなにややこしいんだよ……」

 北斗は、問題文を見ただけでげんなりしていた。

 得意ではない算数に、早くも集中力が途切れそうになっている。

 早く体育の時間にならないかな、と心の中で呟いた。

 一方、多樹は真剣な顔でノートに向かっていた。

 多樹は目で問題文を追っていたが、

 その心の中は、今日の朝からずっと考えている零の事でいっぱいだった。

 

(零は、どうしてあんな事をしたんだろう……。何か理由があるはずだよね)

 多樹は、昨日の夜からずっと、その事ばかり考えていた。

 デジヴァイスを持っているなら、ウィザードに騙されているのかもしれない。

 零の表情がどこか悲しそうだったのも、伺える。

 

 担任教師がチョークを置き、生徒達の方を振り向く。

「では遠山さん、どうですか?」

 多樹は、担任教師の言葉にハッと我に返った。

 彼女は、問題を解くためのヒントが、まるで零の心を解き明かすための鍵のように思えた。

「はい。こういう風に答えて、こうなります」

 多樹が黒板に答えと解き方を書くと、担任教師は満足そうに頷いた。

 北斗は、多樹の答えに驚き、呆気に取られていた。

 多樹は担任教師の期待に応えられた事に少し安堵し、席に戻って再びノートに視線を落とした。

 

 答えはまだ見つからない。

 しかし、ウィザードの謎も、零の心も、いつか必ず解き明かせると信じていた。

 

 こうして1時間目の算数の授業が終わり、2時間目は体育の授業だ。

 今日はクラス対抗バスケットボールらしい。

 

 体育館に、生徒達の熱気とざわめきが満ちていた。

 6年1組のメンバーは、赤井沙織、高橋めぐみ、田中陽一、富士崎零、吉村哲志。

 対する6年2組のメンバーは、一ノ瀬明日香、伊藤拓郎、遠山多樹、馬場正弘、星野北斗だ。

 

「みんな、頑張るぞー!」

 北斗がチームを鼓舞すると、多樹は小さく頷いた。

 彼の元気な声に、多樹も明日香も、自然と顔がほころぶ。

 

 その声に応えるように、今度は6年1組の赤井沙織が声を上げた。

「1組のみんな、やるわよ! 2組なんかに、絶対に負けないんだから!」

 沙織の自信に満ちた声に、1組の生徒も拳を握り、闘志を燃やす。

 零は口元を僅かに引き締めるだけで、何も言わなかったが、

 その眼差しは静かな闘志を宿していた。

 

 しばらくすると、審判のホイッスルが鳴り響き、試合が始まった。

 

 試合開始直後から、両チームは激しい攻防を繰り広げた。

 北斗は持ち前のスピードとドリブルで相手ディフェンスを翻弄し、ゴール下へ切り込む。

 しかし、零の動きは素早く、北斗のシュートコースを巧みに塞いでくる。

 零は無駄な動きがなく、常に冷静に相手の動きを読んでいた。

 多樹は身長の高さを活かしてディフェンスに徹し、相手のパスコースを塞いだ。

 

(私は運動は得意じゃないけど、それでも足手まといにはなりたくない。デジモンと同じで)

 

 試合は膠着状態に陥った。

 両チームとも、相手の固いディフェンスを崩す事ができず、得点が入らない。

 0-0のまま、時間だけが刻々と過ぎていく。

 

「くっ……零、やっぱすげぇな」

「ふっ、試合では決して手を抜かないからな」

 北斗は悔しそうに零を見つめた。

 零はシュートを打つわけでもなく、ただ北斗の動きを封じる事に集中しているようだった。

 その冷静さが、北斗の焦りを誘う。

 

 残り時間は3分になった。

 多樹は、北斗の焦りを察した。

(北斗、焦ってる……。このままじゃ、ダメだ)

 多樹は声をかけようとしたが、勇気が出ない。

 しかし、このままでは試合に負けてしまう。

 多樹は意を決して、大きな声で北斗に指示を出した。

「北斗!」

 多樹の声に、北斗は驚いたように多樹を見た。

 しかし、多樹の目は真剣だった。

 北斗は多樹の言葉を信じ、パスを出した。

 多樹はボールを受け取ると、すぐに伊藤にパスを出す。

 伊藤はそれを一ノ瀬にパスし、パスを回しながら相手のディフェンスを崩していく。

 多樹の声が、チームを一つにしたのだ。

 

(多樹……。デジモンでの戦いだけじゃなく、こういう場面でも冷静なんだな)

 零は、多樹の指示の正確さに舌を巻いていた。

 

 残り時間は1分になった。

 北斗がドリブルで切り込み、シュートを打った。

 しかし、零がブロックに入り、シュートは外れた。

 リバウンドを取ろうと、両チームの選手が入り乱れる。

 

 残り時間はついに10秒になった。

 北斗がリバウンドを取り、ドリブルでゴール下まで運んだ。

 しかし、零が再び立ちはだかり、北斗はシュートを打つ事ができない。

 

 残り時間5秒。

 北斗は、一か八か、スリーポイントラインの外からシュートを打った。

「……北斗、まさか……!」

 北斗のシュートは、山なりの軌道を描いて、ゴールへと向かっていく。

 

 残り時間1秒。

 ボールは、リングに当たる事なく、ゴールへと吸い込まれた。

「やったー!」

 北斗がガッツポーズをする。

 多樹達も、北斗に駆け寄って喜びを分かち合った。

 

 こうして、クラス対抗バスケットボールは、3-0で6年2組が勝利した。

 

 試合が終わった後、多樹は意を決して零に話しかけた。

「あの……零、昨日の事なんだけど……」

 多樹の言葉に、零は黙って多樹を見つめた。

「どうして、ウィザードに協力してるの?」

 多樹は勇気を振り絞って尋ねた。

 零は、少し考えてから、静かに語り始めた。

 

「僕の両親は、ウィザードにお金を騙し取られたんだ。

 ウィザードの言葉を信じて、大金をつぎ込んでしまって……。でも、何も手に入らなかった」

 零の声は震えていた。

 多樹は零の過去を聞いて、自分も身体を震わせる。

「両親は絶望して、自暴自棄になった。

 僕は、そんな両親を助けるために、ウィザードに協力するしかなかったんだ」

 零は、ウィザードから「協力すれば、騙し取られたお金を取り戻してやる」と言われたという。

 しかし、ウィザードは約束を守るどころか、零を道具のように使い、悪事に加担させていた。

 零は、ウィザードのやり方に反発し、自分の力で両親を助けようと決意したのだ。

 

 多樹は、零の悲しい事情を知り、言葉を失った。

 零の目は、深い悲しみを湛えていた。

(……あんな事をしてたけど、零も、辛い思いをしてたんだ……)

 多樹は、零が完全な敵ではないと信じ始めた。

 

「……零、話してくれてありがとう」

 多樹は、そう言って零に微笑みかけた。

 零は、多樹の優しさに少し驚いたようだった。

「……別に。僕の勝手だから」

 零はそう言って、多樹から目を逸らした。

 しかし、彼の表情は、どこか安堵しているように見えた。

 

「零は悪い人じゃない。この授業のおかげで、分かった」




零の過去はTOAのアニスを参考にしました。
こうでもしないと彼の行動に説得力がありませんからね。
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