後はこれを毎週日曜日に投稿するだけです!
さて、アストリアですが、文字通り新たな敵幹部の登場回です。
こういうのも敵幹部に相応しいかなーと思って書きました。
その頃、廃ビルでは、零が一人の男と睨み合っていた。
薬の効果は切れているが、零は両手を縄で縛られ、デジヴァイスが使えなくなっている。
零を見ている男は、赤い長髪で青い瞳をしており、顔には髭剃り跡があり、
がっしりした体格だがそれとは裏腹に真っ赤で派手なドレスを着ていた。
「……お前は誰だ」
「あらン坊や、せっかくアタシが教育してあげようと思ったのに」
男は女のような口調で零に言う。
それを気持ち悪いと思ったのか、零は首を横に振った。
「お前の教育は必要ない。さっさと僕を放せ」
「そんな事を言うなら……お・し・お・き・ヨ」
そう言って男は、零に平手打ちを放つ。
体格から来る平手打ちの威力はなかなかのもので、零は頬を押さえようとするができなかった。
「アナタ、ウィザードでヘマばっかりやらかしてるじゃないノ。
もしかしてホントは、ウィザードが大嫌いなのかしらン?」
「ウィザード? まさか、お前は……!」
「そうヨ。アタシがウィザードの幹部、ミシルって事を知らないのはモグリもいいところヨ」
ミシルと名乗った男は、零を教育できそうな人物のように見ている。
やはり自分をさらったのはウィザードだったようだ。
「お前のようなオカマ野郎に、絶対に従うものか!」
「まっ! オカマだなんて失礼ネ! もっと教育してあげようかしらン!」
ミシルはそう言って、また零を平手打ちする。
「アタシに逆らわない方がいいわヨ。アタシのデジモンはと~っても強いんだかラ」
メラモンを退けた多樹と北斗は、零を助けるために廃ビルに向かった。
「ここに零が捕まってるはずだけど……」
「無事でいてくれよ、北斗!」
「わたしは信じてるよ、多樹!」
「ミーも北斗を信じるざんす!」
デジヴァイスの中からパートナーデジモンが声をかける。
多樹と北斗は頷いて、廃ビルの階段を走り出した。
「こ、ここが屋上みたい……」
「零は無事か!?」
多樹と北斗は、階段を駆け上がり、ついに屋上へと辿り着いた。
風が強く吹きつける屋上には、零が縄で縛られていた。
そしてその前には、派手なドレスを着たミシルと、スーツ姿の男が二人立っていた。
「零!」
北斗が叫ぶと、零は驚いたように振り返った。
多樹は零が無事な事を確認し、安堵の息をついた。
「あらン、お友達かしらン? せっかくのお仕置きタイムだというのに野暮な奴らが来たわねェ」
ミシルは、多樹と北斗を一瞥すると、女のような口調で言った。
「アタシはミシル、ウィザードに咲く一輪の花ヨ」
「ラフレシモンの間違いだと思うんだけどな」
北斗が挑発するように言うと、ミシルは顔を真っ赤にして怒った。
「まぁ~っ! 坊やも失礼な事を言うのネ! 教育してあげようかしらン!」
「……やっぱりあなたはウィザードの関係者だったんだね」
「アタシ、アンタみたいな女の子には興味がないノ」
ミシルの言葉に、多樹はショックを受けた。
ウィザードが、零だけでなく自分にも悪意を向けてくる事は分かっていたが、
面と向かって突き放されると、心が傷ついた。
しかし、多樹はすぐに気持ちを切り替えた。
多樹は、北斗と共に零を助けるためにここに来たのだから。
「零を返して!」
「ダメヨ、まだ教育してないのに返すわけないでショ」
「だったら力ずくでも返してもらうぜ!」
「そうはいかないわヨ! やっておしまいなさい!」
ミシルは取り巻きの男に指示を出すと、そそくさと逃げていく。
多樹と北斗は追いかけようとするが、取り巻きの男は、ダークヴァイスからデジモンを出した。
一方は緑色の服を着た、ナイフを持つ少年の姿をしたピーターモン。
もう一方は、羽を持つ可愛らしい妖精の姿をしたティンカーモンだった。
「僕は君達みたいな子供が大好きだ。けれど、ミシル様の邪魔はさせないよ!」
「ここであんた達を足止めして、あたし達だけのものにするんだから」
ピーターモンとティンカーモンが、多樹と北斗の前に立ち塞がった。
多樹と北斗は、迷わずにデジヴァイスを構えた。
「カラムモン!」
「ヴォレモン!」
多樹のデジヴァイスからカラムモンが、北斗のデジヴァイスからヴォレモンが現れた。
北斗の叫びに応え、ヴォレモンが口火を切った。
「行くざんす!」
「うん!」
ヴォレモンは巨大な翼を広げ、風の勢いを増しながらピーターモンに突進する。
「吹き飛ぶざんす~!」
ヴォレモンの体が起こす風圧が、屋上の空気を切り裂いた。
しかし、ピーターモンは余裕綽々で、腰のナイフを抜き、軽やかにヴォレモンの攻撃をかわす。
その身のこなしは、まるで風を読んでいるかのようだ。
「スナイプスティング!」
ピーターモンは、ナイフをヴォレモンの急所目掛けて投擲した。
ナイフは放物線を描かず、一直線にヴォレモンの胸元へと向かう。
ヴォレモンは必死に避けるが、ナイフは意志を持つかのように軌道を変え、
執拗にヴォレモンを追尾した。
「うわっ!」
「まだまだだね」
ヴォレモンは身を翻してかわすが、ナイフはヴォレモンの翼の端をかすめる。
ダメージを受けたヴォレモンは、羽ばたくたびに軽い痛みが走るのを感じた。
一方、カラムモンはティンカーモンと対峙していた。
「わたし……負けないんだから」
「それはあたしだって同じだから」
多樹の決意を込めた言葉に、カラムモンも呼応する。
ティンカーモンは小柄で動きが素早く、
その小さな体からは想像もつかない俊敏さでカラムモンを翻弄した。
「スピードナイトメア!」
ティンカーモンは一瞬の隙を突き、右手の毒銛を構える。
毒の銛が、電光石火の速さでカラムモンに迫る。
カラムモンは辛うじて体をねじって急所を避けたが、毒の銛はカラムモンの左肩に命中してしまった。
「くっ……!」
カラムモンの視界が歪み、空間が揺らぐ。
速効性の幻覚剤が体内を巡り、カラムモンは激しい幻覚に苦しみ始めた。
「カラムモン!」
二体のデジモンの連携に、カラムモンとヴォレモンは徐々に追い詰められていく。
ヴォレモンは翼の負傷に苦しみ、カラムモンは幻覚で意識が乱れていた。
ミシルに雇われた男達は優勢に立ったデジモンを見て、勝ち誇ったように笑う。
しかし、多樹と北斗は諦めなかった。
このままでは零を助けられない。
「多樹! ブーストだ!」
「うん!」
二人は、寸でのところでデジモンブーストを発動する。
多樹と北斗のデジヴァイスが強烈な光を放ち、
その光がカラムモンとヴォレモンの全身を包み込んだ。
二体のデジモンは、傷や幻覚を一時的に忘れ、限界以上のパワーを引き出した。
「サンダービーム!」
「スフレ・バットル!」
カラムモンの電撃のビームは、先程よりも太く、そして速い。
ティンカーモンの幻覚を打ち破り、その体に直撃した。
そして、ヴォレモンの暴風が、ピーターモンに迫る。
ピーターモンはナイフで風を切り裂こうとするが、暴風の威力は桁違いだった。
「ぐわぁぁぁぁぁっ!」
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
ピーターモンは身動きが取れず、暴風に巻き上げられる。
二つの必殺技をまともに受けたピーターモンとティンカーモンは、
悲鳴を上げながらデータの光となって消滅した。
デジモンを失った取り巻きの男達は、恐れをなしてそそくさと屋上から逃げ去った。
「やった……!」
多樹と北斗は、安堵の息をついた。
しかし、戦いが終わった時、既にミシルに逃げられてしまった後だった。
「くそっ、逃がしちまったか……!」
北斗は悔しそうに拳を握りしめた。
多樹は、北斗の肩にそっと手を置いた。
「大丈夫、ミシルは絶対に捕まえるから。それよりも、零を助けよう」
多樹と北斗は屋上に戻り、零を縛っていた縄を解いた。
零は目を覚ますと、二人の顔を見て、静かに言った。
「……これで分かった。もう、ウィザードに従う必要はない。
これからは君達と一緒に、ウィザードと戦おう!」
零の言葉に、多樹と北斗は顔を見合わせ、満面の笑みを浮かべた。
そして、零のデジヴァイスから、テリアモンが姿を現す。
「もちろん、僕も一緒だよ!」
テリアモンもまた、多樹と北斗と共に戦う事を決意した。
やっと零を仲間にした多樹と北斗は、ウィザードへの対抗心をより強く燃やすのだった。
ライバルキャラは得てして中盤で主人公の仲間になるのです。
ミシルの口調はウッキーイエローをもう少しねっとりとしたものです。