デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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これくらいの緩急がなければ話にならないと思って書きました。
とある方のハーメルン小説を参考にした部分もあります。


第23話 研究所へのサイバー攻撃

 町の各地でウィザードが悪事を働いているせいか、治安は徐々に悪化していった。

 止まらない値上げ、転売事件……ウィザードはそんな社会を刺激しているようだが、

 やっている事は悪事そのものなので、多樹達はそれをデジモンと共に阻止した。

 ウィザードに協力していた零もウィザードから手を切ったため、

 今、多樹達は三人で行動するようになった。

 

「まったく、ウィザードってば本当にしつこい奴だよな」

「でも、この世界にデジモンが来た本当の理由を知りたいよ」

 

 北斗が転校し、空が揺れた事で、各地にデジモンが現れ、ウィザードが活動するようになった。

 デジモン研究所によれば、人間とデジモンは25年前に離れてしまったようだが、

 何故こうなったかは多樹達には分からない。

 なので、多樹はその原因を知りたいのだ。

 

「確かにオレが多樹の学校に転校して、あの空からデジモンが現れたんだよな」

「突然だったから驚いたけど、ちゃんと調べなきゃ、モヤモヤする……」

「それは僕も同じ気持ちだ」

「零!」

 

 多樹の隣で声をかけたのは、隣のクラスの零。

 借金を抱えた両親を出汁にウィザードに協力していたが、

 多樹達の戦いでウィザードを敵とみなし、協力者になった。

 

「さっきまでウィザードに渋々協力していたからな。

 君も、どうしてデジモンが来たのか知りたいだろう」

「そうだよ。だから、零も手伝ってくれないかな」

「もちろん。僕達を苦しめたウィザードは許さないし、デジモンが現れた謎を知りたいからな」

 

 こうして、三人は学校に通う道を歩いた。

 今日は金曜日、明日と明後日は休みなので、しっかり頑張ろうと多樹達は心がけた。

 

 教室に入ると、一時間目は国語のテスト返しだった。

 担任教師は、採点済みの答案用紙を配り始める。

「では、昨日の国語のテストを返す。……一ノ瀬」

「はい」

 明日香が教師の前に行き、国語のテストを返してもらう。

 テストの結果は45点だった。

 明日香は、難しい顔をして自分の席に戻る。

「遠山」

「はい」

「星野」

「はい!」

 多樹のテストの結果は65点、北斗のテストの結果は30点だった。

 

「お、30点!」

「……難しかったな。私、国語は得意だけど、仕方ないか」

「昨日のテストは難しかったから、みんな成績が良くなかった」

 優等生の多樹ですら65点だったので、問題の難しさが伺える。

 多樹は、テストの点数よりも、クラス全体の成績が振るわなかった事に、

 どこか複雑な思いを抱いた。

 

 授業が終わり、北斗が自宅であるデジモン研究所に帰ると、何故か研究所全体が騒がしかった。

 研究員達が慌ただしく動き回り、パソコンの画面を見て頭を抱えている。

「ただいまー……って、なんだこれ?」

 北斗が自分の席に戻ると、何故かパソコンの画面が暗転していた。

 電源を入れ直そうとした瞬間、画面に不気味なメッセージが表示された。

「大変だ、ランサムウェアだ!」

 父の有雄が、顔面蒼白で叫んだ。

「どうしたんだ、父さん!」

「慌てるな。必ず犯人がいる」

 有雄は冷静に対応しようとするが、

 北斗はパソコンの画面に表示された文字を見て、顔色を変えた。

 

 我々はウィザードだ

 ファイルとお金が惜しかったらこれ以上の調査をするな

 

「くそっ! タイガが逮捕されたのに、こんな卑怯な事をするのかよ!」

「恐らく、タイガを逮捕したから、報復にランサムウェアで攻撃したのだろう。

 セキュリティ対策はしていたはずなのに……」

 普通のランサムウェアならセキュリティ対策で防げるはずだが、

 何故かランサムウェアの攻撃が通ってしまった。

 北斗が原因を調べていると、画面を見てあっさりと分かった。

「父さん、ランサムウェアの正体はデジモンだ!」

「……そうか、道理で普通のセキュリティ対策では防げないわけだ」

「ランサムウェアはオレが解決する! 父さんはウィザードに、絶対にお金を払うなよ!」

「ああ、分かっている。北斗、ファイルを取り戻してくれ」

「もちろん!」

 

 ランサムウェアを起こしたウィザードにお金を払っても、

 暗号化したファイルが戻ってくるとは限らない。

 北斗は有雄に注意した後、

 デジヴァイスを取り出してパソコンの中のデジタルワールドにヴォレモンを送った。

 

 ヴォレモンは、デジモン研究所のネットワークを構成するデジタルワールドへと降り立った。

 ここに、暗号化されたファイルがあるはずだ。

 

「デジモン研究所のファイルはどこにあるざんす……?」

 ヴォレモンが辿り着いたのは、デジモン研究所のネットワーク内部。

 そこは、青と緑の光の線が複雑に絡み合い、

 無数のデータファイルが巨大な光の塊となって空間に浮かぶ、

 静かで知的なデジタルワールドだった。

 普段は活発に光の粒が行き交うこの場所が、今日はどこか不自然に静まり返っている。

 

 ヴォレモンは翼を軽く羽ばたかせ、空間を漂いながら探索を始めた。

 研究所のファイルは、整然と並んでいるはずだ。

 しかし、飛行するにつれて、ヴォレモンの全身に冷たい風が吹き付け始めた。

 肌を刺すような冷気は、普段のデジタルワールドにはあり得ない異質な感覚だ。

 

 冷気の源を追って進むと、視界の先に、ヴォレモンは息を飲んだ。

 そこには、これまで見てきたデジタルのファイル群とは全く異なる光景が広がっていた。

 研究所の貴重なデータファイル群は、まるで冬の夜に凍り付いた湖面のように、

 銀色の氷に覆われていたのだ。

 ファイル一つ一つに、鋭利な氷の結晶が張り付き、

 データの光沢は完全に失われ、冷たい質量となって空間に固まっていた。

 その凍結地帯は、ヴォレモンが踏み込むだけで、

 足元のデジタルな大地が軋むような錯覚を覚えるほどだった。

 

 そこに、静かに、そして堂々と立っているデジモンがいた。

 全身を雪のような白と青の衣装で包んだ、

 俗に言う「雪女」の姿をしたデジモン、スノーレディモンだ。

 

「あら……あなた、ここに何の用ですか?」

 

 スノーレディモンの声は、凍てつくように冷たく、感情が欠落しているように聞こえた。

 ヴォレモンは、スノーレディモンがこのランサムウェア事件の張本人である事を確信し、

 翼を強く広げて体勢を整えた。

 

「データを凍らせているのは、お前ざんすね」

 

 相手は見た感じ、完全体のデジモンだろう。

 しかし、ヴォレモンは成熟期でありながらも、決して震えなかった。

 北斗の願い、ランサムウェア事件を解決するためだ。

 

「よくぞご存じで……。私はタイガ様の敵討ちのために、ミシル様に協力しているのです」

「ミシル!? ウィザードの!?」

 

 スノーレディモンは、恨みがましい声でウィザードの幹部の名を挙げた。

 タイガは多樹達に逮捕されたので、ミシルは多樹達を恨んでいるだろう。

 だから、スノーレディモンを唆して、ランサムウェアを起こしたのだとヴォレモンは読んだ。

 

「幹部の一人を逮捕したあなたを、ここで逃がすわけにはいきません」

「そんなの……とっくに決めてるざんす。ミーはこの事件を解決するために来たざんす」

「邪魔はさせません。私の前で凍り付きなさい!」

 

 スノーレディモンはそう言って、ヴォレモンに鋭い冷気を向けた。

 ヴォレモンの周りに、一瞬にして風が渦を巻き始める。

 スノーレディモンは完全体デジモンであり、その力はヴォレモンを上回っていた。

 

「華雹風雪!」

 

 スノーレディモンが猛烈な吹雪を起こし、ヴォレモンを凍らせようとする。

 ヴォレモンは翼を広げて風を打ち消そうとするが、吹雪の勢いに押される。

 

「くっ……!」

 

 しかし、ヴォレモンはウィルス種、スノーレディモンはデータ種だ。

 属性の相性はヴォレモンに有利に働く。

 ダメージを受け、苦戦しながらもヴォレモンはスノーレディモンの隙を突いて攻撃を仕掛けた。

 

「プリューム・タンペット!」

 

 ヴォレモンが翼から羽根を連続して放ち、スノーレディモンの防御を崩す。

 そして、スノーレディモンを倒すべく、渾身の一撃を放った。

 

「スフレ・バットル!!」

 

 ヴォレモンの暴風がスノーレディモンに直撃し、スノーレディモンを地面に叩きつけた。

 今ここに、決着がついた。

 

「私の負けですね……」

「さあ、大人しくデータを元に戻すざんす」

「仕方ありません……」

 

 ダメージを受け、降参したスノーレディモンは、

 凍らせたデータを全て元に戻し、どこかに去っていった。

 そして、ヴォレモンはデジタルワールドを後にして、デジヴァイスの中に戻った。

 

 こうしてランサムウェア事件が解決し、デジモン研究所のデータは全て元に戻った。

 

「やっぱり、デジモン、ウィザードの仕業だったんだな」

「……ところで、どうしてファイルが元に戻ったんだ?」

「……父さん、やっぱりこの事件を覚えてないのか」

 ランサムウェア事件を覚えているのは、この場では北斗のみだ。

 デジモンを持っておらず、何も覚えていない有雄では恐らく、この事件を解決できないだろう。

「ウィザードが家を狙ってきたんだ。危ない! 早く多樹に知らせなきゃ!」

「まあ待て、北斗。今日はもう遅い。明日の土曜日に報告してくれ」

「もちろん! 多樹や零は心強いからな!」

 

 ウィザードの魔の手は、ついにデジモン研究所に伸びてきた。

 このまま放っておくわけにはいかない。

 北斗は明日、多樹や零に、ランサムウェア事件を報告しようとするのだった。




事件の犯人は、最初はユキダルモンなどの既存のデジモンにしましたが、
以下の理由で、いそうでいなかった雪女デジモンに変更しました。

・他者様と被る
・ユキダルモンはワクチン種なので、事件を起こすのに相応しくない

~オリジナルデジモン図鑑~
スノーレディモン
レベル:完全体
タイプ:魔人型
属性:データ
必殺技:華雹風雪、冷槍舞
デジタルワールドの寒冷地に住んでいる、雪女の姿をしたデジモン。
穏やかな性格で、無益な争い事を好まないが、
一度怒ると猛吹雪を起こしてあらゆるものを凍らせる。
普段はヒヤリモンやアイスモンを従え、ひっそりと暮らしている。
必殺技は美しい花のような猛烈な吹雪で広範囲の敵を凍らせる「華雹風雪」と、
氷の槍を作って敵を舞うように攻撃する「冷槍舞」。
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