デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

29 / 47
ウィザードの幹部を二人逮捕しましたが、まだまだ事件は終わらない様子。
その事件の原因が、明らかになります。
といっても、読者なら知っていると思いますが。


第27話 事件の真相を探るために

 ウィザーモンを倒し、ミシルを逮捕した事で、

 記憶はリセットされ、町の混乱はなかった事になった。

 日曜日の朝、多樹は自宅でパンと牛乳の簡単な朝食を済ませた後、

 昨日からのモヤモヤを抱えて公園に向かった。

 北斗と零も既にベンチに座っている。

 

「ねぇ……私達が今までに解決した事件、なんか共通点が多くない?」

 

 多樹はおずおずと切り出し、北斗は反射的に顔を上げる。

 

「……共通点?」

「ほら……明日香誘拐事件とか、ロビンモンと一緒にチケットを転売していた男を逮捕するとか」

 

 多樹が、これまでに解決した事件を並べ立てる。

 人気アイドルのチケットを転売していた男を、ロビンモンと共に逮捕した。

 物価高騰に腹を立て、窃盗を起こした女性も逮捕した。

 結婚詐欺事件もあったし、

 北斗の研究所を襲ったランサムウェアの「ランサム」は身代金という意味だ。

 

「これに共通してるのって、『お金』が関わっている事だよね」

「言われてみれば……そうだな」

 

 北斗は腕を組み、納得したように頷く。

 お金というのは世俗的なものであり、それを求める心は物欲である。

 ウィザードが起こしている事件は、全てこの「物欲」、

 あるいは「金銭」に結びついていると多樹は推理した。

 

「うーん……本当の犯人は誰だろう……」

 

 多樹は、目の前のデジモンだけでなく、その裏にいる黒幕の存在を強く意識していた。

 ウィザードの裏側に、さらに大きな敵がいる可能性も捨て切れない。

 

「ウィザードは組織だからな。いくら幹部を倒しても、組織自体が壊滅しなければ意味はない」

 

 零の言葉に、北斗はすっくと立ち上がった。

 

「とりあえずオレは家に帰るから、多樹と零もついてきな」

「そうだね」

「欲望と関わっているデジモンも、いるかもしれないからな」

 

 デジモン研究所には、ウィザードの悪事に関する、何かしらの手がかりがあるかもしれない。

 多樹、北斗、零は、急いでデジモン研究所に行くのだった。

 

 多樹、北斗、零が、北斗の自宅であるデジモン研究所に到着すると、

 北斗はいつものように「ただいま」と元気よく声を上げた。

 初めて研究所の中に入る零は、巨大なサーバーラックや、

 複雑な機器に囲まれた空間に、僅かな緊張を覚えているようだった。

 

「……というわけで、調べてください」

「ああ、分かったよ」

 

 多樹達は、有雄の元へ行き、これまでに起こった事件の共通点、

 すなわち「金銭欲」に関するデジモンの情報を調べるよう依頼した。

 

「……」

「……」

 

 しばらくすると、有雄はパソコンに向かい、キーボードを叩き始めた。

 数分後、彼の顔が真剣な表情に変わる。

 

「七大魔王の情報が見つかったようだぞ」

「えっ? 七大魔王って何?」

 

 多樹は身を乗り出して尋ねた。

 恐らくはデジモンの種類だろうが、聞いた事がないデジモンに、多樹は興味津々だ。

 

「デジタルワールドの中でも最強を誇る魔王デジモンだ。

 それぞれ、傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲を司っているらしい」

 

 有雄の説明を聞いた瞬間、多樹の頭の中で何かが繋がった。

 

「それと何か事件でも関係あるのかな? 物を盗んだり、転売したり……」

「どうも、お金に関わってる事件が多いよな。そういうのを司る魔王デジモンって誰だ?」

 

 北斗は直感的に、ウィザードと関係しているデジモンがいると感じていた。

 すると、有雄はマウスカーソルを動かして、そのデジモンをクリックした。

 

「お金か。なら、これじゃないかな」

 

 有雄は画面を三人に向けて、一枚の画像を見せた。

 そこには、長い髭を生やし、黒いケープを身に纏い、

 禍々しい赤い悪魔の翼が生えた、威圧的な魔王の姿が映っていた。

 多樹、北斗、零は、ごくりと唾をのむ。

 

「これはバルバモン。強欲を司る魔王デジモンだ」

「……これがバルバモンか……」

 

 零もその邪悪な威圧感に、思わず息を飲んだ。

 しかし、多樹の反応は二人とは違っていた。

 多樹は画像を見て、目を大きく見開いた。

 

「有雄さん! 私、このデジモンを夢で見た事があるよ!」

「本当か?」

「うん。剣と天秤を持ったデジモンと戦ってたんだ」

「それってユスティアモンの事か?」

「多分、そうかも」

 

 ユスティアモンは、星と正義を司る女神型デジモンだ。

 まさか、ユスティアモンと、バルバモンが戦っていたなんて。

 多樹の胸に、昨日ミシルが残した言葉が重くのしかかる。

 

「それで、現実世界とデジタルワールドの境界に負荷がかかってるって言ってたよね」

「そうだが、どうしたんだ?」

「もしかしたら、バルバモンの……」

 

 多樹がそう言いかけた途端、有雄が使っていたパソコンの画面に、

 真っ赤なメッセージが表示された。

 

 もうすぐ現実世界とデジタルワールドは完全に繋がる

 お前達はウィザードに敗れるだろう

 

 メッセージは画面を埋め尽くし、多樹達の背筋を凍らせた。

 突然、パソコンが強制的にシャットダウンした。

 

「またウィザードか! ったく、懲りない奴だな!」

「……すまない、妨害を受けてしまったようだ。十中八九デジモンの仕業だろう。

 もう、逃げてしまったようだが……」

 

 有雄は悔しそうに顔を歪めた。

 しかし、多樹の表情は固いながらも、どこか確信を得たものに変わっていた。

 

「……でも、大体分かったよ。この事件は、バルバモンが関わっているって」

「あの幹部が言ってた事は、あながち間違いではなかったようだな」

 

―現実世界とデジタルワールドを繋げたのは、ユスティアモンのせいなんだから。

 

 ミシルが最後に残した言葉。

 それは、ユスティアモンがバルバモンを食い止めようと戦った結果、

 デジモンが現れるという事態を招いた、という事なのかもしれない。

 

 ウィザードの行動は活発化している。

 バルバモンが現実世界に完全に出現すれば、町の混乱どころでは済まされない。

 取り返しのつかない事になる前に、ウィザードを倒さなければと、多樹達は誓った。




社会風刺も兼ねて書いていますが、結局のところ、人はお金に翻弄されがちですよね。
だから七大魔王ではこいつがピッタリじゃないかなと思ったんです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。