デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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前回の話の続きとなります。
カラムモン達はベツモンを助け、無事にパスワードを手に入れられるでしょうか……?


第34話 パスワードは見つかったが

 デジタルワールドに入ったカラムモン、ヴォレモン、ガルゴモンは、

 ベツモンを助けるためにベツモンを探し出した。

 周囲はウィザードの隠蔽工作によって異様に歪んだデータで構成された空間が広がっている。

 データノイズが絶えず流れ、方向感覚を狂わせる。

 

「一体ベツモンはどこにいるんだろう……」

「くまなく、探索するしかないざんす」

「できるだけ隠れながら進んでいこう。デジモンは大体、好戦的だからね」

 

 ヴォレモンは素早く翼を広げ、上空へ舞い上がった。

 そして、気流に乗って静かにデジタルワールドを滑空する。

 カラムモンは、全身を覆う電位差を利用し、微細なデータノイズやデジモンの流れを探る。

 ガルゴモンは、勘と素早い動きで、地上の障害物を避けながら進む。

 

「いたざんす!」

 ヴォレモンが静かに、しかし焦りを含んだ声で叫んだ。

 巨大な空中秘密基地「ローヤルベース」の影に、そのデジモン――ベツモンがいた。

 しかし、ベツモンは激しい攻撃を受けたのか、

 その身体には無数のレーザーの焦げ跡があり、辛うじて呼吸をしている瀕死の状態だった。

 

「うう……わい、もうアカン……パスワード、見つけたのに……」

「大丈夫!? わっ、来るよ!」

 ベツモンの周囲では、ワスプモンが頭部の触角パーツを動かしながら旋回していた。

 ワスプモンはカラムモン達を見つけると、即座に戦闘態勢に入った。

 

 ワスプモンは肩の推進器を噴射させて急接近し、大口径のレーザー砲を連射した。

「危ない!」

 カラムモンはワスプモンに属性相性で不利な立場だったが迷わず身を挺してベツモンを庇った。

 レーザーの直撃を受け、カラムモンの体から激しいスパークが散る。

「くっ……痛いよ……! ガルゴモン、ヴォレモン、ベツモンを頼むね!」

「任せて! ガトリングアーム!」

 ガルゴモンは全身のバネを使い、高速で接近するワスプモンに対し、

 両腕のバルカンを乱射して牽制する。

「ミーも加勢するざんす! プリューム・タンペット!」

 ヴォレモンが翼から羽根を発射するが、ワスプモンは上下前後左右と、

 あらゆる方向に急速に移動する能力で、羽根を全て回避する。

 そして、エネルギーを溜め始めた。

 ワスプモンのベアバスターは大型デジモンをも一撃で仕留める破壊力を持つ。

 素早いガルゴモンとヴォレモンは回避できても、

 瀕死のベツモンと、それを守るカラムモンは避けられない。

 

「ガルゴモン! 一発で仕留めろ! 正面突破だ!」

「おっけー!」

 ガルゴモンは、レーザーのチャージで動きが一瞬止まったワスプモン目掛け、

 渾身の力を込めて跳躍した。

「ダムダムアッパー!」

 敵の懐に入り込み、渾身の突き上げが、ワスプモンの身体を打ち砕いた。

 ワスプモンは激しい爆発音と共にデータへと霧散し、沈黙した。

 

「う、うぅ……」

「もう大丈夫だよ。無理はしないで」

 戦いが終わり、カラムモンはベツモンの体力が回復するのを助けながら、

 ベツモンが最後の力で握りしめていたデータ片を見つけた。

 それは、ベツモンが命懸けで解析しようとしていたロックのかかったデータ群のヒントだった。

「これ……パスワードだよ! ベツモン、ありがとうね!」

 そこには、デジモン文字で『Greed』という単語が記されていた。

「見て! 『Greed』……強欲、って意味だね!」

 

 その頃、デジモン研究所では。

「『Greed』……強欲。まさか、そのまま……!」

 彩は急いでパスワード『Greed』を入力した。

 一瞬の緊張の後、ロックが解除され、

 画面にはウィザードの幹部が潜む居場所が明確な座標として映し出された。

「やった! 見つけたんだね! ウィザードの最後の幹部の隠れ場所が!」

「よっしゃあ! 今度こそ、ウィザードを叩き潰す!」

 

 彼らはすぐにデジモンを転送しウィザードの最後の幹部を攻撃しようとデジヴァイスを構えた。

 しかし、その時、彩が顔を曇らせた。

「待ってください。

 パスワードは解除できましたが……何故か、向こうからは一切反撃がありません」

「反撃がない? 座標を特定したはずだ。

 普通なら、今すぐにでもこちらのシステムを攻撃するか、デジモンを転送してくるはず」

「向こうは、私達が座標を特定した事を完全に把握しています。

 ですが、何のデータ干渉も、デジモンの準備も確認できない……」

「つまり……これは、僕達を誘い込んでいるわけでも、騙しているわけでもない」

「じゃあ、どうして反撃してこないの?」

「あいつは、僕達がベツモンを助け、ワスプモンと戦い、

 パスワードを解析するまでの『時間』を計算し、その『時間』を使って何かを完了させたんだ」

 多樹は、背筋が凍るのを感じた。

 

「まさか……私達、ウィザードの手の上で……」

「ああ。あいつの目的は、時間稼ぎだったんだ」

 ベツモンを助けてパスワードを探すという目的が、

 皮肉にもウィザードの計画の実行を許すための遅延行為になってしまったのだ。

 

「デジモンを戦わせたため……もう遅い、のか……」

「くそっ……! オレ達は、またウィザードの思惑通りに動かされていたのか!」

 デジヴァイスを握りしめたまま、多樹と零は重い足取りでデジモン研究所を出た。

 

「今日は……もう遅いね。とにかく、家に帰ろう」

 土曜日の夜。

 町は静まり返っていたが、その静寂は不気味なほどの不安を孕んでいた。

 多樹達の心の中には、ウィザードの最後の幹部が仕掛けた計画への

 底知れない恐怖が残ったままだった。

 

「これで……世界は、混乱する……!」

 多樹と零がそれぞれの自宅への道を急ぐ中、

 ウィザードの最後の幹部の端末の画面には、計画の文字が冷たく輝いていた。




次回はとんでもない展開になります、楽しみに待っていてください。
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