ウィザーモンやソーサリモンときたら、使うのはやっぱりこいつだと決めていました。
そして第三クールも、ここでおしまいです。
アイリアは、多樹達の正義を断罪するようにダークヴァイスを操作した。
廃墟のデータ処理施設の中に、ウィザードの幹部・アイリアのパートナーデジモンが姿を現す。
それは、魔女のような姿をした成熟期デジモン、ウィッチモンだった。
「ウィッチモン! あやつらを断罪せよ!!」
「ふふふ……あんた達はここで終わるのよ」
ウィッチモンは不敵な笑みを浮かべながら、箒に乗って高く飛び上がった。
そして、廃墟の空間を縦横無尽に飛び回る。
「卑怯だよ、空を飛ぶなんて!」
「それは想定内だ。冷静に連携するぞ! ガルゴモン、射撃で牽制しろ!」
多樹達のパートナーデジモンも即座に反応した。
「ヴォレモン! あんな魔女、追っ払え!」
「了解ざんす!」
北斗の指示に従い、ヴォレモンは大きく翼を広げる。
羽ばたきと共に空気が震え、竜巻のような暴風がウィッチモンを追尾する。
「スフレ・バットル!」
「そんなのは効かないわよ」
しかし、ウィッチモンは嘲笑しながら箒を操り、暴風を紙一重で回避。
さらに高度を上げ、月光を背に不気味な影を落とす。
「カラムモン、今だ、力を溜めて!」
「うん! わたし、負けない!」
カラムモンの身体に青白い電流が走り、電撃を纏う。
空気が焦げるような匂いが漂い、次の一撃への緊張が高まる。
「ガルゴモン、上を狙え!」
「任せて! ガトリングアーム!」
ガルゴモンが両腕のバルカンが唸りを上げ、火花と共に弾丸が夜空を切り裂く。
銃声が連続して響き、ウィッチモンの軌道を追い詰める。
しかし、魔女は余裕の笑みを浮かべた。
「愚かな子供達、力を知りなさい。バルルーナゲイル!」
呪文と共に、鋭利な風の刃が生まれる。
透明な刃は鋼鉄のように硬質で、音もなく三体のデジモンを切り裂いた。
血の代わりにデータの光が散り、彼らは地面に叩きつけられる。
「みんな! 大丈夫!?」
「ふふふ。どうだ、これが私の戦略だ。見えない高みから、圧倒的な力で一方的に押し潰す」
「くっ……でも、屈しちゃダメだからね!」
アイリアの声は冷酷で、夜風に溶けるように響いた。
しかし、多樹は絶対に屈しないと歯を食いしばった。
「ガトリングアーム!」
「スフレ・バットル!」
銃弾と暴風が交錯し、夜空に火花と砂塵が舞う。
ウィッチモンの体勢が一瞬乱れ、箒が大きく揺れる。
しかしウィッチモンは冷笑を浮かべ、再び詠唱を始めた。
低く響く呪文の声と共に、周囲の空気が震え、魔力の渦が黒い嵐のように広がっていく。
多樹はその気配に背筋を凍らせながらも、決意を固めた。
「カラムモン! 狙いを定めて!」
「覚悟して、ウィッチモン! サンダービーム!」
カラムモンの体表に走る電流が一気に爆発し雷鳴のような轟音と共に電撃のビームが放たれる。
青白い閃光が夜空を切り裂き、ウィッチモンを直撃せんと迫る。
ウィッチモンは箒を急旋回させ、辛うじて回避するが、
電撃が掠めた衝撃で軌道が乱れ、制御を失いかける。
「ヴォレモン! 今だ! 動きを封じろ!」
北斗の声に応じ、ヴォレモンは翼を大きく広げる。
空気が唸りを上げ、暴風が渦を巻いてウィッチモンを捕らえようとする。
「スフレ・バットル!」
竜巻のような風がウィッチモンを下へ引きずり落とし、箒の速度を奪う。
その隙を見た零は叫ぶ。
「ガルゴモン、力を溜めるんだ! 一撃必殺に賭けるぞ!」
「うん! 僕はいつでもいけるよ!」
ガルゴモンの両腕の銃口が赤熱し、次の一撃に備えて唸りを上げる。
だが――ウィッチモンの瞳が妖しく輝いた。
「これで終わりよ……アクエリープレッシャー!」
その瞬間、ウィッチモンの手から奔流が解き放たれる。
ただの水ではない、鋼鉄をも貫く超高水圧の刃。
白銀の奔流が一点集中で放たれ、空気を裂く轟音と共に地面へと突き刺さる。
「「「うわぁぁぁぁぁぁ!」」」
三体のデジモンが同時に悲鳴を上げた。
カラムモンの身体は水圧に押し潰され、電流が散りながら地面に叩きつけられる。
ヴォレモンの翼は裂けるように軋み、暴風を生み出す力を奪われて泥に沈む。
ガルゴモンの鋼の腕すらも水刃に削られ、火花を散らしながら後方へ吹き飛ばされた。
地面は抉られ、岩が砕け、泥と水飛沫が戦場を覆う。
轟音が止んだ後には、三体のデジモンが瀕死の状態で横たわり、息も絶え絶えに呻いていた。
多樹達はその光景に凍りつく。
仲間の悲鳴が耳に残り、胸を締め付ける。
ウィッチモンは冷酷な笑みを浮かべ、アイリアと共に勝利を確信したように声を響かせる。
「ふふ……これが絶望」
「子供達よ、抗う力など残されていない」
「カラムモン……諦めちゃダメだよ!」
「こんな敵に負けるんじゃねぇぞ!」
「こいつを倒して、ウィザードを終わらせるんだ……!」
ウィッチモンの超高水圧の攻撃を受け、三体のデジモンは瀕死の状態に陥る。
しかも、多樹達は以前の戦いでデジモンブーストを使い切り、もう後がない事を知っていた。
それでも、多樹達は絶対に諦めはしなかった。
「だが、お前達に切り札はない。これで終わりだ! 私の勝利だ!」
勝利を確信したアイリアの叫びに対し、多樹は必死に声を振り絞る。
「まだ、終わってないよ! 零! 北斗! 最後の力を!」
「ガルゴモン! 今だ! 全てを撃ち尽くせ!」
「ヴォレモン! 最後の暴風だ!」
ウィッチモンは、最後の力を振り絞って再び呪文を唱え始めた。
「これでとどめよ」
その詠唱が終わる前に、多樹達の最後の反撃が炸裂した。
「サンダービーム!!」
「スフレ・バットル!!」
カラムモンの体から迸る雷光が一直線に走り、
空気を焼き焦がす轟音と共にウィッチモンへと放たれる。
ヴォレモンの翼が大きく広がり、嵐のような暴風が巻き起こる。
雷と風――二つの力が同時にウィッチモンを襲いかかった。
ウィッチモンは即座に魔力の障壁を展開し、紫色の光の膜で防御を試みる。
しかし、瀕死の成熟期デジモン達が振り絞った総力は、ウィッチモンの防御を圧倒する。
雷撃が膜を裂き、暴風がその隙間から侵入し、箒ごと体勢を大きく崩した。
「とどめだ! ガトリングアーム!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ガルゴモンは両腕を前に突き出す。
機構が唸りを上げ、回転音と共に銃口から火花が散る。
次の瞬間、無数の弾丸が夜空を切り裂き、閃光の雨となってウィッチモンを包囲した。
弾丸はウィッチモンの身体を次々と貫き、魔力の衣を粉砕する。
防御の詠唱は途切れ、ウィッチモンの瞳に驚愕と恐怖が一瞬だけ宿る。
しかし声を上げる暇もなく、全身が光の粒子へと変わり始めた。
魔女の姿は断末魔すらなく、静かに崩れ落ちるようにデータの光へと分解されていく。
赤いローブも、箒も、魔力の残滓も、全てが夜風に溶けるように消え去った。
「か……勝った……!!」
残されたのは、荒い息をつく三体のデジモンと、戦場に漂う淡い光の粒子だけ。
勝利の余韻と、命を削るような戦いの重さが、静寂の中に刻み込まれていた。
「そんな……馬鹿な……!」
ウィッチモンがデリートされた瞬間、
アイリアの手の中にあったダークヴァイスは、甲高い音と共に粉々に砕け散った。
「私の、私の勝利が……!」
ウィザードの最後の幹部、アイリアは敗れた。
しかし、アイリアの顔には、敗北の悔しさとは異なる、冷酷な満足感が浮かんでいた。
「……ふっ」
「な、何がおかしいの?」
多樹がアイリアに声をかけようとする。
その時、廃墟の外から、激しいデータノイズと、大地を揺るがすほどの振動が襲ってきた。
「何!? この揺れは!」
多樹達が窓の外を見ると、空が歪み、景色全体がポリゴン状の光に包まれている。
町の建物の輪郭が崩れ、壁面がデジタルワールドのテクスチャに置き換わり始めていた。
町が、デジタルワールドに取り込まれてしまったのだ。
多樹達のいる廃墟のデータ施設自体も、根底から崩れ始めた。
「ふふふ……間に合った。
貴様らがシュテンモンと戦って時間を稼いでいる間に、私の作戦は終わった。
この町全体を、デジタルワールドに取り込んでやる!」
アイリアは、最後の力を振り絞り、憎悪に満ちた叫びを上げた。
「貴様ら諸共……地獄に送ってくれるわ!!」
そして、町を丸ごと飲み込むほどの巨大なデータの渦に、多樹達は為す術もなく巻き込まれた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ! お母さん! みんなが、みんなの町が!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「なんて事を!」
多樹達三人は、デジタルとリアルの境界が崩壊した、混沌の町へと投げ出された。
ウィザード最後の幹部、アイリアの卑劣な「最後っ屁」により、
彼らの戦いは、最悪の形で終わってしまったのだった。
来週はいよいよデジタルワールドを多樹達が探索します。
ここを終盤に持っていったのは勇気がありましたが、それでもと思ったのです。