デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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元は違うタイトルでしたが、被るのを防ぐために変えました。
敵を止めるための重要なデータを、多樹達が探しに行きます。


第41話 鍵を探せ

 町ごとデジタルワールドに飛ばされるという最大の事件を経験した多樹達は、

 パートナーデジモンと共にはじまりの街を後にした。

 足元の土は柔らかく、空気は微かにデータノイズの匂いがする。

 

 しばらく歩くと、遠方に、異様な光景が広がっているのを発見した。

 それは、見慣れたはずの、自分達の町だった。

 しかし、町は確かに存在しているものの、全てが歪んでいた。

 建物の壁面は不規則なテクスチャで覆われ、

 空には本来あるはずのない巨大な多角形の雲が浮かんでいる。

 信号機は意味不明なデジ文字を点滅させ、

 道路のアスファルトは、見る角度によって虹色のデータノイズを放っていた。

 

「……あれが、私達の町……」

 多樹は、驚きと、悲しみと、怒りが混ざった感情で、その歪んだ故郷を見つめた。

 町は辛うじて機能しているように見えるが、

 デジタルワールドのデータ構造と無理矢理融合した結果、どこか悪夢のように異様だった。

「これも……アイリアのせいなんだね。町をこんな風にするなんて」

「くっそぉ……アイリアの奴、本当にやりやがったな!」

「落ち込むのは早い、多樹、北斗。アイリアは確かに倒したが、町はまだここにある。

 ここを脱出するためには、まずは情報収集をしよう」

 多樹達は、決意を新たにし、デジタルワールドに取り込まれた自分の町へと足を踏み入れた。

 

 町の中は、静寂に包まれていた。

 人々の姿はあるが、誰も動いていない。

 スーパーのレジを打つ途中の店員、立ち止まって携帯電話を見つめる高校生、

 公園でボールを追いかけていた小さな子供達。

 誰もが、町がデジタルワールドに取り込まれた瞬間に時を止められたかのように、

 固まっている状態だった。

 まるで、巨大な写真の中に迷い込んだようだ。

 

 無事なのは、多樹達「特別な子供」と、パートナーデジモンだけだった。

 デジモンと強い絆で結ばれた多樹達だけが、

 デジタルワールドの急激なデータ構造変化に耐えられたのだろう。

 

「おい、あれを見ろ、多樹!」

「え……?」

 多樹は、通学路を歩いていたのだろう、

 呆然とした表情で固まっている明日香の姿を見つけて、驚愕した。

「そんな……明日香!」

 多樹が明日香の肩に触れるが、反応はない。

 まるで氷のように冷たい、静止した身体だった。

「明日香、目を覚まして!」

 多樹は明日香に声をかけるが、やはり明日香は動かない。

 悲しむ多樹に、カラムモンが声をかける。

「多樹ちゃん、落ち込まないで! みんなを元に戻すには、元凶を倒すしかないんだから!」

「そ……そうだね! ありがとう、カラムモン!」

 多樹はカラムモンに励まされ、北斗や零と一緒に街で情報を収集し始めた。

 固まった人々のデータ情報、崩壊したデータ処理施設の残骸、

 そして、デジタルワールドのデータノイズを解析していく。

 

 零が、町のデータノイズの中から、一際強い情報波をキャッチした。

「多樹、北斗。これを見るんだ」

 零がヴォレモンの翼に投影したデータによると、

 ウィザードのボスが、どこかで大規模な計画を立てている事が分かった。

「なんだ、この壮大なデータは!?」

「ミー達の想像を超えた、悪の計画ざんす……!」

 そして、ボスがいる最終拠点に辿り着くためには、

 特殊なセキュリティシステムが設けられている事も判明した。

 そのシステムを解除するための「鍵」は、

 八体のデジモンがデジタルワールドの各地で守っているという。

 零が、その八体のデジモンのデータ名を読み上げる。

 

「鍵を守っているデジモンは以下の八体だ。

 ……ノビアガリモン、カレンモン、ポットモン、ハッシャクモン、

 バニプモン、チュパカモン、ミサキモン、ルリムモン」

 データノイズに乗って、八体のデジモンの姿が空間に投影される。

 全員、完全体のデジモンだ。

 彼らは、いずれも一筋縄ではいかない強さを持っているように見えた。

「……まるで、ゲームのような、単純な解決方法だな。

 八体のデジモンを倒し、八つの鍵を手に入れるという」

「でも、これくらい単純な方がいいな!

 どこにいるか分からねぇデジモンを探すより、目標がはっきりしてる方が、オレは燃えるぞ!」

「うん! デジヴァイスは使えないけど、パートナーデジモンの絆の力があれば、きっと勝てる!

 私達は、絶対に元の日常を取り戻す!」

 

 多樹達の声が、静止した故郷に響き渡る。

 三人は、ウィザードのボスを止め、全ての人々を救うため、

 八体のデジモンとの連戦に挑む事を決意した。

 

 その時、空から眩い光が降り注いだ。

 光の中から姿を現したのは、星と正義を司る究極体デジモン――ユスティアモンだった。

 

「……特別な子供達よ」

 澄んだ声が響き渡り、三人とパートナーデジモンは思わず顔を上げる。

 右手のスターソードは淡い星屑を纏い、左手のジャスティスライブラは静かに揺れていた。

 黄金の鎧に身を包み、背後から星々の輝きを背負ったユスティアモンが、

 ゆっくりと歪んだ町のアスファルトに降り立つ。

 その神々しさに、北斗は思わず息を呑んだ。

 

「なんだよ……このデジモン。オーラが全然違う……」

「右手に剣、左手に天秤……神話の正義の女神を具現化したような姿だ」

 

 零もその圧倒的な存在感に言葉を失うが、多樹だけは違った。

 彼女の瞳には、驚きよりもどこか懐かしさに似た色が宿っている。

 夢の中で見た、邪悪なるバルバモンと対峙していたあの高潔な光――

 

 多樹は一歩前へ踏み出し、まっすぐにユスティアモンを見つめて問いかけた。

 

「……ユスティアモン。私達に何か用でもあるのですか?」

 

 ユスティアモンは静かにジャスティスライブラを揺らし、その清らかな声を響かせた。

 

「特別な子供達よ。

 この町を覆う歪みを正すためには、八体の守護者を倒し、鍵を集めてください。

 彼らを打ち破らぬ限り、悪しきデジモンの計画は止まりません。

 世界は、均衡を失い、混沌へと飲み込まれるでしょう」

「八体の守護者……さっき零が言っていたデジモン達の事だね」

 多樹の声が微かに震える。

 完全体デジモン八体との連戦は、あまりにも無謀な試練に思えた。

 しかし、その不安を払拭するように、隣にいたカラムモンが多樹の頬をそっと撫でた。

 

「多樹ちゃん、落ち込まないで! 多樹ちゃんなら絶対にできるよ。

 わたし達がついているんだもん!」

「……カラムモン」

 多樹が顔を上げると、そこには不敵な笑みを浮かべるヴォレモンと、

 静かに銃口を点検するガルゴモンの姿があった。

 

「そうざんす! ミーの華麗な翼があれば、どんな敵も一網打尽ざんす。

 北斗なら勝てるざんすよ!」

「ヴォレモン……。ああ、当たり前だ!

 鍵だろうが何だろうが、まとめてぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

 北斗が拳を突き出すと、ガルゴモンも零の隣で力強く頷いた。

 

「零、心配しないで。零は僕が守るからね。君の作戦があれば、僕達は負けない」

「……ああ。君の盾となり、僕が道を示そう。行こう、ガルゴモン」

 

 パートナーデジモンの真っ直ぐな言葉に、多樹の胸の奥で勇気が熱く燃え上がった。

 明日香や、時を止められた町の人々。

 彼らを救えるのは自分達、特別な子供しかいないのだ。

 

「ユスティアモン、分かりました。私達、行きます。

 八つの鍵を全部集めて、必ずこの歪みを止めてみせます!」

 

 多樹の決意に満ちた宣言を聞き、ユスティアモンは一度だけ深く頷くと、

 星屑のような光の粒子となって空へと消えていった。

 

「よし! 最初はどいつだ? ノビアガリモンか? どこにいても引きずり出してやるぜ!」

 

 北斗の威勢の良い声と共に、三人と三体は歪んだ町の奥、最初の鍵が眠る場所へと走り出した。

 静止した世界の中で、彼らの足音だけが力強く、未来を刻むように響き渡っていた。




次回はパートナーデジモンと共に八体のボスを倒しに行きます。
つまりロッ○マン風です。
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