かなり単純ですが、そういう感じにした方がいいと思ってこうなりました。
デジタルワールドに取り込まれた町を取り戻すための、最初の一歩。
多樹達は、鍵を守る八体のデジモンのうち、最初にノビアガリモンのいる場所、
ファイル島の東部に広がるグレートキャニオンを目指した。
「と、遠いよ……」
道中から、環境は過酷だった。
現実世界では見る事のない異様なデータノイズが空を覆い、地面は乾いた岩肌が露出している。
多樹の心は、激しい疲労と、固まったままの明日香達への不安で重く沈んでいた。
「……ねぇ、カラムモン。本当に私達、この世界で戦えるのかな。デジヴァイスもないし……」
多樹の不安を察し、カラムモンが寄り添う。
「大丈夫だよ、多樹ちゃん。わたし、多樹ちゃんが傍にいてくれたら、なんだってできるもん!
デジヴァイスなんて、無くても平気だよ!
わたし達の力は、デジヴァイスの力だけじゃないんだから!」
カラムモンの明るい声に、多樹は少しだけ心が軽くなった。
「……そうだね。ありがとう、カラムモン」
しかし、デジタルワールドの環境は子供であっても容赦しない。
道中、岩陰から突然ゴツモンの群れに襲われたり、
誤ってサンドヤンマモンの縄張りに入ってしまい、激しい攻撃に晒されたりした。
その度に、ヴォレモンの暴風とガルゴモンの射撃で何とか退けるが、
体力は確実に削られていった。
そして、ついに彼らはグレートキャニオンの最も深い、日の当たらない谷底に辿り着いた。
谷底のデータノイズが特に濃い場所に、そのデジモンはいた。
巨大な黒煙が立ち上り、不規則な人型を成した、ノビアガリモン。
明確な輪郭を持たず常に形状が揺れ動くその姿は、見る者に強烈な不安と威圧感を与えてくる。
「……来たか。愚かな者どもよ。この恐怖の煙に飲まれ、跪くがいい」
ノビアガリモンは、言葉を終えるや否や、必殺技を発動した。
「インフィニットヴェイパー!」
ノビアガリモンの身体を構成する濃密な黒煙が、超高速で多樹達を包み込んだ。
煙に触れた瞬間、多樹達の視界は歪み、故郷が崩壊する幻覚、
明日香が凍りついたまま消滅する幻覚など、彼らが最も恐れる悪夢を見せた。
「きゃあっ……! やめて、こんなの嫌だよ!」
「た、多樹ちゃん……! 目の前の黒い渦が……幻覚を見せてるんだ!」
「くっ……ミーのプライドが、この閉塞感で押し潰されそうざんす!」
「冷静になれ、みんな! これはただの幻覚だだ!」
三体のデジモンは幻覚に困惑するが、そこでカラムモンが閃いた。
「そうだ! 電気だよ!」
カラムモンは、全身の電気を一気に微弱なレベルで放出した。
「パラライズウェイヴ!」
カラムモンが発生させた軽い電撃の嵐は、デジモン達を乱す黒煙を打ち消し、幻覚を解いた。
「あ……元に戻った!」
「ありがとう、カラムモン! その煙に実体はない。物理的な攻撃で吹き飛ばす!」
「くっ!」
幻覚を破られたノビアガリモンは、僅かに動揺を見せる。
その隙を、ヴォレモンが見逃さなかった。
「ヴォレモン! 一気に叩き込め!」
「了解ざんす! スフレ・バットル!」
ヴォレモンが翼を力強く羽ばたかせ、巨大な暴風をノビアガリモンに向けて放った。
暴風は黒煙の塊を直撃し、ノビアガリモンの身体の一部を吹き飛ばす。
「ぐあぁぁぁぁっ!」
「ガトリングアーム!」
さらにガルゴモンが、両腕のバルカンで攻撃を続ける。
バルカンの弾丸は、煙を貫通するものの、
ノビアガリモンの中心部を狙い、僅かながらダメージを与えた。
必殺技を破られ、さらに攻撃を受けたノビアガリモンは、
幻覚による精神攻撃ではなく、物理的な迎撃に方向を変えた。
「小賢しい真似を! ならば、力の差を思い知らせてやる!」
ノビアガリモンは、怒りによって身体をさらに大きくする。
「来るよ! 気を付けて!」
「うん!」
ノビアガリモンの身体が、谷底の空間を埋め尽くすほどの速さで巨大化し始めた。
空高く、まるで際限なく伸び上がっていく。
その巨大な影が多樹達を覆い尽くし、
対峙する者達に「自分はあまりにも無力だ」という絶望的な恐怖を直接送り込んできた。
「スカイディザスター!」
ノビアガリモンの精神攻撃が多樹達の心を襲う。
全身から力が抜け、多樹達はその場に跪きそうになる。
「くっ……力が……入らない……!」
「こんなデカいのがいるなんて……勝てるわけ、ない……!」
その時、カラムモンが、全身の電気を再び最大限に集中した。
「サンダービーム!」
カラムモンの強力な電撃のビームが、巨大化して濃くなったノビアガリモンの胸部を貫く。
ウィルス種のノビアガリモンにとって、データ種のカラムモンの攻撃は属性的に不利だが、
純粋な電気エネルギーは実体を僅かに固定し、その増大を一時的に止めた。
「おぉ、カラムモン! ありがとうざんす!」
「小癪な!」
「プリューム・タンペット!」
ヴォレモンが、翼から鋭い羽根を発射し、ノビアガリモンを牽制する。
そして、零の指示を受けたガルゴモンが、精神を集中した。
「ガルゴモン! 奴は今、巨大さに力を使いすぎている!
攻撃は効かなくても、僕達の正義だけは負けない!」
「分かってるよ! 勝つぞ!」
ガルゴモンは、自分の心に宿る正義に意識を集中する事で、
ノビアガリモンが放つ絶望的な力から精神を守った。
「無駄な抵抗を! 終わりだ!」
ノビアガリモンはスカイディザスターによって、カラムモン達を完全に混乱させたと確信した。
しかし、多樹達の最後の連携が完成していた。
「最後の攻撃だよ! サンダービーム!」
「スフレ・バットル!」
暴風と雷撃の複合攻撃が、ノビアガリモンを再び直撃し、
ノビアガリモンは一瞬、煙の輪郭を崩した。
「今だ、ガルゴモン! 懐に入れ!」
ガルゴモンは、煙の乱れが生じた一瞬の隙を逃さず、
ハンターデジモンとしての俊敏性を発揮し、
巨大なノビアガリモンの足元、データが最も集中している核へと突進した。
「ダムダムアッパー!」
全身の力を込めた渾身の突き上げが、ノビアガリモンのデータコアを打ち砕いた。
「ば、馬鹿な……恐怖に打ち勝っただと……! ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ノビアガリモンは悲鳴を上げ、その巨大な煙の身体は、
音を立てて小さなデータとなって砕け散った。
「勝った……な……」
ノビアガリモンを倒した多樹達の足元に、
デジモンが守っていた「鍵の欠片」の一つが、光を放ちながら落ちてきた。
「やった……! これが、鍵の欠片……」
多樹はそれを拾い上げ、確かな手応えを感じた。
最初の鍵を手に入れた事で、彼らの道が開けた事を実感した。
「やったぜ、多樹! 最初の鍵だ! ノビアガリモンなんて、でかかっただけだ!」
「まだ一つ目だ。油断はできない。さあ、次だ」
多樹達の戦いは、まだ始まったばかりだった。
~オリジナルデジモン図鑑~
ノビアガリモン
デジタルワールドの膨大なデータが煙となって集積し、実体化したデジモン。
その姿は、まるで巨大な黒煙が立ち上り、不規則な人型を成したかのようだ。
明確な輪郭を持たず、常に形状が揺れ動いており、見る者に強烈な不安と威圧感を与える。
対峙する者が恐怖を感じるとその姿は空高く、際限なく伸び上がり、相手を精神的に追い詰める。
必殺技は黒煙を超高速で広範囲に広げ、幻覚を見せる「インフィニットヴェイパー」と、
身体を巨大化して精神的に攻撃する「スカイディザスター」。
・デジモンとしての情報
レベル:完全体
タイプ:スモーク型
属性:ウィルス
必殺技:インフィニットヴェイパー、スカイディザスター