デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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ここからはボスラッシュとなります。
かなり単純ですが、そういう感じにした方がいいと思ってこうなりました。


第42話 煙のデジモン・ノビアガリモン

 デジタルワールドに取り込まれた町を取り戻すための、最初の一歩。

 多樹達は、鍵を守る八体のデジモンのうち、最初にノビアガリモンのいる場所、

 ファイル島の東部に広がるグレートキャニオンを目指した。

 

「と、遠いよ……」

 道中から、環境は過酷だった。

 現実世界では見る事のない異様なデータノイズが空を覆い、地面は乾いた岩肌が露出している。

 多樹の心は、激しい疲労と、固まったままの明日香達への不安で重く沈んでいた。

「……ねぇ、カラムモン。本当に私達、この世界で戦えるのかな。デジヴァイスもないし……」

 多樹の不安を察し、カラムモンが寄り添う。

「大丈夫だよ、多樹ちゃん。わたし、多樹ちゃんが傍にいてくれたら、なんだってできるもん!

 デジヴァイスなんて、無くても平気だよ!

 わたし達の力は、デジヴァイスの力だけじゃないんだから!」

 カラムモンの明るい声に、多樹は少しだけ心が軽くなった。

「……そうだね。ありがとう、カラムモン」

 

 しかし、デジタルワールドの環境は子供であっても容赦しない。

 道中、岩陰から突然ゴツモンの群れに襲われたり、

 誤ってサンドヤンマモンの縄張りに入ってしまい、激しい攻撃に晒されたりした。

 その度に、ヴォレモンの暴風とガルゴモンの射撃で何とか退けるが、

 体力は確実に削られていった。

 

 そして、ついに彼らはグレートキャニオンの最も深い、日の当たらない谷底に辿り着いた。

 谷底のデータノイズが特に濃い場所に、そのデジモンはいた。

 巨大な黒煙が立ち上り、不規則な人型を成した、ノビアガリモン。

 明確な輪郭を持たず常に形状が揺れ動くその姿は、見る者に強烈な不安と威圧感を与えてくる。

「……来たか。愚かな者どもよ。この恐怖の煙に飲まれ、跪くがいい」

 ノビアガリモンは、言葉を終えるや否や、必殺技を発動した。

「インフィニットヴェイパー!」

 ノビアガリモンの身体を構成する濃密な黒煙が、超高速で多樹達を包み込んだ。

 煙に触れた瞬間、多樹達の視界は歪み、故郷が崩壊する幻覚、

 明日香が凍りついたまま消滅する幻覚など、彼らが最も恐れる悪夢を見せた。

 

「きゃあっ……! やめて、こんなの嫌だよ!」

「た、多樹ちゃん……! 目の前の黒い渦が……幻覚を見せてるんだ!」

「くっ……ミーのプライドが、この閉塞感で押し潰されそうざんす!」

「冷静になれ、みんな! これはただの幻覚だだ!」

 三体のデジモンは幻覚に困惑するが、そこでカラムモンが閃いた。

「そうだ! 電気だよ!」

 カラムモンは、全身の電気を一気に微弱なレベルで放出した。

「パラライズウェイヴ!」

 カラムモンが発生させた軽い電撃の嵐は、デジモン達を乱す黒煙を打ち消し、幻覚を解いた。

 

「あ……元に戻った!」

「ありがとう、カラムモン! その煙に実体はない。物理的な攻撃で吹き飛ばす!」

「くっ!」

 幻覚を破られたノビアガリモンは、僅かに動揺を見せる。

 その隙を、ヴォレモンが見逃さなかった。

「ヴォレモン! 一気に叩き込め!」

「了解ざんす! スフレ・バットル!」

 ヴォレモンが翼を力強く羽ばたかせ、巨大な暴風をノビアガリモンに向けて放った。

 暴風は黒煙の塊を直撃し、ノビアガリモンの身体の一部を吹き飛ばす。

「ぐあぁぁぁぁっ!」

「ガトリングアーム!」

 さらにガルゴモンが、両腕のバルカンで攻撃を続ける。

 バルカンの弾丸は、煙を貫通するものの、

 ノビアガリモンの中心部を狙い、僅かながらダメージを与えた。

 必殺技を破られ、さらに攻撃を受けたノビアガリモンは、

 幻覚による精神攻撃ではなく、物理的な迎撃に方向を変えた。

 

「小賢しい真似を! ならば、力の差を思い知らせてやる!」

 ノビアガリモンは、怒りによって身体をさらに大きくする。

「来るよ! 気を付けて!」

「うん!」

 ノビアガリモンの身体が、谷底の空間を埋め尽くすほどの速さで巨大化し始めた。

 空高く、まるで際限なく伸び上がっていく。

 その巨大な影が多樹達を覆い尽くし、

 対峙する者達に「自分はあまりにも無力だ」という絶望的な恐怖を直接送り込んできた。

 

「スカイディザスター!」

 ノビアガリモンの精神攻撃が多樹達の心を襲う。

 全身から力が抜け、多樹達はその場に跪きそうになる。

 

「くっ……力が……入らない……!」

「こんなデカいのがいるなんて……勝てるわけ、ない……!」

 

 その時、カラムモンが、全身の電気を再び最大限に集中した。

「サンダービーム!」

 カラムモンの強力な電撃のビームが、巨大化して濃くなったノビアガリモンの胸部を貫く。

 ウィルス種のノビアガリモンにとって、データ種のカラムモンの攻撃は属性的に不利だが、

 純粋な電気エネルギーは実体を僅かに固定し、その増大を一時的に止めた。

 

「おぉ、カラムモン! ありがとうざんす!」

「小癪な!」

「プリューム・タンペット!」

 ヴォレモンが、翼から鋭い羽根を発射し、ノビアガリモンを牽制する。

 そして、零の指示を受けたガルゴモンが、精神を集中した。

 

「ガルゴモン! 奴は今、巨大さに力を使いすぎている!

 攻撃は効かなくても、僕達の正義だけは負けない!」

「分かってるよ! 勝つぞ!」

 ガルゴモンは、自分の心に宿る正義に意識を集中する事で、

 ノビアガリモンが放つ絶望的な力から精神を守った。

 

「無駄な抵抗を! 終わりだ!」

 ノビアガリモンはスカイディザスターによって、カラムモン達を完全に混乱させたと確信した。

 しかし、多樹達の最後の連携が完成していた。

 

「最後の攻撃だよ! サンダービーム!」

「スフレ・バットル!」

 暴風と雷撃の複合攻撃が、ノビアガリモンを再び直撃し、

 ノビアガリモンは一瞬、煙の輪郭を崩した。

 

「今だ、ガルゴモン! 懐に入れ!」

 ガルゴモンは、煙の乱れが生じた一瞬の隙を逃さず、

 ハンターデジモンとしての俊敏性を発揮し、

 巨大なノビアガリモンの足元、データが最も集中している核へと突進した。

「ダムダムアッパー!」

 全身の力を込めた渾身の突き上げが、ノビアガリモンのデータコアを打ち砕いた。

「ば、馬鹿な……恐怖に打ち勝っただと……! ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ノビアガリモンは悲鳴を上げ、その巨大な煙の身体は、

 音を立てて小さなデータとなって砕け散った。

 

「勝った……な……」

 ノビアガリモンを倒した多樹達の足元に、

 デジモンが守っていた「鍵の欠片」の一つが、光を放ちながら落ちてきた。

「やった……! これが、鍵の欠片……」

 多樹はそれを拾い上げ、確かな手応えを感じた。

 最初の鍵を手に入れた事で、彼らの道が開けた事を実感した。

 

「やったぜ、多樹! 最初の鍵だ! ノビアガリモンなんて、でかかっただけだ!」

「まだ一つ目だ。油断はできない。さあ、次だ」

 

 多樹達の戦いは、まだ始まったばかりだった。




~オリジナルデジモン図鑑~

ノビアガリモン
デジタルワールドの膨大なデータが煙となって集積し、実体化したデジモン。
その姿は、まるで巨大な黒煙が立ち上り、不規則な人型を成したかのようだ。
明確な輪郭を持たず、常に形状が揺れ動いており、見る者に強烈な不安と威圧感を与える。
対峙する者が恐怖を感じるとその姿は空高く、際限なく伸び上がり、相手を精神的に追い詰める。
必殺技は黒煙を超高速で広範囲に広げ、幻覚を見せる「インフィニットヴェイパー」と、
身体を巨大化して精神的に攻撃する「スカイディザスター」。
・デジモンとしての情報
レベル:完全体
タイプ:スモーク型
属性:ウィルス
必殺技:インフィニットヴェイパー、スカイディザスター
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