何の都市伝説かは……自分で調べてください(丸投げ)
ノビアガリモンとの激戦を終え、多樹達は三体の完全体デジモンと共に、
グレートキャニオンから、デジタルワールドに取り込まれた自分達の町へ戻ってきた。
町全体がデータのノイズで歪んでいる光景は、何度見ても慣れる事はない。
「……まだ、町が戻ってないね」
彼らは、カレンモンとの戦いを経て、自分達の進化と絆に自信を持っていたが、
目の前の静止した現実は、彼らの心を重くした。
まず、彼らは町の中心部、デパート前の広場へと向かった。
そこは、人々が最も密集していた場所であり、情報が集中している可能性が高かった。
「みんな、固まったままだよ……。私達以外、誰も動いてない」
多樹は立ち止まったままの、見知った顔の老婦人の手にそっと触れる。
冷たい感触だけが返ってくる。
「無駄だ、多樹。彼らの身体のデータは、外部からのアクセスを遮断されている」
「このデパートの巨大なサーバーデータ、まるで巨大な氷の塊みたいだよ。
僕達でも簡単にはアクセスできないね」
北斗は、ヴォレモンが進化したカラテンモンに指示を出した。
「カラテンモン! 街全体に漂ってる、この気持ち悪いノイズを解析しろ。
どこから流れてきてるか分かるはずだ!」
「ミーにお任せあれざんす! 悟り!」
カラテンモンは、得意技の『悟り』を応用し、周囲のデータを読み取る。
その大きなカラスの顔が、僅かに苦痛に歪んだ。
「大量すぎるざんす! ウィザードがデータの所有権を書き換えているざんす……。
その計画の中心は、町の地下にある巨大なデータ処理施設のようざんす」
「やっぱり、あそこか! あの廃墟の下だろ!」
零は、カラテンモンが得た情報と、デパートの壁に不規則に表示されているデジ文字のログを、
ラピッドモンの高性能レーダーを使って読み込ませた。
「ラピッドモン、このデジ文字を翻訳しろ。
ボスの最終拠点へのアクセスコードや、セキュリティ情報が隠されているはずだ」
「了解。クイック・サーチ……検知。見つけたよ、零」
ラピッドモンは、光速に近い処理速度でログを解析し、
町の脱出を阻止するためのセキュリティ情報を引き出した。
「やはりな。『八つの門』によって最終拠点を守っている。
その門を開くための『鍵の欠片』は、
八体の完全体デジモンが、デジタルワールドの各地で守護している」
「それは分かってるよ」
ラピッドモンは、八体のデジモンのホログラムを空中に展開した。
ノビアガリモンとカレンモンのホログラムが消える。
「残りは六体。三体目のターゲットは……ポットモンだ。
ログによると、ポットモンは町の北西部にある『ミスティツリーズ』の中にいる」
多樹は、二人の解析結果を静かに聞いた後、相棒であるヘイローモンを見上げた。
ヘイローモンの身体が、歪んだ町の光を反射して輝いている。
「ヘイローモン。私達、この鍵を全部集めれば、本当にみんなを元に戻せるんだよね?」
「多樹ちゃん。ウィザードの最後の作戦は、
デジモンのデータと人間のデータを無理矢理融合させるものなんだ。
その融合を制御している敵を止めれば、データは元の状態に分離する。
つまり、鍵を集めてボスを倒せば、理論上は可能だよ」
ヘイローモンの冷静で確かな言葉が、多樹の不安を打ち消した。
「ありがとう、ヘイローモン。よーし! 決まりだね!」
「よし! ターゲットはポットモン。ミスティツリーズに向かうぞ!」
「時間はかけられない。
町のデータ構造がこれ以上、デジタルワールドに侵食される前に、僕達が動くぞ」
三人は、それぞれのパートナーデジモンと共に、
次の戦場であるミスティツリーズへと向けて、歪んだ町を駆け抜けていった。
「今度は森かよ! しかも霧だらけって、また視界が悪くて戦いにくそうだな」
「ポットモンは知識と情報を司るデジモンだ。
地形の把握を妨害し、僕達の戦略を狂わせるつもりだろう。用心して進むぞ」
多樹たちは、三体の完全体デジモン、ヘイローモン、カラテンモン、ラピッドモンを伴い、
ミスティツリーズへと足を踏み入れた。
森は、現実世界の霧とは違う、デジタルの霧に覆われていた。
それはノイズを含んでおり、方向感覚だけでなく、デジモンのレーダーにも影響を及ぼす。
そして森の奥、小さな岩の祭壇のような場所に、ポットモンはひっそりと佇んでいた。
身体は土器のような材質で、頭部のクリスタルの蓋が微かに光を放っている。
まるで瞑想しているかのように静止していた。
「誰?」
ポットモンは、多樹達の姿を確認すると、静かに問いかけた。
「ねぇ、三つ目の鍵の欠片が欲しいんだけど。悪いことはしないから、渡してくれないかな?」
「それは駄目だよ。僕はウィザードに与えられた役割を果たすだけ。
鍵は守るべきデータ。それを奪うのなら、僕を倒さなきゃダメ」
その落ち着いた口調は、戦闘を拒否しているわけではないが、
どこか事務的で、戦意を削ぐような不思議な力を持っていた。
「なんか戦いにくい相手だけど……やらなくちゃ! みんな、行くよ!」
ヘイローモン、カラテンモン、ラピッドモンは、
完全体としての力を最大限に活かし、ポットモンに戦いを挑んだ。
「チェインライトニング!」
ヘイローモンが放った強烈な電撃がポットモンに迫る。
しかし、ポットモンは動かない。
「プロフェシー・ロック」
ポットモンが頭部の蓋を開けると、壺の内部から古代文字のデータが放たれた。
それは、ヘイローモンのデータ解析を狂わせ、電撃の軌道を僅かに逸らした。
電撃はポットモンを直撃する事なく、その横を通り過ぎる。
「くっ、読みやがったざんす! 悟り!」
カラテンモンはポットモンの心を読み取り、次の行動を予測しようとするが、
ポットモンの心は膨大な情報データで満たされており、カラテンモンは苦戦する。
「駄目ざんす! 奴の心は、情報が多すぎるざんす!」
ポットモンは、カラテンモンとラピッドモンの位置を正確に把握し、
壺の内部から攻撃を繰り出す。
「ロックバレット!」
壺の口から、岩や土器の破片のようなデータが弾丸となって高速で連射された。
「避けて! ラピッドファイア!」
ラピッドモンはホーミングミサイルを連射し、岩の弾丸を迎撃するが、
ポットモンの放つ岩は、ラピッドモンのミサイルの着弾予測地点を
僅かに外すように調整されており、迎撃は困難を極めた。
「やべぇ! 全然攻撃が当たらねぇ! 奴、未来を見てるのか?」
「未来というより、情報解析だ。
僕達の癖やデジモンのデータを瞬時に読み、最も効率の悪い動きに誘導している!」
カラテンモンは、ポットモンの情報操作に業を煮やし、接近戦を試みた。
「なら、未来が読めないくらい、無茶な動きで攻めるざんす!」
カラテンモンは、伊由太加の剣を構え、ポットモンに斬りかかる。
「無駄だよ。カラテンモンが左から攻撃する確率87%、右から攻撃する確率13%」
ポットモンは正確に予測し、壺の身体を僅かに傾けて斬撃を避ける。
「どうすればいいの……!?」
その時、ヘイローモンが冷静な声を上げた。
「多樹ちゃん、落ち着いて。ポットモンの能力は情報の解析だよ。
広範囲の、計算できない攻撃なら当たるはずだよ! チェインライトニング!」
ヘイローモンは、地面に向かって電撃を放ち、地面のデータを不安定にさせた。
そのデータノイズに乗じて、カラテンモンが最後の必殺技に賭けた。
「一瞬の混乱で、決めるざんす! 衝撃羽!」
カラテンモンが漆黒の翼を力強く羽ばたかせ、
衝撃波と共に、大量の羽根をポットモン目掛けて打ち込んだ。
ヘイローモンが起こしたノイズによって、ポットモンの解析速度が僅かに遅れた。
「……データが乱雑すぎる……!」
ポットモンの防御が間に合わず、
衝撃羽の激しい一撃が、クリスタルの蓋が乗っている壺の本体に直撃した。
「あ……情報の封印が……!」
ポットモンの身体に罅が入り、内側に封じ込めていた膨大な情報データが、
光となって霧の中に拡散した。
そして、ポットモンの身体は、静かに砕け散った。
「やった……!」
ポットモンが消えた後、その場には、三つ目の鍵の欠片が残されていた。
「カラテンモン、お疲れ様!」
「ふぅ……ミーの知略が、データに勝ったざんす。疲れたざんす……」
「情報戦だったな。これで三つ目だ。残るはあと五体」
多樹達は、静かに鍵の欠片を回収し、次の戦場へ向かうため、霧に覆われた森を後にした。
~オリジナルデジモン図鑑~
ポットモン
知略に長けた完全体デジモン。
身体は土器のような材質で、頭部にはクリスタルのような装飾が施された蓋が付いている。
デジタルワールドの膨大な情報を内側に封じ込めており、普段は静止した状態で瞑想している。
知識と歴史の管理者としての側面を持ち、情報の操作によって敵を翻弄する。
必殺技は壺の内部に封じ込めた岩で攻撃する「ロックバレット」と、
砂の竜巻を起こして攻撃する「サンドサイクロン」。
・デジモンとしての情報
レベル:完全体
タイプ:鉱物型
属性:データ
必殺技:ロックバレット、サンドサイクロン