デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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多樹達がデジタルワールドで戦う八体のボスは都市伝説をモチーフにしています。
何の都市伝説かは……自分で調べてください(丸投げ)


第44話 壺のデジモン・ポットモン

 ノビアガリモンとの激戦を終え、多樹達は三体の完全体デジモンと共に、

 グレートキャニオンから、デジタルワールドに取り込まれた自分達の町へ戻ってきた。

 町全体がデータのノイズで歪んでいる光景は、何度見ても慣れる事はない。

 

「……まだ、町が戻ってないね」

 彼らは、カレンモンとの戦いを経て、自分達の進化と絆に自信を持っていたが、

 目の前の静止した現実は、彼らの心を重くした。

 

 まず、彼らは町の中心部、デパート前の広場へと向かった。

 そこは、人々が最も密集していた場所であり、情報が集中している可能性が高かった。

「みんな、固まったままだよ……。私達以外、誰も動いてない」

 多樹は立ち止まったままの、見知った顔の老婦人の手にそっと触れる。

 冷たい感触だけが返ってくる。

「無駄だ、多樹。彼らの身体のデータは、外部からのアクセスを遮断されている」

「このデパートの巨大なサーバーデータ、まるで巨大な氷の塊みたいだよ。

 僕達でも簡単にはアクセスできないね」

 

 北斗は、ヴォレモンが進化したカラテンモンに指示を出した。

「カラテンモン! 街全体に漂ってる、この気持ち悪いノイズを解析しろ。

 どこから流れてきてるか分かるはずだ!」

「ミーにお任せあれざんす! 悟り!」

 カラテンモンは、得意技の『悟り』を応用し、周囲のデータを読み取る。

 その大きなカラスの顔が、僅かに苦痛に歪んだ。

 

「大量すぎるざんす! ウィザードがデータの所有権を書き換えているざんす……。

 その計画の中心は、町の地下にある巨大なデータ処理施設のようざんす」

「やっぱり、あそこか! あの廃墟の下だろ!」

 

 零は、カラテンモンが得た情報と、デパートの壁に不規則に表示されているデジ文字のログを、

 ラピッドモンの高性能レーダーを使って読み込ませた。

「ラピッドモン、このデジ文字を翻訳しろ。

 ボスの最終拠点へのアクセスコードや、セキュリティ情報が隠されているはずだ」

「了解。クイック・サーチ……検知。見つけたよ、零」

 ラピッドモンは、光速に近い処理速度でログを解析し、

 町の脱出を阻止するためのセキュリティ情報を引き出した。

「やはりな。『八つの門』によって最終拠点を守っている。

 その門を開くための『鍵の欠片』は、

 八体の完全体デジモンが、デジタルワールドの各地で守護している」

「それは分かってるよ」

 ラピッドモンは、八体のデジモンのホログラムを空中に展開した。

 ノビアガリモンとカレンモンのホログラムが消える。

「残りは六体。三体目のターゲットは……ポットモンだ。

 ログによると、ポットモンは町の北西部にある『ミスティツリーズ』の中にいる」

 

 多樹は、二人の解析結果を静かに聞いた後、相棒であるヘイローモンを見上げた。

 ヘイローモンの身体が、歪んだ町の光を反射して輝いている。

 

「ヘイローモン。私達、この鍵を全部集めれば、本当にみんなを元に戻せるんだよね?」

「多樹ちゃん。ウィザードの最後の作戦は、

 デジモンのデータと人間のデータを無理矢理融合させるものなんだ。

 その融合を制御している敵を止めれば、データは元の状態に分離する。

 つまり、鍵を集めてボスを倒せば、理論上は可能だよ」

 ヘイローモンの冷静で確かな言葉が、多樹の不安を打ち消した。

「ありがとう、ヘイローモン。よーし! 決まりだね!」

「よし! ターゲットはポットモン。ミスティツリーズに向かうぞ!」

「時間はかけられない。

 町のデータ構造がこれ以上、デジタルワールドに侵食される前に、僕達が動くぞ」

 三人は、それぞれのパートナーデジモンと共に、

 次の戦場であるミスティツリーズへと向けて、歪んだ町を駆け抜けていった。

 

「今度は森かよ! しかも霧だらけって、また視界が悪くて戦いにくそうだな」

「ポットモンは知識と情報を司るデジモンだ。

 地形の把握を妨害し、僕達の戦略を狂わせるつもりだろう。用心して進むぞ」

 

 多樹たちは、三体の完全体デジモン、ヘイローモン、カラテンモン、ラピッドモンを伴い、

 ミスティツリーズへと足を踏み入れた。

 森は、現実世界の霧とは違う、デジタルの霧に覆われていた。

 それはノイズを含んでおり、方向感覚だけでなく、デジモンのレーダーにも影響を及ぼす。

 

 そして森の奥、小さな岩の祭壇のような場所に、ポットモンはひっそりと佇んでいた。

 身体は土器のような材質で、頭部のクリスタルの蓋が微かに光を放っている。

 まるで瞑想しているかのように静止していた。

 

「誰?」

 

 ポットモンは、多樹達の姿を確認すると、静かに問いかけた。

 

「ねぇ、三つ目の鍵の欠片が欲しいんだけど。悪いことはしないから、渡してくれないかな?」

「それは駄目だよ。僕はウィザードに与えられた役割を果たすだけ。

 鍵は守るべきデータ。それを奪うのなら、僕を倒さなきゃダメ」

 その落ち着いた口調は、戦闘を拒否しているわけではないが、

 どこか事務的で、戦意を削ぐような不思議な力を持っていた。

「なんか戦いにくい相手だけど……やらなくちゃ! みんな、行くよ!」

 

 ヘイローモン、カラテンモン、ラピッドモンは、

 完全体としての力を最大限に活かし、ポットモンに戦いを挑んだ。

 

「チェインライトニング!」

 

 ヘイローモンが放った強烈な電撃がポットモンに迫る。

 しかし、ポットモンは動かない。

 

「プロフェシー・ロック」

 ポットモンが頭部の蓋を開けると、壺の内部から古代文字のデータが放たれた。

 それは、ヘイローモンのデータ解析を狂わせ、電撃の軌道を僅かに逸らした。

 電撃はポットモンを直撃する事なく、その横を通り過ぎる。

 

「くっ、読みやがったざんす! 悟り!」

 カラテンモンはポットモンの心を読み取り、次の行動を予測しようとするが、

 ポットモンの心は膨大な情報データで満たされており、カラテンモンは苦戦する。

 

「駄目ざんす! 奴の心は、情報が多すぎるざんす!」

 

 ポットモンは、カラテンモンとラピッドモンの位置を正確に把握し、

 壺の内部から攻撃を繰り出す。

「ロックバレット!」

 壺の口から、岩や土器の破片のようなデータが弾丸となって高速で連射された。

 

「避けて! ラピッドファイア!」

 ラピッドモンはホーミングミサイルを連射し、岩の弾丸を迎撃するが、

 ポットモンの放つ岩は、ラピッドモンのミサイルの着弾予測地点を

 僅かに外すように調整されており、迎撃は困難を極めた。

 

「やべぇ! 全然攻撃が当たらねぇ! 奴、未来を見てるのか?」

「未来というより、情報解析だ。

 僕達の癖やデジモンのデータを瞬時に読み、最も効率の悪い動きに誘導している!」

 

 カラテンモンは、ポットモンの情報操作に業を煮やし、接近戦を試みた。

 

「なら、未来が読めないくらい、無茶な動きで攻めるざんす!」

 カラテンモンは、伊由太加の剣を構え、ポットモンに斬りかかる。

「無駄だよ。カラテンモンが左から攻撃する確率87%、右から攻撃する確率13%」

 ポットモンは正確に予測し、壺の身体を僅かに傾けて斬撃を避ける。

 

「どうすればいいの……!?」

 その時、ヘイローモンが冷静な声を上げた。

「多樹ちゃん、落ち着いて。ポットモンの能力は情報の解析だよ。

 広範囲の、計算できない攻撃なら当たるはずだよ! チェインライトニング!」

 

 ヘイローモンは、地面に向かって電撃を放ち、地面のデータを不安定にさせた。

 そのデータノイズに乗じて、カラテンモンが最後の必殺技に賭けた。

 

「一瞬の混乱で、決めるざんす! 衝撃羽!」

 

 カラテンモンが漆黒の翼を力強く羽ばたかせ、

 衝撃波と共に、大量の羽根をポットモン目掛けて打ち込んだ。

 ヘイローモンが起こしたノイズによって、ポットモンの解析速度が僅かに遅れた。

 

「……データが乱雑すぎる……!」

 

 ポットモンの防御が間に合わず、

 衝撃羽の激しい一撃が、クリスタルの蓋が乗っている壺の本体に直撃した。

 

「あ……情報の封印が……!」

 

 ポットモンの身体に罅が入り、内側に封じ込めていた膨大な情報データが、

 光となって霧の中に拡散した。

 そして、ポットモンの身体は、静かに砕け散った。

 

「やった……!」

 ポットモンが消えた後、その場には、三つ目の鍵の欠片が残されていた。

 

「カラテンモン、お疲れ様!」

「ふぅ……ミーの知略が、データに勝ったざんす。疲れたざんす……」

「情報戦だったな。これで三つ目だ。残るはあと五体」

 

 多樹達は、静かに鍵の欠片を回収し、次の戦場へ向かうため、霧に覆われた森を後にした。




~オリジナルデジモン図鑑~

ポットモン
知略に長けた完全体デジモン。
身体は土器のような材質で、頭部にはクリスタルのような装飾が施された蓋が付いている。
デジタルワールドの膨大な情報を内側に封じ込めており、普段は静止した状態で瞑想している。
知識と歴史の管理者としての側面を持ち、情報の操作によって敵を翻弄する。
必殺技は壺の内部に封じ込めた岩で攻撃する「ロックバレット」と、
砂の竜巻を起こして攻撃する「サンドサイクロン」。
・デジモンとしての情報
レベル:完全体
タイプ:鉱物型
属性:データ
必殺技:ロックバレット、サンドサイクロン
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