六つ目の鍵を探しに行きます。
シーラ岬でのバニプモンとの水際での死闘を制し、五つの鍵を手に入れた多樹達は、
デジタルワールドに取り込まれた廃墟のビルの一室を拠点に、
次のターゲットの情報を集めていた。
戦闘で吸い取られたヘイローモンのエネルギーは回復しつつあるが、
次の相手も完全体であり、油断は許されない。
「五つ集めたけど、残りも強いデジモンばかりだよね……。次はどんな敵なんだろう」
零は、チュパカモンがデジモンのエネルギーを吸い取る捕食者であるという情報を元に、
町のデータに残された生命維持データの急激な消失の痕跡を追っていた。
「ラピッドモン、町のデータログ全体をスキャンしろ。
特に夜間に記録された、デジモンのデータが不自然になくなった痕跡を追うんだ」
「了解、零。……見つけたよ。
最近、南東にあるトロピカジャングルのデータ領域で、
小型デジモンのデータがまとめて吸い上げられたような痕跡が見つかった」
「トロピカジャングル……多種多様なデジモンが生息する場所。狩りをするには最適の場所だな」
北斗は、カラテンモンと共に、
トロピカジャングルに近いエリアのデジモン達が発する微弱なノイズを読み取っていた。
「カラテンモン、ジャングルの方でなんか変な噂ねぇか?
音もなく消えるとか、データ泥棒とかさ」
「北斗、ミーが複数のデジモンの恐怖のデータを捉えたざんす。
彼らの話では、夜のジャングルで『目だけが光る悪魔』が現れ、
一瞬で背後から襲いかかり、データを抜いていくそうざんす。
そして、襲われた場所には、鋭い爪のデータ痕が残っているざんすよ」
「鋭い爪、夜間、データ吸収……チュパカモンで確定だな。陰湿なやり口だぜ」
多樹は、自らのパートナーであるヘイローモンに、
ジャングルという環境での戦いについて確認を取った。
「ヘイローモン。チュパカモンは、データだけじゃなく、エネルギーを吸い取るんだよね。
ヘイローモンが持ってるプラズマエネルギーは大丈夫?」
「わたしが解析したよ。
チュパカモンはエネルギー体を標的にすると、より効率的に吸収できるみたい。
だからこそ、夜の暗闇で、わたしの光を狙ってくる可能性が高い。
だけど、わたしの青い光は、暗闇を切り裂くためのもの。
トロピカジャングルで待ち伏せているのは間違いないよ」
三人は、それぞれの解析結果を突き合わせ、戦略を練った。
「場所はトロピカジャングル。相手は隠密性と吸血能力を持つ捕食者。
地形はチュパカモンに有利だ。正面からのぶつかり合いは避ける。
ヘイローモンの電撃で隠密を破り、カラテンモンの悟りで動きを予測し、
ラピッドモンの精密射撃で仕留めるという、連携が鍵になる」
「よし! 行こう! 六つ目の鍵を手に入れて、一気にゴールに近づくよ!」
熱帯特有の蒸し暑さに満ちた空気が肌にまとわりつく中、
多樹達はファイル島の南東に広がるトロピカジャングルへと足を踏み入れた。
「うわぁ……ジャングルかよ、また厄介な場所だな。
カラテンモン、頼むぞ。こういう場所は得意だろ?」
「もちろんざんす! この複雑に入り組んだ場所こそ、ミーの力が活きるざんす!
隠密と奇襲はミーの得意な分野ざんす!」
多樹達は、ジャングルの入り口に立つ。
周囲にはデータケーブルがまるで巨大なツタのように絡まり合い、
上空は分厚い樹木の葉が太陽の光を遮っていた。
薄暗いジャングル内部は、常に湿った空気が渦巻いている。
足元の湿った土壌を、彼らが踏みしめるたび、周囲の茂みから警戒の視線が向けられた。
熱帯の環境に適応したデジモン達だ。
アルラウモンが音もなく蠢き、鳥の姿をしたムーチョモンが怪訝な顔でこちらを見ている。
さらに、上空を巨大な羽音を立ててヤンマモン達が飛び交い、多樹達を静かに見つめていた。
「なるべく隠れていかないと。
このジャングル全体が、チュパカモンが利用するカーテンのようなものだ」
「そうだよ。無用な戦闘でエネルギーを消耗するのは避けるべき。
わたし達が倒すのは、チュパカモンだけだから」
ヘイローモンが全身から発する青いプラズマの光を最小限に抑え、
彼らは茂みを縫うようにして慎重に歩を進めた。
カラテンモンが先頭に立ち、時折その大きな耳で周囲の音を聞き取りながら、安全な道を探す。
進むにつれて、光が届かない場所が増え、暗闇が濃くなっていく。
「気をつけろ。チュパカモンは夜間や暗い場所を好む。
そして、獲物のエネルギーが最も弱った瞬間を狙う捕食者だ。
このトロピカジャングルは、チュパカモンにとって最高の狩場だ」
多樹達の緊張感は最高潮に達した。
彼らは、いつ襲いかかられてもおかしくない密林の奥深くへと、
静かに、そして素早く侵入していった。
多樹達が複雑な茂みを抜け、開けた場所に出た、その瞬間だった。
何かが、動いた。
音は全くなかったが、ラピッドモンの高性能レーダーが、
一瞬、「高速移動する未確認物体」を検知した。
「やばい! チュパカモンだ!」
チュパカモンは、データノイズと高速移動を組み合わせ、視界から姿を消していた。
次の瞬間、ラピッドモンの背後、木の幹の上から、
全身が爬虫類のような硬い皮膚に覆われた、巨大な魔獣型のデジモンが姿を現した。
「ヒッヒッヒ! 見つけたぞ、獲物め! ゴーストハント!」
チュパカモンはその鋭い爪をラピッドモンに振り下ろす。
ラピッドモンはとっさに回避したが、皮膚をかすめた爪から、データが流れ込んできた。
「くっ……一撃が重い! 攻撃そのものがデータを吸い取ろうとしてくる!」
チュパカモンは、姿を隠しながら、ジャングルの中を縦横無尽に移動し、
ヘイローモン達を翻弄する。
「どこにいるんだ!? カラテンモン、何とか探してくれ!」
「無理ざんす! 奴の移動は、周囲のデータノイズを吸収して行われているざんす!」
チュパカモンは次に、ヘイローモンに狙いを定めた。
赤く光る眼が、ヘイローモンを睨みつける。
「貴様の高純度のエネルギーを貰おうか!」
チュパカモンは、ヘイローモンのプラズマ体に取り付き、その鋭い牙を突き立てた。
「ブラッドドレイン!」
「きゃあ! わたしのエネルギーが吸われる!」
「ヘイローモン!」
チュパカモンの必殺技が発動し、ヘイローモンの青いプラズマの輝きが一時的に弱まり、
チュパカモンの背中のトゲがより禍々しく光を放った。
「うぅ……身体が、動かない……」
ヘイローモンのエネルギーが吸収され、戦況は一気に悪化した。
このままでは、ヘイローモンは戦線離脱を余儀なくされる。
「いけない! 周りの茂みごと薙ぎ払うんだ!」
「分かったぜ! カラテンモン、ジャングル丸ごとぶっ壊せ!」
「承知したざんす! 衝撃羽!」
カラテンモンは、巨大な翼を力強く羽ばたかせ、
必殺の衝撃波をジャングル全体に向けて放射した。
衝撃波は、チュパカモンの潜む場所、茂み、木の幹、全てを破壊し、
隠密のための環境を破壊した。
隠れ場所を失ったチュパカモンは、不満そうな唸り声を上げ、その場に姿を晒した。
「チッ……密林を壊したか! 愚かな! もう一度姿を消す!」
チュパカモンが再び高速移動で姿を消そうとするが、
ヘイローモンは一瞬の隙を見逃さなかった。
「もう、逃がさない! アトモスフィア・ブレイク!」
プラズマエネルギーを全身に集中させ、青い超高速の光の槍となったヘイローモンが、
消えかかったチュパカモンの残像に向かって、一直線に突撃した。
「馬鹿な……! データ残滓を読んで突撃を……!?」
純粋なエネルギー体であるヘイローモンの突撃は、チュパカモンの硬い皮膚を貫き、
データを大きく乱した。
属性は不利ながら、その威力は極めて高く、チュパカモンに大ダメージを与えた。
ヘイローモンの離脱と同時に、零の指示が飛ぶ。
「今だ、ラピッドモン!」
「必ず仕留める! ゴールデントライアングル!」
ラピッドモンが放った、データを分解する三色の光線が、
アトモスフィア・ブレイクでダメージを受けたチュパカモンのデジコアへと直撃した。
「ぎぃやあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
チュパカモンは、鋭い悲鳴と共に、その身体をデータに変え、
ジャングルの茂みの中に消滅していった。
静寂が戻ったジャングルに、六つ目の鍵の欠片が光を放っていた。
「やったね! みんなの協力のおかげだよ!」
「ふぅ、危なかった……。純粋なエネルギー体のわたしを吸い取るとは、何という執念だろう」
六つの鍵の欠片が揃った。
彼らは、残る二つの鍵の欠片、そしてウィザードのボスとの決戦に向けて、
トロピカジャングルを後にした。
次回は七つ目の鍵を探しに行きます。
~オリジナルデジモン図鑑~
チュパカモン
デジモンのエネルギーを吸収して生きている完全体デジモン。
全身は硬い皮膚に覆われ、巨大な目を持ち、そして背中には無数の鋭いトゲが並んでいる。
非常に獰猛で残忍な性格をしており、夜間を好んで活動する。
獲物を追い詰めるための狡猾な知性を持ち、ターゲットを弱体化させてから確実に仕留める。
必殺技は鋭い牙でデータを吸い取る「ブラッドドレイン」と、
相手の視界から一瞬で姿を消して鋭い爪を叩き込む「ゴーストハント」。
・デジモンとしての情報
レベル:完全体
タイプ:魔獣型
属性:ウィルス
必殺技:ブラッドドレイン、ゴーストハント