デジモンといえばこういうのは欠かせないと思って書きました。
デジモンを連れていた男から女性を守った多樹と北斗は、
男が落とした装置を北斗の家に持っていこうとした。
北斗の家はデジモン研究所であり、デジタルワールドやそこに住むデジモンの研究をしている。
「あいつ、柄からしてパートナーデジモンは連れていないような気がするが、
この装置と関係あるんじゃないか?」
「鋭いね、北斗。……多分、私も関係してるんじゃないかって思った」
女性を襲った男はクワガーモンを連れていた。
しかし、性格からして明らかにパートナーデジモンというわけではなかった。
なのにどうしてデジモンで戦えるのか、多樹と北斗は疑問を抱いていた。
空は相変わらず、いつも通りの青だったが、多樹と北斗の心は曇り空だった。
こうして二人はデジモン研究所に辿り着いた。
デジモン研究所の厳重な扉の前に、多樹と北斗は立ち尽くしていた。
金属製の重厚なドアは、まるで二人の抱える不安を象徴しているかのようだ。
「北斗! 遅いわよ!」
その時、研究所のドアが内側から開き、中から屈託のない笑顔の少女が顔を出した。
北斗とよく似た明るい茶色の髪をポニーテールにまとめ、快活な雰囲気を纏っている。
「姉ちゃん!」
北斗は嬉しそうに駆け寄った。
彼女は北斗の姉で、この研究所で研究助手をしている、星野七香だった。
「多樹ちゃんも一緒みたいね。いらっしゃい!」
七香は多樹にも優しく微笑みかける。
多樹は軽く頭を下げた。
「姉ちゃん、見てくれよこれ!」
北斗は抱えていた装置を七香に差し出した。
七香は興味深そうにそれを受け取ると、まじまじと観察し始めた。
「これは……見た事がないわね。どこで手に入れたの?」
北斗は多樹と顔を見合わせ、言葉を選びながら話し始めた。
デジモンが現れた事、スプライモンやフルーモンをパートナーデジモンにした事、
そしてこの装置を持った男がクワガーモンを操っていた事……。
七香は北斗の話に耳を傾けながら、徐々に表情を真剣なものに変えていく。
「そう……デジモンが現実世界に……そして、こんな装置でデジモンを操っていたのね」
七香は、装置を手に取ったまま、研究所の奥へと二人を促した。
「さあ、中に入って。詳しい話は、お父さんに聞いてもらいましょう」
研究所の内部は、無数のモニターや配線、奇妙な機械が並び、
まるで未来の秘密基地のようだった。
案内された部屋の中央には、白衣を着た男性が、
いくつものモニターに映し出されたデータを見つめている。
彼こそが七香と北斗の父親であり、このデジモン研究所の所長を務める、星野有雄だった。
「父さん!」
北斗が声をかけると、有雄はゆっくりと振り返った。
彼の目は、研究に没頭している科学者特有の鋭さと、どこか優しい光を宿している。
多樹の母である鳥絵とはまた違う、知的ながらも穏やかな雰囲気を感じた。
七香が手にした装置を有雄に見せながら、北斗は先程の出来事を説明する。
有雄は無言で装置を受け取ると、その奇妙な形と材質を注意深く調べ始めた。
多樹と北斗の緊張感が最高潮に達する中、有雄はゆっくりと口を開いた。
「この装置は……やはり、そうか」
有雄の呟きは小さかったが、その言葉には深い重みが込められているようだった。
彼は顔を上げ、多樹と北斗をまっすぐに見つめた。
「これはダークヴァイスだ。
デジモンを無理矢理操り、その力を引き出すための、非常に危険な装置だよ」
有雄の言葉に、多樹と北斗は息を呑んだ。
自分達が思っていた以上に、深刻な事態が起きている事を悟ったのだ。
「ダークヴァイス……だから、デジモンを使えたんだね」
「なあ父さん、それ、誰が作ったんだ?」
「すまないが、調べたばかりでは分からなかった。
だが、これが広がると、あの悲劇がまた起きてしまう事は確かだよ」
「あの悲劇……?」
「いや、君達に言うとショックを受けるから、今は言わないでおくよ」
有雄は首を横に振った。
何か情報を隠しているかもしれないと多樹は思ったが、
有雄に無理に問いただすのはやめておこうと思った。
「とにかく、君達にやってほしい事は、ダークヴァイスを止める事だ」
「そう……」
ダークヴァイスが広がれば、あの悲劇がまた起きると有雄は言った。
それは、現実世界とデジタルワールドが繋がってゴブリモンが襲撃した時より、
より大規模で恐ろしいものかもしれない。
それだけは起きてほしくないと多樹は心の底から思った。
北斗も多樹に同調したのか、頷いてこう言った。
「私、スプライモンと一緒に、ダークヴァイスを止めます。そして、この街を守ります」
「オレだって、フルーモンはパートナーだ。見捨てるわけにはいかねぇよ」
二人の返事を聞いた有雄は、微笑みながらこう言った。
「素晴らしい、君達ならこの街を任せられそうだ」
「ありがとうございます!」
「父さん! オレ、絶対にこの街を守って見せるから!」
有雄はこの時から、あの悲劇を止められるのは、多樹と北斗しかいないと感じた。
それほどまでに、二人に希望を感じたのだ。
その頃、街の影では、一人の少年がある人物と連絡を取っていた。
少年は中性的な容姿をしており、どちらかというと女の子のような顔立ちだった。
「……はい。ダークヴァイスの手渡しは完了しました」
『よくやった。後はそのまま、誰にも見つからずに撤退するんだ』
「了解しました」
少年はスマホの電話を切った後、周りを見渡し、誰もいない事を確認する。
ダークヴァイスが人の手に渡った事を確認すると、忍び足で郊外を出て行った。
「すまないが……こうするしかないんだ。
現実世界とデジタルワールドを繋げるためには、こうするしかないんだ……」
少年はどこか後悔したような表情になる。
しかし、元の無表情に戻ると、そのまま郊外を去るのだった。
ラストシーンはアニメデジモンらしく、ライバルキャラを出しました。
ただ、女の子向けにするために綺麗な見た目にはしていますが。