デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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こういうデジモンもありっきゃありかなと思って描きました。
どうでもいいですが、アローパズルの広告なんかよりも社会風刺の広告にしろよな。


第48話 悪霊デジモン・ミサキモン

 トロピカジャングルでのチュパカモンとの死闘を制し、六つの鍵を手に入れた多樹達は、

 七つ目の鍵の守護者を探していた。

 

「これまでのデジモンが守っていたエリアと、鍵のデータリンクから判断して、

 七体目の守護者――ミサキモンの場所が見つかったぞ」

「僕の高速レーダーが、町の中心部の巨大な水域から、

 非常に不安定な負のデータを検知しているよ」

 そのデータログは、ファイル島の中心部に位置する巨大な湖、「竜の目の湖」を示していた。

「竜の目の湖かよ。あそこはデカいシードラモンとかがいる、かなりヤバいエリアだろ。

 しかも七人ミサキがモチーフだっけ? 水辺の怨霊とか、勘弁してくれよな!」

「北斗、ミサキモンは一番陰湿ざんす。奴は水場や陰鬱な場所を好む。

 湖の中心部は、奴の怨念を増幅させるには最高の環境ざんす」

 多樹は、湖畔の地形データと、ミサキモンの持つ精神攻撃の情報を照らし合わせた。

「ミサキモンは倒しても復活するし、精神的な攻撃もしてくる。

 正面からのぶつかり合いは危険すぎるよ。湖の地形を上手く利用しないと」

「わたしが湖の上を高速で移動して、

 七体の位置を特定し、その瞬間に集中攻撃で一気にデリートするしかないね。

 湖はわたしの攻撃の射程距離を広げるには有利だよ」

 

 ファイル島の中心部に位置する「竜の目の湖」。

 その名の通り、湖面は黒く濁り、中心には巨大な瞳孔のような渦が静かに回っていた。

 多樹達は、七つ目のターゲット──ミサキモンがこの湖に潜んでいるという情報を得て、

 慎重にその地へと足を踏み入れた。

 

 湖の周囲は、常に霧が立ち込めており、視界は悪い。

 水辺には奇妙な音が響いていた。

 水が跳ねる音でも、風が吹く音でもない。

 まるで誰かが囁いているような、耳元にまとわりつくようなノイズだった。

 

「……ここが、ミサキモンがいる場所みたいだね」

「ミサキモンは集団行動、そして精神攻撃を得意とする。

 これまでのデジモンとは、戦い方が全く異なるぞ」

 零が、過去の戦闘データを参照しながら警告する。

 ミサキモンは、単体ではそれほどの脅威ではない。

 しかし、常に七体が揃っており、その力は指数関数的に増大する。

 しかも、倒しても倒しても、負の感情を吸収して再生するという特性を持っていた。

「七体もいるのかよ! しかも倒しても増えるって、それもうバグだろ!」

 北斗がいつもの調子で毒づくが、その声には焦りが滲んでいた。

 

「……しっ、静かに」

 湖の水面が揺れた。

 巨大な影が、ゆっくりと水中を移動している。

 シードラモン──この湖の主であり、侵入者を容赦なく排除する存在だ。

 その目は、まるでサーチライトのように水面を照らし、僅かな動きも見逃さない。

 多樹達は、シードラモンに気づかれないよう、水際ギリギリを這うように進んでいく。

 

 岩陰に身を潜めながら、彼らは湖の奥へと進んだ。

 そこには、青白いデータノイズを纏った七体の人型シルエットが、円を描くように佇んでいた。

 

「これがミサキモン……」

 ミサキモンの姿は、まるで幽霊のようだった。

 輪郭はぼやけ、顔は虚無に満ちていた。

 見る者に「後悔」を連想させるその表情は、精神に直接干渉する力を持っていた。

 七体は、完全に同期しており、まるで一つの意識を共有しているかのようだった。

 彼らの周囲には、常に負のデータが渦巻いていた。

 

「鍵は……決して渡さない……」

 ミサキモンの一体が、低く、耳に直接響くような声で語りかけてきた。

 多樹達は、奇襲を仕掛ける事を決断した。

 

「七体でも、わたし達の攻撃には勝てないよ! チェインライトニング!」

 まずは、ヘイローモンが電撃を放つ。

 電撃が円の端にいた一体のミサキモンを直撃し、デリートに成功する。

 しかし、喜びは一瞬で打ち消された。

 残る六体が、ヘイローモン達の負の感情を吸収し、即座に新たな一体を生成したのだ。

 

「全て……奪う……」

 ミサキモンが、七体同時に円陣の中心に向かって手を掲げると、空間が歪み始めた。

 湖の霧が濃くなり、視界がほぼゼロになる。

 

「追憶慚愧──」

 

 その声は、まるで自分の心の奥底から響いてくるようだった。

 次の瞬間、空間全体が負のデータに包まれた。

 黒紫の波動が広がり、多樹達の意識を飲み込んでいく。

 

 ヘイローモンの瞳が揺れ、かつてデジタルワールドを守れなかった記憶を思い出していた。

 炎に包まれた街、泣き叫ぶデジモン、そして自分の無力さ。

 

「ぐっ……これは……僕がデジタルワールドを救えなかった無力感を強めているよ!」

 ラピッドモンの声も震えていた。

 その脳裏には、仲間を守れなかった過去の戦いがフラッシュバックしていた。

 ミサキモンの攻撃は、ただの物理的なものではない。

 精神を蝕み、戦意を奪う。

 

「くそっ、この陰湿な攻撃が……! 倒しても、すぐに復活するざんす!」

 カラテンモンが、ミサキモンの攻撃を真正面から受け止めた。

 その身体は、黒いデータの波に包まれ、徐々に崩れていく。

 

「だったらミーが囮になって奴らの円を崩すざんす! ミサキモンの攻撃を受けてやるざんす!」

 カラテンモンは、自ら七体の中心に飛び込んだ。

 その身体は、次々と放たれる追憶慚愧の波動に晒されながらも、必死に踏みとどまっていた。

 その姿は、まるで盾のようだった。

 仲間を守るため、自らを犠牲にしてでも、ミサキモンの円陣を崩す。

 

「カラテンモン! 大丈夫か!」

「ミーは……まだ、やれるざんす……!」

 零の叫びに応えるように、カラテンモンは片膝をつきながらも、笑ってみせた。

 

 多樹は、ミサキモンの復活ロジックを必死に分析していた。

 一体ずつ倒しても、負のデータがあれば復活する。

 ならば、こうするしかない……と、多樹は思った。

 

「待って! もしかしたら、七体同時に倒せばいいのかも!」

 その言葉に、零が即座に反応した。

「そうだ! 負のデータを吸収する前に、

 ミサキモンを構成する七体全てのデータを同時に倒せば、復活は不可能だ!」

 

 戦略は決まった。

 三体のパートナーデジモンが、それぞれの最大攻撃を、

 七体のミサキモンが作り出す円全体に向けて放つ。

 カラテンモンがミサキモン達の攻撃を受け止め、その七体の配置を固定させた。

 

「行くよ! 全てのエネルギーを込めて! チェインライトニング!」

 ヘイローモンの放った連鎖電撃は、

 七体のミサキモン全てをデータ的に繋ぎ、一気にダメージを与えた。

 電撃は、円陣の端から端へと連鎖し、ミサキモンの動きを一瞬止める。

 

「最後のトドメだ! ゴールデントライアングル!」

 ラピッドモンの全身から放たれたデータを分解する光線は、

 ヘイローモンの電撃で動きが止まった七体のミサキモン全てを、同時に貫いた。

 七体のミサキモンは、苦悶の声を上げながら、データの連鎖を断ち切られた。

 

「あ……データが、連鎖を……止められた……!」

 その瞬間、ミサキモン達は新たな個体を生成する余裕もなく、

 七体全ての怨念データが霧散し、静かに消滅した。

 

 湖畔には、七つ目の鍵の欠片が、光を放っていた。

 霧が晴れ、湖面が静かに揺れる。

 

「やった! 七つ目!」

 多樹は、鍵の欠片を手に取り、仲間達と目を合わせた。

 

「残るはあと一体、ルリムモン。そして、その先にいるボスだ」

 彼らは、最後の力を振り絞り、最後の鍵を守るデジモンがいる場所を探すため、

 竜の目の湖を後にした。




こんなのが都市伝説ってありなの……? と思っていました。
でも、こういう厄介なデジモンも出したくて作りました。

ミサキモン
必ず七体の集団で行動する、幽霊のようなデジモン。
一体を倒しても、その場にいるデジモンの負のデータを吸収し、
即座に新しいミサキモンを生成して七体の態勢を維持する。
敵の精神を蝕み、戦闘不能に追い込むまで執拗に追いかけ続ける。
体的に痩せ細り、青白いデータノイズを纏った人型のシルエットをしている。
必殺技は七体が一斉に突撃して連鎖的に攻撃する「七人連鎖」と、
広範囲の敵の精神を乱す波動を放つ「追憶慚愧」。
・デジモンとしての情報
レベル:完全体
タイプ:ゴースト型
属性:ウィルス
必殺技:七人連鎖、追憶慚愧
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