最後は一番厄介な、あのデジモンです。
そして、ラストには衝撃の展開が……。
多樹達はミサキモンを打ち破り、七つの鍵の欠片を手に入れた。
残る最後の鍵の欠片は一つ。
多樹達は、その守護者であるルリムモンの情報を収集していた。
「八つ目の鍵がどこにあるか、すぐに分かるといいんだけど……」
「わたしがデータを追跡したところ、フリーズランドという極寒の地を指してるよ。
最後の守護者は、その環境と深く結びついてるはず」
零は、ルリムモンが持つ「極低温」と「永久凍結」のデータ特性を警戒し、
ラピッドモンにその生息域の危険度を解析した。
「ラピッドモン、フリーズランドのデータ温度を解析しろ。
ルリムモンが作り出す冷気は、物理的な凍結だけでなく、
デジモンの動作データまで停止させる可能性がある」
「分かったよ、零。……リーズランド全域で、とんでもないデータ温度の低さを記録している。
特に、最北端のエリアでは、僕達のセンサーが計測不能なほどの
絶対零度のデータノイズを観測したよ。そこにルリムモンがいると見て間違いない」
「絶対零度に近いデータ環境か。
ヘイローモンのプラズマエネルギーでなければ、活動すら困難になる。万全の準備が必要だ」
情報収集の結果、ルリムモンはファイル島北部のほとんどを占める豪雪地帯、
フリーズランドの最北端に潜んでいる事が判明した。
「今のフリーズランドは、ルリムモンの絶対零度の冷気でデータが異常な硬度を持っている。
これまでのジャングルや湖とは全く違う、環境自体が脅威だ」
「凍えるのは勘弁だぜ! でも、最後だ! カラテンモン、気合入れていくぞ!」
「もちろん、ざんす!」
フリーズランドは、降りしきる雪と氷に覆われた大地だった。
ここでは、体温調節のデータを持たないデジモンはすぐに機能不全に陥る。
道中、ユキアグモンやアイスデビモンといったデジモンを避けながら、
多樹達はその最北端を目指した。
そして、荒涼たる雪原の果て、巨大な氷の塊がそびえ立つ場所に、
最後の守護者、ルリムモンは待ち構えていた。
その姿は、霜に覆われた巨大な龍そのもの。
全身から絶えず極低温の冷気を放っており、
周囲の空気を凍らせ、絶対零度の静寂を作り出していた。
「侵入者め……。私を構成する冷気で、お前達の活動データを永遠に停止させる」
「そうはいかないよ! わたし達は絶対に、あなたに勝つんだから!」
「お前を倒して、ウィザードの野望を止めるざんす!」
「僕達は……絶対に負けない!」
ヘイローモン、カラテンモン、ラピッドモン。
三体のパートナーデジモンは、最後の力を振り絞り、ルリムモンに挑んだ。
だが、ルリムモンは一切の言葉を発さず、口を大きく開いた。
「フローズンブレス!」
その咆哮と共に口腔から放たれた冷気は、地を這うように広がり、瞬く間に戦場全体を覆った。
空気が凍り、音が消えた。
氷の粒子が空間を満たし、視界が白く染まる。
ヘイローモンの身体に纏っていたプラズマの輝きが、
冷気に触れた瞬間、バチバチと音を立てて消えていく。
「くっ……冷気が直接、わたしのエネルギーの動きを止めてくる……!」
ヘイローモンの雷の翼が凍りつき、飛翔が困難になる。
体内のエネルギー循環が停止し、攻撃のチャージができない。
「データが……演算が追いつかない! 装甲の継ぎ目が凍りついた!」
一方、ラピッドモンのサイボーグ装甲は、冷気に晒された瞬間、
白く凍りつき、関節部が軋む音を立てた。
ラピッドモンの動作は遅延し、攻撃プログラムの展開が不可能になる。
冷気は、ただの温度ではない。
演算処理そのものを凍結させる“データの死”だった。
「クリスタルスピン!」
ルリムモンは、冷気の渦の中で身体を回転させ始めた。
巨大な龍体が高速で回転し、周囲の空間に無数の氷の結晶が発生する。
それは、空間そのものを切り裂く嵐だった。
カラテンモンが空中から突撃しようとしたその瞬間、氷の結晶がカラテンモンの翼を直撃した。
「ぐあああ! データが……削り取られていくざんす!」
黄金の羽根が次々と砕け、カラテンモンの生命維持データが急速に減少していく。
カラテンモンの身体は、氷の刃に貫かれ、空中でバランスを失いながら地に落ちた。
その衝撃で、氷の地面が軋み、カラテンモンの身体が半分以上凍結する。
三体のパートナーデジモンは、既に限界を超えていた。
ヘイローモンは、プラズマの供給が止まり、攻撃ができない。
ラピッドモンは、演算ユニットが凍結し、動作が遅延している。
カラテンモンは、片翼を失い、地に膝をついていた。
それでも、彼らは立ち上がろうとする。
何故なら、ここで倒れれば、全てが終わるからだ。
「これで終わりだな……」
ルリムモンは、冷気の渦の中心で静かに佇みながら、次の攻撃を準備していた。
その瞳は、感情を持たない氷の光を宿していた。
その視線は、まるで“死の宣告”だった。
「どうすればいいの……!?」
「攻撃が、通じない……! 僕達の力では、ルリムモンを倒せないのか……!」
「ここまでなのかよ、クソッ! 絶対に、負けねぇのに……!」
多樹、北斗、零は、心の底から叫んだ。
「「「「力を貸して(くれ)!!」」」
その瞬間、三人のパートナーデジモンが銀色の閃光を放った。
光は空間を貫き、氷の粒子を弾き飛ばす。
デリート寸前だった三体のデジモンが、光の繭に包まれた。
繭の内部で、彼らのデータが再構築されていく。
それは、これまでの戦いの記憶──仲間を守った瞬間、絶望を乗り越えた決意、絆の証。
「ヘイローモン、究極進化──ブルーエルフモン!」
光が弾け、ヘイローモンの姿が変わる。
青い電撃を纏った、巨人のような姿をしたデジモン、ブルーエルフモン。
「カラテンモン、究極進化──テングモン!」
黄金の装甲がカラテンモンを包み、右手には巨大な羽団扇を持っている。
顔には鬼の仮面を身に着けており、足には巨大な歯を持った下駄を履いている――テングモン。
「ラピッドモン、究極進化──セントガルゴモン!」
サイボーグ装甲が変形し、全身が巨大な砲台と化す。
両肩には多連装ミサイルポッド、両手には高出力の粒子砲が装備されていた。
「何……!? この熱量は……!? 私の冷気が……後退している……?」
ルリムモンは、究極体に進化した三体のデジモンを見てたじろいだ。
ブルーエルフモンが空中に舞い上がり、雷の羽から放たれる雷光が空を裂く。
「ルリムモン、もうあなたの絶対零度の支配は通じない! ティタノノクタン!」
光の弓から放たれた雷光の矢が、ルリムモンの冷気の壁を貫き、氷の結界を粉砕する。
雷の奔流がルリムモンの身体を貫き、氷の鱗が砕け散った。
テングモンが地を蹴って跳躍し、空中で扇を振り下ろす。
「お前の支配は、このミーが打ち砕くざんす! 尊天大烈風!」
扇から放たれた巨大な竜巻が地を這い、ルリムモンの胴体を貫く。
ルリムモンの身体が軋み、データが浄化されていく。
氷の翼が崩れ、空間の冷気が弱まっていく。
「今だ、セントガルゴモン!」
そして、セントガルゴモンが全砲門を開放した。
「究極体になったこの力で、お前を倒す! バーストショット!!」
ミサイル、ビーム、プラズマ砲──あらゆる火力がルリムモンのデジコアに集中する。
爆炎と光が戦場を包み、ルリムモンの悲鳴が響き渡った。
「グ、ガアアアアアアアアアアアア!」
ルリムモンの身体は、光のデータとなって砕け散り、氷の地に静かに降り注いだ。
「これで終わりかな……」
絶対零度の冷気を纏っていたルリムモンが消滅した戦場に、
最後の八つ目の鍵の欠片が、静かに浮かんでいた。
多樹がそれを手に取ると、八つの欠片が激しい光を放ちながら、
掌の中で一つの銀の鍵へと融合した。
鍵が完成した瞬間、大地が震え、フリーズランドの凍てついた空に、
巨大な空間の裂け目が出現する。
銀の鍵が、空間の構造を解き、次元の扉を開いたのだ。
「……行こう。ウィザードを止めるんだ」
多樹達は、究極体へと進化したパートナーデジモンと共に、
そのゲートへと飛び込もうとした――その時だった。
裂け目から、一陣の暖かい光と共に、神人型デジモン、ユスティアモンが姿を現した。
その姿は、デジモン研究所で見たものと同じだった。
「待ちなさい、選ばれし子供達よ」
「あ……ユスティアモン!」
ユスティアモンは静かに、しかし威厳のある声で、多樹達に全ての真実を語り始めた。
「私は、デジタルワールドの均衡を守る者。
あなた達に鍵を集めさせたのは、バルバモンを討つためです」
「バルバモンを討つ……?」
ユスティアモンは悲痛な面持ちで続けた。
「バルバモンは、デジタルワールドを支配するだけでなく、
その力で現実世界に干渉し、人々の心を悪意で染めようとしていました。
……バルバモンが目指すのは、現実世界もデジタルワールドも、
全てを自身のものにする事でした」
多樹達の表情が凍りつく。
デジモンワールドに引き込まれた原因は、バルバモンの恐ろしい計画にあったのだ。
「それじゃ、僕達の町が取り込まれたのも……」
「はい。私はバルバモンを止めようと試みましたが、
バルバモンの力はあまりにも強大で、完全に打ち破る事は叶いませんでした。
やむを得ず、被害を最小限に食い止めるために、
現実世界とデジタルワールドを切り離したのです」
ユスティアモンから全ての真実を知ると、多樹達の表情から迷いが消えた。
多樹達の戦いは、故郷を取り戻すための、最後の防衛戦なのだ。
ユスティアモンは、多樹達を見つめ、改めて覚悟を問うた。
「バルバモンは、今、扉の向こうであなた達を待っています。
もし失敗すれば、二つの世界はバルバモンの支配下に入るでしょう。
それでも、あなた達は進みますか?」
多樹、北斗、零は、顔を見合わせ、迷わず力強く頷いた。
「もちろんです。私達には、みんなを助ける義務がありますから!」
「ここまで来て、後には引けねぇよ!」
「僕達が、この戦いに終止符を打つ」
彼らの固い決意を見たユスティアモンは、静かに微笑んだ。
「ありがとう。あなた達に、神の加護を」
ユスティアモンは多樹から銀の鍵を受け取ると、それを目の前の空間の裂け目にかざした。
銀の鍵の力が最大限に解放され、次元の扉は固定され、巨大な通路となって奥へと伸びていく。
その瞬間、空が裂けた。
フリーズランドの空に、巨大な空間の裂け目が出現する。
銀の鍵が、空間の構造を解き、次元の扉を開いたのだ。
三人とユスティアモンは、空間に飛び込んだ。
辿り着いたのは、薄暗い空間。
空間そのものが歪み、データの流れが乱れていた。
そこは、デジタルワールドの中心核──ウィザードの最終領域だった。
だが、そこに待ち受けていたのは、彼らが予測していたバルバモンではなかった。
そこに立っていたのは、見慣れた人物。
だが、今は邪悪なオーラを纏っていた。
多樹の父親──遠山誠。
そして、彼のパートナーデジモン、ドウモンだ。
「よく来たな、多樹。そして、君達のデジモンも。……私が、ウィザードの支配者、遠山誠だ」
その言葉に、空間が震えた。
誠の瞳は、かつての優しさを失い、冷たい光を宿していた。
ドウモンは、背後で静かに佇んでいたが、その気配はルリムモンを遥かに凌駕していた。
「なんだよ……これが、ラスボスってのかよ……!」
「誠……どうして……!」
「お父さん……!!」
多樹は、言葉を失っていた。
父が、敵だった──その事実が、多樹の心を凍らせた。
次回、ついにウィザードのボスと戦います。
実の父親と対峙する多樹は、何を思うのか……それを見届けてください。
~オリジナルデジモン図鑑~
ルリムモン
デジタルワールドの深部に存在する極寒の地に住むデジモン。
その姿は、霜に覆われた巨大な龍に似ており、全身から絶えず極低温の冷気を放っている。
ルリムモンが触れるものは全て、データ構造を破壊され、永久凍結する。
必殺技は口から絶対零度の冷気を吐き出す「フローズンブレス」と、
身体を回転させながら突進し、無数の鋭利な氷の結晶を発生させる「クリスタルスピン」。
・デジモンとしての情報
レベル:完全体
タイプ:氷雪型
属性:ウィルス
必殺技:フローズンブレス、クリスタルスピン
ユスティアモン
オリンポス十二神族に匹敵する力を持った、星と正義を司るデジモン。
デジタルワールドを慈しむ心を持ち、反対に悪に対しては一切の容赦を見せない。
右手に持つ剣「スターソード」は正義の心が強いほど力を増し、
左手に持つ天秤「ジャスティスライブラ」はデジモンの善悪を計る力を持っている。
必殺技は星屑を纏った剣で切り裂く「スターダストスラッシュ」と、
天秤に魂を乗せ、悪しき魂を裁く「ライブラジャッジメント」。
・デジモンとしての情報
レベル:究極体
タイプ:神人型
属性:ワクチン
必殺技:スターダストスラッシュ、ライブラジャッジメント
カラムモン
一人称:わたし
口調:明るい口調の女の子
スプライモンが成熟期に進化したデジモン。
纏う電気はさらに強くなり、人型を取る事もできるようになったが、温厚な性格は変わらない。
必殺技は強力な電撃のビームで敵を貫く「サンダービーム」と、
細かい雷の嵐を発生させて敵を麻痺させる「パラライズウェイヴ」。
・デジモンとしての情報
レベル:成熟期
タイプ:精霊型
属性:データ
必殺技:サンダービーム、パラライズウェイヴ
ヘイローモン
カラムモンから進化したデジモン。
全身は青く輝く超高熱のプラズマエネルギーで構成されており、翼のように電撃が広がっている。
常に空気抵抗を無視した驚異的な速度で飛行しており、
その機動力と破壊力は成熟期時代とは比較にならない。
その戦闘スタイルは極めて攻撃的かつ電光石火。
冷静沈着な性格を持ち、戦闘においては、
最短距離と最大の効率を計算して相手を一瞬で倒す「青い雷光」と恐れられている。
必殺技は手から強力な電撃を放ち、敵を貫通した後、
周囲の複数の敵や物体に連鎖的に放電現象を発生させる「チェインライトニング」と、
青い超高速の光の槍となって敵に突撃する「アトモスフィアブレイク」。
・デジモンとしての情報
レベル:完全体
タイプ:精霊型
属性:データ
必殺技:チェインライトニング、アトモスフィアブレイク
ブルーエルフモン
大気圏上層で発生する強力な放電現象「エルフ」のデータを極限まで取り込んだデジモン。
その全身は、青く輝く超高純度のプラズマ結晶で構成されており、
巨人のような威厳に満ちた姿をしている。
物理的な装甲は一切持たず、純粋なデータとエネルギーで構成されている。
その機動力は光速に近く、戦闘においては、広範囲のデータノイズを瞬時に解析・排除し、
敵をデリートする「天空の審判者」と恐れられている。
必殺技は自身の上空に巨大な青い雷光の弓を創造し、
そこから放たれる光速の矢で敵の急所を正確に貫く「ティタノノクタン」と、
大気圏を突き破るほどの超光速で敵に突撃する「アストラルブレイク」。
・デジモンとしての情報
レベル:究極体
タイプ:精霊型
属性:データ
必殺技:ティタノノクタン、アストラルブレイク
ヴォレモン
フルーモンが成熟期に進化したデジモン。
翼は立派に成長し、さらに長い間、空を飛ぶ事ができるようになった。
名前の由来はフランス語で「空を飛ぶ」を意味する「ヴォレ」。
必殺技は暴風を巻き起こして敵を吹き飛ばす「スフレ・バットル」と、
翼から羽根を発射して攻撃する「プリューム・タンペット」。
・デジモンとしての情報
レベル:成熟期
タイプ:魔人型
属性:ウィルス
必殺技:スフレ・バットル、プリューム・タンペット