デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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デジモンアストリアは、これにておしまいです。
言いたい事はたくさんあるのですが、それは後書きで書きたいと思っています。
まずは、バルバモンの野望を阻止し、平和を取り戻した多樹達の物語を、見てください。


第52話(終) 戦いが終わって、それから

 現実世界とデジタルワールドを支配しようとしたバルバモンは敗れ去り、

 ウィザードは完全に壊滅した。

 デジタルワールドに取り込まれていた町も、元の場所に戻り、

 少しずつ平和を取り戻しつつあった。

 ウィザードの幹部の中で唯一行方不明になっていたアイリアは、

 運悪くデジタルワールドに取り込まれたまま、データの一部となって消えてしまったという。

 

「……ウィザードも、バルバモンに利用されていた被害者だったんだね。

 あの、ポイントを無理矢理引き出した人と同じだよ」

 ウィザードは、人々の心の弱さに付け込んで、犯罪者を増やしていた組織だった。

 しかし、そのウィザードすらもバルバモンが利用していたのを知り、多樹は複雑な表情になる。

 何故なら、彼らも、心に欲望を秘めていた人間だったからだ。

「でもよ、犯罪者は絶対に止めなきゃダメだって思ったからな」

「そうだな……バルバモンはあれだけボコボコにやられたから、しばらくは現れないだろう。

 ウィザードの幹部も、タイガとミシルは逮捕されて、アイリアは消えた」

「アイリアにも罪を償ってほしかったけど……もう、ウィザードに怯える必要はないよね」

 しかし、多樹達はいくら人が願いを叶えたいと思っても、それが犯罪に繋がってはならないと、

 ウィザードの悪事をパートナーデジモンと共に阻止した。

 その過程で友達の心を救った事もあり、多樹達の行動は無駄ではないと分かった。

 

 多樹と北斗、零はそれぞれが隣のクラスである。

 しかし、今回の事件を通して、クラスの座を超えてかなり仲良くなってきていた。

 大人しく内向的で人付き合いが苦手だった多樹も、今は友達と積極的に話すようになっている。

 

「デジモン達はデジタルワールドに帰っちゃったけど、現実世界は私達が守っていくもんね」

「これで悪い奴も少しは懲りてくれりゃいいんだけどな……」

「それができない奴が多いのが、町の唯一の残念ポイントだな」

 零の年相応の口調に、多樹と北斗はぷっと噴出した。

「おい、そこは笑うところじゃないぞ!」

 零は慌てて顔を赤くするが、その様子も、以前の彼には見られなかった人間らしい一面だった。

 

「でも、本当に良かった」

 

 多樹は空を見上げる。

 そこにはもう、データの亀裂も、黒いノイズも、何もなかった。

 ただ、青く澄んだ空があるだけだ。

 

「デジモンはもういないけど、私達の胸の中にブルーエルフモン達がいる。だから大丈夫だよね」

 

 夏が終わり、学校のグラウンドには、涼しげな秋風が吹き始めていた。

 デジタルワールドでの激しい戦いを経験した多樹達にとって、

 現実世界の学校生活は、以前にも増して平穏で、どこか新鮮に映っていた。

 

 多樹は、自分の席から窓の外を眺めていた。

 以前の多樹なら、休み時間になっても本を開いているか、

 窓の外をただ漠然と眺めているだけだっただろう。

 しかし、今は違った。

 

「ねえ、多樹、一緒に行こうよ!」

 クラスメイトの明日香が、明るい笑顔で多樹の席にやって来た。

 明日香は明るく社交的な性格で、多樹に対しても分け隔てなく接してくれる友人だ。

「うん、行く! 今日は北斗と零も来るって」

「えー! また隣のクラスからお出ましか。あいつら、本当に仲良くなったよね。

 あ、パンは多めに買ってきたから!」

 多樹は明日香の言葉に微笑んだ。

 以前の多樹は、友達と積極的に関わるのが苦手だったが、

 今は、明日香との会話を自然に楽しめる。

 デジモンとの戦いを通じて、他人を信じる事、

 そして自分の気持ちを伝える事の大切さを学んだからだ。

 

 四人が教室のドアを出ると、案の定、北斗と零が立っていた。

「よっ、多樹! 明日香も一緒か。昼飯、屋上行くぞ」

「昨日、新しいパン屋の期間限定メロンパンを買ってきた。分けてあげる。

 明日香の分も計算してある」

「零、相変わらずマメだね!」

 

 三人は屋上への階段を登りながら、他愛のない会話を交わす。

「そういえば、デジヴァイスがなくなったって事は、夢もほとんど見なくなったね。

 バルバモンの事、ちょっと忘れそうになるくらい」

「そりゃ、毎日授業と宿題に追われてりゃ、バルバモンの顔も忘れるだろ。

 それに、デジモンはいなくても、オレ達があの時、何を信じたかは覚えてる。それで十分だ」

「僕は、逆にデジヴァイスが消えた事で、セントガルゴモンの言葉をよく思い出すようになった。

 『失敗から学べるのが信頼の強さ』だって。

 だから、最近はテストでミスしても、落ち込むより先に分析するようになったよ」

 零の言葉に、多樹は頷いた。

「私も……お父さんとの関係が、少しずつ変わってきたんだ」

 誠は心身共に回復し、自分の過ちを深く反省していた。

 彼が築きたかった「絶対的な安定」が、

 実はバルバモンという強欲な魔王に利用されていたという事実は、

 彼にとって最大のショックだった。

 多樹はそんな誠を、やっと戻ってきた家族として支えていきたいと思った。

「前は、ただ意見が合わないって思ってたけど、

 今は、お父さんがどうしてあんなに『信頼』を恐れたのか、少しだけ理解できるようになった。

 そして、お父さんも、私の話をちゃんと聞いてくれるようになったの」

 多樹は、脆くても、時間をかけて修復していく事の価値を、父との関係で実践し始めていた。

「そりゃそうだよ。あそこまでブッ倒されたら、考えも変わるだろ。

 自分が信じていたダークヴァイスじゃなくて、多樹の持ってる『信頼』の方が、

 強ぇって証明されたんだからな」

 北斗がメロンパンを頬張りながら、素直な感想を挟む。

「……北斗の言い方は乱暴だが、正しいかもしれないな。

 多樹の父さんは、自らの手で絶対を求めたが、その絶対性が結局はあいつを裏切り、敗れた」

「ふふ、二人とも酷い言い方……でも、そうかも。

 脆くても、時間をかけて直していく事がどれだけ大事なのかを、

 お父さんと戦って、やっと分かったんだ。

 それに、失敗から学べるって事も、お父さん自身が証明したんだから」

 多樹は、心から安堵したように微笑んだ。

 それは、ブルーエルフモンとテングモン、セントガルゴモンが多樹達に残してくれた、

 最も大切なものだった。

 

 ガチャンと音を立てて屋上のドアを開け、四人は外の空気を吸い込んだ。

 秋の乾いた空気が、少しだけデジモンの匂いを運んでくるような気がした。

 北斗は青空の下で大きく伸びをした。

 

「見てみろよ、この町。あんな大騒ぎがあったのに、誰も覚えてねぇ。

 オレ達が守ったって事、誰も知らねぇんだ」

「それでいいんだと思うよ。平和って、きっとそういうものだから」

「でもさ、ちょっとカッコよくない? 世界を救った秘密のヒーロー、みたいな!」

 

 明日香は特別な子供ではないので、デジタルワールドを救った事は全く覚えていなかった。

 しかし、北斗が教えてくれた事で、ちゃんと理解した。

 明日香が両手を広げて大袈裟に言うと、全員が吹き出した。

 

「かもな。でも、だからこそ、オレ達はサボれねぇんだ。

 もし、また何かあったら、オレ達が動かなきゃ。

 デジモンがいない分、オレ達が強くならなきゃな」

 北斗はそう言いながら、無意識に左手首を触った。

 そこにはもうデジヴァイスはないが、テングモンとの絆は確固として残っている。

 零はメロンパンを一口齧り、自分の考えを付け加えた。

 

「北斗の言う通り、デジタルワールドの脅威は消えていない。

 セントガルゴモン達がもう終わりと言っていたが僕達の役割は終わっていないと考えるべきだ。

 バルバモンが言っていた、『人間の欲望はダークエリアより深く暗い』という言葉は、

 正しいかもしれない。

 でも、それを良い方向に向かわせるのも、また『信頼』なんだ。

 僕達は、それの脆さと強さを知っている」

 

 多樹達はそれぞれの思いと、デジモンとの別れを経て得た「見えない力」を胸に、

 日常を歩き始めていた。

 デジヴァイスはもうないので、デジモンとは交流できない。

 だが、彼らの心の中には、ブルーエルフモンのプラズマの輝き、

 テングモンの知恵、セントガルゴモンの強靭な意志、

 そして何よりも、「信じ合う事の価値」が、永遠のデータとして残り続けていた。

 

 彼らの戦いは、終わらない。

 何故なら、彼らが守ると誓った「脆い信頼」こそが、

 彼ら自身を成長させ、未来を切り開く原動力となるからだ。

 

 四人は、穏やかな秋風が吹く屋上で、笑い合った。

 その光景は、二つの世界の平和が、確かに守られた事を示していた。

 

 そして、学校から戻ってきた多樹は、戻ってきた誠と話し合いをしていた。

 

「お父さんは……楽しい場所で起こった悲しい事件が許せなくて、

 みんなを支配しようとしてたんだよね」

「私は、犯罪者を厳罰化せず先送りにする政治家を許せなかったのだ。

 ストーカーや憎悪から起きる事件を未然に防ぎたかった。

 だから、ダークヴァイスを使い、人々を力と恐怖で支配しようとしていた。

 だが……結果は、お前達に敗れた。

 やはり人間は……私の素晴らしい考えを先送りにする、

 家畜未満の存在だという事が証明されたな」

 

 誠はなおも、人間への憎悪を抱いていた。

 吐き捨てられた父の言葉は、以前よりも鋭く、そして酷く寂しそうに多樹の耳に届いた。

 多樹は怒る事も、泣き叫ぶ事もせず、ただ静かに父の目を見つめ返した。

 

「お父さんはずっと、テレビの中の数字や事件ばかり見て、怒ってたんだね。

 でも、その画面の向こうにいる人達も、

 お父さんと同じように傷ついて、怖がっていたのかもしれないよ」

「ふん……。怖がっているからこそ、誰かが導いてやらねばならんのだ。強固な力でな」

「ううん、違うよ。力で縛ったら、その人はもう考えなくなっちゃう。

 お父さんが憎んでいた無責任な大人達と、同じになっちゃうんだよ。

 お父さんは、牛丼屋さんの事件や、芸能人の不祥事に怒ってた。

 それは、お父さんが正義を信じていたからでしょう?

 誰よりも真面目に、世の中が良くあってほしいって願ってたからでしょう?」

 

 多樹が一歩近づくと、誠は僅かに視線を逸らした。

 

「私は、ただ……裏切られず、血生臭い事件が存在しない世界が欲しかっただけだ」

「私もそうだった。

 友達を作るのが怖くて、裏切られるのが嫌で、心から許せる友達は明日香しかいなかった。

 でもね、ブルーエルフモンや、北斗、零、それに色んなデジモンが教えてくれたの。

 信頼っていうのは、壊れない魔法の事じゃない。

 壊れても、泥だらけになっても、また手を繋ぎ直そうとする『勇気』の事なんだって」

 

 多樹は誠の震える手を、そっと両手で包み込んだ。

 

「お父さんは、私とお母さんの信頼を『壊れたから無価値だ』って捨てようとした。

 でも、私は捨てないよ。

 お父さんがどれだけ酷い事を言っても、私は何度でもお父さんに話しかける。

 お父さんがまた間違えそうになったら、私が怒る。それが、私の選んだ『信頼』だから」

「多樹……。お前に……私を救えるとでも言うのか。

 こんな、取り返しのつかない罪を犯した私を……」

「救うなんて、そんな大袈裟な事じゃないよ。

 ただ、今日あった事を話して、一緒にご飯を食べて……明日もまた会おうねって約束する。

 ダークヴァイスがなくても、そんな小さな約束を積み重ねていけば、

 世界はちょっとだけ良くなるって、私は信じてる。

 ……ねえ、お父さん。今度はテレビを消して、私の話を聞いてくれる?」

 

 誠の目から、一筋の涙が零れ落ちた。

 それは、彼が長い間、閉じ込めていた、弱くて、不完全で、

 それでも誰かと繋がりたいと願っていた「人間」の証だった。

 

 世界に住む人々には、たくさんの心の闇が存在する。

 それは、罪を犯す引き金になるかもしれない。

 しかし、その引き金を引く前に止めるものも、また人の心なのだ。

 

 それは脆く、壊れやすく、時間のかかるもの。

 それでも、一度崩れても再生し、失敗から学び、そして互いに支え合う「信頼」。

 デジモンと子供達が証明したその友情と信頼こそが、二つの世界を守る、最も強靭な盾なのだ。

 

 多樹達三人の戦いは、ひとまず終わった。

 だが、彼らの胸に宿ったデジモンの光は、これからも彼らの人生を照らし続け、

 人々の心の中で静かに輝き続けるだろう。

 

 デジモンアストリア

 完




初めてのデジモンの二次創作長編小説を書き切れて、本当に達成感を得たと今では思っています。
デジモンアストリアを最後まで読んだ方も、そうでない方も、本当に感謝いたします。

―デジモンアストリアが誕生した理由―
デジモンアストリアは、元々はタイトルだけ書いて連載する予定はありませんでした。
今までのアニメ版デジモンの主人公は、八神太一、本宮大輔、松田啓人(たかと)、神原拓也、大門(まさる)
工藤タイキ、明石タギル、新海ハル、そして天ノ河宙と、
熱血漢だったり内向的だったりする男主人公しかいませんでした。
ですが、私は以前に初の女性主人公のアニメ版デジモンを見る夢を見た事があったので、
それを正夢にするためその主人公の絵を描いてSNSに投稿しました。
デジモンは25年以上も続いているんだから、今度の今度こそ、
アニメ版デジモンの主人公は女の子かもしれないと私は苛立ちながらも期待していました。
しかし、絵を描いた1年後に発表されたアニメ版デジモンの最新作、
DIGIMON BEATBREAK(デジモンビートブレイク)の主人公の天馬トモロウを見た事でついに私の堪忍袋の緒が切れ、
「だったら自分で女性主人公のデジモンアニメを作ろう」という事で、
デジモンアストリアを作り始めようと思いました。

―主人公の遠山多樹について―
デジモンアストリアの主人公の遠山多樹は、以下のような設定にしました。
公式をリスペクトしつつも、今までにいなかった主人公という事で、こうなりました。

・小学6年生の女の子
・名前の頭文字は「た」
・成績優秀で頭脳明晰
・大人しく内向的な性格
・家庭トラブルの影響で人付き合いが苦手
・口下手で口調が冷たくなりがち
・きょうだいがいない
・ゴーグルを身に着けていない
・パートナーデジモンが竜でも爬虫類でもない

年齢を小学6年生にしたのは、現在の児童書で最も多い主人公の年齢が小学6年生だからで、
しかしデジモン主人公には一人もいなかったからです。
私は内気でウジウジした女の子キャラは嫌いなので、
多樹は大人しいけどしっかりと自分の意見を言える、芯が強い女の子にしました。
口下手と表記しましたが、単に思った事をストレートに言うのが多樹ですので、
それが他人にとってはキツい一言になってしまうようにしました。
パートナーデジモンが竜でも爬虫類でもないのは、
女の子にそういうものは似合わないのではないか、という私の勝手な思い込みです。
ですが、この決定が、これまでのデジモン主人公のイメージを覆していたので、
結果的には良かったのかな、と私は思っています。

―メインキャラについて―
当初からメインキャラは最初は二人、後に三人だと決め、これ以上は増やしませんでした。
というよりも、アドベンチャーのメインキャラが多すぎるから、というのが理由であり、
パートナーデジモンと合わせても六人程度が扱いやすいかな、と私が思ったからです。
事実、バンダイと合併したナムコのRPG「テイルズオブ」シリーズの多くが、
パーティーメンバーは途中離脱を除けば六人が多いですからね。

主人公を女の子にした以上、その周りには二人の男の子がいるだろう、
という「三人組は男2女1の法則」に則り、残りのメインキャラは二人とも男の子にしました。
デジモンは男の子向けの作品ですし、女性キャラばかりのアリシオンではありませんから。

ヒーローの星野北斗を転校生にしたのは「主人公が転校生と出会って物語が始まる」という、
女性主人公ではよくありそうな展開にしたかったからです。
彼の性格は従来のデジモン主人公のようにしていますが、
内向的で毒舌なキャラだけでは読者(視聴者)に受けないと思ったのが理由です。
そして、こっちが主人公じゃないかと思わせるミスリードのためです。

ライバルの富士崎零は「男の娘がライバルだとスパイスになるよね」と私が思ったからです。
ただし、ギルティギアのブリジットやアイマスの涼のような「可愛い系」にはせず、
聖闘士星矢の瞬やFE風花雪月のユーリスのような「綺麗系」にしました。
最初は敵組織に協力させたのも、かなり冒険したかなぁ、と私は思いました。
でも、ライバルは得てして中盤で主人公の仲間になるという定番は守ったので、
零が敵組織に協力する理由をやむを得ないものにしました。

―パートナーデジモンについて―
メインキャラの多樹、北斗、零のパートナーデジモンには特に気を配りました。
前述した通り、主人公の多樹のパートナーデジモンはオリジナルデジモンだと決め、
電気に関するスプライト現象を元にしたスプライモンにしました。
データ種にしたのは多樹の性格を考えてからにしましたが、これでよかったと思います。

ヒーローの北斗は、ライバルの零がワクチン種のテリアモンを使うと決めたところから、
じゃあ逆のウィルス種のパートナーデジモンにしようと思いました。
「どうせなら意外なものがいい」と、カラスがモチーフのフルーモンにしました。
どうせカラテンモンやテングモンに進化しますし、
その前の成長期と成熟期はオリジナルデジモンにしようと決めました。
「ざんす」口調なのは、私の趣味ですが。

―ストーリーについて―
ストーリーはデジモン公式サイト「デジモンパートナーズ」に投稿してあった、
「デジモンアニメを存続させるには」というのを見て、考えました。

以下が、デジモンアストリアを書くにあたって、注意したところです。
・子供達に覇気がない→徐々に勇気をつけていく
・雑談や葛藤が少ない→会話や交流を重視する
・話が緊張感に欠ける→とにかくピンチが多い
・展開が遅い→原則として問題は1話完結

また、起承転結がはっきりしないとの事なので、以下のように、起承転結をきっちり考えました。
起:主人公が通う小学校に転校生が来る
承:現実世界とデジタルワールドが繋がる
転:分断の原因は女神デジモンと魔王デジモンの小競り合いだった
結:主人公達の活躍で現実世界とデジタルワールドに平和が戻る

さて、デジモンアストリアのラスボスは誰にしようかと思っていた時、
私は七大魔王デジモンで唯一アニメ未登場のバルバモンに目を付けました。
七大魔王屈指の策略家にして「強欲」を司り、人間社会にも干渉できそうなのに、
未だにアニメに出ていないのを疑問に思ったからです。

そんなわけで物語は、人の内面にグイグイくるような感じを目指しました。
結婚詐欺、ジェンダー格差、デジタル商品の在庫の概念、転売、物価高、ブラック企業といった、
今の日本が抱えている問題……特に「欲望」が関わるものを容赦なく取り上げました。
アニメ版デジモンはこうあるべきだと私が思った事を書いたのがデジモンアストリアですからね。
ただ、デジモンが「たまごっちの男の子版」という事を忘れないために、
デジモンアストリアの物語は「行動」「友情」を主軸にしました。
辛い目に遭った人は敵組織に唆されて犯罪を起こして自分の欲望を満たそうとし、
多樹達にとって一番身近な友達の事件を解決する展開も入れたのがその証明です。

しかし社会情勢を抉っても、何度も何度も追い詰められるピンチになっても、
デジモンアストリアの物語は主人公側が(ほぼ)無敗、単純明快な結末にしました。
これは、デジモンフロンティアやリコロイのアニポケという、
主人公側が連敗続きのアニメを反面教師にしたからです。
デジモンフロンティアはパートナーデジモンがいないのでまあ百歩譲って許しますが、
リコロイのアニポケのレックウザライジングやメガボルテージは、
パートナーデジモンに相当するものが存在しながら、前者は主人公側が悪のレッテルを張られ、
後者は六英雄を取り戻せずに敵組織に逃げられるという、あまりにも後味が悪い結末でした。
ライジングアゲインでラクリウムが完全に消滅し、スピネルが報いを受けるという、
三度目の正直と言えるハッピーエンドを迎える事ができたようですが、
私は「この結末のためだけに主人公側が敵組織に二連敗するなんてスタッフはバ○?」と断定し、
リコロイのアニポケを私は「アニポケ失格」と断定して見切りをつけました。
やっぱり最初から爽快感がないと、全く見る気にはなれませんからね。

デジモンアストリアは、パーティーは中盤まで多樹と北斗(とパートナーデジモン)だけにして、
アグモン、ガブモン、レオモン系列のデジモンは一切出さず、
デジタルワールドに行くのも終盤からと決めていました。
これは、デジモンアストリアがデジモンアドベンチャーから完全に脱却するのもありますが、
何より、私は初めてデジモンの小説を書いたので、なるべく登場人物が多くなりすぎないよう、
女の子の主人公と男の子の仲間に焦点を当てていく形にしたかったからです。
それに、女性主人公だからアグモン、ガブモン、レオモン系列は物語に合わないと思いましたし。

―デジモンアストリアというタイトル―
タイトルの「アストリア」は、ギリシャ神話の正義の女神アストライアが由来です。
そのアストライアをモチーフにした私が作ったオリジナルデジモン、ユスティアモンも、
デジモンアストリアの中では重要なデジモンとして出しました。
といっても、ほとんど終盤にしか姿を見せていませんでしたが……。

そして、元ネタであるアストライアについても調べた結果、
デジモンアストリアは「元々人間とデジモンは共存していたが、ある理由で離れてしまった」
というプロローグを最初に入れる事となりました。

―敵組織について―
デジモンアストリアの敵組織に当たる「ウィザード」は、パソコン用語のウィザードと、
他の会社になりますがゲーム「白騎士物語」の敵組織の名前から取っています。
全員が社会問題を盾に悪事を働くと決め、パートナーデジモンもウィッチェルニーのデジモン、
ウィザーモン、ソーサリモン、ウィッチモンにしました。

ウィザードはアニポケのエクスプローラーズみたいな感じにしましたが、
途中でエクシード社を乗っ取ったスピネルのように情報操作や主人公の洗脳などは一切せず、
むしろ窃盗や主人公の周りの人の洗脳などの強引な手段を取って事件を行うようにしました。
私はスピネルの行動にイライラしていたので、ウィザードの行動はこうなったのです。
また、ライジングアゲインで突拍子もなくサンゴ達がリコ達に協力したのが不自然だったので、
ウィザードの幹部は最後まで主人公達と敵対したまま一切改心なく退場させました。

ウィザードのボスを主人公の父親にしたのは、今では「あるある」かと思いますが、
私が心に思った事をそのまま言わせたかったのです。
物価高騰は力と恐怖以外では解決できない……今の私は、そう思っていますから。

―最後に―
デジモンアストリアは私の初めてのデジモン小説、しかも女の子が主人公でしたが、
手前味噌でデリケートな話題もありましたがデジモンアニメ小説としては上出来だと思います。
これは原作者に見せるにはかなり危険ですが、二次創作というのはそういうものですから。

ですが、私は決してデジモンの公式を批判する意図はありませんし、してもいません。
私はどうしても女の子が主人公のアニメ版デジモンが見たかった、それだけなのです。
「男の子向けの作品で女性主人公はあり得ない」という声を聴きますが、
水星の魔女やストーンオーシャンの例もあるように、
今の時代、デジモンアニメには女性主人公を出すべきですよ、と私が言います。

では、これにてデジモンアストリアは、おしまいです!
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