デジモンアストリア   作:アヤ・ノア

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今回も事件を解決しに行きます。


第4話 お客様は神様なのか

 デジモンを操る装置、ダークヴァイスが広がれば世界は大変な事になってしまう。

 多樹と北斗はそれを阻止するために、改めてデジヴァイスのパートナーデジモンを見た。

 

「私なんかが、世界を救えるのかな? 私、ただの小学生なのに」

「そんな事はないよ! 知恵と勇気があれば、みんなを助けられるよ!」

「そうだぜ、多樹は一人じゃない。スプライモンもオレもいるじゃないか」

「おっと、ミーを忘れちゃいけないざんす」

「そうだな、フルーモン。オレのパートナーだもんな」

 

 多樹は、北斗の父親の言葉を聞いて、自分に自信が持てなくなった。

 シングルマザーが理由で内向的な性格であり、人付き合いは苦手である。

 そんな自分が世界を救えるなんて、多樹はとても思っていなかった。

 しかし、パートナーデジモンのスプライモンと、

 クラスメートの北斗とそのパートナーデジモンのフルーモンが元気づけた事で、

 多樹の表情は僅かに微笑んだ。

 

「いつまでもこんな感じだと、みんなに迷惑をかけるもんね。

 ずっと人と付き合わなかったら……変われないから」

「多樹ちゃん……やる気になったんだね」

 

 星海小学校の授業が終わり、多樹と北斗は連れ立って昇降口へと向かっていた。

 多樹の表情は昨日より少しだけ明るい。

 北斗も、そんな多樹の変化を感じ取ってか、いつもより弾んだ声で話している。

「なあ多樹、今日はどこか寄り道していくか? 新しいゲーセンができたらしいぜ!」

「ゲーム? うーん、あまり得意じゃないし……」

 多樹が言いかけたその時、昇降口の奥から、けたたましい怒鳴り声が響いてきた。

 

「おい、てめぇ! こんな場所で騒ぐんじゃねぇって言っただろ! ああ!?」

 振り向くと、そこにいたのは、いかにも柄の悪そうな中年男性だった。

 彼は学校の用務員らしき男性に詰め寄っており、その顔は怒りで真っ赤になっている。

 用務員は困惑したように縮こまっている。

「申し訳ありません、少々声が大きすぎましたか……」

「あぁ!? 言い訳すんじゃねぇ! てめぇみてぇな奴は、俺の気分を害するんだよ!」

 男の剣幕に、多樹は思わず眉をひそめた。

「何だよ、あいつ……」

 北斗も顔を顰める。

 「カスハラ」という言葉が多樹の頭をよぎる。

 そんな中、男は不敵な笑みを浮かべ、手に持った奇妙な装置を取り出した。

 それは、昨日彼らが遭遇した男が持っていたダークヴァイスだった。

「これを見せてやるよ……俺が、最高の気分にさせてやるデジモンをな!」

 男が装置を掲げるとその場に空間の歪みが生じ、禍々しいオーラを放つデジモンが姿を現した。

 それは、小さくも不気味な笑みを浮かべた小悪魔型デジモン、インプモンだった。

「オイラに逆らうとどうなるか、教えてあげようか?」

 インプモンは男の肩にひらりと降り立ち、挑発的な目で多樹達を見据える。

 その背後では、男が笑っていた。

「おい、ガキども。そこに突っ立ってると怪我するぜ?

 見てろよ、こいつでこの学校を滅茶苦茶にしてやるからな!」

 多樹と北斗は、互いに顔を見合わせた。

 こんな場所で、またダークヴァイスの使い手に遭遇するとは。

 しかも、相手は一般人を巻き込もうとしている。

 ここは狭い場所だが、だからといって逃がすわけにはいかない。

「デジモンをこんな事に使うなんて……!」

「ああ、許さねぇぜ」

 多樹の胸に怒りがこみ上げた。

 北斗もまた、握りしめた拳を震わせている。

「スプライモン!」

「フルーモン!」

 二人はデジヴァイスを構え、それぞれのパートナーデジモンを呼び出した。

「やる気満々ざんす!」

「任せて、多樹ちゃん!」

 スプライモンとフルーモンが、インプモンの前に立ちはだかる。

 インプモンは、そんな彼らを嘲笑うかのように、ニヤリと口角を上げた。

「へぇ、面白いねぇ。じゃあ、まずはオイラの可愛いしもべ達が遊んであげるよ!」

 インプモンの目が光り、その手から黒いオーラが放たれる。

「サモン!」

 すると、インプモンの足元から、炎の精霊と氷の精霊が実体化し、

 スプライモンとフルーモンに襲い掛かった。

 炎と氷、相反する属性の精霊が、二体のデジモンを挟み撃ちにする。

 スプライモンの電撃は炎には有効だが氷には分が悪い。

 フルーモンの風は炎を煽り、氷を吹き飛ばすが、両者を同時に相手にするのは至難の業だ。

「くっ……!」

 スプライモンは炎の精霊の攻撃を電撃で相殺するが、その隙に氷の精霊が背後から回り込む。

 多樹は焦りながら、スプライモンに指示を出す。

「スプライモン、かわして!」

「フルーモン、そっちも!」

 北斗の指示でフルーモンは素早く風を操り、

 氷の精霊の動きを止めようとするが、炎の精霊がそれを阻む。

 インプモンは、その様子を嘲笑うかのように眺めていた。

「どうしたの? そんなんじゃ、オイラの必殺技まで耐えられないよ?」

 インプモンの瞳が怪しく輝き、その体が暗黒の炎に包まれ始めた。

「ナイト・オブ・ファイアー!」

 インプモンの全身から暗黒の炎が噴き出し、二体のデジモンに向かっていく。

 強烈な熱波が多樹と北斗にも押し寄せ、二人は思わず目を瞑った。

 

「危なかった……。エレクトシールドがなかったら、相当なダメージだったよ」

「確かに危なかったざんすね」

 スプライモンが寸でのところでエレクトシールドを使い、インプモンの攻撃を防いだ。

 インプモンはスプライモンを見て、ぎょっとする。

「まさかオイラの攻撃を防ぐなんてねぇ……」

「わたしだってやられっぱなしじゃないよ!」

 しかし、エレクトシールドは防御に特化した技であり、攻撃に転じる事はできない。

 

―これが広がると、あの悲劇がまた起きてしまう事は確かだよ。

 

 多樹の脳裏に、先日、有雄から聞いた言葉がよぎる。

 この場所でインプモンを倒さなければ、学校が、街が、そして大切な人々が危ない。

 多樹は決意の表情でデジヴァイスを握りしめた。

「北斗! デジモンブーストを使うよ!」

「いいのか、多樹! まだ1回しか使えないんだろ!?」

「このままじゃやられちゃうからね!」

 多樹の叫びと同時に、スプライモンの体が眩い光に包まれた。

 纏っていた電撃がさらに激しくなり、そのエネルギーが周囲の空気をビリビリと震わせる。

 スプライモンの小さな瞳が、決意に満ちた強い光を宿した。

「いっけぇーっ!! デジモンブースト!」

 北斗も、自分のデジヴァイスの画面を必死に操作し、フルーモンをブーストさせた。

 フルーモンの体も、強い光に包まれる。

 漆黒の羽毛が逆立ち、全身から黒いオーラが溢れ出した。

「何、この力?」

 スプライモンの声は、いつもよりずっと力強く、自信に満ち溢れていた。

 その体から放たれる電撃は、先程までの比ではないほど強力になっている。

「知らない力が溢れ出るざんす!」

 空中で光に包まれたフルーモンも、興奮したように叫んだ。

 その身に宿った強大な風の力は、まるで巨大な竜巻のように周囲の空気を渦巻かせた。

「ふん、ブースト如きでオイラに勝てるとでも?」

 インプモンは嘲笑ったが、その表情には微かな焦りが浮かんでいた。

「うん! わたしは負けない! ライトニングボルト!」

 スプライモンは一直線に炎の精霊に突進し、強烈な電撃を放った。

 その破壊力はブーストにより強化されたため凄まじく、炎の精霊は跡形もなく消滅した。

「トルビヨン・エペ!」

 フルーモンも負けてはいない。

 全身から溢れる風の力を操り、氷の精霊に向けて突進した。

 竜巻のような勢いを纏ったフルーモンが通過すると、

 氷の精霊は吹き飛び、地面に叩きつけられて動かなくなった。

 配下を失ったインプモンは、表情を険しくした。

「まさか……!」

「これで終わりじゃないよ、インプモン!」

 スプライモンは再び電撃をチャージし、

 フルーモンはインプモンの周りを高速で飛び回り、その動きを封じる。

「今だよ、スプライモン!」

「ライトニングボルト!」

 フルーモンの旋風の中から最大出力の電撃が、無防備になったインプモンに直撃する。

 インプモンの体がぐらりと揺れ、絶叫を上げた。

ぐあああああああっ!

 インプモンの体が光のデータとなって消滅すると同時に、

 男の手にあったダークヴァイスも罅割れ、砕け散った。

 空間の歪みも消え去り、何事もなかったかのように昇降口は元の静けさを取り戻した。

 用務員は呆然と立ち尽くしていたが、やがて携帯電話ですぐに警察に連絡し、男は逮捕された。

 デジモンが起こした事件が解決すると、破壊されたものや怪我を負わせた人は元に戻り、

 記憶も残らないというスプライモンの言葉を多樹は思い出していた。

 

「やったな、多樹!」

「うん、これで事件解決だね!」

 北斗が興奮した声で多樹に話しかける。

 多樹も安堵と達成感で胸がいっぱいになった。

「これで、ダークヴァイスは止まったざんすね!」

 フルーモンもデジヴァイスの中で得意げに胸を張る。

「いや、まだだよ」

 スプライモンが多樹のデジヴァイスの中で少しだけ寂しそうな顔で言った。

「逮捕された男が持ってたダークヴァイスは壊れたけど、

 きっと他にも持っている人間はいるはずだよ」

 多樹と北斗は顔を見合わせた。

 確かに、先日遭遇した男もダークヴァイスを持っていた。

 世界に広がる危険を改めて認識し、二人は表情を引き締める。

「でも、オレ達なら大丈夫だ!」

 北斗は再び笑顔になり、多樹の手を握った。

「多樹と、スプライモンと、フルーモンと、そしてオレ。

 みんなで力を合わせれば、どんなデジモンだって倒せるし、どんな悲劇だって止められる!」

 北斗の真っ直ぐな言葉に、多樹の心は温かくなった。

 一人では不安だったが、仲間がいればどんな困難も乗り越えられる。

 多樹は力強く頷いた。

「うん、そうだね。これからもよろしくね、北斗、スプライモン、フルーモン」

「ああ!」

「うん!」

 

 その日の夕焼けは、いつもよりもずっと美しく見えた。

 多樹と北斗は、肩を並べて昇降口を後にする。

 二人は手に、光を放つデジヴァイスを握っていた。




社会風刺を入れたのは、ゴーストゲームや6期鬼太郎をイメージしたからです。
多樹は人付き合いこそ苦手ですが、言いたい事はちゃんと言う女の子です。
アニポケのリコロイっぽい感じかな?
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