基本的に敵キャラはとことんクズにしていくので、ご了承ください。
その方が子供向けらしいと思ったので。
カスハラ事件を解決した多樹は自宅に帰り、立て続けに起こった事件に疑問を抱いた。
現実世界とデジタルワールドは何故繋がったのか、揺れた空の原因は一体何なのか。
母親に相談しようにもできなかったので、多樹はスプライモンとだけ相談した。
「デジタルワールドは消えたから、もうデジモンには会えない。そう思っていたのに……」
多樹の言う通り、現実世界とデジタルワールドはとっくの昔に分断されているため、
現実世界の人間がデジモンに出会う手段はなくなっている。
しかし、空が揺れた事がきっかけで、現実世界にデジモンが現れた。
これは夢や幻ではなかった。
しかも、事件を解決すれば記憶や状況はリセットされるのに、
多樹と北斗だけはリセットされないという、スプライモン曰く「特別な子供」だった。
「あの時、確か、空が揺れたよね。なんであの時に、デジモンが出てきたんだろう」
「うーん、わたしには原因は分からないな」
優等生の多樹でも、空が揺れた原因は全く分からなかった。
というか、そもそも勉強で分かるものではない。
スプライモンも、現実世界とデジタルワールドが繋がった時の事は覚えていないらしい。
「……また北斗のお父さんに相談しようかな。空が揺れた原因も、分かるはずだから」
そう言って、多樹はベッドの上で、夕食まで待つのだった。
その時、空の上で、一人の女性の声が聞こえてきた。
―特別な子供はあと一人。彼を闇から取り戻せば、私は……。
「……ん?」
多樹はふと、窓から空を見上げるが、そこには何もなかった。
翌日、多樹と北斗は星海小学校に通う道を歩いた。
その道中で、中性的な容姿をした少年とすれ違った事に、多樹と北斗は気づいていなかった。
「きゃあああああ!」
突然、悲鳴が近くの路地裏から聞こえてきた。
多樹と北斗は顔を見合わせ、急いで声のする方へと駆け寄る。
路地裏に足を踏み入れると、そこで見た光景に二人は息を呑んだ。
明日香が、見知らぬ人物に腕を掴まれて引きずられようとしている。
その人物は目を吊り上げ、明日香を睨みつけていた。
「や、やめて! 離して!」
明日香は必死に抵抗するが、その人物の力は強く、ずるずると引きずられていく。
多樹は思わず叫んだ。
「明日香!」
その人物は多樹達の声に気づき、振り返った。
その手には、昨日まで見てきたものと同じダークヴァイスを握っている。
しかし、その人物を見た多樹と北斗は驚いた。
「えっ!? 明日香を誘拐した人って……女の人だったの!?」
「驚いたな……てっきり男かと思ったぜ……」
誘拐犯が女性だと知り、多樹と北斗は驚きを隠せない。
しかし、二人を無視して女性は不敵な笑みを浮かべ、ダークヴァイスを掲げた。
「おやおや、邪魔が入ったわね。まあいいわ、これも運命って奴よ!」
ダークヴァイスが怪しく光り、その場に空間の歪みが生じた。
そして、そこから姿を現したのは、鋭い爪を持つ小型の哺乳類型デジモン、ガジモンだった。
ガジモンは二足歩行で立ち上がり、多樹達を睨みつける。
その目は凶暴な光を宿しており、気性が荒いデジモンだと一目で分かった。
「このガジモンで、お前達を片付けてやるわ!」
女性は高らかに言い放つ。
明日香は恐怖で震えながら、多樹に助けを求めるような視線を送った。
「おい、明日香を離せ!」
北斗が叫ぶ。
多樹の胸にも、友達を傷つけられようとしている事への強い怒りが込み上げてきた。
「デジモンをこんな事に使うなんて……絶対に許さない! スプライモン、いくよ!」
「フルーモン、こいつをやっつけるぜ!」
多樹と北斗は同時にデジヴァイスを構え、パートナーデジモンを呼び出した。
「任せて、多樹ちゃん!」
「やる気満々ざんす!」
スプライモンとフルーモンが、ガジモンの前に立ちはだかるが、ガジモンは鼻で笑った。
「へっ、ちっちぇー奴らだぜ。オレの爪で、バラバラにしてやる!」
ガジモンは鋭い爪を光らせ、スプライモンとフルーモンに襲い掛かる。
その動きは素早く、爪の一撃は重い。
スプライモンは電撃で応戦するが、ガジモンは巧みにその攻撃を避け、距離を詰めてくる。
フルーモンも風を操って翻弄しようとするが、ガジモンは構わず爪を振るう。
「パラライズブレス!」
ガジモンが口からガス状の毒息を吐き出す。
スプライモンは素早くかわすが、フルーモンは僅かに吸い込んでしまい、動きが鈍くなる。
「フルーモン!」
「へへっ、当たったな。これで終わりだぜ!」
北斗が焦りの声を上げた。
ガジモンは再び爪を振りかぶり、動きの鈍ったフルーモンにとどめの一撃を繰り出そうとする。
「させない! フルーモンを守って、スプライモン!」
多樹は咄嗟にスプライモンに指示を出し、
スプライモンはガジモンとフルーモンの間に割って入った。
「エレクトシールド!」
スプライモンは電撃の壁を展開し、ガジモンの爪を寸前で防ぐ。
しかし、スプライモンの体には大きな衝撃が伝わった。
「くっ……!」
「スプライモン! 大丈夫!?」
「大丈夫だよ、多樹ちゃん! でも、このままだと……」
スプライモンの言葉に、多樹はハッとした。
防御しているだけでは、埒が明かない。
明日香を助けるには、ガジモンを倒すしかない。
「北斗! デジモンブーストを使って、一気にいくよ!」
「おう!」
多樹と北斗はデジヴァイスのブースト機能を起動させる。
スプライモンとフルーモンの体が再び眩い光に包まれ、その力が漲っていくのが分かった。
「今度こそ、決める! ライトニングボルト!」
「行くざんす!」
スプライモンの全身から激しい電撃がスパークし、
フルーモンは全身を巻き込むような竜巻を発生させる。
避ける間もなく、ガジモンの身体にスプライモンの電撃が直撃する。
その隙を逃さず、フルーモンが突撃した。
「トルビヨン・エペ!」
竜巻を纏ったフルーモンがガジモンに激突し、その体を宙に舞い上げる。
「う、ぐあぁあ!!」
ガジモンはデータとなって消滅し、女性の手にあったダークヴァイスも罅割れて砕け散った。
同時に明日香を拘束していた女性の力も失われ、明日香は地面にへたり込んだ。
「まさか、アタシが負けるなんて……」
「あなたは、私の友達を誘拐した犯罪者。罪を償ってもらうよ」
明日香を誘拐した女性は、キンキンと金切り声をあげながらこう言った。
「何よ、このメスガキ! アタシが女を好きで悪いの!? 女に恋して何が悪いの!?」
「……ホント、救いようのない奴だな……」
その誘拐犯は女性に恋しているらしく、明日香に勝手に恋して彼女を誘拐したらしい。
幸い、明日香に怪我はなかったものの、
それでも明日香を誘拐した犯人を、多樹と北斗は絶対に許すわけにはいかなかった。
「女の人が好きならそう思ってもいい。けれど、誘拐は犯罪だよ。ちゃんと牢屋に入ってね」
「う……うぅ……煮るなり焼くなり好きにしなさいっ!!」
こうして明日香を誘拐した女性は逮捕され、無事に明日香を助けた。
「うぅ……怖かったよぉ、多樹……」
いつもは明るい明日香だったが、誘拐犯の魔の手にかかり、恐怖で震えていた。
事件を解決した事で記憶はリセットされたものの、恐怖だけは脳ではなく心が覚えていた。
そんな明日香の頭を、多樹は優しく撫でる。
「大丈夫だよ、明日香。もう二度と、あの人は明日香を誘拐したりしないから」
「うわぁぁぁん! 多樹ぃぃぃ!」
明日香は泣きながら多樹に抱き着いた。
その様子を、スプライモン、北斗、フルーモンは微笑ましく見守っていた。
「多樹ちゃんは友達の事を大切に思ってるんだね」
「オレ、男だからいまいち分かんねーけど、女の子同士の友情がこうだったらいいのにな」
「そうそう、闇なんてない方がいいざんすね!」
「……って、もうすぐ遅刻するぞ! 急げ、多樹!」
「ごめんっ!」
大急ぎで走る多樹達を見て、中性的な容姿をした少年は舌打ちしていた。
「……せっかく、目的を果たせそうだったのに……」
多樹は大人しいけど自分が正しいと思えばちゃんと押し通す女の子です。
次回がどうなるかは……分かりますね?